インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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物凄くキリがいいので、ここらで前にも言っていた番外編をお送りします。

まずは、数多くいるジオン軍人の中でも屈指の武人である『彼』です。

勿論、TSしてますけど。






番外編① 嵐の中で輝いて

 誰もが楽しみにしていた臨海学校。

 その二日目は一日目の自由行動とは変わり、ISの各種装備の試験運用とデータ取りを行う予定だったのだが、篠ノ之束の突然の乱入や、突如として発生した緊急事態により中止となる事に。

 

 アメリカとイスラエルが共同開発した軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走し、学生達が宿泊している旅館である『花月荘』のある方角へと高速で移動しているというのだ。

 学園上層部に要請により迎撃行動に出ることとなったのだが、そこで即席の作戦会議室としていた部屋に束が侵入、そこで一夏の専用機である『白式』と箒に新しく与えられた専用機『紅椿』で向かえばいいと言い出した。

 最初は渋っていた千冬であったが、このまま束の事を無視したら何をするか分らないと判断し、苦渋の思いで彼女の案を採用することに。

 だが、その結果…最悪の事態に陥ることになってしまった。

 一夏が福音に撃墜されて意識不明の重体になり、そのことが原因で箒もまた完全に心が折れてしまった。

 場が完全に重苦しくなっている中、一人の少女が静かに立ち上がり、そのまま外に出て砂浜まで向かった。

 

「よもや、このような事態になるとはな……」

 

 渋い顔をしているショートヘアーの少女。

 そっと目を閉じ、眉間に皺を寄せる。

 

「いや…何も知らぬ少年少女を生き死を賭けた戦場に向かわせてしまったのだ。この事態は寧ろ、起きて当然だったというべきか……」

 

 一見すると冷たい言葉に聞こえるかもしれないが、本当はそんな事を少しでも許してしまった自分の情けなさと不甲斐無さに本気で呆れていた。

 

「……あの子達にはまだ多くの未来が待っている。それを、このような形で潰させるわけにはいかない。となれば、矢張り……」

 

 首から下げている、自分の専用機の待機形態であるドックタグを握りしめて、仇敵が待っているであろう空を見上げる。

 一歩だけ前に出てから決意を固めると、ふと背後に気配が現れた。

 

「どこに行くつもりですの、ノリス」

「セシリアお嬢様……」

 

 そこにいたのは、彼女『ノリス・パッカード』が仕えている主『セシリア・オルコット』だった。

 昔からパッカード家はブランケット家と共にオルコット家に仕えてきた家系であり、それはパッカード家の娘であるノリスも例外ではない。

 彼女は昔からセシリアと共に過ごし、俗に言う『幼馴染』の間柄だった。

 と言っても、そう思っているのはセシリアだけで、ノリス自体はどこまでも主に仕える従者のつもりなのだが。

 

「申し訳ございません。私が付いていながら、このような事を許してしまうとは……」

「何を言うのです。ノリスは何も悪くなどないでしょう?」

「いえ。あの時、無理矢理にでも私が出撃していれば、彼が負傷することも無かった……」

「それは結果論ですわ」

「分っております。ですが、それでも悔やみきれないのです」

「ノリス……」

 

 これ以上は何を言っても無駄。

 そう判断したセシリアは、ノリスの隣に並ぶように立つ。

 

「ならば、私も行きますわ」

「なっ…なりません! 貴女様は栄誉あるオルコット家の現当主! このようなことは全て、このノリスにお任せ下されば……」

「ノリス。今の私は当主であると同時に、貴女と同じイギリスの代表候補生なのよ? 戦場に出る覚悟はとっくに出来ています」

「ですが……」

 

 こんな時のセシリアの頑固さは嫌というほど知っていた。

 普段は優雅な態度を崩さない彼女だが、本当は何があっても自分の信念を決して曲げない強い少女でもあるのだ。

 

「……承知しました。共に行きましょう」

「ノリス!」

 

 だが、そんな彼女の喜びはすぐに崩れ去る事となる。

 一瞬の隙をついて、ノリスはセシリアに防犯用の催眠スプレーをかけた。

 

「ノ…ノリス……?」

「愚かな従者の無礼をお許しください。ですが、私はどうしても貴女に…貴女にだけは戦場に立ってほしくない。あそこは…私のような戦うしか能のない人間だけが立つべき場所です」

「お願い……行か…ないで……」

 

 その言葉を最後に、セシリアはその場に崩れるように倒れ込んだ。

 砂浜に体が落ちる前にノリスがキャッチし、そっとその体を横たえた。

 

「……そこにおられるのでしょう?」

「気が付いていたか……」

 

 物陰から現れたのは、一組の担任である千冬だった。

 腕組みをした状態で出てきて、常人ならば尻餅を付きそうな程の威圧感を放っている。

 

「一人で行くつもりか?」

「はい」

「私がそれを許可をするとでも?」

「思っておりません」

「ならば……」

「ですが、これは私が成さねばならぬ事。故に、問答は無用と思われたい」

「パッカード……」

 

 目の前にいる少女が誰よりも真面目で、誰よりも責任感があるのは千冬も知っていた。

 同時に、色んな人々から大切に思われている事も。

 

「セシリア様をお願いします」

「あぁ……」

 

 彼女の決意は言葉では絶対に止められない。

 恐らく、力でも止められないだろう。

 例え、どんな事をしてでもノリスは戦場へと赴くのを止めようとしない。

 

「……死ぬなよ」

「これはまた……我らが担任殿は無理難題を申される」

「戻ってきたら、たっぷりと説教をしてやる。覚悟をしておけ」

「ははは……それは怖い怖い。このまま、どこかに逃げたくなりますな」

 

 セシリアの体を抱き上げ、少し離れた場所に千冬が移動したのを見届けると、ノリスは己の専用機を纏って宙に浮く。

 

「頼むぞ……我が愛機よ」

 

 ノリス専用IS『グフ・カスタム』が水平線の向こうに消えるまで、ずっと千冬はその場に立っていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 移動をしながら、ノリスは不思議と微笑んでいた。

 

「よもや、またしてもこのような事があるとはな。本当に分らないものだ」

 

 左腕部に固定された『シールドガトリング』を握りしめながら、そっと呟く。

 

「敬愛する主の想い人と出逢う……。本当に面白い『二度目の人生』であった……」

 

 もう、思い残す事は何もない。

 自分がいなくなっても、主の傍には多くの友と仲間たちがいる。

 彼女達さえいれば、きっと大丈夫だろう。

 

「だからこそ、私はこの一命を賭してでも、絶対に守らねばならんのだ。戦争を知る者として……一度は戦場で散った者として……!」

 

 眼前を見ると、そこには胎児のように丸くなっている福音がいた。

 エネルギー消費を抑えて、あの場で待機をしているのだろう。

 とてもではないが、暴走をしている機体とは思えない行動だった。

 

「いや。今は奴の事などどうでもいい。重要なのは、どうやって奴を撃破するかだ」

 

 部屋を出る前に密かにインプットしておいた福音のデータを改めて参照する。

 

「奴には高出力の光学兵装があるのか……。それに加え、全方位に対するオールレンジ攻撃も可能…か。お世辞にも足が速いとは言い難いグフには脅威となる! だが!」

 

 ある程度まで接近すると、そこでノリスは瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使って強襲を仕掛ける!

 

「それでも……やるのだ!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 本来、軍用機である福音と第二世代機であるグフ・カスタムとでは機体性能に雲泥の差がある。

 普通に戦えば、成す術も無く呆気無く破壊されるのがオチだ。

 だが、そこにノリス・パッカードという要素を加えると、途端に状況が一変する。

 

「貰ったぁっ!!」

 

 シールドガトリングから放たれる銃弾の雨が福音に降り注がれる。

 当然のように福音は自由自在なマニューバにて回避をするが、まるで先を読んでいるかのような攻撃に反撃すらもままならない状況に陥っていた。

 そんな隙を見逃さないノリスは、すかさず急接近をしてシールド内に収納してあるヒートソードを取り出し、福音の体にしがみ付く。

 

「ひとぉつっ!!」

 

 福音の頭部にある、一対の巨大な翼の形状をしている主武装であり大型スラスターを兼ねている『銀の鐘(シルバー・ベル)』を全力で切り裂き、本体から落とす事に成功した。

 だが、福音も大人しくやられている筈もなく、ノリスが自ら近づいてきたことを利用し、彼女の体を掴んでからのゼロ距離射撃を試みようとした。

 しかし、戦士としての勘でそれを読んだノリスは、すぐに福音の体を蹴ってから、その反動で距離を離した。

 自分の距離となった瞬間、福音が残った武装による全力射撃を開始。

 羽を形をしたエネルギー弾が嵐のように襲い掛かってくる。

 通常ならば数秒で消し炭になりそうな攻撃も、ノリスは器用に体を捻りながら回避していく。

 

「見た目は派手だが……」

 

 ヒートソードを収納し、右腕部内に内蔵している装備を射出出来るように『固定武装』のロックを解除する。

 

「胴体はがら空きだぞ!!」

 

 ノリスはグフ系列の機体の最大の特徴とも言うべき特殊武装『ヒートロッド』を伸ばして、それを福音の体に固定させることに成功した。

 

「その目の良さが命取りだ!! ヒートロッドを食らえっ!!」

 

 福音と比べて致命的なまでの攻撃力不足なノリスにとって、これは千載一遇の大チャンス。

 この機を逃してたまるかと、ヒートロッドを最大出力で放出する。

 

『!!!!!?????』

 

 超高電圧の一撃が全身を走り、ほんの僅かな隙ではあるが、確かに福音の動きが完全に停止した。

 福音自体はまだ起動したままなので、すぐにでも復活するだろう。

 だからこそ、この機会だけは絶対に逃してはいけない。

 

「怯えろ!!」

 

 ヒートロッドを付けたまま自分の体を福音の方へと引き寄せつつ、シールドガトリングを連射する。

 

「竦め!!」

 

 さっきと同じように福音の体にしがみ付き、再びヒートソードを持ち、逆手に構える。

 だが、そこで福音が復活して一瞬で現状を把握、すぐに自分がすべき行動を選択した。

 鋭く尖っている自分の指先に残ったエネルギーを収束し、即席のエネルギーソードを作った。

 ノリスもそれに気が付くが、そんなことなどお構いなしにヒートソードを福音へと全力で突き立てた!!

 

「ISの性能を活かせぬまま消えていけっ!!!」

 

 この時、初めて福音に確かなダメージを与えることに成功し、その白銀の装甲に大きな罅が入る…が、同時に福音の手刀がノリスの腹部に深々と突き刺さっていた。

 

「がはっ…! 肉を切らせて骨を断つ…か…! くははは……! やるではないか……しかしっ!!」

 

 シールドガトリングをパージし、前腕部に装着してある3連装ガトリングを、ヒートソードにて破損した場所へ向けて超至近距離の全弾連射。

 幾らシールドバリアーに守られているとはいえ、そんな状態での怒涛の連続攻撃を受ければ、着実にダメージは蓄積し、やがて……。

 

「勝ったぞ!!」

 

 粉々に砕け散る。

 破壊された装甲の内側には、光り輝く結晶体があった。

 腹部から流れる血で意識が飛びそうになるが、最後の力を振り絞って手を伸ばして結晶体を掴み、外へと引きずり出す。

 

「いかに高性能な軍用機といえど…所詮はIS! 本体からコアを引きはがせば嫌でも止まるだろうっ!!」

 

 様々なコードを引き千切りながらコアを高々と掲げるが、最後の足掻きとして福音が消えゆく翼から光弾を放つ。

 出力は大幅に低下しているが、それでも今のノリスには致命的だった。

 

「……セシリア様。どうやら、学園に戻ってから共に茶をするという約束は果たせそうにありません。自分は……二度目の死に場所を見つけたようです」

 

 ノリスと福音はそのままの状態で海へと落下し、その直後に大きな爆発があった。

 そして…グフ・カスタムと福音の反応が同時に消えた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「ここは……?」

 

 ノリスは、生まれ変わった姿のまま、真っ黒な空間に立っていた。

 

「私はどうなった? 福音を倒せたのか?」

 

 様々な疑問を感じながらも周囲を見渡していると、彼女の傍に一人の女性が出現した。

 

(ふふ……随分と可愛らしい女の子になったのね、ノリス)

「あ…貴女様はっ!?」

 

 その女性は、前世においてノリスが仕えていた女性だった。

 

(原因は不明だけど、貴女は二度目の生を受けた。貴女がいてくれたから、私はシローと本当の意味で一緒になれた。だから、今度は貴女の幸せを見つけて……)

「アイナ様……」

(ノリスはまだこっちに来ちゃダメ。ほら……貴女の事を待ってる人がいる……)

「この光は……!?」

 

 暗闇の中に眩い光が差し込み、ノリスの事を覆い尽くす。

 光が全身を包み込んだ時、自分の意識が浮上する感覚になった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 目を開けた時、見えたのは見覚えのある天井だった。

 

「こ…こは……?」

「ノ…ノリスっ!? 目が覚めたのねっ!?」

「セシリア…様……?」

 

 すぐ傍には、赤く目を腫れさせながら泣いているセシリアの顔が。

 現状を正しく把握出来ないでいるノリスは、必死に頭を働かせてセシリアに尋ねる。

 

「福音は…どうなったのですか?」

「奴ならば、お前がちゃんと倒したよ」

「織斑教諭……」

 

 割り込んできたのは、出撃する前と同じように腕組みをしている千冬。

 彼女の姿を確認して、初めて自分がいる場所が花月荘の部屋の中だと分った。

 

「死ぬなよとは言ったが、腹に穴を開けてこいとは一言も言った覚えはない」

「そうですな……」

「だが、本気で驚いたぞ。まさか、本当に単独で福音を撃破してしまうとはな。前々から、お前の実力が桁違いなのは知っていたが、ここまでとは思わなかった」

「必死だっただけですよ……」

「そうかもな。だが、それでもお前が単独では決して撃破不可能と言われていた存在を倒したのは覆しようのない事実だ。もしかしたら、今回の功績でお前が次のイギリス代表に選抜されるかもしれんな」

「それは流石に大げさでしょう……」

 

 なんとか話をしているが、実は眠たくて仕方がない。

 千冬の方もそれを察したのか、話を切り上げてくれた。

 

「では、私はこれから山田先生と事後処理がある。オルコット、ここは頼んだぞ」

「はい」

 

 千冬が出て行くと、場に沈黙が訪れた。

 

「セシリア様、私は……」

「バカっ!」

「えっ?」

 

 いきなり、泣きながらセシリアがノリスの体に抱き着いてきた。

 全く抵抗が出来ない状態にあるノリスは、彼女の事を受け入れるしかなかった。

 

「あなた言ったじゃない! 私も連れて行ってくれるって! それなのに一人で……」

「……申し訳ありませんでした」

「あの後…福音とノリスの反応が消えたと山田先生に聞かされて、血の気が引いていく思いだった……。その直後に一夏さんが起きてきて、彼と一緒に貴女の反応が消えた場所まで行って……」

(そうか…彼はなんとかなったのか……)

 

 クラスメイトの朗報を聞きながら、ノリスはセシリアの言葉に耳を傾ける。

 

「ノリスが…福音のコアを握りしめながら血塗れで海に浮いていて……私…私……」

「セシリア様。福音の操縦者はどうなりましたか?」

「無事だったわ。軽傷などはあったけど、本当にそれだけだったみたい。それよりも、まずは自分の事を心配してくださいまし! 呼吸が完全に停止していて、どれだけ叫んでも全く目を開けない貴女を見て…皆が心配したんだから!」

「そうですか……。後で皆にも礼を言わなくてはいけませんね……」

「それもいいけど、まずはゆっくりと自分の体を休めて……お願いだから……」

「はい……」

 

 重くなる瞼を閉じながら、夢の中であった嘗ての主に語りかけた。

 

(アイナ様……どうやら、あそこは私の死に場所ではなかったようです。私の為に涙を流してくれる、この優しい主を守る為に…私はもう少しだけ生きてみようと思います……。そちらに行くのはまだまだ後になりそうです……)

 

 眠気に勝てなくなってきたノリスは、そのまま暖かな温もりに包まれながら眠りについた。

 この日、ノリスは初めて心から熟睡をすることが出来た。

 

 

 

 

 

   

 




この話に登場するノリスの容姿は、シスプリに登場した衛ちゃんです。
セシリアに仕える従者として、普段は男性用の制服を着ている男装の麗人として振る舞っています。
その為、実は一部では一夏以上に人気があったり……。

今回のストーリーに出てくるセシリアは、一夏には惚れてはいません。
あくまで友達止まりで、本命はノリスになっています。
幼い頃からずっと一途な恋心を抱いていました。
でも、肝心なノリスが勘違いをして、セシリアは一夏が好きだと思い込んで、二人の仲を進ませようと余計なお世話をしたり、しなかったり。

全く名前は出てませんが、束はノリスの事を目に掛けていて、彼女が自分と同じ『天才』であると完全に信じ込んでいます。
だから、ノリスが倒れた時も全力で治療に協力してくれました。
この後、束から『ノーちゃん』と呼ばれるようになったりします。

専用機である『グフ・カスタム』は全くチートじゃありません。
機体性能は中の中と言った感じで、場合によっては量産機であるリヴァイヴよりも弱いです。
でも、乗っているノリスの能力が超チートなので、原作同様の鬼神の如き無双を繰り広げてくれます。
因みに、学園入学後は一度も負けておらず、楯無やダリル、フォルテと言った上級生たちにも全戦全勝しています。
文字通りの学園最強の座にいるのですが、本人は全くの興味なし。
あくまで、セシリアの傍にいられれば、それだけで十分だと本気で思っている従者の鏡みたいな人物です。




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