インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
ここから更にわちゃわちゃすること確実ですね。
そして、彼女は一体誰と相部屋になるのか?
「やっと…やっと、ここに来れた……」
うっすらと宵闇が空に掛かり始める時間帯。
IS学園の正面ゲート前に一人の少女が旅行用のボストンバックを肩から下げて立っていた。
彼女こそは、以前に家庭の事情から仕方なく中国へと帰国する事になり、その際に日本のIS学園にてソンネン達と再会の約束をした『凰鈴音』その人だった。
「約束通り、あたしは帰って来たわよ。あんた達の事だから、絶対にここに入学をしてるわよね」
中国に帰っていたとはいえ、彼女とてIS学園の倍率の異常なまでの高さは良く知っていた。
普通ならば余りにも狭すぎる門なのだが、鈴は知っている。
あの三人が、その程度で挑戦を諦めるような人間ではないと。
どんな困難であろうと、必ずや乗り越えてくると。
「ぶっちゃけ、そこに関してはそこまで心配はしてないのよね。つーか……」
ポケットからスマホを出して、とある記事を画面に出す。
そこには、一夏がISを動かした時の記事が記載されている。
「どうして一夏がISを動かしてんのよ……」
これに関しては、どこまでも呆れしかない。
数年にも渡って一緒にいた仲だから、当時の光景が容易に想像できる。
「絶対にソンネン達や千冬さんに迷惑掛け捲ったでしょ……」
大正解。
ついでに言うと、そこからの流れで正座&お説教まで行ったのだが、流石にそこまでは予想出来なかったようだ。
「…きっと、入学してからもアイツらは凄く頑張ってる。昔から努力家だったしね。あたしだってすっごく頑張ったつもりだけど、あの三人には遠く及ばないんだろうな……負けてられないわね!」
拳を握りしめてから気合を入れ直し、ポケットから皺くちゃになってしまった一枚の紙を取り出した。
「確か、ここに付いたら最初にこの『本校舎一階総合事務受付』って場所に行かなくちゃいけないのよね。でも……」
キョロキョロと辺りを見渡す。
時間帯故の暗さも相まって、場所が全く分らない。
「多分、転入手続き的な事をしなくちゃいけないんだろうけど、肝心の場所が分からなきゃ意味ないじゃないのよ。ご丁寧に何にも書いてないし。名前だけメモに書かれても分かるわけないッつーの。こちとらエスパーじゃないのよ?」
ここでジッとしていても仕方がないので、取り敢えずは移動をすることに。
静かな夜に鈴の足音だけが響く。
「もしも、この時間でも普通に仕事をしているのなら、灯りがある筈よね? それを頼りに探すしかないかしらね……」
まるで、真っ暗な洞くつで一筋の光を求めてさ迷い歩く冒険者になった気分。
今の彼女は冒険者ではなくて迷子なのだが。
「こーゆー時、めちゃくちゃ勘がいいヴェルナーなら、適当に歩いているだけでも見つけそうよね~」
昔から、ヴェルナーは失せ物探しが非常に得意だった。
彼女が適当に指差した所を探すと、一発で見つかる事が多いのだ。
その特技故に一時期は『美少女名探偵』という渾名が付いていたほど。
「そういや、ヴェルナーが何かを閃く時って、いつもおでこが『キュピーン』って光ってたけど、あれって何だったのかしら?」
完全に覚醒の兆しである。
「学校だから、どこかに案内板とかあるだろうから、まずはそれを探した方が良さそうね。本当は誰かに場所を聞いた方が良いんだろうけど、こんな時間帯に外にいるような生徒なんて……」
その時だった。
うっすらと見えるISの訓練施設と思わしき場所の出入り口から、数人の女子のグループが出てくるのを目撃した。
何かを話しているようで、夜の静かな時間帯だからこそ会話に気が付くことが出来た。
「ラッキー♪ あの子達に聞いてみようっと」
そうと決めるが早いが、鈴はそそくさと女子達が来た方へと早歩きで向かう。
しかし、聞こえてきた声を聞いて、彼女は咄嗟に近くにあった物陰に隠れた。
「しっかし、いつ見てもソンネンの機体は迫力満点だよな~」
「あったりまえだろ? 陸の王者を舐めんなよ?」
「訓練を見ていると改めて思いますわ。あの重装甲であの速度は本当に反則染みてると……」
「それこそがヒルドルブの真骨頂ですからね。あの威容と、あの攻撃力を目の当たりにすれば、大抵の相手は戦意喪失しますよ」
見た事のない少女達と一緒に渡り廊下を進んでいるのは間違いなくソンネンだった。
あの顔にあの声で車椅子に乗っている少女なんて、他には知らない。
廊下に設置してある灯りによってよく見える。
「デュバルのヅダの速度も尋常ではないがな。目視で追い駆けるのは絶対に不可能だ。ただでさえ、モニクやワシヤのヅダでも凄まじい速度だというのに……」
「『速度』こそがヅダにとっての最大最強の武器だからな。それ以上のじゃじゃ馬なのがヅダなのだが」
「最大速度状態のヅダをあそこまで自由自在に操れるのは、後にも先にもデュバル少佐しかいませんよ」
「どうか~ん。オレだと確実に壁とかにぶつかりそうだもん」
「二人とも、私からするとすっごく上手に見えるけどな~」
「うん。ヒデトさんとモニクさんも十分に凄いと思う」
「あら、嬉しい事を言ってくれるわね。ありがと、簪」
「へへ……慰めでも、そう言って貰えると嬉しいもんだな。あんがとな、本音ちゃん」
あの真面目そうな金髪美少女は間違いなくデュバルだ。
頭から出ているアホ毛だけは見間違えようがない。
「そういえば、ヴェルナーさんも専用機を所持しているのですのよね? 訓練では使いませんの?」
「ん~…使おうと思えば使えるけど、オレの相棒はかなり特殊な機体だからな~。訓練するにも皆と同じようにはいかないんだよな」
「一体どんなISなんだ…逆に興味が湧いてくるぞ」
「きっと、見た時は凄く驚くと思いますよ?」
夜でも元気溌剌な少女はヴェルナーに決まっている。
少し離れてはいるが、それでもハッキリと分かる。
(ふふ…あの子達もちゃんと、あたしとの約束を守ってくれたのね)
三人の姿を見てテンションが高くなった鈴は、さっきとは打って変わってやる気に満ち溢れていた。
一緒に歩いていた一夏のことは眼中の外に出して。
そうしている間に、彼女達は建物の中へと消えていった。
「…そういや、一緒にいた女の子たちは何なのかしら?」
別にその事に対して嫉妬をするとかではなく純粋な疑問だ。
中学の頃から異性同性に関わらず、三人は学校全体の人気者だった。
実際、告白されたことも一度や二度ではない。
告白をした約半数が女子生徒だったのは凄かったが。
「きっと、IS学園でも昔みたいにモテてるのね。なんか普通に納得出来るわ」
縮めていた体を伸ばしてから立ち上がり、気分を一新して『本校舎一階総合事務受付』を探す事に。
そうと決めた矢先に、誰かに服の袖を引っ張られる感覚があった。
「ん?」
引っ張る力は軽くだったので、悪意を持ってしている訳ではないとすぐに分かったので、鈴はすぐに振り向いた…が。
「あれ? 誰もいない…」
そこには誰もいなかった。
一体何だったのかと思っていると、自分の袖に細長い何かがくっついているのに気が付いた。
「な…なに、これ…って?」
細長い何かの先を見てみると、そこには一つ目の丸っこいナニかがいた。
しかも三体も。
「うわぁっ!? な…何よッ!?」
『お困りですか?』
『迷子ですか?』
『お手伝いしましょうか?』
フリップを使って鈴に優しく問いかけてくる。
もうお分かりだと思うが、彼女に話しかけてきたのはサクだった。
しかし、ソンネンが連れているサクとは違い、このサクは真っ黒に塗装されていた。
要は、黒い三連星専用サク×3である。
鈴が今いる場所が街灯に照らされていなければ、全く姿を見る事は出来なかっただろう。
「あ…あんたら…なに? IS学園には、こんなのもいるの?」
『えっへん!』
「いや、別に全く褒めてないんだけど……」
誇らしげに胸を張るサクに、なんて反応すれば困る鈴。
彼女だけに限らず、何も知らないままにサクと出会えば、誰もが似たような反応をするだろう。
「っていうか、さっきなんて言った? もしかして案内してくれるの?」
『勿論です!』
「そんじゃあ……」
幾ら割る気が出たとはいえ、闇雲に探していてもキリが無い事は鈴自身がよく分かっていた。
このままだと朝になりそうな気がしたので、猫の手ならぬサクの手を借りることにした。
『そこなら知ってます!』
『我等でご案内します!』
『お任せください!』
「マジでッ!? ありがと~!」
三体のサクは縦に並んでから、鈴の前を歩きだす。
『よし! これよりジェットストリームアタックでこの人を連れていくぞ!』
『お~!』
『頑張るぞ~!』
「だ…大丈夫かしら…?」
ジェットストリームアタックなんて言っているが、実際には単に縦に並んで歩いているだけ。
カッコいいと言うよりは、寧ろ可愛らしくあった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
『着きました~!』
『やった~!』
『任務達成だ~!』
「ほ…本当に着いた……」
サクたちに着いていくこと約数分。
本当に目的の場所に辿り着けた。
「何か御用ですか?」
「あ…えっと……」
中にいた事務員の人に話をして、ようやく本来の目的を達成出来そうだった。
時間にして20分足らずなのだが、鈴からすれば物凄く長く感じていた。
「成る程。分かりました。では、こちらの書類に必要事項を記入してください」
「分かりました」
出された紙に名前などを書いていく。
ここまで来れば、後はもう楽勝だった。
「にしても、よくここが分りましたね? 自分で言うのもアレだけど、ここって分かりにくい場所にあるでしょ?」
「実は、この子達に案内して貰ったんです」
鈴が目配せをすると、そこではサクたちが手足をばたつかせながら『喜びの舞』を踊っていた。
「あぁ~…サクちゃん! 成る程ね~」
「知ってるんですか?」
「勿論。この子達は、技術部の子達が作ったお手伝いロボットなの」
「お手伝いロボット…」
確かに役には立った。しかし、見た目的にはお手伝いと言うよりはマスコットに近いような気がした。
「実際、色んな所で大活躍してるって聞いてるわ。サクちゃん達、ありがとう」
事務員の礼に三体のサクは敬礼で応えた。
こう言ったところだけは本当にしっかりしている。
「書き終わりました」
「はい。これで手続きは完了です。IS学園にようこそ、凰鈴音さん」
「ありがとうございます。あんたらも、今回は本当にありがとね」
鈴の礼にも、また敬礼で応えた。
どうやら、これがサクたちなりの『どういいたしまして』のようだ。
「あの…少し聞きたい事があるんですけど」
「なんですか?」
「デメジエール・ソンネンさんと、ジャン・リュック・デュバルさん、それからヴェルナー・ホルバインさんって何組ですか?」
「その三人なら…一組ですね。凰さんが二組になるので、お隣さんですね」
「一組……」
本当ならば一緒の組が良かったが、贅沢は言ってられない。
同じ学校にまたいられるだけでも十分なのだから。
「特に、ソンネンさんは凄いわよ~。なんたって、入学早々にイギリスの代表候補生の子に勝って、一組のクラス代表になったんですって。足が不自由っていうハンデを背負っているのに凄いわよね。私も本気で応援したくなっちゃうわ」
「ソンネンがクラス代表……」
昔から凄い少女ではあったので、そこまでの驚きは無く、逆に納得さえしてしまった。
ソンネンならば脚が動かなくても、それぐらいはやってのけるだろうと。
「二組のクラス代表って、もう決まってたりするんですかね?」
「まだじゃないかしら?」
「そっか…まだなんだ……」
それを聞いて安心した。
ソンネンがクラス代表になったのなら、自分もならない訳にはいかない。
早速、自分の目標が決まった。
「あ、そうだ。凰さんに言っておかないといけない事があるんだった」
「なんですか?」
「実はですね、突然の転入だったせいか学生寮の部屋が用意出来なかったんですよ。それでですね、ちゃんと用意が出来るまでの間、一人部屋になっている上級生の子と相部屋になるんですけど……」
「そんな事か。問題無いですよ」
「そうですか。安心した…それじゃあ、これが部屋の鍵です。部屋の番号はそのキーホルダーに記載されてますから」
「分かりました。では、失礼します」
事務員に挨拶をしてから事務受付を去る事に。
その際に、ちゃんとサクたちに話しかける事も忘れない。
「あんたらも今日はご苦労様。また明日ね」
『お疲れ様でした~!』
『おやすみなさい!』
『いい夢を~!』
パタパタと旗を振るサク×3に見送られながら、鈴は学生寮へと歩いて行った。
因みに、今度はちゃんと迷わずに行けた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
IS学園の学生寮。
キーホルダーに書かれた番号と睨めっこをしながら部屋を探し、ようやく見つける事が出来た。
「…ここね」
コンコンとドアをノックしてから、中からの返事を待つ。
すると、室内から声が聞こえてきた。
「話は聞いてるよ。入って来ても大丈夫だぞ」
「失礼します」
ドアを開けて部屋の中に入ると、そこにいたのは……。
「よっ! お前さんが例の転入生だな。オレはアレクサンドロ・ヘンメ。二年生だ。少しの間になるかもだが、どうかよろしくな」
(が…眼帯を付けたスタイル抜群の超美人がタンクトップとパンツ姿でベッドに座って足の爪を切ってる――――――――っ!?)
フレンドリーな笑顔を向けたアレクだった。
こうして、鈴とアレクの意外な二人による生活が始まった。
そんなわけで、鈴のルームメイトはアレクになりました。
これはかなり早期に決まっていたんですけどね。
ついでに、黒い三連星専用サクも登場させました。
んでもって、今回はサクの愉快な仲間達の番外編です。
ちょっとした亜種の紹介ですね。
ホルシャーノン:非常によく似ている親戚(?)
サクウォーリア:別世界のサク。なんかカッコいい。
サクファントム:別世界のサクその2。もっとカッコよくなってる。
ルナマリア専用ガナーサクウォーリア:当たらない。全く当たらない。
ディアッカ専用ガナーサクウォーリア:グゥレイト!
レイ専用ブレイズサクファントム:クールで頼りになる。
イザーク専用スラッシュサクファントム:ストライクゥゥゥゥゥゥッ!!
ちょっと少ないですが、次回以降はサク化した別のMSの説明をしていこうと思います。
どうか、お楽しみに。