インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
あれだけは絶対に押さえておきたいですからね!
午前の授業が終了し、603のメンバーと一夏達は教室を出て、昼食を食べる為に食堂へと向かっていた。
なんでか、サク・トレーナーとサク・キャノンも一緒に着いて来ていた。
「まだその子達、貴女達と一緒にいるけど?」
「織斑先生の『見張っていろ』という言葉をまだ守っているのか…?」
「真面目な所は素晴らしいと思いますけど……」
ソンネンお付きのサクと仲が良さそうに歩く姿は、とても愛らしくて癒されるが、授業中にずっと監視されていた箒や、顔を水で濡らされたセシリアからすれば非常に複雑な気持ちだった。
完全に悪いのは自分達であり、彼ら(?)はそんな自分達に喝を入れてくれたのだから。
感謝こそすれ、ここで文句を言うのは間違っているような気がした。
「あ…来た」
「おっす。待たせたな」
途中で簪と合流し、彼女を含めたメンバーで改めて食堂へと行くことに。
当然、いつの間にか増えているサクにも目が行く訳で。
「…なんか増えてる?」
「お友達が出来たんだよ~! ね~?」
『『『~♪』』』
三体のサクは手を繋いで仲良く歩く。
顔つきもニッコリしていて、道行く女子生徒達の心をほんわかとさせていた。
「ま…いいんじゃねぇか? ダチ公が出来るのはいい事さ」
「ずっと一人では寂しいだろうしな」
「元が元なだけに、バリエーションの豊富さだけには事欠かないだろうしな」
ヴェルナー…超特大のフラグを立てる。
「割と色んな所で見かけるよな~」
「まだ出来上がってから少ししか経過してない筈なのに、もう完全に学園に馴染んでるわよね……」
現在、サクは学園内の様々な所で活躍していて、主に学園スタッフの皆から非常に好意的に思われていた。
自分達の仕事を手伝ってくれているのだから、嫌いになる要素が有る筈も無い。
「…食堂にもいるのかな?」
「多分、いると思うよ。正直、製作者の一人であるボクですら、もうどこに誰がいるのか分らなくなってきてるからね」
「大丈夫なのか…それ…?」
オリヴァーの天然な発言に、少しだけ学園の未来が心配になってしまった一夏。
それが現実にならない事だけを切に願おう。
「今日の昼飯は何にするかねぇ~」
ソンネンの呑気な一言が、廊下の喧騒に消えていった。
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・・
・
食堂に到着すると、いつもの如く非常に賑わっていた。
食券が売り切れになるという事態こそ無いものの、行列が出来れば時間が掛かるのは当然の事だ。
「やっと来たのね。待ってたわよ」
「鈴?」
「私達の事を待っていたのか?」
「律儀な奴だなぁ~」
その手に食券を持って、鈴は食堂の入り口付近で皆の事を待っていた。
正確には、ソンネンとデュバルとヴェルナーの三人だけだろうが。
「もう食券は買ってるのか?」
「うん。本当は先に買ってようかとも思ったんだけど、それだけ待ってる間に冷えちゃうじゃない? だったら、買うだけ買ってから待ってた方が建設的かなぁ~って思って」
感情的になりそうな性格に見えて、実は意外と冷静沈着な一面を持っているのが鈴と言う少女だった。
こんな事を言えば本人は困惑するだろうから口にはしないが、三人娘は鈴が軍人に向いてるんじゃないかと思っている。
自分の感情と頭を別に考えられる人間は、往々にして精神的に強い。
最後の最後の瞬間、己の身体を支えられるのは自分の心だけしかないのだ。
「ほら、待っててあげるから、とっとと買ってきなさいな」
「んじゃ、遠慮なくそうさせて貰うわ」
「私達が買いに行っている間、こいつらの事を見ていてくれないか?」
「こいつら?」
デュバルが下の方を指差すと、そこには鈴の事をジ~っと見つめる三体のサクが。
「あの子達だけじゃなかったんだ……。そういや、さっき一組の教室に行った時も、この緑色の子がいたような気が……」
「頼んだぞ~」
そうして、鈴の元にサク、サク・キャノン、サク・トレーナーを置いて皆は食券を買いに行った。
残された一人と三体は、微妙な空気を醸し出していた。
「…もしかしてさ、この学園ってアンタらみたいのがまだまだ一杯いる感じ?」
『いますよ~』
『ボクたちの仲間は沢山います』
『呼びましょうか?』
「いやいや! 呼ばなくていいから! 大丈夫だから!」
会話用フリップに書かれた言葉を見て、急いで両手を振りながら遠慮する。
もし仮にここで『呼んで』なんて言おうものなら、あっという間に食堂はサクによって埋め尽くされてしまいそうな予感がした。
流石にまだ窒息死はしたくないので、ここは丁重に断るのが正しい。
「見た目が可愛いのは認めるんだけどね~…」
ヴェルナー以上に天然っぽいので、なんとも油断の出来ないサク達なのでした。
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ソンネン達が食券を購入し、それを注文の品と交換してから空いている席を探す。
普段ならば、この時間帯に大勢が座れる席を探すのは至難の業なのだが、今日は運よく一発で見つける事が出来た。
「あ…あそこなんていいんじゃない?」
鈴の視線の先には、十人近くが座っても問題無さそうなテーブル席が偶然にも空いていた。
単なる偶然なのか、それとも誰かが気を利かせて空けてくれたのか。
そんな事は誰にも分らないので、皆は迷うことなく席に座る事にした。
「ふぅ…ようやく、落ち着いて話せるわね」
「そうだな。朝の時間帯は嫌でもバタバタしてしまうしな」
席に座ってから一息つき、リラックスした顔で笑顔を浮かべた鈴。
ずっと会いたかった者達と再会出来たのだから、こんな顔になるのは当然だった。
「色々と話したい事はあるけど…まずは一言だけ言わせて」
「なんだ?」
ジト~っとした目で、日替わり定食の焼鯖を解して食べようとする一夏の事を見る。
「…なんで一夏がISを動かしてるの?」
「「「知らない」」」
「寧ろ、俺の方が知りたい。なんでISを動かせたんだろ?」
「知らんわ」
こればかりは誰にも分らない。
しかし、鈴が疑問に思うのも無理はない。
誰だって最初は、困惑してからの驚くまでがワンセットになっているから。
「おい一夏。こいつは一体何者なんだ? 名前だけは朝に聞いたが……」
「そ…そうですわ! まずは、デメジエールさんとの関係を教えてくださいまし!」
「関係って言われてもな……幼馴染としか言いようがないよ」
「「お…幼馴染……」」
セシリアにとっては驚きのワードであり、箒にとっては脳天直撃の衝撃ワードだった。
「ど…どういう事なんだ……。デュバル達の幼馴染は私だけじゃなかったのか…」
「いや、しれっと俺の事を思い出から除外するのは止めてくれませんかね?」
一夏、箒の記憶の中から抹消されかける。
「それは、こっちの台詞でもあるんだけどね。どうせなら、食べながらお互いに自己紹介でもする?」
「それが手っ取り早そうだな」
こうして、鈴の提案により見知らぬ者達同士での自己紹介が始まった。
都合により大きく割愛させていただくが。
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「成る程ね~。つまり、この箒って子が転校していった直後に、入れ替わるような形であたしが来たって事になるのね」
「そうなるのか……。なんとも奇妙な宿縁と言うか……」
そんな二人が高校生になってから初めて出会うのだから、人生とは実に奇妙奇天烈である。
「んでもって、その子達がソンネン達の古い知り合いであると……」
「その通り。私はソンネン少佐の『教え子』なんだから!」
「ふ~ん……」
モニクが妙に『教え子』の部分を強調してくるが、鈴は敢えて深く考えないようにする。
なんとも禁断の匂いがしたから。
「そういえばソンネン。あんた…代表候補生の子と試合をして勝ったんですって?」
「おうよ」
「ってことは、専用機を持ってるの?」
「一応な。オレだけじゃなくて、デュバルとヴェルナーとかも持ってるけどな」
「なんで、そんなのを持ってるのか…なんて、今は聞かない方が良いのかしらね?」
「そうだな。いずれ話せる時は来るだろうから、それまで待っててくれ」
「全然構わないわよ」
ここで深く追求しないから、鈴は非常に付き合いやすい。
ある意味、友人としての理想形とも言える。
「で、ソンネンと戦ったのが、其処に座ってる……」
「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ!」
「ついでに言うと、オレのルームメイトでもある」
「え? 同じ部屋同士で試合したの?」
「試合をすると決めた直後に、同じ部屋であることを知ったのですわ…」
「それはまたなんとも……」
普通ならば、勝敗が決した後は大なり小なりギスギスしたりするものだが、この二人の場合は全く違っていた。
ソンネンはセシリアの事を大切な親友だと思っているし、そのセシリアは完全に恋する乙女となっている。
勿論、鈴もそれは見抜いていた。
「まぁ…気持ちは分かるけどね~。なんたって三人共、中学の頃はファンクラブがあったぐらいだし」
「「なにぃっ!?」」
ここで箒とセシリアが激しく反応。
喧騒があるとはいえ、それでもかなり目立っていた。
「しっかし…ルームメイトかぁ~…」
「鈴はどんな人と一緒なんだ?」
何も知らない一夏の純粋な疑問。
だが、それを尋ねられて彼女は微妙な表情を浮かべる。
「あたしは…上級生の人と一緒。いきなりの転入で空いてる部屋が無かったからだって聞いた」
「ほぉ~…鈴もそうなのか」
「え? もしかして、ヴェルナーも上級生の人と同じ部屋なの?」
「あぁ。二年生で、生徒会の副会長だぞ」
「うちの先輩も生徒会所属だって言ってた……」
「「「「「「「え?」」」」」」」
ここで603メンバーが同時に声を出す。
生徒会メンバーは、その殆どが上級生で構成されている。
楯無はヴェルナーと一緒だから除外するとして、残る可能性は……。
「因みに、どんな人なの?」
「ショートヘアで眼帯を付けてて、女子高生には見えないぐらいの超グラマラスボディの美人」
(((((((砲術長だ……)))))))
IS学園広しといえども、そんな人物なんて一人しかいない。
特に、関係が深い面々は一発で誰か分かった。
「気さくでいい人なんだけどさ…やっぱ、まだ緊張するのよね~」
「歳上だもんな。そりゃ緊張ぐらいするだろ」
この中で共感してくれたのは一夏だけ。
元軍人な面々はともかく、セシリアは候補生としてだけでなく、当主としても歳上の人間と接する機会が多かったので特に気にしていないし、箒も部活で先輩方と話す事が多いので、そこまで壁を感じたりすることは無い。
「それと、えっと…オリヴァーって言ったわよね?」
「はい。ボクがどうかしましたか?」
「アンタが、あの子達の製作者…なのよね?」
鈴が視線を向けると、その先ではサクとサク・トレーナーとサク・キャノンが、どこからかやって来たシャア専用サクと一緒にババ抜きをしていた。
どうやってカードを持っているかを気にしてはいけない。
『戦いと常に二手三手先を考えて行うものだ』
『あ、また揃った』
『こっちも、もうすぐ無くなります』
『あっと一枚♪ あっと一枚♪』
『ふっ…認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを』
何気にシャア専用サクが負けていた。
1が3倍になっても、さほど差は無いという事なのかもしれない。
「正しくは、ボクが所属している部活で作った…ですね」
「それでも十分に凄いわよ。実際、あたしもあの子達の仲間に助けられたし」
「そうだったんですね。それは何よりです」
自分の知らない所で、自分達が生み出した子供のような存在が役立っている。
技術者として、これ以上に嬉しい事は無い。
「しっかし、こんなにも一学年に代表候補生って集中するもんなのか?」
「え? あたし達以外にも候補生っているの?」
「いるぞ。例えば、そこにいる簪も日本の代表候補生にして四組のクラス代表でもある」
「ども」
「日本の候補生……」
傍から見ると大人しそうなインドアっぽい少女だが、人は見た目では判断できないのはソンネン達で十分に学んでいる鈴は、すぐに自分の中に浮かんだ考えを消した。
何より、日本はISの発祥の国。
他の国よりも候補生になる競争は激しい筈だ。
そんな中で候補生になったという事は、それは同時にかなりの実力者であるという事の決定的な証拠でもある。
思わず、鈴は唾を飲んでしまった。
「他にも、3組にオランダの候補生がいたな」
「あ~…アイツか。最近は大人しいが……」
「まだいるんだ……」
「大人しい……ね」
鈴が辟易しながら呟く傍で、ヴェルナーは自分の海鮮丼を頬張りながら呟く。
ソンネンとデュバルは気が付いていないが、彼女だけは知っている。
ロランが物陰から自分達の事をこっそりと見つめている事を。
けれど、ヴェルナー自身は特に気にしていないから何も言わない。
ちゃんと食事もしながら話が盛り上がってくると、彼女達の傍に見知った顔が近づいてきた。
「お? そこにいるのって、もしかして鈴か?」
「ア…アレク先輩っ!?」
それは、自分の分の食事をトレーに乗せて立っているアレクだった。
学内にある食堂は寮のとは違って学年ごとに分かれていないので、ここで会う事があっても不思議ではないのだが。
地味にまだまだ続くんじゃよ。
そして、今回は久々にサクの仲間達の紹介の番外編です。
クフ:縄跳びを持っている。サクとは違うのだよ! サクとは!
プロトタイプ・クフ戦術実証機:皆のお兄ちゃん。
プロトタイプ・クフ機動実証機:戦術実証機の双子の弟。
クフ飛行試験型:体に扇風機を括り付けている。当然、飛ばない。
クフ・カスタム:めっちゃ強くてかっこいい。皆のヒーロー。
クフ・フライトタイプ:小さい扇風機を足にくっつけてる。飛びません。
クフ重装型:重いけど固い鉄の男。
クフ試作実験機:サクとのハーフ。仲良し。
クフ複合試験型:背中にラジコン飛行機がくっついている。特に意味は無い。
マ・クベ専用クフ:やっぱり壺が好き。
ヴィッシュ専用クフ:皆の頼れるリーダー。
クフR35:神出鬼没でどこにでも出てくる。強いけど説明大好き。