インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
今後は、こんな事が無いように気を付けていきます。
食堂にて鈴が幼馴染であるソンネン達と食事をしながら話に花を咲かせていると、そこにまさかのルームメイトであり先輩でもあるアレクがやって来た。
既に見知った仲である一夏達や、同じ部隊の仲間であるデュバル達はそこまで驚きはしなかったが、まだ知り合ってから日の浅い鈴は普通に驚きを隠せないでいた。
「ア…アレク先輩っ!?」
「よっ。こんな所で会うなんて奇遇だな。しかも……」
鈴の周りにいる見知った面々の顔を見渡して、ニヒルに笑う。
「まさか、お前らとも知り合いだったとはな」
「こんにちわ、ヘンメ大尉」
「アンタも今日はこっちなんだな」
「……え?」
ここでまたもや鈴は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になる。
アレクとソンネン達が旧知の仲であることを知らないので、仕方がないと言えばそうなのだが。
「ね…ねぇ…デュバル」
「どうした?」
「もしかして…先輩とあんた達って知り合いなの?」
「ふむ…そうだな。知り合いというよりは……」
「仲間?」
「それが一番しっくりくるよなぁ~…」
「な…仲間…?」
予想外の言葉がヴェルナーの口から飛び出してきて、増々もって鈴の頭が混乱してくる。
「そんな所で立ち止まって、どうしたんだ砲術長?」
「お? 来たか」
唯でさえ頭がグルグルなってきている鈴に、更なる追い打ちを掛ける存在が登場。
小さな体でトレーを持ってやって来たのは、我等がロリっ子生徒会長のカスペンだ。
「ん? 今日は皆揃っての昼食か。賑やかでいいじゃないか」
うんうんと満足そうに頷くカスペンを見て、鈴は思わず一夏にそっと耳打ちをして尋ねた。
「ちょ…ちょっと! なんかすっごく小さくて可愛い子がいるんだけどッ!? あの子はなんなの? もしかして飛び級生って奴?」
「残念ながら違うぞ。ああ見えても、あの人は立派な18歳だし、ここの生徒会長でもある。しかも、ドイツの国家代表でもあるらしいぞ?」
「…………ひゃい?」
一気に大量の情報を聞かされて、遂に鈴の目が丸くなるだけでは収まらず、猫の口になってしまった。
「じゅ…18歳ってことは…三年生?」
「うん」
「国家代表? あの大国ドイツの?」
「あぁ」
「あんなに、小さくて可愛いのに?」
「それ…本人の前では口にしない方が良いぞ……地味に気にしてるらしいから」
一夏が一応の忠告をするが、時既に遅し。
ニコニコと眩しい笑顔でカスペンは鈴に向けて視線を送っていた。
「成る程…君が中国代表候補生の『凰鈴音』か」
「は…はい!」
この笑顔を見て、この場にいる全員が同じことを思った。
絶対に聞こえてただろ……。
「生徒会長として、転入生の情報は予め入手して確認はしているが…どうやら、情報以上に元気がありそうだな」
「きょ…恐縮です」
中国にて色んな大人達を見てきた鈴には一瞬で分かった。
カスペンは見た目通りの可愛らしい幼女ではない。
彼女だけは絶対に敵に回してはいけないと。
(あ…今、分かったわ…。このカスペンって人…千冬さんと雰囲気が物凄く似てるんだ……)
少しでも機嫌を損ねたら、どんな目に遭うか分らない。
慎重に慎重を重ねて対処をしなくては。
「カスペン大佐たちも今からお昼ですか?」
「折角なら、ご一緒しませんか? 席なら空いてますよ?」
「いいのか?」
「勿論ですよ。なぁ、一夏?」
「え? あ…あぁ……」
モニクとオリヴァーが誘い、トドメにデュバルが一夏に確認を取る。
有無を言わさない連携に、鈴は何も言えずに黙っていたままだった。
「ね…ねぇ……あの生徒会長さんも、ソンネン達と知り合いな訳?」
「みたいだぞ? なんでも、昔かなり世話になった恩人で、全幅の信頼を置いてるみたいだ」
「ふ…ふーん……」
鈴とソンネン達とは最初から知り合いという訳ではないので、自分の知らない交友関係があっても不思議じゃない。
事実、彼女が知らない間に簪やセシリアといった面々とも仲良くなっていたのだから。
「人に歴史あり…ってことなのかしらね……」
なんとも年寄り臭い台詞を吐いている間に、アレクとカスペンは空いている席に座っていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「大佐は何を頼まれたんですか?」
「これだ」
そう言ってオリヴァーに自分のトレーを見せつける。
小さなハンバーグにちょこんと山になったチキンライス。
ミニサイズのオムレツに、一口サイズのナポリタン。
「ハンバーグプレートだ」
(どう見ても、お子様ランチだろ……)
自慢げに見せてくるカスペンに、思わずツッコみを入れたくなる衝動に駆られる一夏。
だが、もしもそんな事をすれば一巻の終わりであることは彼自身が一番よく分かっているので、ここは必死に耐えてみせた。
(はっ…!?)
ここで一夏はある事に気が付いた。
幾ら自分が黙っていても、他の誰かがツッコんでしまったら意味が無いのでは?
急いでテーブルを見渡すと、ちゃんと空気を呼んで誰もツッコもうとはしていない。
流石は自慢の幼馴染&同級生たちだ。なんて頼りになるんだろう。
(いや…ちょっと待てよ?)
一安心した途端、一夏は忘れかけていた一つの可能性を思い出す。
この場には、天然が服を着て歩いているかのような存在である本音がいるではないか。
もしも彼女が空気を読まずに迂闊な発言をしたら……。
(絶対に場の空気が重くなる!!)
だが、一体どうやってこの事を本音に伝える?
自分がいる位置と本音がいる位置は離れているので、小声で伝えようにも伝えられない。
「すっごくおいしそうだね~」
「だろう?」
一夏の心配は杞憂だった。
本音は彼の想像以上に気遣いの出来る良い子だった!
ちゃんと皆に向かって親指を立ててアピールまでする完璧っぷり。
けれど、この油断が命取りだった。
「いや、それ完全にお子様ランチだろ」
まさかのアレクが禁句を堂々と言ってしまう。
流石にこの事態は予想していなかったのか、全員が彼女の事を一斉に見てしまった。
(((((((((((アンタが言うんかいっ!))))))))))))
一気に場の空気が凍りつく。
一体このままどうなってしまうのか…? 誰もがそう思った時、我等が生徒会長は大人な対応を見せてくれた。
「え? そうだったのか? メニュー表にはちゃんと『ハンバーグプレート』と表記してあったのだが……」
「そのまんまだと買いにくいだろうから、食堂側で名前を変えたんだろ?」
「成る程な……」
なんにも起こらなかった! 怒り狂ったり、泣きそうになったりなんて言うトラブルの類は一切起こらなかったのだ!
いたって普通の反応…と思いきや、ちょっとだけある事が起きた。
「全く…紛らわしい真似をしないでほしいものだな……」
可愛らしくほっぺたを膨らませてから少しだけ愚痴を言う。
見た目が見た目なので、ちっとも怖くない。
(あれ? もしかして、この人って普段はめっちゃ可愛い人だったり?)
鈴の中でカスペンの印象が一気に変わった。
鋼鉄の心を持つ美幼女から、IS学園のマスコットに。
ある意味、その認識は間違っていない。
「そういえば、転入生で思い出した。今年中…というか、今学期中にドイツから私の部下が一人、転入してくる予定になっているんだ」
「あいつか。そんな事を言ってたっけか」
「それってもしかして……」
「あの少尉さんスか?」
「あぁ。無事にドイツの代表候補生になれたのでな。こっちに来て貰う事にした」
ドイツの代表候補生。
それを聞かされれば、この場にいる他の候補生達が反応しない筈がない。
「また来るんですのね……」
「自分で言うのもアレだけど、一つの学年に候補生多すぎじゃない?」
「というか、今のIS学園には候補生やら代表やらが凄く多いと思う」
セシリア。鈴。簪。
それぞれ国の旗を背負った候補生としては、まだ先の話とはいえ、また候補生が増えるという事に対して諸手では喜べない。
候補生が増えるという事は即ち、強力なライバルが増えるという事と同義なのだ。
「大佐の部下か。モニク達は知ってるのかよ?」
「一応。向こうの基地でよく一緒に体を動かしてましたから」
「ちっこい体でよく頑張ってたよな~」
ドイツにいた頃、よくカスペンや千冬が立ち会う形でよく『彼女』と模擬戦を行っていたモニクとワシヤ。
流石に一年戦争を生き抜いた彼女達とは実力が違い過ぎるのか、二人は連戦連勝していた。
「今の彼女は、私の以前の専用機を引き継いで使用している。私や織斑先生が直々に鍛え上げた逸材だからな…手強いぞ?」
「「「「ごくり……」」」」
カスペンの挑戦的な笑みに、思わず候補生三人だけじゃなくて一夏も唾を飲んでしまう。
自分の姉が鍛えたという存在がどんな人物なのか、気になってしまうようだ。
「大佐にそこまで言わせるとはな……楽しみじゃねぇか」
「是非とも会ってみたいものだ」
「同じクラスになったりしてな」
「それは無いと思いますけど……」
まだ見ぬ少女に期待を膨らませるソンネンとデュバルとは違い、ヴェルナーは特大のフラグを立ててしまった。
これもニュータイプの成せる技なのだろうか。
オリヴァーが苦笑いをしながら柔らかくツッコむが、なんだか実際にそうなりそうな予感がしてならなかった。
「さっきから気になっていたのだが、凰鈴音と少佐達は知り合いなのか?」
「おっと。その説明をまだしてなかったな」
というわけなので、ここで適当に説明をすることに。
『適当』と言っても、元軍人の説明なので、かなり分かりやすい。
「小学生から中学までの仲とは……どうやら、少佐達は日本にて多くの友人を持ったようだな」
「まぁ…な」
照れくさそうにしながらも肯定するソンネン。
普段の彼女とのギャップがあるので、ソンネンに惚れているセシリアには一撃必殺の威力があった。
「はうっ!?」
「どーした?」
「な…なんでもありませんわ……」
惚れた弱みとは恐ろしい物である。
「あれ? さっきまでここにいた『あの子』たちはどこに行ったの?」
「あの子達って…サクのことか?」
「うん。いつの間にかいなくなってない?」
「そう言えば確かに」
つい先程まで、テーブルのすぐ傍でトランプをしていた筈なのに、話してしている間に忽然と姿を消していた。
そこまで慌てるような事ではないが、それでも一応念の為に食堂内を見渡してみる事に。
「あ、いた」
「どこどこ~?」
「あそこ。なんか手伝ってる」
ヴェルナーが指さす方を皆で注目すると、そこには至る所で食堂のおばちゃん達の手伝いをしているサクたちがいた。
特に、さっきまで負け続きだったシャア専用サクは他のサクたちの三倍は働いている。
伊達に赤くて角が付いている訳じゃない。
「あら? なにやら似たようなカラーリングのサクさんがやってきましたわよ?」
「赤というよりは真紅って感じがする…」
(ジョニー・ライデン少佐専用サクだ。やっぱり、元となった人物と同様にシャア大佐専用サクに対抗心でも持ってるのかな?)
開発者の一人としては、其処ら辺が気になってしまうオリヴァーなのだった。
『オレが真紅の稲妻、ジョニー・ライデンだ~! 赤い彗星と間違えるなよ!』
『悪いが、私は一度も君に間違われたことは無いのだが……』
『ムッキー! 今に見てろよ~! お前以上に皆のお手伝いをして、オレの方が凄いって思い知らせてやる~!』
『勝手にしたまえ』
完全に受け流されているジョニー専用サク。
怒りの余りに手足をパタパタとさせているが、普通に可愛いだけなので全く意味が無い。
「ほんと…奉仕精神の塊よね……」
「しかも、アイツ等は誰かの手伝いをすることを楽しんでいるからな。まるで忠義に熱い武士のような奴等だ」
武道の家系で剣道部に所属する身としては、あのような精神を持つ相手にはどことなく好感を持ってしまうのか。
箒は腕を組みながら、まるで自分の事のように何度も頷いていた。
「生徒会にも一体欲しいな…」
「言ってくれれば、いつでも差し上げますよ?」
「いいのか? それは助かる」
「これで、少しは大佐の負担も軽くなるな」
「私というよりは、虚の負担を軽くしてやりたいのだがな」
肘をテーブルに着きながらカスペンの頭に手を置くアレク。
こんな事が許されるのも、彼女達が硬い絆によって結ばれているからだ。
だが、鈴にはそれ以上に気にすることがあった。
(の…乗ってる…テーブルに乗ってる…!)
何が…とは敢えて言わないが、兎に角『乗っていた』。
アレクの巨大な果実がテーブルに乗って、圧倒的な存在感を放っていた。
しかも、制服の前のボタンが閉じきれないのか、上の数個が開きっぱなしになっていて、完全に谷間が丸見えになっていた。
本人は全く気にしていない様子だが。
勿論、この中で唯一の健全な男子である一夏は、チラチラとではあるが谷間に何度も視線を向けていた。
そうして、かなり賑やかとなった昼休みは過ぎていくのだった。
自業自得と分かっていても、久し振り感が否めない…。
本気で次回以降は気を付けよう…。