インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
この際、プレバンでもいいので出してほしいです。
放課後になり、デュバル達603メンバーは一夏達を伴って第3アリーナへと訪れていた。
その目的は、一夏のIS訓練である。
今の彼は絶対的に知識も経験も不足している。
勉強の方はオリヴァーなどがなんとかしてくれているが、ISの特訓ともなればそうはいかない。
操縦に慣れた者達で一から教えていくしかないのだ。
「よし。展開完了したな?」
「おう。少し前までは白式を出すのに10秒近くかかってたけど、ようやく5秒以内に出来るようになったよ」
「オレ等からすれば、それでもまだ遅い方なんだけどな…」
「そ…そうなのかっ!?」
ソンネンがチラっとセシリアの方に目配せをする。
代表候補生である彼女の口から言った方が分かり易いだろうと判断したからだ。
「基本的に、代表候補生や国家代表ともなれば、自身の専用機の展開に1秒も掛かりませんわ」
「マジでッ!? つーことは…文字通り一瞬で出せるって事なのか…?」
「そうなりますわね。更識副会長やカスペン会長程になれば、瞬きした瞬間には展開完了している筈ですわ」
「それもう『装着』じゃねぇよ…完全に変身だよ……」
「人によっては、そのように捉える人もいるみたいですわね」
ふとした瞬間に目の前で機械の鎧を身に纏うのだから、確かに『変身』と呼ばれても違和感はない。
「けど…意外でしたわね」
「何がだ?」
「箒さんがISを借りれたことが…ですわ。この時期に使用可能になるだなんて、本当に奇跡に近いですわよ?」
セシリアがそう呟きながら見つめる先には、日本製第二世代型量産IS『打鉄』を身に纏った箒が立っていた。
「ふむ…こうしてISに本格的に乗ったのはこれが初めてだが…悪くないな」
「その打鉄は、カスペン大佐のISの原型機にもなっているんですよ」
「そ…そうなのか?」
具合を確かめるように手足を動かしている箒の横では、ISスーツ姿のオリヴァーが色々と説明をしていた。
どうやら、今回ISを借りれたのは箒だけだったようだ。
「本当に運が良かったですね。まさか、箒さんの目の前でキャンセルが出るだなんて」
「あれには私自身が一番驚いたよ。偶然とはいえ、このチャンスはちゃんと活かさなければ」
「そうですね。一般の生徒が授業以外でISに乗れる機会は本当に限られますから。少しでも感覚を掴めるようにしないと」
まるで自分の事のように説明するオリヴァーであるが、まだ彼女は知らない。
己の『愛機』もまた、着々と目覚めの時を待っているのだと。
「では、まずは基礎的な所からやって行くぞ。何事においても、基礎の反復練習こそが最も大切なのだ」
「それぐらいは分かってるよ。俺だって伊達に剣道をやってたわけじゃないんだぜ?」
「暫くは離れていたがな」
「そいつを言われるとぐぅの音も出ない…」
実際、一夏が竹刀を再び握ったのは千冬と一緒に孤児院に引っ越してからだ。
それまではずっと竹刀は押入れの中に仕舞いこんであった。
「まずはイメージだ。頭の中で宙に浮くようなイメージをするんだ」
「えっと……」
既にヅダを展開済みのデュバルが試しに目の前で軽く宙に浮いて見せ、一夏も同じように浮くのを待っている。
どれだけ掛かるかと思いながら眺めていると、数秒ほど経過してからようやく白式の足が僅かに地面からフワリと離れた。
「まずまずと言ったところだな」
「厳しいなぁ~…」
「当たり前だ。宙に浮くのは基本中の基本。そこから更に全身をしたりするだけでなく、速度を上げての高速移動、更には攻撃もしなくてはいけないのだかからな。特に、一夏の白式は近接武装しか搭載していないんだ。移動技術の向上は今後の必須科目だと思え」
「うへぇ~…」
剣一本だけしかないのなら、やる事も単純明快で助かる…なんて思っていたのが運の尽き。
寧ろ、やれることが限定されているのだからこそ、学ぶことは多いのだった。
「ここからは、この前のおさらいだ。私について来い。別に急がなくてもいいからな」
「その『急ぐ』って事自体、今の俺には難しいんだけどな……」
もし仮にデュバルのヅダが全速力を出せば、現存しているISでは絶対に追従できないので、冗談でもやめてほしいと思う一夏だった。
二人が宙に浮きながら離れていくのを見て、セシリアも訓練の準備に入る為にレーザーライフルを取り出す。
「向こうは向こうでやっているようなので、こちらも始めますか」
「そうね。まずは、私と模擬戦でもやってみる?」
「デメジエールさんにご指導して頂いたというモニクさんとならば不足は有りませんわ」
敬愛するソンネンに教え子を自称するモニクとは、一度は試合をしてみたいと思っていた。
しかも、彼女の愛機がデュバルと機体と同型であるのならば尚更だ。
千冬すらも褒めるほどの実力を持つ少女…代表候補生として、その実力を確かめずにはいられない。
「お~お。二人の間に火花が散ってますなぁ~」
「はっはっはっ! やる気があるのはいい事じゃねぇか!」
「「…………」」
「お? なんで二人してオレ様の事を見るんだ?」
箒とワシヤはセシリア達の事が不憫でなかった。
元より、戦車に青春の全てを注ぎ込んだと言っても過言じゃないソンネンに女心を理解しろという方が難しいのだが。
寧ろ、女になってから増々、女心を理解出来なくなっている節すらある。
「こればかりは、オレ達じゃどうしようもないからなぁ~」
「そうだな……哀れな…」
箒も強ち他人事ではないので、モニクとセシリアの気持ちはとてもよく理解出来た。
「…で、さっきからずっと気になっていたのだが……」
「ん? どうした?」
「ヴェルナー…その水色のラファールがお前の専用機なのか?」
さっきから目の前の光景を楽しそうにしながら眺めていたヴェルナーの体には彼女専用にカスタマイズされたラファールが装着されている。
見た目だけで言えば、学園にも配備されているラファールとほぼ同じである。
「正確には違うな。こいつはあくまでも『管制・機動ユニット』に過ぎないんだ」
「か…管制・機動ユニット…? なんだそれは?」
幾ら姉が開発者だからと言って、箒自身はそこまでISの知識にそこまで詳しいという訳ではない。
いや…ISに詳しい者でも、こればかりは理解するのは難しいだろう。
それ程までにヴェルナーの専用機は非常に特殊で特異なのだ。
「どうせなら、見せた方が早いかもしれないよ? ホルバイン少尉」
「そうかもな。コイツの場合は、口で説明するのは難しいしな」
それを聞いて、セシリアがバッっとヴェルナー達の方を向いた。
モニクと睨み合いをしながらも、律儀に耳は彼女達の方に向いていたらしい。
「ヴェルナーさんの専用機が見れるんですのッ!?」
「んん~? アンタも見たいのかい?」
「勿論ですわ! その水色のラファールだけが全てではないとは思っていましたけど……」
「へぇ~…遂に見せちゃうんだ。アレを見て、どんな反応をするのかしらね?」
結局、セシリアとモニクも一緒に見学をする事になった。
好奇心には勝てないという事か。
「よっし…ちょっち離れてな」
全員がヴェルナーから少し距離を取る。
ソンネンはセシリアが車椅子を押してから移動させた。
「……来な。相棒」
ヴェルナーが宙に浮き、空中で体を横にする。
すると、彼女のラファールに追加武装のような形で様々なユニットが接続されていく。
下半身全体を覆うようにドッキングし、右腕は丸々パーツが換装された。
唯一、自由に動かせる左手でユニットを掴んで、安定性を向上させる。
「これがオレの専用機。その名も『ゼーゴック』だ」
「なんなんですの…これは……」
セシリアが目を大きく見開いて驚愕するのも無理はない。
未だ嘗て、このような形状のISがあっただろうか。
まるで、ISが別の何かに搭乗しているかのような機体は、それだけで絶大なインパクトがあった。
「技術屋。説明頼むわ」
「了解です」
オリヴァーにとって、このゼーゴックはかなり記憶に残っている機体でもあるので、詳しく説明できる自信があった。
「この機体がこんな形状をしているのは、偏に『インフィニット・ダイバー・システム』通称『IDS』を搭載しているからなんです」
「IDS…? それはなんなんですの?」
「簡単に言えば、衛星軌道上から大気圏にそのまま突入し、地上や海上、空中の敵に対して奇襲攻撃を行う事を目的とした特殊兵装です」
「「はぁっ!?」」
耳を疑った。
大気圏に突入してからの奇襲攻撃?
一体何だそれは? どう考えても、無謀極まりない行為である。
「ISで大気圏突入なんて…そんな事が出来る筈は……」
「普通はな。けど、このゼーゴックはそれを前提にしたシールドバリアの出力調整とかをやってるから問題は無いんだぜ」
「大気圏突入を前提にしたISだなんて……」
確かに、ISは宇宙空間での行動を目的としたパワードスーツではある。
だがしかし、そのまま大気圏に突入するだなんて誰が考え付くだろうか?
「しかも、右腕そのものが別の物に換装してあるじゃありませんの。それは何ですの?」
「これはセンサーユニットです。ゼーゴックは特殊な運用方法故に、腕一本をセンサーに変えないといけないんです」
「もう既にお腹一杯ですけど…武装は一体どんな物が?」
「一応、拡張領域内にラファールの基礎武装は一通り格納してあるみたいですけど、それはあくまでも緊急用ですね。主武装は別にあります」
「それは…?」
「大量兵器輸送用コンテナ『LWC』に第1から第3までの兵装を装着する事で攻撃力を得ます。説明します?」
「いえ…今は結構ですわ……」
ヴェルナーのゼーゴックはこれまでのISの常識を根底からいい意味で破壊している機体だ。
理解が追いつくには時間が掛かるのは必然だった。
「これも簡単に言ってしまえば、大型ミサイル4基と大量のロケット弾と、高出力の拡散ビーム砲だ」
「聞くだけでも過剰な火力な事が分かるな……」
武器の知識に乏しい箒でも、それがいかに異常なのかがすぐに分かる。
遥か空の向こうからいきなり、そんな物を引っ提げて奇襲なんてされれば、どんな猛者でも一溜りも無い。
それ以前に、誰もそんな所から敵が来るだなんて想像もしていない。
「こいつは本当に特殊だからな。通常形式の試合にゃ絶対に出せないんだ」
「だろうな……」
「仮に出ても、対戦相手は困惑するだろうな……」
因みに、ゼーゴックは正面から戦っても相当に強い。
機動性と火力だけならば他の機体にも負けてはおらず、その性能の高さをドイツの地にて見事に証明している。
「うん。実に気持ちのいい反応をしてくれたな!」
「初見で驚かない方が無理あるけどな…」
「それでも、ゼーゴックは本当にいい機体ですよ。ボクが保証します」
どんなに不可思議な機体でも、オリヴァーは先入観などに捉われずに正しく評価をする。
それが彼女の信念であり、信条でもあるから。
結局、ゼーゴックの迫力に負けて、その日は訓練どころではなくなってしまった。
一夏とデュバルが空中浮遊訓練から帰ってきた時、セシリアと箒は何故かすごく疲れた顔をしていたという。
キリが良さそうなのでここまでで。
もしかしたら、次回も近いうちに書くかもしれません。
余り期待をせずにお待ちください。