インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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三人の機体の本格始動はあと少し。

その前に、この作品における重要なキャラの一人である『あの人』に登場してもらいます。






闇の中で胎動する宿命

 三人が束から専用機を受領した帰り道。

 帰りもまた束特製のニンジン型ロケットにて公園まで送って貰い、そこから孤児院へと帰っていた。

 思っているよりも時間は経っていなくて、まだ昼の三時を少し過ぎた辺り。

 帰るにはまだ早いような気もするが、かといって他に外での用事なども無いので、ここは大人しく帰路につくことに。

 

「なんだか、とんでもない事になってきやがったなぁ……」

「そうだな。まさか、一夏の誘拐を企む者達がいようとは……」

「しかも、相手はかなりデカい組織。こりゃ、一筋縄ではいかないな」

 

 余りにもいきなり過ぎる展開に、三人は大なり小なり困惑をしていた。

 だが、軍人時代は突発的な事件なんて日常茶飯事だった。

 それを考えると、彼女達がどれだけ、この世界で一般的な少女としての生活に馴染んできたかが伺える。

 

「しかも、それに対抗する為に『あんな物』まで用意してやがってたとはな……」

「驚きはしたが、それは嬉しい意味での驚きだったな」

「これで…オレ達も晴れて一般人じゃ無くなっちまった訳か」

 

 そう呟くヴェルナーの首には、眩しく光る銛の先端を模したペンダントがあった。

 

「フッ…コレがゼーゴックの待機形態だなんて、皮肉なもんだな……」

「ヅダの待機形態は青い羽根飾りだ」

「お前らはいいじゃねぇか。ヒルドルブなんて、この車椅子が待機形態なんだぜ?」

「そうだったな」

「流石にそれには驚いたよな。でも、丁度いいんじゃないか? 前の機能は失われてないんだろ?」

「一応な。本当の意味でISになっちまったからな……」

 

 ソンネンが座っている車椅子の形状自体は全く変化はしていないが、ヒルドルブの待機形態として束に改造されたことにより、より一層、車椅子という存在から離れていってしまった。

 

「恐らく、この車椅子は最初から、ISに改造する事を前提に設計されていたのかもしれないな」

「そう言えば、その万能車椅子も束の作品だったな」

「かなり長い間使ってるから、すっかり忘れてたぜ」

 

 束お手製の車椅子を使い始めてからかなりの年月が経っているのだが、まだまだ普通に現役で動いている。

 実は、定期的に束が密かにやって来てメンテをしてくれているのだが、それでも本当に息が長い。

 

「ソンネンは物持ちがいいんだな」

「そう…なのか? 自分じゃよく分らん」

 

 道には誰にもいないのをいいことに、割と危ない話を平気でする面々。

 といっても、ちゃんと伏せるべき所は伏せているのだが。

 

「で、ついでにこんなもんまで貰っちまったしな」

「これまた、束が自ら作り上げた『特製小型シミュレーター』か」

「まだ一夏はドイツには行ってないからな。オレ達が動き始めるのは、あいつが向こうに行く時と同じ日だ」

「まず間違いなく、休日か祝日の日に行くだろうから、その点に関しては大丈夫だな」

「となれば……」

 

 ソンネンの膝の上に置かれた、紙袋を見つめる。

 

「今はとにかく、このVR擬きで特訓するしかないわな」

「あぁ。流石にこの周囲で実機を使った訓練は出来ないしな」

「へへ……やっぱり、オレ達みたいな荒くれ者にはこれぐらいが丁度いいって事だよな」

 

 そこで全員が黙ってしまう。

 別に悲壮感が漂っているわけではない。

 寧ろ逆で、三人の目はどこまでも闘志に燃えていた。

 

「時間は余り残されてはいないだろうが……」

「オレ達にやれる事は全力でやろうぜ」

「了解だ。少佐殿」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、三人はコツンと拳をぶつけた。

 前世においては共闘は愚か、こうして出会って会話をすることも無かった三人が、こうして同じ世界、同じ場所に集って一つの目的の為に力を合わせる。

 しかも、三人は同じ艦に乗っていたにも拘らず…だ。

 ただ、乗艦した時期が違っただけで、その根底にあった目的は全くの同じだった同志達。

 もう迷いはない。後はもう、進むだけだ。

 

「第603技術試験隊…再結成ってか?」

「たった三人だけだけどな」

「いいではないか。ここにはいない彼らの分まで、今は私達がその名を背負っていこう」

 

 同時に頷き、一緒に空を見上げる。

 運命の日は……近い。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 某国 女性権利団体地下施設

 

「や…やめなさい! 貴女は自分が何をしているのか分っているのっ!?」

「ちゃぁぁんと分っているさ……。オレはただ、与えられた自分の仕事をしているだけだ」

 

 そこは格納庫と思われる場所だが、辺りに漂っているのは鉄と油の匂いではなく、血と尿の匂いだった。

 

 ISスーツを着ている成人女性が恐怖に震えながら尻餅を付いて目の前で銃を構えている少女を見ている。

 彼女に銃を向けている少女は、病的なまでに肌が白く、銀色の眩しい髪がよく映える。

 間違いなく美少女と言っても差し支えない彼女ではあるが、その左目につけている眼帯と、全身から溢れ出る猛々しい雰囲気のせいで、並の人間では絶対にお近づきになろうとは思わないだろう。

 

「オレの任務はな……『女性権利団体にスパイとして潜り込み、所有している情報とISと資金を全て強奪した上で、構成員を全て皆殺しにする』ことなんだよ」

「なん…ですって……!? じゃあ、入団時に言っていた忠誠の言葉や姿勢なんかは……」

「全部、お芝居に決まってるだろうが。誰が、お前らみたいな糞虫共に忠誠なんて誓うかよ」

「騙したのね……!」

「騙される方が悪いんだよ。つっても、お前らみたいな連中は騙されても文句とか言えないと思うけどな」

 

 自分の中にある鬱憤を吐き捨てるかのように、その場に唾を吐き出す。

 唾は、近くに転がっている女の部下の遺体の顔にかかった。

 

「こ…こんな所で終わってたまるもんですか! 私達には、神聖なるISを使って、この世界を選ばれし民である女だけの楽園へと変える偉大なる使命があるのだから!!」

 

 なんとかして立ち上がり、一番近くにあるIS『ラファール・リヴァイヴ』に触れようと試みるが、その目論見は呆気なく少女の持つ銃から放たれた弾丸によって阻まれる。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 銃弾は女の右腕と正確に撃ち抜き、その肢体をコンクリートの床へと投げ出させた。

 

「ま…まだよ……まだ…私は……」

「はぁ……性根が腐ってやがる癖に、こうも往生際が悪いと、本気でテンションが下がっちまうな」

 

 必死にリヴァイヴへと震える腕を伸ばしている女を追い越し、逆にそのリヴァイヴに搭乗してしまう少女。

 そのまま、リヴァイヴを纏った状態で女の事を無感情の目で見降ろす。

 

「篠ノ之束には本気で同情するぜ。自分の世紀の発明品を、こんなゴミにいいように利用されちまってるんだからな」

「篠ノ之博士こそが我ら女性を導く新世界の神!! その偉大なお方を侮辱することは許さない!!」

「侮辱なんてしてねぇよ。寧ろ、可哀想って思ってるよ」

 

 その手にアサルトライフルをコールして、銃口を女へと向けた。

 先程までの対人用の銃とは違い、IS用の銃を生身の人間がくらえば、文字通り一溜りも無い。

 肉片を飛び散らせながら木端微塵になるだろう。

 

「じゃあな。革命家ごっこの続きは、お仲間達と一緒に地獄でするんだな」

「なんで! なんで理解しようとしない!! お前だって私達と同じ『女』だろうに!!」

 

 その言葉を最後に、一発の銃声と共に女の脳天は粉々に消し飛んだ。

 生々しい肉音と共に、弾け飛んだ脳が辺りに散らかる。

 

「生憎と、体は『女』でも、中身は立派な『男』なんだよ」

 

 心から詰まらなさそうにしながら、大きな溜息を吐きながらリヴァイヴから降りると、そこにヒールの音を鳴らしながら他の女性がやって来た。

 警戒をしていない様子から、どうやら仲間のようだ。

 

「お見事。まさか、たった半年でこいつらを壊滅させるなんてな」

「どんなに粋がっていても、所詮は権力を持っただけの素人集団だ。外からならともかく、中から殲滅することは非常に容易い」

「それにはアタシも同感だが、それを実際に出来ちまうのは、また別問題だと思うぞ?」

「……そうかもな」

 

 女性から煙草を一本貰ってから、彼女の持つライターで火を着けて貰う。

 煙を肺一杯に吸ってから、大きく吐き出す。

 

「仕事終わりの一本は最高だな……」

「まだガキの癖に、すっかり煙草の味を覚えやがって」

「はっ。テロリストが常識人ぶって法律を守ってもしょうがないだろう」

「それと健康問題は別だろうよ。ちゃんとしとかないと、いざって時に体が動かねぇぞ?」

「お前……顔に似合わず意外と真面目だよな」

「そっちが滅茶苦茶なだけだっつーの。ったく……」

 

 なんて言いつつ、自分も同じように煙草を咥えてから火を着ける。

 

「おいおい。健康に悪いんじゃなかったのか?」

「大人はいいんだよ」

「あっそ」

 

 煙草を吸いながら、少女は辺りを見渡す。

 この施設にいる人間は、ざっと数えても100人以上はいた。

 普通なら一人で殲滅するなんて不可能に近いかしれないが、ここにいた連中はいずれもが自分の能力を過信し、自分達の命が狙われているなんて少しも考えていない。

 しかも、ISに依存しきっている為、全てが素人以下。

 一流の『軍人』である少女には非常に簡単な任務だった。

 

「こいつらの信用を得るまで半年掛かったが、そこからは本当に楽勝だったな」

「アタシが言うのもなんだけどよ、お前ってえげつないよな」

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

 加えている煙草が短くなったので、足元にある血溜りで火を消す。

 

「で、今度あるっていう、第二回モンドグロッソで行うブリュンヒルデの弟を誘拐する作戦の準備は進んでいるのか?」

「当たり前だ。後は、お前が戻ってくるのを待つだけになってる」

「そうか。なら、早く戻らないとな。流石に、自室のベッドが恋しくなってきた」

「なんなら、今晩はお姉さんが体を使って直々に慰めてやろうか?」

「そういうのは、自分の恋人にしてろ」

「お前の事も嫌いじゃないんだけどな」

 

 少女の肩に腕を回して抱き着く女性だが、少女は嫌がる素振りを見せず、そのまま普通に受け入れていた。

 

「そうだ。お前に報告しておかないといけないことがあるんだった」

「なんだ?」

「今度のモンドグロッソの開催国はドイツになるんだが、その会場の警備にお前のご同輩の部隊が配備されるらしいぞ」

「……シュヴァルツェ・ハーゼ隊か」

「懐かしいか?」

「冗談でもそんな事は言うな。あんな、軍隊の真似事しか出来ない部隊なんぞ、有象無象の雑魚でしかない」

「お前なら、きっとそう言うと思っていたよ。なんせ、自分から軍を抜けてコッチの仲間になったぐらいだからな」

「あんな連中の元にいるよりは、こっちにいたほうがずっとマシだと判断したからだ」

「今はまだそれでいいさ」

 

 女性が少女から離れ、端末にて今回の成果を確認する。

 

「しっかし、見事に根こそぎ奪ったな。お前、前世は実は盗人だったんじゃねぇのか?」

「……盗人ね」

 

 昔の事を思いだしたのか、少女は少しだけ苦い顔をしたが、すぐに元の表情へと戻った。

 

「じゃあ、そろそろマジで戻ろうぜ。こんな血生臭い場所に、これ以上長居はしたくないからな」

「了解だ。ならば、最後の仕上げと行こうか」

 

 少女は、密かに自分のデータをインプットして、少しでも運び易くする為に一時的に己の物とした格納庫内にある全てのISを待機形態にしてから、それらを全て女性に渡した。

 

「これでまた戦力増強だな。盤石の態勢で作戦が出来る」

「あぁ。では、後は全ての証拠を消す為に、ここを自爆させるだけだな」

 

 少女は、自分の持っている小型の端末を操作し、画面をタップする。

 すると、いきなり赤い明かりで染まり、アラームが鳴り響く。

 同時に、自爆装置が作動したことを知らせる機械音声のアナウンスが聞こえてきた。

 

「帰ってからもまた大変だぞ。まずは報告からだな」

「急に帰る気が失せてきた」

「そう言うなって。なぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェデリコ・ツァリアーノ中佐殿?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、人知れず女性権利団体は歴史の表舞台から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ソンネン最大のライバルにして宿敵であるツァリーノ中佐の登場です。

彼女のイメージは、艦これのアイドルである『ヲ級』ちゃんの素体です。

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