インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
パイロットもそれなりに人気があると思いますが、それ以上に機体の方が圧倒的な人気を誇ってますね。
原作のせいで不遇な印象を受けますけど、実際にはとてつもない高性能機ですから。
それを上手に再現出来ればいいですね。
時系列的には臨海学校の少し前ぐらいです。
早朝 IS学園 職員室
殆どの教員達が今日の授業の準備や予定の確認などを行っている最中、ひときわ大きな声が室内に響き渡った。
「ミーシャ先生! こんな朝から何をやってるんですか!?」
「何って……」
『ミーシャ』と呼ばれた女性は、自分の手に握られているスキットルと叫んできた女性の顔を交互に見る。
「アルコール消毒?」
「世間一般では、それは『飲酒』って言うんです!」
「そうとも言う」
「そうとしか言いません!!」
大声を上げている女性…一年一組副担任である山田真耶は、これだけ叱っているにも拘らず、何食わぬ顔でスキットルの蓋を開けて酒飲みを再開し始めるミーシャに眉間をピクピクとさせる。
「まぁまぁ。山田先生、少しは落ち着け。ミーシャが朝っぱらから酒を飲むなんて、もう日常茶飯事じゃないか。そこまで大声を出さなくても……」
「織斑先生は黙っててください……!」
「ハ…ハイ」
一年一組担任の織斑千冬は、後輩の剣幕に完全に飲まれて萎縮してしまった。
これでも嘗てはモンドグロッソと呼ばれた大会で二連覇という偉業を果たした猛者なのだが、それでもマジ切れした後輩には敵わない。
「貴女は仮にも教師なんですよっ!? その自覚はあるんですかっ!?」
「それぐらいはあるさ。ちゃんと授業はしてるだろ?」
「そ…それは……」
この叱られている女性『ミハイル・カミンスキー』、通称『ミーシャ』もまた、このIS学園の教師の一人である。
ウェーブのかかったプラチナブロンドの長髪で、タレ目な太眉の美女。
スタイルも千冬や真耶に負けず劣らずのナイスバディで、飲酒癖がある事も含め、学園内ではかなりの人気を持っている。
千冬や真耶とは10代の頃からの友人同士で、ISにもその頃から関わってきた。
その実力も申し分なく、一部では千冬にも匹敵すると囁かれている程。
「全く……いい加減にしないと、本当に急性アルコール中毒になっちゃいますよ?」
「オレだけにそれを言うのかよ。千冬だって同罪だろ?」
「織斑先生も人の事は言えませんけど、少なくとも職場でお酒を飲むような事だけはしてません!! だから、ギリギリセーフです!!」
「え? 私って真耶からそんな風に思われてたの?」
思いがけず、後輩の本心を知ってしまった千冬は、地味に落ち込んでしまった。
「おいおい。千冬の奴が落ち込んじまったぞ?」
「えっ!? あ……ごめんなさ~い!!」
「いや…いいさ……。一夏からも酒を飲む量を少なくしてくれと、常日頃から言われ続けていたからな……いい機会さ……ハハハ……」
目からハイライトが消えた千冬が、職員室の隅っこで足を抱えて座り込み、ズ~ン…という効果音を出しながら暗くなった。
「あ~あ。オレ知~らね」
「全部、ミーシャ先生のせいじゃないですか!」
「責任転嫁はよくないぞ」
「事実でしょうが……!」
こっちが何を言っても、のらりくらりと躱される。
いつもの事とはいえ、やっぱり慣れそうにない。
「はぁ……放課後には一年生の専用気持ちの皆と実戦形式の模擬戦をするんでしょう? ちゃんと、それまでにはアルコールを少しでも飛ばしておいてくださいね?」
「へーい。んぐ…んぐ…んぐ…プハァ~…♡」
「人の話、聞いてましたっ!?」
聞いてません。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
放課後の第3アリーナ
そのステージ内には既に、それぞれの専用機を身に纏った状態で待機している代表候補生達+αがいた。
イギリス代表候補生『セシリア・オルコット』
中国代表候補生『凰鈴音』
フランス代表候補生『シャルロット・デュノア』
ドイツ代表候補生『ラウラ・ボーデヴィッヒ』
そして、特例として専用機を与えられた世界唯一の男性IS操縦者の『織斑一夏』
見るものが見れば、そうそうたるメンバーである。
本当ならばここにもう一人加わる予定だったが、彼女は専用機を所持していない為、辞退している。
「これから、あの『ミーシャ姉』と戦うのか……。なんか緊張してきた……」
「あたしもよ。昔から飄々としてる人だったけど、その実力は折り紙付きだもんね……」
「つ…遂にこの日が来たんですのね……!」
「今の僕達でどこまで追従できるのか……」
「試される事となるだろうな……」
ここにいるメンバーも、ミーシャが一筋縄ではいかない事を知っている。
普段ならば無駄に自信に満ち溢れている彼女達も、今回ばかりは自信が無いようだ。
「そういや…ミーシャ姉の専用機って知らないな……」
「噂じゃ、武装てんこ盛りの強襲用の機体だって聞いてるけど」
強襲。
酒をこよなく愛し、のんびりとしているミーシャとは遠く離れた単語。
だからこそ、全く想像が出来ない。
そんな風に話していると、人間用のピットの出入り口から、水色のISスーツを着た状態のミーシャが歩いてきた。
その顔は真っ赤になっていて、その手にはいつものようにスコッチの入っているスキットルが握られている。
「よぉ。待たせたな」
「ミーシャ姉……また酔ってるのか?」
「いいじゃねぇか。どうせ、あと5年もすれば、お前らだって絶対に飲むようになるんだからよ」
「それを今、言っちゃうわけ……?」
半ば呆れながらジト目になる一夏と鈴。
それに対し、セシリアとシャルロットとラウラは、一気に緊張が走る。
『ミーシャ。準備はいいか?』
「おう! いつでも大丈夫だぜ!」
『少しは手加減をしてやれよ? お前が本気になったら、試合にすらならないんだからな』
「ははは! それはこいつら次第だろ! 篠ノ之! 聞こえてるかっ!?」
『は…はい!』
「ちゃ~んと見て勉強しとけよ! 見稽古ってのも大切だからな!」
『分りました! ミーシャ先生の雄姿、しかとこの目に焼き付けて、少しでも己の糧にしてみせます!』
「いい返事だ! それじゃあ……」
瞬間、一気にミーシャの纏う雰囲気が変わる。
先程までは、近所にいる酒が好きな優しい年上な美人のお姉さん的な雰囲気だったが、今は全く違う。
アリーナ全体を覆い尽くすかのような、圧倒的な『闘志』。
今までに一度も感じたことの無い程のプレッシャーが五人に襲い掛かる。
「行くとするか」
スキットルを目の前に翳すと、いきなり光を放ち、量子化しながらミーシャの体を覆い尽くしていく。
頭、腕、体、腰、脚と装甲に覆われていき、光の収束と共に彼女の専用機が姿を現す。
「それが……」
「オレ様の専用機『ケンプファー』だ」
全身を覆い尽くす流線型の青いボディに、頭頂部からは一本の大きな角と迫力ある
その威容だけでも十分に迫力があるのに、その全身に装備された武装の数々がその迫力を更に増幅させる。
「ショットガンにシュツルム・ファウスト……」
「あの背中のはジャイアント・バズだよね……」
「よく見たら、腰のアタッチメントに予備のショットガンがありますわ……」
「なんなのよっ!? あの過剰なまでの武装の数々はっ!? あの装備だけで一部隊は愚か、下手すれば基地一つぐらいは壊滅出来るわよっ!?」
「しかも、まだ拡張領域の中に装備がある可能性もあるんだよな……」
一夏の発言で、少女達に戦慄が走る。
特にシャルロットは、自分と同じ長所を持つ相手に、どれだけやれるかと考えながら冷や汗を流していた。
「さぁ…来な。ガキンチョ共。今から優しい優しいミーシャ先生が……」
ショットガンを構えながら、ミーシャは装甲の下で不敵な笑みを浮かべる。
「『本物の闘い』ってやつを教えてやる……!」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
(ど…どうする……どう攻めればいいんだ……!)
ミーシャは自分達の下にある地面に立ったまま動かない。
ケンプファーもISである以上は飛行機能も備えている筈だが、それすらもしようとしない。
ミーシャは待っているのだ。生徒達が自分達から動き出すのを。
どんな風に自分に攻撃を仕掛けてくるのかを。
(い…いや。あのミーシャ姉にそもそも、下手な小細工なんて通用するのか? だったら……!)
一夏は、その手に握る『雪片弐型』を構え、自分の専用機『白式』の最大速度で突撃する!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「「「「一夏(さん)っ!?」」」」
彼の余りにも思い切った行動に、少女達は目を丸くする。
それでも一夏は全く止まらず、真っ直ぐにミーシャへと向かっていく。
「ほぅ……? 一番手は一夏か。いいぜ……思い切りのいい奴は嫌いじゃない。けどな!」
「なっ……!」
完全に自分の距離まで迫った一夏は、渾身の力を込めて雪片で斬り掛かるが、その一撃はミーシャが体を横に反らしただけで呆気なく避けられてしまう。
「猪突猛進過ぎるぞ!」
「しまっ……ぐあぁぁぁっ!?」
至近距離でミーシャが手に持つ『ZUX-197 ヤクトゲヴェール』ショットガンを撃たれ、大きなダメージを受ける。
それにより大きく体を仰け反らせるが、なんとか体勢を立て直してから反撃として雪片を横薙ぎする…が、そこにはもうミーシャの姿は無かった。
「ど…どこだっ!?」
「一夏さん! 後ろですわ!!」
「なにっ!?」
セシリアの声で咄嗟に後ろを向くが、其処には既にショットガンを構えたミーシャの姿が。
「こうなったら『零落白夜』で!」
「出来ると思うか?」
「え?」
白式の必殺の一撃である『零落白夜』
雪片の刀身が開いて、そこから放たれる光の刃が全く出現しない。
それどころか、刀身自体が全く展開不能になっていた。
「雪片をよく見てみな」
「これは……!」
先程撃ったショットガンの弾丸が雪片の隙間に入り込み、零落白夜の発現を阻止していた。
それを見てようやく、一夏は自分がしてやられたと知った。
「あのショットガンの一撃は……」
「零落白夜を防ぐ為に撃ったもんだ! そうすれば後は!!」
一瞬でショットガンを収納し、ビームサーベルに切り替えた。
シャルロットも得意とするスキル『
「全く脅威じゃなくなる!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
すれ違いざまに放たれた目にも止まらぬ連続斬撃により、一気に白式のSEは無くなってしまう。
「まずは一人」
「手も足も出なかった……」
強いとは思っていた。
けど、ここまで勝ち目がないとは思っていなかった。
一夏は改めて、自分の尊敬する人の片割れの偉大さを思い知った。
「お前はピットに戻ってろ。危ないからな」
「は…はい……」
トボトトと歩きながら、一夏は猫背になりながらピットへと戻っていった。
「一夏さんが……」
「秒殺された……」
時間にして、ほんの数十秒の出来事。
だが、その十数秒間で理解をしてしまった。
自分達の目の前にいるのは、想像を遥かに超える強者なのだと。
「今ので分かっただろ。一人一人で来たって無駄だ。全員揃って掛かってきな」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ビットの動きが単調だぞ! それじゃあ、いい的になるだけだ!」
「わ…私のビットがあっという間に全て撃墜されたっ!?」
セシリアはショットガンによる範囲攻撃により自慢のビットを蜂の巣にされた挙句……。
「コイツでトドメだ!」
「キャァァァァァァァァァァァァッ!?」
ビットの制御で棒立ちになっているところをシュツルム・ファウストの二連射によって呆気なく撃墜。
「龍砲が全く当たらないっ!? なんでぇっ!?」
「お前は無意識の内に衝撃砲を撃つ場所を目で見ちまってるんだよ! そんなんじゃ、折角の長所を完全に潰しちまってることになるぞ!」
本来ならば回避が困難である不可視の弾丸である『衝撃砲』を、あろうことか初見で全弾回避されてしまった。
しかも、そこからカウンターのようにケンプファー必殺の武器である『チェーン・マイン』を体に巻きつけられる。
「ちょ…何なのよこれぇっ!?」
「ポチっとな」
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
強力な連続爆発を受けて、鈴もまた落とされた。
「これで三人。後はお前達だけだぞ」
「鈴とセシリアまでもが、あそこまで簡単に……」
勝てるビジョンが全く浮かばない状況にシャルロットが困惑している中、ラウラが彼女の肩を叩いた。
「ラウラ?」
「シャルロット。少し聞いてほしい」
「な…なにかな?」
「見た感じ、ミーシャ先生の機体は実弾兵器が主体となっているようだ。ならば、私のレーゲンのAICで防御出来る筈だ」
「そ…そうか! そこで身動きできなくなったところを……」
「お前の『アレ』を叩き込めば、あるいは……」
ラウラの提案で、少しだけ光明が見えてきた。
やる気が復活したラウラとシャルロットは、顔を引き締めてミーシャと対峙した。
「へぇ……いい顔になったじゃねぇか。何か策でも考え付いたか?」
「はい。もうこれ以上は好きにはさせません」
「ここからは、我ら二人でお相手します」
「言うじゃねぇか。来い!」
「「言われなくても!」」
ラウラが前衛で、シャルロットが後衛。
武装や性能の面から考えても、お互いに前衛後衛のどちらでも活躍は可能なため、決して悪くは無いフォーメーションだった。
彼女達の予想が当たっていれば…の話だが。
(さぁ……来い! シュツルム・ファウストでもジャイアント・バズでも撃ってくるがいい! 何を撃ったとしても、その全てを私のAICで止めてくれる!)
円を描くようにしながらステージ内を高速移動し続ける両者。
このまま膠着状態が続くと思われたが、ミーシャの動きによって状況が動き出す。
(先生がショットガンを収納した!)
(恐らく、射程と威力重視のジャイアント・バズを撃つつもりか!)
ラウラが右手を翳してから、いつでもAICを発動出来るように構えるが、それは突如として放たれた一筋の緑色の閃光によって瓦解した。
「なん……」
「だって……っ!?」
ミーシャのケンプファーが装備しているのは、今までに見たことが無いライフル。
近未来的なデザインをしている真っ黒な銃身は、明らかに実弾兵器ではない。
「お前達はこっちの攻撃をAICで防御して、その隙を狙おうと思っていらしいが……いつ、どこで、誰が。ケンプファーにビーム射撃兵器が無いと言ったんだ?」
「まさか……今までのは……!」
「この事を隠す為のカモフラージュ……!」
「アメイジング・ライフルってな、かなり万能な武器なんだぜ?」
それは、MSからISへと変化したことにより、結果的に機体の出力が増したことで実現可能になった皮肉。
アメイジング・ウェポンにより、ケンプファーに死角は無くなった。
IS化して、ケンプファーはより強力な機体へと進化したのだ。
「今ので腕部を…AICをやられた! これでは使用できない!」
「そ…そんなっ!?」
「いい作戦ではあったけどよ、思い込みはいけねぇな。戦場での思い込みは、可能性の幅を狭めて自分の危機を呼び込むだけだ。どんな時でも、絶対に疑う事だけは忘れちゃいけねぇ。こんな風にな!」
アメイジング・ライフルの銃身だけが量子化し、長さが変わった。
両手で構え、狙いを定めるその姿はまるで……。
「ロングレンジ…いや、スナイパーライフルっ!?」
「本当に武器と射程に隙が無さすぎるよ!?」
「貰った!!」
移動しながらも、ラウラとシャルロットが一直線に並ぶ位置まで行って、そこからアメイジングロングレンジライフルによる狙撃で、ラウラのリボルバーキャノンとシャルロットのパイルバンカーを一発の射撃で撃ち抜いた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!?」
大きく吹き飛びながらも、なんとか受け身を取って体勢を立て直すが、其処には既にミーシャがライフルを構えていた。
「どうする?」
「「………………」」
シャルロットとラウラは互いに顔を見合わせて、強く頷いた。
「「参りました……」」
小さな白旗をパタパタと振って、自ら負けを認めた。
「いい判断だ。時には自らの意志で退くことも大切だからな。でも……」
武装を解除してから、静かに二人に近づいて頭を撫でた。
「悪くはなかったぜ」
それだけを言い残してから、ミーシャはケンプファーを解除して生身に戻りながら、その場を後にした。
「結局……」
「一撃も与えられなかったな……」
完全に意気消沈する二人に加え、先に脱落してピットに戻っている三人に向かって、千冬が更なる追い打ちをかけた。
『お前ら程度が勝てないのは当たり前だ。なんせミーシャは……』
『元ロシア国家代表で、今までに行われた二回のモンドグロッソにおいて、決勝戦で私と激戦を演じた女だぞ?』
「「「「「え――――――――――――――――っ!!?」」」」」
一方、その頃のミーシャはというと?
「おえ~……久し振りのISの飲酒運転はヤバかったかな……」
トイレにて思いっきり吐いてましたとさ。
今回の主役のTSさんは、『ポケットの中の戦争』からミーシャです。
TSした時のモデルは『艦これ』の『ポーラ』です。
酔っ払いな美女を想像したら、真っ先に彼女が思い浮かびました。
千冬や真耶とだけでなく、実は束とも非常に仲がいいです。
束からは『ミーちゃん』と呼ばれて慕われていたり。
そんな彼女の日課は、どんな時でもところ構わず酒を飲み、仕事が終わればまた千冬と一緒に酒を飲む毎日。
自分で書いておきながらアレですが、よく教師になれたなコイツ……。