インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
といっても、下のほうはそこまで長くはならないと思います。
私としても、早く原作に突入したいですから。
新生活
ソンネン達、三人娘がこっそりとドイツから戻ってきた時と同じ頃、一夏と千冬もまた同じように日本に帰国してきていた。
「お土産持ってきたぞ~」
「「「「「おぉ~」」」」」
帰国したばかりだというのに、次の日には普通に学校に来ていた一夏。
時差ボケなどもあるだろうに、これが若さ故の特権なのかもしれない。
「まずはソンネンからだな。ハイこれ」
「悪いな。お? こいつは……」
ソンネンが一夏から貰ったのは、ドイツ製の戦車の模型だった。
「最初はさ、普通にお菓子類とかにしようとも思ったんだけど、会場の売店にこれがあったもんだから、すぐに『これだ!』って思ってさ」
「分ってるじゃねぇか。しかもこれ、ティーガーⅠかよ! 中々に渋いチョイスをするな!」
「それって凄いの?」
「あったり前だ! ティーガーⅠは第二次世界大戦時にドイツで開発された重戦車なんだよ」
「あ…なんか嫌な予感」
鈴の予感が的中し、そこからソンネンの戦車話に突入した。
「全長が8.45メートルで車体長は6.316メートル。全幅は……」
「弾。後は頼んだわよ」
「俺ぇっ!?」
弾を生贄にする形で難を逃れた面々は、お土産タイムを再開することに。
「で、ヴェルナーには魚の剥製。何がいいのか分らないから、取り敢えず目についた奴を買ってきた」
「ニジマスじゃんかよ……逆に良く見つけたな……」
珍しく呆れつつも、その顔はちゃんと笑っていた為、嬉しくはあるようだ。
「鈴にはこれな」
「これって…リボン?」
「あぁ。偶にはドイツ的なリボンもいいんじゃないかって思ってさ」
「ふ~ん。一夏にしては意外と洒落てるじゃない。ありがと」
黒い下地に赤い模様が書かれた、明らかにアレなリボンを丁寧に折りたたんでから鞄の中に仕舞いこんだ。
恐らく、家に帰ってからこっそりと自分の部屋で試しに着けてみるつもりなのだろう。
「一番悩んだのがデュバルなんだよな~」
「なんでだ?」
「いやさ、デュバルって何を貰っても普通に喜んでくれそうだし」
「そうだな。基本的に好意で貰う物は例えなんであっても有り難く受取るぞ?」
「だろ? 割とこれはマジで悩んでさ、最終的にはコレにした」
「どれどれ……?」
一夏がデュバルに渡したのは、そこそこの大きさの綺麗に包装された箱だった。
「これは?」
「開けるのは孤児院に帰ってから…って言いたいけど、今なら先生もいないし、少しだけなら開けても大丈夫だろ」
「そうだな。では、出来るだけ包装用紙を破らないように気を付けながら……」
元からかなり手が器用なデュバルによって、包装用紙は見事に無傷の状態で一枚の紙になった。
「中には何が入っているのやら……ん?」
箱の中にあった物、それは一体のクマのぬいぐるみだった。
「これはまさか…テディベアか?」
「マジでっ!? 一夏アンタ…明らかにジャンだけ贔屓してるでしょ!」
「してないから! 俺が悩んでたら、店員さんにアドバイスして貰ったんだよ!」
「因みに、お前はなんて言ったんだ?」
「『女の子にお土産を買って帰りたいんだけど、何がいいですか?』って聞いた。そしたら、なんでかコレを物凄い押されたんだよ。そのままの流れで結局…な」
「ふむ……そうか」
箱の中から出さずに手だけを入れてから、テディベアの頭を撫でてみる。
かなりフワフワのサラサラで、前世では当然のように、今世でも全く縁が無かった代物に、不思議な新鮮さを感じていた。
「イヤだったら別に無理して貰わなくても大丈夫だからさ」
「さっき私はこう言わなかったか? 『好意で貰った物は何でも受け取る』とな」
「デュバル……」
「ありがとう、一夏。偶には、こんな風に女の子らしい物を貰うのも悪くはないな」
「お…おう……」
自然と見せたデュバルの笑顔に、一夏は目を奪われた。
一夏だけでなく、鈴も同じように見惚れてしまっていた。
(なんだこれ……すっごい胸がドキドキする……)
(ジャンって…やっぱり中学生らしからぬ美人よね……)
これがまた多くのライバルたちを生み出す事になろうとは、まだ一夏と鈴は知る由も無かった。
「そうだ。ちゃんと弾の分もあるぞ」
「マジか! 流石は俺の親友!」
「おいコラ弾! まだオレの話は終わってねぇぞ!」
「うぅ……和風美少女とのお話は本気で嬉しいけど。話している内容の1%も理解出来ねぇ……」
もうちょっと色んな事を本気で勉強しておけばよかった。
この時の弾は今までの怠慢を冗談抜きで後悔したと言う。
「弾ってなんかアニメとか好きだから、それっぽい物を買ってきた」
「なんだなんだ? ドイツの美少女アニメのフィギュアとかか?」
「はいこれ」
「…………なんじゃこりゃ」
一夏が弾に渡した土産は、ムキムキマッチョで鞭を持った女の絵が描かれたTシャツだった。
「マンガの女の子が描かれたTシャツ。お前好きだろ?」
「幾らなんでも女の子達との格差が激しすぎる!!」
血の涙を流しながら怒り狂う弾だが、基本的には優しい少年な為、最終的には普通に受け取るのがお約束だ。
「それと、これは千冬姉から孤児院の皆にって」
「お菓子の詰め合わせセットか」
「ガキ共が喜びそうだな」
「ん? なんかカードが挟まってるぞ?」
メッセージカードが添えられていることに気が付いたヴェルナーが、代表してそれを取ってから中を読んでみる事に。
そこにはこう書かれてあった。
【お前達の応援、確かに受け取ったぞ。本当にありがとう】
横から除いたソンネンとデュバルと一緒に、思わず笑みを零すヴェルナー。
とても無邪気で眩しい笑顔に、場の空気も明るくなった。
「義理堅いって言うか……」
「あの人らしいな……」
「全くだな」
そんな彼女だからこそ、ソンネン達も多少の無理を通してでも応援したくなったのだ。
あの時の選択は間違いじゃなかった。
「そうだ。千冬姉で思い出した」
「なんだよ?」
「実はさ、今日の放課後に千冬姉と一緒に孤児院に行くことになってるんだ」
「姐さんも一緒に? そりゃまた珍しいな」
「何の用だろうな? 一夏は何か聞いてるのか?」
「何にも。院長さんの前で話すって言ってた」
「つーことは、かなり重要な話なのか……?」
千冬の謎の訪問に疑問を感じながらも、お土産の話で盛り上がる面々だった。
因みに、この時の『テディベアを抱きしめながらモフモフして満面の笑みを浮かべているデュバル』の写真は、彼女のファンたちに非常に高値で取引されたという。
それを見事にゲットしたのは、どこぞのウサ耳を生やした天災科学者だとかなんとか。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
先に孤児院に帰ってから一夏達が来るのを待っていると、一時間後ぐらいにやって来た。
「お邪魔します」
「どうも」
「千冬ちゃん。一夏君、よく来ましたね。ささ、遠慮せずに上がってください」
「「はい」」
千冬はスーツ姿で、一夏は制服から着替えたのか、私服で来ていた。
院長に案内されるがままに着いていき、ロビーにあるテーブルに座る。
そこには既に、デュバルとソンネンとヴェルナー、いつもの三人娘が座っていた。
姉弟の姿を確認すると、それぞれに手を振ったりした。
「なんで彼女達も?」
「この子達は今や、この孤児院の中心的な存在だからね。私と一緒に話を聞いてほしいと思ったのさ。別に構わないだろう?」
「え…えぇ。私も、彼女達ならば信用出来ますし……」
「それは良かった」
いつも通りのニコニコ笑顔で話が進んでいく。
とても話しやすい空気を醸し出しているので、とてもスムーズに進行していった。
「この子達から聞いたよ。お土産、ありがとう。他の子供達も凄く喜んでいたよ」
「いえ。普段からお世話になっているはこちらですから。これぐらいはしないと……」
「私としては、そこまで気にしなくてもいいのだけれどね。でも、その気持ちはとても嬉しいよ」
まずは世間話から。
ここからが本題だ。
「それで、電話で話していた『私にお願いしたいこと』とは一体何なんだい?」
「お願い……?」
普段から気丈に振る舞っている千冬が『お願い』をする。
あまり想像できない事だったからこそ、その内容が非常に気になった。
「……もう既にご存じだと思いますが、つい先日、私は第二回モンドグロッソに置いて優勝をしました」
「それは私達もテレビ中継で見ていたよ。本当におめでとう。よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
会釈をしながら礼を述べる千冬だが、その顔色はあまり優れない。
「それでですね……その大会を見ていた開催国であるドイツのお偉方が日本政府の連中に頼み込んで、私をドイツ軍に訓練教官として派遣することにしたのです」
「「なんと……」」
「「「マジかよっ!?」」」
院長とデュバル、一夏とソンネンとヴェルナーの声が重なった。
ロビーには今、彼女たち以外は誰もいない為、変に反応される事はなかった。
「連中にも本当に困ったものです。今回の大会を最後に引退するつもりだったのに、私の意志を無視して勝手に決めて……」
「え? 千冬の姉御、引退しちまうのか?」
「まぁな。選手としての未練はもう無いし、これからはどこかの適当な訓練所にでも所属をして、そこで後進を育てていこうと思っていたのだがな……」
「まさかのドイツ行きか。余りにも唐突ですね」
「そうなんだ。だからと言って、私の立場では断るわけにもいかないからな……」
疲れた顔で笑う千冬だが、その顔には今までにあった覇気が無かった。
「表向きは日本とドイツの国交をより強くする為となっているんだろうが、実際には後々の事を考えてドイツに恩を売っておくことが目的だろう」
「だろうな。政治家なんて、往々にして全員がそんなもんさ」
頭の後ろで手を組んで言うヴェルナーだが、その顔は天井を睨み付けていた。
「そんな訳で、私はこれから一年の間、ドイツに行かなくてはいけないのです。そこでお願いなのですが……」
「千冬ちゃんが戻ってくるまでの間、一夏君をここで預かってほしい…だね?」
「はい。自分でも不躾な頼みだと承知はしています。ですが、ここ以外に頼めるような場所も無く……」
「成る程。分かったよ。こんな場所でよければ、喜んで預かるよ」
「い…いいんですかっ!?」
「勿論。困った時はお互い様だしね。幸い、空いている部屋もある。一夏君はそこに住めばいいだろう」
「あ…ありがとうございます!」
頭を下げる千冬に合わせ、状況が上手く読めない一夏も流れで頭を下げる事に。
「そんな訳だ。お前にもいきなりで済まないと思っているが、どうか分かって欲しい」
「そんな顔しないでくれよ。千冬姉だって悩んだ末の結論だったんだろ? だったら、俺はそれに大人しく従うさ。それに……」
「「「ん?」」」
いきなり自分達の方を向いた一夏に対し子首を傾げる。
「あいつらが一緒なら大丈夫さ」
「そうだな……」
ここにはソンネンがいる。デュバルがいる。ヴェルナーがいる。
自分の幼馴染達が三人もいる。
だから、絶対に大丈夫。
一夏には、自分でも不思議な確信があった。
「だが、流石に今すぐって訳じゃない。色々と準備をしないとな」
「そうだな」
「ドイツに行く日が決まったら、こちらからまた連絡します」
「分かったよ」
これで一通りの話も終わり。
後は帰るだけなのだが、ふと千冬が三人の方を向いた。
「お前達も、これから一夏のことをよろしく頼む」
「今更だろ。なぁ?」
「そうだな。一夏との付き合いも今に始まったわけじゃない」
「オレ達はいつも通りに過ごすだけさ」
「……お前達は本当に強いな」
この子達なら弟を任せても大丈夫。
思わず、一夏がこの三人のうちの誰かと結ばれる想像をした千冬は、少しだけ頬を緩ませた。
「では、私達はこれで。話を聞いてくれて、本当に感謝します」
「いやいや。例えどんな形であれ、頼って貰って嬉しい限りだよ。これからも、何かあれば遠慮なく相談しなさい。話ぐらいならいつでも聞いてあげるから」
「ありがとうございます」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
その日の夜。自室で勉強をしていたデュバルのスマホにラインが入った。
誰からと思って開いて見ると、それはドイツにて密かに連絡先を交換しておいた
カスペンからだった。
『ドイツでの君達三人の交戦記録は、なんとかして私の方で消去することが出来た。思ったよりもスムーズに進んだから、恐らくは陰から篠ノ之博士も手伝ってくれたのだろう。これで、君達に変な追求が来ることはないだろう。その点だけは安心してくれ』
さりげないサポートを忘れない。
やっぱりカスペンはカスペンなのだと実感したデュバルは、返信をすることに。
『ありがとうございます大佐。ところで、近々そちらに千冬さんが来る予定になっていると聞いたのですが、大佐はご存知ですか?』
『勿論、知っているとも。私もついさっき聞かされたばかりだがな。他の隊員達は物凄く興奮していたよ。あの『ブリュンヒルデ』が教官として来てくれるとな』
『そういえば、大佐は部下達に指導などはしていないのですか?』
『そんな事はない。私だって私なりに色々と指導はしているさ。だが、いかんせん私も忙しくてな。中々に時間が取れないのが実情なのだ』
『成る程……』
『だから、彼女には悪いとは思っているが、私からすれば非常に有り難い申し出だったよ。これで、こちらも国家代表としての仕事に専念出来る』
『国家代表としての仕事? 他国の代表との試合とかですか?』
『それ系の仕事は極稀にあるぐらいらしい。実際にはISとは全く関係ない仕事ばかりさ』
『例えば?』
『……撮影とか』
『……はい?』
『雑誌のインタビューや色々なテレビ番組へのゲストとしての出演。後は何故か写真集やポスターなどの撮影もさせられるらしい……』
カスペンからのラインを読み、本気で顔が引きつったデュバル。
そして思い出す。千冬もよく雑誌などの表紙を飾っていたと。
『なんで私にそんな事をさせるんだ……? 私は国家代表である以前に軍人だぞ? これでは完全に軍務に支障をきたすではないか……』
『ご…ご愁傷様です』
『済まんな…愚痴を言ってしまった。もしかしたら、これからもこうして私の愚痴を聞いてもらうかもそれない』
『私で良かったら喜んで』
『助かる。では、お休み』
『はい。おやすみなさい』
そこでようやくラインでの会話が終了する。
背凭れに体を預けながら、背中を伸ばすデュバルは、ふと呟いた。
「……今のカスペン大佐の写真集なら、売り切れ続出は確実だな……」
金髪美幼女の写真集。
それがドイツ中に広まれば、間違いなく大量のロリコンが誕生するだろう。
もしかしたら、ファンクラブも出来るかもしれない。
いや、下手をしたらもう出来てるかも。
「……これ、明日にでもあいつらに見せてやろう」
この後、日本でも熱狂的な最強美幼女カスペンのファンが大量に生まれる事となるのだが、それはまた別のお話。
一夏、まさかの三人娘達と一年限定の同居生活開始。
いきなりラブコメの様相を呈してきましたね。
一方のカスペンは、国家代表と言う名のアイドル活動開始。
その様子はドイツ編で明らかになる?