インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
お蔭でなんとかカイニスだけはゲットして、現在は双子ちゃんをゲットすべく奮闘中です。
アトランティス……しんどかった……。
「もうそろそろ空港に行く。孤児院の皆に迷惑を掛けるなよ」
「分かってるって。いってらっしゃい、千冬姉」
「ああ。では、行ってくるよ」
孤児院の前で千冬が皆に見送られる。
その筆頭は一夏なのだが、彼と並ぶようにソンネンとデュバルとヴェルナーの三人も一緒にいた。
「お前達も、愚弟の事をよろしく頼む」
「おう。任せとけって」
「安心して行ってきてください」
「病気とかすんなよ~」
弟の時とは打って変わり、優しい笑みを浮かべながら三人と言葉を交わす。
その後に院長に一言挨拶をする。
「後の事は私達に任せておきなさい。彼ならきっと大丈夫だから」
「はい。それでは、行ってまいります」
後ろ手に手を振りながら、千冬は待たせているタクシーに乗り込んで、空港へと走り去っていった。
「行っちまったな……」
「だな」
名残惜しそうに道路を見つめていたが、すぐに頭を切り替えたのか、頬をパチン! と叩いてから気合を入れ直した。
「これから一年間の間、よろしく頼むな。皆」
「「おう」」
「こちらこそ。そして、ようこそ」
「「「ヨーツンヘイム孤児院へ」」」
「お…お邪魔します」
孤児院を見上げながら、柄にもなく感慨に耽った。
ここに来ること自体は今日が初めてではないが、寝泊りをするのは今回が初めての経験だった。
(今日からここで俺の新しい生活が始まるのか……なんだかまだ実感が涌かないな)
だが、それでもやっていかなくてはいけない。
姉が安心してドイツで頑張れるように。
なにより、自分自身の為に。
「よし。まずは荷物運びだな」
「つっても、流石に今日持って来てるのは着替えとかの手に持てるサイズの物だけか」
「取り敢えずはな。他の荷物は休みの日とかに必要に応じて持ってくればいいって千冬姉と院長さんが言ってくれてな」
「ま、それが妥当ではあるな」
現在、一夏が持って来ている荷物は、彼が肩にかけている旅行バッグの中にある物と学校の鞄だけだ。
着替えの服や下着、後はスマホなどの日常的に使う道具。
そして、学校の鞄には教科書などが一式詰まっていた。
「三人共、一夏君を部屋に案内してあげなさい」
「分かりました。一夏、私達に着いてきてくれ」
「ああ」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
三人娘の後を着いていく形で、一夏は孤児院の廊下を進んでいく。
そこは、普段は余り立ち入らない居住スペースで、主に子供達の部屋が並んでいる。
「ここって初めて入るけど、思ってる以上に部屋数が多いんだな」
「今はな。でも、最初はこうじゃなかったらしいぜ」
「なんでも、これまでに何回か改修工事を行っているらしい」
「改修工事?」
「子供達が増えていくにつれて、今みたいに部屋の数を増やしたり、食堂とかの施設を増設したりとか…な」
「最近じゃ、車椅子を使ってるオレがここに入った少し後ぐらいにバリアフリー対応にする工事をしたぞ。かなり昔の話になるけどな」
「そう聞くと、なんだかスゲーな……。どこにそんな金があるんだ?」
まだ中学生の一夏でもハッキリと理解出来る。
こんな大きな建物を何度も改修なんてしていたら、それこそ金がどれだけあっても足りないと。
「私達もその事が気になって、院長さんに前に一度聞いてみたことがある」
「なんて答えたんだ?」
「なんどもよ、あの人はかなり顔が広いらしくてな。日本だけじゃなくて世界中に友人がいるらしくて、その人たちに援助して貰ってるんだと」
「その友人の殆どが著名な有名人や政治家らしくて、向こうは恩返しのつもりで援助をしてるらしい」
「……マジであの人って何者なんだよ」
「「「さぁ?」」」
三人揃って小首を傾げる。
非常に謎が多い院長ではあるが、確かなことが一つだけある。
それは、ここにいる子供達を心から愛し、大切に思っている事だ。
「お。着いたぞ。ここだ」
話しているうちに部屋の前まで来ていたようで、ソンネンの言葉で皆が立ち止った。
そこは廊下の真ん中辺りにある部屋で、両隣や前方にも部屋がある。
「けどさ、よく部屋が空いてたよな」
「ここの前の主は、とっくに高校を卒業して出て行ってな、その後はバイトをしつつ大学に通って、今じゃちゃんと就職をして立派な社会人をしてるんだと」
「時々、ここに仕送りをしてくれたり、ガキ共に土産物を持って里帰りをしたりもするけどな」
「高校って……あの人の事か。懐かしいなぁ~……」
まだ一夏たちが小学校に入る前、千冬達もまだ中学生だった頃にこの孤児院にいた最年長の子供。
彼だけでなく、当時は二番目に年上だった千冬達と同い年だった少女もまた孤児院を出て就職をしている。
それでも、この孤児院が大切であることは変わりないようで、祝日の日などは頻繁に戻ってくる。
「ンなわけで、今はこの部屋は完全な空室って訳だ」
「遠慮なく使ってくれて構わないぞ」
「サンキューな」
鍵は掛かっていないようで、ノブを握ると普通に開けることが出来た。
「おぉ~……」
部屋自体はフローリングの床で六畳一間ぐらいの広さだったが、驚いたのはその綺麗さだった。
まるで新築のようにどこもかしこもピカピカで、本当に前の居住者がいたとは思えない程だった。
「ビックリしたか?」
「あぁ……スゲーな……」
「孤児院の皆で徹底的に掃除をしたからな。かなり綺麗になっている筈だ」
これは嫌でも気が引き締まる。
ここまでしてくれたのだから、この部屋を変に汚す事はかなり躊躇われる。
一夏は、定期的に自分の全力でこの部屋を掃除しまくろうと誓った。
「荷物の配置とかはお前の好きにしな。なんたって、今日からこの部屋はお前の物なんだからな」
「そ…そうだよな。うん」
広さ自体は織斑家にある自分の部屋と同じぐらいだが、新鮮味が段違いだ。
姉が帰ってくる頃には、この部屋にも馴染んでいるのだろうか。
「そういや、三人の部屋ってどこなんだ?」
「オレはこの部屋の右隣だ」
「私は左隣」
「んで、オレは真正面だな」
「えぇっ!?」
言葉だけでは分り難かったと思うので、ここで補足しておこう。
一夏の部屋から見て、右側にあるのがソンネンの部屋で、左側にあるのがデュバルの部屋、正面の位置しているのがヴェルナーの部屋になる。
つまり、一夏は幼馴染の三人の少女達に囲まれている形となるわけだ。
「今日からはお隣さんだな。よろしく頼むぜ」
「よ…よろしく」
満面の笑みを浮かべるソンネンとは対照的に、心の中で早くも不安要素が生まれてしまった一夏であった。
・・・・・
・・・・
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・・
・
荷解きを終えると、丁度いい時間になったのでお昼にすることに。
食堂には子供達が既に集まっていて、各々にテーブルに着いている。
「今思ったけどさ、ご飯って誰が作ってるんだ?」
「前は年長者の皆が当番制で作ってたな」
「現在は?」
「主に私達が作っているよ。時々、院長さんが作る時もあるがな」
「そうだったんだな……」
まさか、前にした妄想が本当だったとは。
料理を得意とする者として、彼女達が作る料理には非常に興味が湧いた。
「でも、ねーちゃんたちが作る料理ってすっごく特徴的なんだよな~」
「な~」
「そうなのか?」
近くにいた子供達が揃ったように言った。
「料理自体は超美味しんだけど……」
「だけど?」
「ジャンルがめっちゃ分かれてる感じ?」
子供達の中でも三人娘の次に年上な少年と少女がやって来て、腕組みをしながらしみじみと語り出した。
「まず、デメねーちゃんの料理は豪快っつーか……漢の料理?」
「なんじゃそりゃ……」
一瞬だけ想像したのは、テレビや動画などでよく見るキャンプ料理の類だった。
「それで、ジャン姉さんの場合はすっごく丁寧に作り込まれてるのよね。基本的に和洋中の全部を作れるんだけど、まったく妥協をしないのよ」
「デュバルらしいと言えばらしいな……」
普段から非常に生真面目な性格をしているデュバルは、料理でも生真面目なようだ。
「そんでもって、ヴェルナーの姉ちゃんはシンプルに、魚料理しか作らない。美味しいから誰も文句は言わないんだけど」
「料理自体は少し前から勉強し始めたって言ってたわね。魚の捌き方とか凄く上手なのよ。流石は漁師の孫よね」
「これまたなんとも想像しやすい……」
一夏の中でも、ヴェルナーのイメージは海しかない。
ある意味で普通に納得出来てしまった。
「って、その三人はどこに行った?」
「俺達が話してる間に台所に行った」
「きっと、一夏さんが来たから、歓迎会代わりに三人でお昼を作るつもりなのかな?」
「三人の手料理……」
一体どんな料理が出てくるのか。
幼馴染の美少女達の手料理である事を除いても、純粋に気になってしょうがなかった。
余談だが、今日のお昼は何故か鉄板で焼くお好み焼きパーティーだった。
ソンネンは豚玉、デュバルは野菜がたっぷり、ヴェルナーはシーフードと、三者三様の生地を用意していたため、なんとも味のバリエーションが豊かな食事となった。
物凄く美味しかったとだけ明記しておこう。
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・
「「「「御馳走様でした」」」」
腹も一杯に膨れて、皆揃っての後片付け。
これもまた、この孤児院では日常的な光景だった。
「お好み焼きとか食ったの、かなり久し振りだよ」
「喜んで貰えたようで何よりだ」
「それでこそ、作った甲斐があったってもんだぜ」
ソンネンとデュバルに並ぶようにして、一夏も一緒に皿洗いをしている。
かなり手馴れたもので、次々と皿が片付いていく。
「でもさ、三人だけでってのは大変じゃないか?」
「いや、意外とそうでもないぞ?」
「ちゃんとガキ共も手伝ってくれるしな」
「そっか……」
平気そうな顔で語る二人だが、それでも主な料理番を三人がしている事実は変わらなかった。
だからこそ、織斑家で家事全般を任されている一夏は黙ってはいられなかった。
「よし、決めた」
「「何を?」」
「今日から、俺も一緒に料理を作るよ」
真剣な顔で語る一夏に、少しだけ手が止まってしまう二人。
だが、すぐに再始動して皿洗いを再開する。
「まぁ…一夏は料理が得意だしな」
「こっちとしては実に助かる申し出だよ」
「任せておいてくれ。家じゃもう完全に料理は俺がやってるんだ」
「千冬さんは手伝わねぇのか?」
そこに、鉄板を磨き終えて倉庫に戻してきたヴェルナーが戻ってきて、皿の片づけを手伝い始めた。
「千冬姉は家事全般が全く駄目なんだ。それどころか、自分の部屋の片づけも碌に出来なくてさ……」
「マジかよ……」
「意外な人物の意外な弱点発覚だな」
「あの束も、似たような所があるしな」
前に束の部屋を訪れた時に見た散らかり具合を思い出すヴェルナー。
普段は余り酷評をしない彼女から見ても、相当に酷い部屋だった。
「親友同士、似た者同士なのかもしれねぇな……」
「類は友を呼ぶ、だな」
「今頃、二人揃ってくしゃみとかしてたりしてな」
「有り得そうだな」
彼女達の言う通り、千冬は飛行機の中で、束は自分の研究室の中で全く同じタイミングでくしゃみをしていた。
「これで皿洗い終了だ。ご苦労様だったな」
「なんの。これぐらい朝飯前だって」
「ついさっき昼飯を食ったばかりだけどな」
「ははは! 違いない!」
ソンネンの言った一言がツボに入ったのか、いきなり爆笑するヴェルナー。
何が彼女の笑いのツボなのか、それを知る人間はいない。
「では、お茶でも飲みながら休憩しようか。私が淹れよう」
その後、デュバルが淹れてくれた緑茶を飲みながら、のんびりとした午後を過ごした中学生たちだった。
まずは導入から。
次回からは本気でラブコメ臭が強くなるかも?