インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
特に今回は、男性ならば共感して、女性ならば『え~』ってなるかもです。
男性諸君は皆、きっと一夏と同じ気持ちになる筈。
ヨーツンヘイム孤児院には、大浴場とは言わないまでも、それなりの大きさを誇る風呂が存在している。
基本的に入浴する順番は男子が先で、女子が後となっている。
なんでそうなったのかは不明で、いつの間にか暗黙の了解となっていた。
時には順番が入れ替わったりすることもありはするが、それでも決して変わらない事は、院長が一番最後に入るということだ。
その理由は単純明快で、時間を気にせずにゆっくりと入って貰う為だ。
そして、一時的とはいえ、新しく孤児院の仲間となった一夏も当然のように、そのルールに従わなければいけない訳で。
「そんな訳だから、まずは一夏達から入って来てくれ」
「本当に俺が最初でいいのか?」
「構わねぇよ。別に、男子の後だから入りたくない、なんてアホな事を言う女子はここにはいないからよ」
「そこまで言うならいいけどさ……『達』って?」
「一人一人入ってたら時間が掛かるだろ? だから、ついでにガキ共と一緒に入って来てくれ。勿論、男連中だけな」
「りょーかい」
ソンネンが一夏に説明をしている間に、子供達は着々と入浴の準備をしている。
どうやら、相当に躾けられているようで、色々と騒ぎながらも全員がちゃんと支度を整えていた。
「夕飯の準備なんかは風呂の後で構わねぇからよ。もう下拵えは済んでるんだろ?」
「一応な」
「なら大丈夫だろ」
「普段もこうなのか?」
「ああ。ああ見えても意外としっかりとしてる奴等だから、そこまで苦労はしないと思うぞ?」
「それは見てれば分かる」
一夏とて、ここの子供達と交流をするのは今日が初めてと言う訳じゃない。
これまでにも何度となく遊びには来ていて、その際によく彼等とも遊んだりしていたものだ。
「そんじゃ、ゆっくりと浸かって疲れを落としてきな。い・ち・か・にーちゃん」
「にーちゃんって……」
口ではそっけなくしてはいたが、実はかなり恥ずかしかった。
『にーちゃん』と呼んだ時のソンネンの笑顔がとても眩しかったから。
「そ…そんじゃ、行ってくるわ」
「おう」
照れくさくなりながらも、一夏は子供達を連れて風呂まで向かうことに。
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「ふぅ~…」
風呂から上がり、廊下の窓を開けて夜風に当たっている一夏。
寝間着替わりのTシャツとジャージに着替え、少しだけ温もった自分の体を冷やしていた。
「湯加減はどうだった?」
「凄く良かったよ。子供達も大人しく風呂に入ってたし」
「そうか。それはなによりだ」
廊下に佇んでいる一夏に近づいてきたのは、風呂の用意をしているデュバル。
他のメンバーも自分の部屋に戻って準備をしているようだ。
「あんなにも大きな風呂に入ったのって初めてだったから、なんだか凄く新鮮だった」
「今は真新しく感じていても、いずれそれが日常となる。嘗ての私達もそうだった」
「だよな。これから一年間、ここで生活をするんだもんな」
新生活と聞けば、普通は大なり小なり不安を感じるものだが、一夏の場合はそんな事は無いようで、寧ろこれからの事に興奮を覚えている様子だった。
「では、今度は私達が行ってくる。夕飯の準備、よろしく頼むぞ」
「あぁ! 任せといてくれ!」
「風呂から上がったら、私達も手伝うよ」
「それまでには終わると思うけど、その時は頼むわ」
通り過ぎながら一夏の肩を軽くポンと触りながら、デュバルは風呂がある方向へと歩いて行った。
「デュバル達が風呂に入る……か」
一瞬だけ。本当に一瞬だけ一夏はイケナイ妄想をしてしまった。
その内容は、男性諸君ならばすぐに分かる筈だろう。
「いやいやいや! 何を考えてるんだ俺は! あいつらは大切な幼馴染で、そんな対象で見ちゃいけないって言うか……」
などと言いつつも、少し前から彼女達を異性として見ている事に気が付かない少年だった。
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「ほんと、トイレって唐突に行きたくなるよな~」
夕飯の準備をしている途中で急に尿意がやって来て、急いでトイレに行ってきた一夏は、台所のある食堂へと戻る最中に風呂の前を横切ろうとしていた。
位置的に、どうしても風呂の前を通らないといけないのだ。
「まだ入ってるのかな……」
今度はなんとか自分の中の欲望に打ち勝って、その場と大人しく通り過ぎようとするが、その時……風呂から先程までは聞こえてこなかった会話が聞こえてきた。
『ほら。頭を洗ってやるから、じっとしてろよ』
『うん! ありがと! デメお姉ちゃん!』
『ほんと、ジャンお姉ちゃんって肌が綺麗よね~』
『同じ女の子として羨ましいな~』
『そうか? お前達も十分に綺麗だと思うが』
『『お姉ちゃんには本気で負けます』』
『揃って言う事か?』
『ヴェルナー姉さん! また胸が大きくなってるでしょっ!?』
『え? マジで? 全く自覚無かったわ』
『この前に測った時は何センチだった?』
『え~っと…確か……』
『あ~! 言わなくていいから! 実際に聞かされたら落ち込みそうな気がするから……』
『そこまで気にするような事か? どうせ、時が立てば嫌でも成長するだろうに』
『成長具合は人それぞれなの! ジャン姉さんがいい例じゃない!』
『なんでそこで私が引き合いに出されるっ!?』
『ジャン姉さんの胸が年々、確実に大きくなってるからよ! このままいけば確実に将来的にはボンッ! キュッ! ボンッ! のナイスバディになる事は確実じゃない!』
『そこまで熱弁出来るお前を普通に凄いと思うよ……』
『それじゃあよ、オレの場合はどうなるんだ?』
『デメ姉さんは、どこかが突出するって訳じゃなくて、全体的に安定したプロポーションで、スレンダーな美人になりそう。今でも十分に美人だけど』
『スレンダーねぇ……』
そこまで聞いてから一夏は我に返り、全力で頭を振って煩悩を追い出そうとした。
(バカか俺は!! こんな場所で風呂に入っている女の子達の会話を盗み聞きするなんて普通に変態じゃないか! 俺は弾とは違う! あいつ等をそんな目で見たりはしない!)
一番の親友、何気に貶められた件。
「……もう行こう。夕飯の準備をしながら、この気持ちを払拭しよう…そうしよう……」
そんな風に言いながらも、一夏の顔は真っ赤になっていて、ついさっき風呂に入ったばかりの筈なのに、なんでか身体が熱くなっていた。特に下半身辺りが。
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一夏が食事の準備をしている間に女子達が上がってきたようで、食堂の隣にあるリビングが一気に賑やかになっていた。
「一夏兄ちゃん。これはここでいい?」
「おう。サンキューな」
「えへへ……」
皿の配膳をしてくれている男の子の頭を撫でながら、リビングの方が気になったのか、向こうに続く扉の方を見ていた。
「ちょっと様子見て来るわ」
「分かった~」
それは、ほんの出来心、ちょっとした好奇心だった。
一夏は彼女達にもうすぐ夕飯の準備が終わる事を告げようと思った。
本当にただそれだけなのだ……多分。
だからこそ、リビングに広がっていた光景は余りにも刺激が強かった。
少なくとも、この場に弾がいれば間違いなく血涙を流して悶絶する程に。
「早く髪を乾かさないとな。一夏の奴が待ってるだろうから」
「デメお姉ちゃんに髪を乾かしてもらうのって気持ちがいいから好き~!」
まず目に飛び込んできたのは、絨毯の上に座って年下の女の子の長い髪を優しくドライヤーで乾かしているソンネンの姿だった。
傍にはいつも乗っている車椅子があり、そこから誰かの手を借りて床に座ったのが伺える。
それ自体はとても微笑ましくていいのだが、問題は彼女の格好だった。
「デメ姉さんったら……相変わらずワイシャツだけなのね」
「この方がゆったりしてていいんだよ」
別の少女が指摘した通り、ソンネンがパジャマとして着ているのはワイシャツなのだ。
より正確に言えば、ワイシャツオンリーなのだ。
男性諸君が大好きな、俗に言う『裸ワイシャツ』ならぬ『下着ワイシャツ』状態なのだ。
しかも、これがソンネンにとって普通の格好だったと言うのだから衝撃的だ。
「ん? 一夏か? 一体どうした?」
「え? あ…いや、もうすぐ夕飯が出来るって知らせようと思って……」
「おうマジか。なら急がないとな」
少しだけ髪を乾かす手を早めるソンネン。
そんな彼女の後ろに、青く綺麗なパジャマを着たデュバルがやって来た。
「ならば、お前の髪は私が乾かしてやろう」
「そいつは有り難い。助かるぜ」
「一夏。もう少しだけ待っててくれ。すぐに終わるから」
「あ…ああ……別に、そこまで急がなくても大丈夫だぞ……」
何故か言葉が最後の辺りで小さくなってしまった。
その理由はズバリ、デュバルの髪型にあった。
彼女はもう髪を乾かし終えていたようで、美しい金色の長い髪を靡かせていた。
そう…靡かせていたのだ。
つまり、普段はポニーテールにしている彼女の髪は、今は完全に解かれている状態にある。
髪を下したデュバルの姿は、まさしく誰もが認める美少女に相違なかった。
普段からも美少女である事には違いなかったのだが、ここで一夏は昔からよく知っている幼馴染の新たな一面と魅力を見つけてしまったのだ。
この衝撃は相当に大きい。
特に、一夏のような初心な少年には。
(あ…あれ? なんでさっきから心臓がバクバク鳴ってるんだ? デュバルってあんなにも綺麗だったっけ……)
思わずフラフラと歩いて別角度から見ようとしてしまった一夏の視界に、これまたとんでもないものが
(し…白……)
先程も言ったように、現在のソンネンの格好は下着ワイシャツ状態だ。
下には下着以外は何も履いていない。
それはつまり、見る角度次第では彼女の下着が見えてしまうということでもあった。
姉の下着ならば洗濯をする上で何度も見たことはある。
それでも多少は思うところがあるというのに、ここで同年代の少女の生下着を目撃してしまった。
一夏の精神に多大なダメージを与えたのは言うまでもない。
「い~ち~か~? 何を見てんだ~?」
「うわぁっ!?」
後ろから急に話しかけられて本気で驚く。
そこにいたのはヴェルナーだった。
それはいい。大丈夫だ。
ただ、大丈夫じゃないのは彼女の格好の方だ。
「ちょ…おま……!」
「ん? どうかしたか?」
ヴェルナーが寝間着替わりとしているのは、薄手のタンクトップに太腿丸出しの短パン。
少しだけデジャヴを感じてしまうような恰好だったが、それを自分の幼馴染が着ているという事実が一夏を混乱させる。
「な…なんつー格好をしてんだよ……」
「そんなに変か? いつもこんな感じだけど」
「冗談だろ……」
何とも言えない気分。
男として純粋に喜べばいいのか。
それとも、幼馴染として指摘すればいいのか。
弾ならば即座に前者を選択するだろう。
そして、その直後に鈴のローキックを食らうまでがワンセットだ。
「風邪ひいても知らねぇぞ……」
「大丈夫だって。冬でも同じ格好して寝てるけど、至って一度も風邪なんて引いた事は無いぞ?」
「どんだけ体が丈夫なんだよ……」
これが南国育ちの強さなのか。
そう思わずにはいられなかった。
ソンネンとヴェルナーは肌を出し過ぎで、デュバルは普通に可愛過ぎて目のやり場に困る。
今は全力で体をコントロールして『生理現象』を必死に抑え込んではいるが、自室に戻ったら一気に爆発することは確実だった。
(俺……本当に大丈夫なのか……?)
窓から夜空を見上げ、遠い異国にいる姉を思い出しながら、これから先は自分の理性を武器に煩悩と戦っていく決意を固める一夏であった。
因みに、一夏が作った夕飯は皆に大好評で、おかわりが続出したらしい。
まずはジャブから。
次回以降から一夏の精神をいい意味でガリガリと削っていきましょうか。