インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
もう完全に全国は愚か、全世界に広まってますし。
皆が口が酸っぱくなる程に言っているとは思いますが、私からもご忠告を。
可能な限り、外出は本気で控えましょう。
どうしても出かけないといけない場合も、ちゃんと3密を守りつつ、マスクなども忘れずに。
そして、家に帰ってきたら手洗いうがいを徹底してください。
実際、私も仕事で外に出る時はマスク装着を心掛けてますから。
家にいてやることが無い人は、どうか私の駄文だらけの小説でも読んで暇を潰してくださいな。
いつもの放課後。
生徒達は各々に部活に打ち込んだり、早々に帰路に着いたりしているが、今日だけはなんだか少しだけ様子が違っていた。
「さて…一夏よ」
「な…なんだよ?」
弾を初めとするクラス中の男子達に詰め寄られ、一夏は窓際に追い詰められている。
一夏自身はどうして自分がこんな目に遭っているのか全く分かっていない。
「お前が一年間と言う期間限定で美少女達が住む孤児院で過ごすようになってから、早くも一週間が経過したわけだ」
「そ…それがどうかしたのかよ?」
「どうかした……だと……?」
本気で意味不明な一夏は、自分の素直な疑問を口にしたのだが、それが彼らの逆鱗に触れてしまったようだ。
男子達は全員が怒りに体を震わせ、ある者は血の涙を、ある者は唇を噛み締め、またある者は髪が逆立っていた。
「この学校のアイドルとも言うべき美少女達と一つ屋根の下で一週間も一緒に過ごして、何のアクションも起きない訳がないだろうが!!!」
「お前はいきなり何を言ってんだよっ!?」
「さぁ話せ!! 大人しく白状しろ!! お前はどんな極上の日々を過ごしたんだ!?」
「織斑の事だから、絶対にラブコメ系マンガみたいなイベントを過ごしているに違いない!!」
「ンなわけないだ…ろう…が……」
ここで語尾が小さくなる。
その変化を見逃すような男子達ではなかった。
「おい。なんでそこで声が小さくなる」
「やっぱりお前……!」
「い…いや。マジで何にもないから……」
「じゃあ、どうして目を逸らす?」
「そ…逸らしてねぇし……」
そこで弾に肩をガッ! っと掴まれて、無理矢理に正面を向かされた。
「一夏……俺の目を見て白状しろ。お前は何をした? もしくは、何を見た?」
「だ…だから、俺は別に……」
「オレノメヲミロト…イッテルンダゼ?」
弾の目からハイライトが消えた。
これはマジの時の目である。
「……あいつ等には絶対に言うなよ?」
全員が全力で頷き、更にグイっと顔を近づける。
「……風呂の前を横切った時……」
「横切った時……?」
「……中から聞こえてくる会話を聞いちまった」
「「「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」」」
男子、絶叫。
「な…内容は? 何を話してたんだ?」
「デュバルの肌が綺麗だとか、ヴェルナーの胸が大きくなったとか…ソンネンのプロポーションの話とか……」
「「「「「チクショ――――――――――――――――ッ!!!!!」」」」」
男子、慟哭。
「ほ…他には……他には何もないのか?」
「……風呂上がりの姿を見た」
「「「「「なん……だと……!」」」」」
男子、戦慄。
「髪を下したデュバル……すっげー綺麗だった……」
「ま…マジか……!」
「そ…ソンネンさんはっ!? 和風美少女であるソンネンさんはどうなんだっ!?」
「南国系美少女であるホルバインさんはっ!?」
「あ…あの二人は……」
ここで一夏は、あの時の事を思いだす。
今でも鮮明に思い出せる辺り、彼もまた相当な事が伺える。
「……悪い。流石にそれは俺の口からは……」
「お前は一体何を見たんだ――――――――っ!?」
「この野郎―――――――――――っ!!」
「死ね―――――――――――――っ!!!」
全員からの集中攻撃を受ける一夏。
彼らの必死な形相に、哀れさしか感じなかった。
「ぢくじょう……なんで…なんでお前ばがり……」
「な…泣くなよ」
「泣きたくもなるわ!! このラブコメ主人公体質野郎が!!」
「本気で反応に困る悪口はやめてくれ!」
一夏もここで反撃……なんて出来る筈も無く、そのまま両腕を掴まれたままの状態で力づくで椅子に座らされた。
「五反田裁判長! この被告は死刑が妥当かと思います!!」
「裁判長っ!? いつからここは法廷になったんだよっ!」
「うるへー! 今この瞬間からじゃボケ!! つーわけで死刑ね」
「なんか軽いっ!? ここが法廷なら俺にも弁護士の一人ぐらいはつけろよ!」
「じゃあ、御手洗数馬弁護士。何があるかな?」
「あー…なんか普通にムカつくんで死刑でいいんじゃないっすかね?」
「はい、死刑確定」
「全く弁護してねーじゃねぇーかっ!!」
なんとも元気な男子生徒諸君。
だが、こんな風に騒いでいる時に限って、予想外の介入者が現れたりするもので。
「ん? なにやらどうも騒がしいと思ったら、何をやってるんだ?」
「デュ…デュバルっ!?」
そんなわけで、何も事情を知らないデュバルのご登場。
「デュバルさん! 一夏の野郎に何もされてませんかっ!?」
「何かあったら、いつでも言って下さい!」
「お前らなぁっ!」
急にやって来たデュバルに媚びを売り始める。
何が何だか本気で分からない彼女は、余裕の笑みを浮かべながら彼らを諭した。
「大丈夫だ。慣れない環境だというのに、一夏は本当によくやっているよ。私も皆もかなり助かっているし、とても心強く感じている程だ。だから、皆が心配知るような事は何もないよ。あいつなりに紳士的に頑張っている」
「デュバル……」
彼女からの過剰な評価に、思わず本気で胸がトキめいた。
これでは、どっちが堕とす側なのか分かったもんじゃない。
「そ…それで、一人だけでどうしたんだ? ソンネン達は?」
「あいつ等なら鈴と一緒に先に帰ったよ。私は先程まではクラスの女子に頼まれて用事を片付けていたのだが、終わった直後に一夏に話さなければいけないことがあったのを思い出してな。こうして一人で教室に戻って来た訳だ」
「俺に話す事?」
別になんてことのない。ごく普通の用事だろうが、それでもドキドキしてしまうのは男の悲しい性か。
「今日は私が買い出し当番なのだが、もしよかったら一夏も荷物持ちに来てくれないかなと思ってな。ダメだろうか?」
「俺で良かったら全然大丈夫だぞ」
「そうか。ならば、先に下駄箱の所で待っているから、サッサと来てくれよ?」
「分かった」
軽く手を振りながら、デュバルは自分の鞄を持って教室を後にした。
「あまり喧嘩とかするなよー」
出る直前に一応の注意。
どうやら、彼女の眼には彼らが喧嘩に近い事をしているように見えたようだ。
「やっぱ…可愛いよな……」
「うん……清楚系金髪美少女…最高……」
デュバルが来たことで、一気に彼らの熱が冷めた。
だが、彼女の発言を思い出し、再びその目に炎が灯る。
「待ってくれ。彼女…さっきなんて言ってた?」
「一夏と買い出しって言ってたな」
「買い出し……放課後に一緒に買い物……」
「お…おい?」
一夏の心配を余所に、彼らの妄想は一気に膨れ上がる。
「それはつまり……」
「「「「「買い物デートっ!?」」」」」
「いや、普通に夕飯の買い出しだからなっ!?」
必死のツッコミも虚しく、一夏は再び彼らによって裁かれる事となったのであった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はぁ……」
「随分とお疲れのようだな。大丈夫か?」
「なんとかな……」
あまりデュバルを待たせる訳にもいかないので、あれからなんとかして彼らの包囲網から逃げ出す事に成功した一夏は、そのまま彼女と合流をしてから商店街に向かうことに。
「それで、何を買うかはもう決まってるのか?」
「勿論だ。朝からちゃんと買い物リストを作成していたからな」
ポケットの中から一枚のメモ紙を取り出すと、それを一夏にも見せた。
「流石はデュバルだな。準備万端だ」
「これぐらい普通だと思うがな」
何気なく受け流してはいるが、その頬は少しだけ赤い。
「んじゃまずは……」
「八百屋だな」
二人は、最初は孤児院の行きつけの八百屋に行くことに。
本来ならばスーパーに行く所だろうが、此れから行く店は店主とも昔から顔見知りで、色々とサービスをして貰っているのだ。
「こんにちは、おじさん」
「お! いらっしゃい、ジャンちゃん! 今日はあんたが買い出し当番かい?」
「はい」
「そうかそうか。本当に真面目でいい子だよなぁ……。ウチのバカ息子にも見習ってほしいぜ……」
「ははは……」
もう完全に常連となっているので、このような会話も日常的になっていた。
「おや? 今日は知らない奴も一緒だな? もしかして……ジャンちゃんの彼氏かいっ!?」
「か…彼氏っ!?」
八百屋さんのいきなりの言葉に、一夏の顔が急速沸騰する。
(お…俺がデュバルの彼氏…彼氏か……)
まぁ、そんな事を言われれば、嫌でも色々と妄想をしてしまうのが男の子なわけなのだが、デュバルの容赦ない一言が全てを打ち砕く。
「そんなんじゃないですよ」
「おや? そうなのかい?」
「そうですよ。確かにこいつは大切な友人であり幼馴染ではありますが、それだけです。それに、今日一緒に来たのは、ちょっとした事情で彼が今、私達の孤児院で暮らしているからです」
「なんだい、そうだったのか。それは残念だ」
「何がですか……」
デュバルの発言に地味に傷つく一夏。
それでもなんとかなっているのは、言葉の中に『大切』というフレーズがあったからだ。
(はは…そっか…そうだよな。デュバルにとっては、俺は幼馴染兼親友なんだよな……。でも、『大切な友人』か……)
実際、一夏の方も彼女達三人の事をとても大切に想っているので、そう言われて悪い気はしない。
「兄ちゃん」
「な…なんすか?」
「頑張りな。俺は応援してるぜ」
「ど…どうも」
八百屋さんに肩を叩かれながら、実にいい笑顔でサムズアップを見せられた。
一体何が『頑張れ』なのか。その意味をなんとなく理解した少年だった。
「よし! 今日はこの兄ちゃんの前途を祝して、いつも以上にサービスさせて貰うぜ!」
「なんでそうなるのかは意味不明ですが、とにかく、ありがとうございます」
「いいってことよ! 孤児院の子達には商店街の皆が世話になってるからな! これぐらい、どうって事はねぇぜ!」
なんとも気前がいい八百屋さん。
これが、この店が未だに大型スーパーなどにも負けずにいる最大の理由の一つだったりする。
「やったな、一夏!」
「そ…そうだな」
なんだか素直には喜べない一夏だった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
その後も色んな店で買い物を続ける二人だったが、その度になんでか色んなサービスをして貰った。
どうやら、あの八百屋が商店街のコミュニティを駆使して情報を広めたようで、行く店行く店の殆どから温かい目で見られまくっていた。
「なんか…凄い事になってたな。もぐもぐ……」
「全くだな。こっちとしては嬉しい限りなのだが、流石に困惑する。あむ」
そう言いながら二人が食べているのは、先ほど行った肉屋で貰った、揚げたてサクサクのコロッケ。
そのジューシーな歯ごたえは、嫌でも人を笑顔にするだろう。
「あそこのコロッケはいつ食べても格別だな……」
「確かに。これはマジでメチャクチャ美味いぞ。コツとか聞いたら教えてくれるかな……」
「その辺は大丈夫だと思うぞ? ヴェルナーも休みの日とかによく、魚屋の御主人に色んな魚料理を教えて貰いに行ってるようだしな」
「そうだったのか。初耳だ」
ヴェルナーが魚料理を得意とする理由がここで判明。
飄々としていても、陰で努力をするのが彼女なのだ。
「しかし、こんなにも大量になるとは完全に予想外だった。重たくないか?」
「これぐらい平気だって。いつも、千冬姉に鍛えられてるからな」
「そうか。流石は男の子だな」
嘗ては自分の男だったのだが、生まれ変わってから女として過ごした時間もかなり長くなってきているので、どうも女よりの考えになりがちになってくる。
体の方も鍛えてはいるが、それでも基本的な所では男性に敵わない所も多々出てくるのもまた事実だった。
自分の精神が徐々にではあるが変化しつつあることに、デュバルもそうだが、ソンネンもヴェルナーも全く気が付いていない。
それが吉と出るか凶と出るかは誰にも分らない。
「暫くは買い出しに行かなくても済みそうだな」
「かもな。それでさ、今日の夕飯は何にするんだ?」
「そんなの、もう決まってるも同然だろ?」
「それもそっか」
「「アジの塩焼きだな」」
そこはコロッケじゃないんかい。
本人達は否定するでしょうが、傍から見ていると完全に買い物デートです。
彼女達が本当の意味での『デート』をする日はくるのでしょうか?
次回はソンネン×一夏の話です。