インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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なんか、暫く他の作品を書いている間に、この作品の評価が上がりまくってたんですが……。

割とマジで我が目を疑いました。







アニマルセラピー

 それは、本当に何気ない、いつもの放課後。

 買い出し係であるヴェルナーと、そんな彼女がちゃんと買い物が出来るか心配で一緒に着いて行ったデュバルの二人が不在な為、今日はソンネンと一夏、鈴と弾の四人で帰り道を歩いていた。

 

「今日も買い出しだなんて、孤児院の生活も大変なんだな」

「そうでもないぞ? 確かに苦労することも多いが、それ以上に賑やかで楽しいからな。少なくとも、暇する事だけは絶対にねぇよ。な、一夏」

「そうだな。あそこに住むようになってから、毎日がお祭り騒ぎ状態だもんな。千冬姉と二人で暮らしてた頃からは想像も出来なかったぜ」

「あの広い家に二人っきりってものアレだもんね。それはそうと一夏」

「な…なんだよ?」

 

 ズイっと一夏に顔を近づけてきた鈴。

 その目はジト目になっていて、完全に何かを疑っている。

 

「あんた、デメ達や孤児院の皆に迷惑とか掛けてないでしょうね?」

「お前もそれを言うのかよ……」

「お前もって、他の誰かにも言われたわけ?」

「言われたよ。目の前のソイツにな」

「そいつって……」

 

 一夏の視線は弾に向けられている。

 無言の圧力に、思わず弾は後ずさりした。

 

「あぁ~…成る程ね。でも、意外ね。弾がそんな風に心配をするなんて」

「あのな。俺だって一応は自分の親友が人様の家で迷惑を掛けてないか考えたりはするんだぞ?」

「ふ~ん……」

 

 こちらも完全に疑っている目。

 普段の行動が思い切り裏目に出ている証拠だ。

 

「ま、アンタの思惑が何であれ、心配をした事実には変わりがない…か」

「ちょっとぉっ!? それだけまるで俺が普段から変な事を考えてるみたいに聞こえるんですけどぉっ!?」

「あら。そう言ってるつもりだったんだけど」

「酷っ!?」

 

 とどめの一撃。

 弾の心はもうドボドボである。

 

「デメも気を付けなさいよ? こいつ、頭の中で何を妄想してるか分んないからね?」

「うわぁ~…引くわー……」

「妄想ぐらい自由にさせてくれませんかねっ!?」

 

 五反田弾。完全に女子達にドン引きされるの巻。

 そんな親友を見ながら、一夏は密かに安堵していた。

 

(よ…よかった。ぶっちゃけ、今の俺もあまり弾の事は言えないんだけど、今回はこいつが身代わりになってくれてよかった……。その代わりと言っちゃなんだけど、今度お前の家に遊びに行く時、ソンネン達も誘ってやるよ)

 

 普通ならば、そんな事で詫びになるのか疑問に思うところだが、弾の場合は充分に詫びの代わりになるだろう。

 それどころか、泣いて喜ぶかもしれない。

 

「おっと。そろそろ道が分かれるな。そんじゃ、また明日な」

「うん。また明日ね」

「そんじゃあな~」

 

 軽く手を振りながら途中の分かれ道にて、一夏とソンネン、鈴と弾の二組に分かれた。

 今までならば一夏も鈴たちと同じ方向なのだが、今は孤児院に住んでいるので、二人とは違う方向に帰っている。

 孤児院までの短い間とはいえ、ソンネンと二人きりになれる時間を一夏は心の奥底で喜んでいた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「それでさ、進藤の奴がさ……」

「マジかよ……って、なんだありゃ?」

「どうした?」

「あれ……」

 

 歩きながら雑談をしていると、何かに気が付いたソンネンが前方を指差す。

 そこには、孤児院の前でなにやら座り込んでいる子供達の姿が。

 

「これ…どうしよう……」

「私達じゃ……」

「う~ん……」

 

 何かに困っている様子だが、ソンネン達がいる場所からは何をしているか全く分からない。

 仕方がないので、傍まで近づいて話しかけてみる事に。

 

「お~い。お前ら」

「そんな所で何をやってんだ?」

「あっ! デメねーちゃんに一夏にーちゃん!」

「おかえりなさい!」

「ただいま。で、何してるんだよ? そんな所に集まってよ」

「えっとね……実は……」

 

 子供達が少し横にどくと、そこには段ボール箱に入っている四匹の子猫の姿が。

 元気だけはあるようで、全部の猫がニャーニャーと鳴いていた。

 

「……捨て猫か?」

「多分……でも、書置きとかは無かったんだよ」

「随分と身勝手なもんだな」

「全くだ」

 

 子猫たちを見ながら、この子達を捨てた顔も知らない連中に怒りを覚える。

 だが、その怒りも子猫たちの可愛さによって、一瞬で無くなってしまう。

 

「みゃ~」

 

 無意識の内に出していた一夏の指を、一匹の猫がペロペロと舐めた。

 その瞬間、一夏の顔が一気に緩んだ。

 

「や…やばい……こいつら…めっちゃ可愛いぞ……」

「でしょ? この子達をこのままにはしたくないから、皆でどうしようかって話してて……」

 

 子供達は暗い顔で俯いてしまう。

 こんな時、大半は飼うのがダメな事がパターンなのは彼らも承知していた。

 

「一応、ダメ元で院長の旦那に聞いてみようぜ」

「大丈夫…かな?」

「さぁな。でも、何もしないで諦めるよりはずっとマシなんじゃねぇか?」

「そう…だよね! うん! デメねーちゃん、ありがとう!」

「どうってことねぇよ。へへ……」

 

 平気そうにしていながらも、少しは姉らしい発言が出来たことを喜んでいるソンネン。

 自分がお世辞にも女らしいとは思っていない彼女は、こんな細かい事でも喜んでしまう事が多い。

 それは、ソンネンの精神も徐々に女寄りになってきている証拠なのか。

 

「にしても、随分と腕白な子猫共だな」

「撲達が見つけた時から、ずっとこんな感じだったよ?」

「ふ~ん……」

 

 四匹の子猫たちはいずれもがバラバラの色の体毛をしていて、一匹は白地に黒で、お腹の部分に月のような模様が出来ている。

 二匹目はライトブラウンで、心なしか他の三匹よりも体が若干だが大きい。

 三匹目は真っ白な子猫だが、他の三匹よりも元気なようで、ずっと体を動かしてじゃれていた。

 四匹目は茶色い毛で、頭の辺りだけ白い毛になっていて、おでこの部分からちょぴりだけ毛が跳ねている、物凄く落ち着いている感じの猫だった。

 

「デメねーちゃんも抱っこしてみる? はい」

「お…おっと……」

 

 男の子が白地に黒の猫を抱きかかえてから、そっとソンネンに手渡した。

 落ちないように慌てて子猫を手で支えると、子猫は全く恐れる様子は無く、それどころかソンネンに何故か凄く懐いている様子だった。

 

「お前……オレが怖くないのか?」

「みゃあ」

 

 返事のつもりなのか、子猫は一回だけ鳴くと、ソンネンの頬をぺろぺろと舐め始める。

 

「ちょ…やめろって! くすぐったいんだよ!」

「あはは! その子、デメねーちゃんの事が大好きみたい!」

「いいな~」

 

 ソンネンと子猫が戯れている姿を見て、一夏は思わず固まっていた。

 それは別の意味で彼は感動していた。

 

(子猫と遊んでいるソンネン……マジで可愛い……)

 

 子猫なんて全く眼中になく、その熱い視線は完全にソンネンの方に注がれていた。

 恋する乙女が無敵であるのと同じように、恋する少年はどこまでも一途なのだ。

 

「おや? 随分と賑やかだね。何をしているのかな?」

「「「院長先生!」」」

 

 ここで院長の登場。

 袋に入った雑草を持っていることから、先程まで草むしりをしていたようだ。

 

「ん? デメちゃん、その子猫は……」

「ああ。実は……」

 

 ソンネンが代表して、これまでの経緯を話す事に。

 どんな答えが返ってくるかドキドキしながら待っていると、意外な言葉が返ってきた。

 

「なんだ、そんなことか。いいよ。ちゃんとその子達の世話をすると約束するのなら、ここで飼う事は一向に構わないさ」

「い…いいんですか?」

「勿論だとも。というか、実は君達が来る前にも犬や猫なんかを飼っていたことがあるんだよ。いずれも天寿を全うしたけどね」

「そうだったのかよ……」

 

 まさか、この孤児院がペットOKだったとは思わなかったので、本気で驚いていた。

 

「ここの庭ならば、その子達も伸び伸びと遊べるだろうしね」

「確かに」

「でもよ、猫を飼うなら色々と道具とかいるんじゃないか?」

「そうだね。昔、使っていた物が物置にあったとは思うけど、もう随分と古い物だしねぇ……」

 

 物置ならばソンネンや一夏もこれまでに何回か覗いたことがあるが、それらしいものは一度も見かけたことが無い。

 ということは、かなり奥に仕舞いこんでいるという事に他ならない。

 そんな代物を今から出していては本当に日が暮れてしまう。

 

「丁度いい機会だし、ちゃんと買い直した方が良さそうだね」

「それなら、買い出しに行ってるヴェルナーとデュバルにラインして頼めばいいんじゃないか?」

「それが良さそうだな。頼むよ」

「了解。任せときな」

 

 子猫を左手で抱えながら、右手だけで器用にスマホを操作してラインを送る。

 

『……ってなわけだから、ペットショップに行って猫用の餌や砂とかを買ってきてくれねぇか?』

『それはいいけど……それだけでいいのか? 他にも必要な物はあるんじゃ?』

『他のは後日に買いに行けばいいだろ? 今回は取り敢えず、必要最低限の物だけで十分だよ』

『りょーかいだ』

 

 これでよし…と呟いてからラインを終了する。

 

「分かったってよ」

「これで一先ずは一安心だ」

「では、まずは中に入ろうか。お湯で温めたタオルでその子達の体を拭いてあげないと」

「「「は~い!」」」

 

 院長が残りの子猫たちが入っている段ボールを持ち上げて歩き出し、それに続くように子供達が後を追う。

 

「……俺達も行くか」

「だな」

 

 残された一匹を膝の上に乗せたまま、ソンネンと一夏も中へと入る事にした。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 買い出しから戻ってきた二人に、改めて詳しい事情を説明すると、それぞれに違う反応を見せてくれた。

 

「こ…これが猫の子供か……。始めて見るが、なんて可愛らしくて小さいんだ……。さ…触っても大丈夫なのだろうか? 怪我とかしないか?」

 

 デュバルは興味と興奮で女の子らしさを全開にしていた。

 

「いい面してるじゃねぇか。よし、このオレがとっておきの魚料理を御馳走してやるからな!」

 

 ヴェルナーは完全に魚を食べさせる気満々。

 漁師の孫という事もあり、昔から猫が身近にいる生活を送ってきたらしく、かなり手馴れていた。

 

「いいね~。この孤児院が更に賑やかになってくれた」

 

 院長もとても嬉しそうに、子供達と遊んでいる子猫たちを眺めている。

 彼にとっては、子供達も子猫たちも同じ『大切な子供』なのだ。

 

「あ。肝心な事を忘れてた」

「なんだそりゃ?」

「名前だよ。な・ま・え」

「そっか。そうだよな。家族の一員となった以上は、ちゃんとこいつらの名前を考えてやらないといけないよな」

 

 確かに、ペットにとって名前はとても重要なものの一つだ。

 だが、生き物の名前なんてそう簡単に考え付くはずも無く、誰もがウンウンと頭を捻らせて考えていた。

 そんな中、ソンネンだけが一人、子猫を抱き上げながら、その顔をジーっと直視していた。

 

「…………よし。決めた!」

「「「「「え?」」」」」

 

 いきなり何を言い出すのか。

 ソンネンはまず、自分が抱いている子猫に向かって宣言した。

 

「お前の名前は『三日月』。通称『ミカ』だ」

「なんで三日月? なんで通称?」

「こいつの体になんか月みたいな模様があるから。で、通称はなんとなくだ」

「なんとなくって……」

 

 ここで反論したいと思う一夏だったが、何も思いつかない自分では何も言えない。

 結局、このままソンネンの独断を許す事に。

 

「そして、デュバルが抱いているのが『昭弘』な」

「あ…昭弘?」

「おう。なんか『昭弘~!』って顔をしてるから」

「え~……」

 

 この勢いは止められそうも無く、残り二匹の名前もそのまま決定した。

 

「ヴェルナーと一緒にいる奴は『シノ』な」

「だってよ。シノ」

「みゃう」

「こいつもそれでいいってよ」

「分かるの……?」

 

 子供達の一人が当然の疑問を口にするが、今更なので誰も何も言わない。

 

「最後に、院長の旦那に懐いてるのが『オルガ』だ」

「オルガ……」

「なんだか『希望の花』が咲き誇りそうな名前だな」

「ちゃんと注意して見ていないといけないね~」

 

 院長もちゃんと理解しているのか、これからはオルガの事を注視していようと心に決めた。

 

「なんか面白そうだし、後で束や千冬の姉御に写真でも送ってやろうかな」

 

 ソンネンが何かを言っているが、気にしてはいけない。

 

 こうして、この孤児院に新たな仲間達が加わった。

 可愛らしい四匹の子猫たち。

 三日月はソンネンに一番懐き、昭弘はデュバルに、シノはヴェルナーと仲が良く、オルガは院長に大事にされている。

 

 後に孤児院に遊びに来た鈴が子猫たちを見て、その可愛さにメロメロになるのは当然の事だった。

 

 

 

 

 




もう言うまでもないですよね。
 
子猫たちの名前の元ネタは、鉄血のオルフェンズのガンダムパイロット&我らが大好きな薄幸の団長です。
流石に猫なので『希望の花』は咲かせるつもりはないですけど。


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