インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
でも、同時に今後の展開に関する重要な話もここで書かないといけないので、予定であるドイツ編もある事を考えると、原作に突入できる時がいつになるのか全く予想できません。
一応、原作突入時のプロットは完成してるんだけどなぁ~……。
ヨーツンヘイム孤児院の朝は早い。
一番に目を覚ますのは院長で、彼は一人で中庭に出て、そこで軽く運動をしてから活動を開始する。
その次に起きてくるのはデュバルで、基本的に朝ご飯の用意は彼女の仕事となっていた。
「おはようございます」
「おはよう。今日も早いね」
「昔からの癖になってますから」
より正確に言うと『前世からの癖』だ。
軍人だった頃から彼女は生真面目な性格で、艦の中で最も早く起きる事も珍しくない。
どうやら、宇宙空間に置いてもデュバルの体内時計は正確に時間を刻んでいるようで、よく皆に驚かれていた。
「では、顔を洗ってきたら朝ご飯の準備をしますね」
「ならば、私は子供達を起こしてこようか」
「お願いします」
いつもならばここで会話は終わるのだが、最近では更にここに一人加わるようになっていた。
「二人とも、もう起きてたのかよ」
「おはよう一夏」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「お蔭様で。朝の準備をするんだろ? 俺は何をしたらいい?」
「そうだな……」
顎に手を当てて、少しだけ試案をするデュバル。
数秒の後、何かを思いついたのか、うっすらと笑みを浮かべて一夏の方を向いた。
「じゃあ、顔を洗ってからでいいから、ヴェルナーの事を起こしてきてくれないか?」
「ヴェルナーを?」
「そうだ。前々から時々、朝寝坊をすることがあってな。念の為に…な」
「ソンネンはいいのか?」
「あいつなら大丈夫だ。あと少ししたら、自分から起きてくるさ」
「分かった。それじゃあ、顔を洗ったら行ってくるよ」
「頼んだぞ。その間に私は朝ごはんの準備をするとしよう」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ヴェルナー。ヴェルナー? まだ寝てるのか?」
一夏がヴェルナーの部屋の前まで来て扉を何度もノックするが、全く返事が無い。
本当にまだ起床していないのか?
そう思ってもう何度か扉を叩いてはみるが、何の反応も示さない。
こうなったら、自分の手で彼女を起こさないといけないのではないか?
意を決して一夏は、試しにドアノブを掴んだ。
普通ならば鍵が掛かっていて開かない筈だ。
幾ら腕白とはいえ、ヴェルナーだって立派な女の子。
自分の部屋の夜の戸締りぐらいはちゃんとしているだろう。
だから、この行為は本当にダメ元だ。
万が一にでも開いていたらラッキー。
そうじゃなかったら、院長さんに合鍵を貸して貰おう。
「あ…あれ?」
だが、事態は全く予想外の展開を迎えた。
なんと、ヴェルナーの部屋の扉は全く施錠がしてなかったのだ。
簡単に扉が開き、出来るだけ音を立てないように、そっと室内へと入る。
別に、ヴェルナーの部屋に入るのはこれが初めてじゃない。
これまでに何度も彼女の部屋で勉強会をしたり、遊んだりしてきた。
だから、部屋自体は全く珍しくも無い。
だが、この場で全く見たことのないものが存在している。
それはベットの上で無防備な寝顔を見せている、この部屋の主である少女だった。
「う~ん……むにゃむにゃ……」
「やっぱり寝てる……」
寝ている事は別に問題無い。
それは当たり前の事だ。
問題があるとすれば、それはヴェルナーの格好の方だった。
「……なんつー格好をしてんだよ」
相変わらず、タンクトップに短パンだけしか着ていない。
余りにも無防備過ぎるその姿は、お年頃な一夏の目には刺激が強すぎた。
「……成長…してるんだな」
どこを見てその感想が出たのか。
この場に鈴がいれば、即座に脛蹴りをお見舞いされているだろう。
「いやいやいや! いきなり何を言ってんだ俺は! 女の子の部屋に侵入して寝顔を除くなんて、普通に変態じゃねぇか!」
自覚があるのは素晴らしい。
「とっととコイツを起こさないと、俺までデュバルの朝ご飯を食べ損なっちまう! お~い! もう朝だぞ~! 起きろ~!」
「そのアジのフライはオレのだぞ~……」
「どんな夢を見てたら、そんな寝言が出るんだよ! いいから起きろって!」
最初は声だけで起こそうと試みたが、それだけではダメだったらしく、仕方なく彼女の体を揺らしてから起こしてみる事に。
「ほら! 早く起きないと学校に遅刻しちまうぞ!」
「う~ん……」
「うわぁっ!?」
すると、いきなりヴェルナーが寝返りを打ちながら、伸ばしている一夏の腕を掴んでからベットに引きずり込んだのだ。
もうこれまでに何度も言ってきているが、彼女達は普段から有事の際に備えて密かに体を鍛えている。
少なくとも、完全に不意を突かれた状態の一夏程度ならば、簡単に動かすことが出来るぐらいには。
「一夏~…それはオレのプリンだぞ~……」
(ヴェ…ヴェルナーに抱きしめられてるっ!? しかもこの力……全く抜け出せない……っていうか、なんか顔がヴェルナーの胸に押し付けられてるんですけどっ!?)
まるで抱き枕でも抱いているかのように、ヴェルナーは一夏の体を両腕で抱きしめて、その顔を自分の胸に押し付けている。
傍から見たら、完全にベットでイチャイチャしているバカップルだ。
(ど…どうするどうするどうするっ!? もしもこんな所を誰かに見られたりでもしたら……)
「何やってんだよお前ら……」
「え?」
声のした方向に向かって必死に目を向けると、そこには開いたドアの向こうからジト目でこちらを見ているソンネンの姿が。
「ち…違うんだ! これはヴェルナーが寝ぼけて俺を……」
「別にオレはお前らがどんな関係になっても気にしねぇぞ?」
「いやだから!」
「それよりも、早く来ないと遅刻するぞ~」
「ちょ…行かないでくれ! 話を聞いてくれ~!」
一夏の願いも虚しく、ソンネンは呆れ顔を見せながら車椅子を動かして去っていってしまった。
「一夏も欲しいのか~…? いいぞぉ~……」
「お前もいい加減にマジで目を覚ませぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
その後、一夏の必死の声でようやく目を覚ましたヴェルナーなのであった。
ついでに、この時の出来事は一夏の脳裏に深く刻まれたとかなんとか。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
朝ご飯を食べ終えると、歯磨きの後に子供達は登校の準備をし始める。
幼稚園組や小学生組はまだ大丈夫だが、四人の中学生組はかなりバタバタとしたことになっている。
「今日の授業は確か……」
自分の机に貼ってある時間割を確認しながら、必要な分の教科書とノートを鞄に詰め込んでいく。
このように、意外と細かいところがある一夏は、実は今まで一度も忘れ物をしたことが無く、よく忘れ物をする弾に物を貸す事が多い。
「よし。これで準備完了だ」
もう既に制服にも着替え終わっている一夏は、まだ準備が終わっていない女子三人組を呼びに行くために自室を出る。
「恐らく、今日もいつもみたいにソンネンの部屋で色々と手伝ってるんだろうな」
ソンネンは足が不自由ということもあり、制服への着替えが一人では困難なのだ。
上半身は何の問題も無いのだが、大変なのはスカート。
私服が許されていた小学生の時は着替えやすい服装で事足りていたが、制服の着用義務がある中学生となるとそうもいかず、毎朝のようにデュバルとヴェルナーの二人に着替えを手伝って貰っている。
「もう終わったのか~? 入るぞ~?」
ソンネンの部屋まで来たのはいいのだが、この時に一夏の悪い癖が発動してしまう。
もうソンネンが着替え終わっていると仮定して、ノックもせずに扉を開けてしまったのだ。
その結果は当然……。
「「「あ」」」
「へ?」
ヴェルナーがソンネンの体を脇から持ち上げて、真っ直ぐになった隙にデュバルがスカートを履かせようとしている。
その途中で一夏が遠慮なく扉を開けてしまったので、四者四様に固まってしまう。
(緑の縞々……)
こんな時に何を見ているのか。
一刻も早く、脱兎のように逃げるが吉であると言っておこう。
「なに人の着替えを見てんだゴラァァァァァァァァッ!!!」
「ご…ごめん!! もうとっくに着替え終わってると思ってつい……」
「謝罪はいいから、とっとと扉を閉めて部屋から出ろ!!」
「一夏はエロいなぁ~」
「言わないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
ヴェルナーに言われると精神ダメージ増大になるデバフに掛かっている一夏は、顔を真っ赤にしながら急いで部屋から出て扉を閉めた。
「なんか…今日の俺ってこんなんばっかだな……」
閉めた扉に背中を預けながら、自分の行動に呆れるしかない。
けど、その頭にはしっかりとソンネンのあられもない姿もバッチリと記憶されていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
それからは何事も無く、無事に昼休みになった。
「はぁ……今日は本当に散々な目に遭ってるよな……」
「全部お前が悪いんだろうが」
「それを言われると何も言えない……」
朝に起きた見事なラッキースケベを全て鈴などに話された一夏は、鈴から頭グリグリの刑に処されて、弾を筆頭にしたクラス中の男子達からは慟哭の血涙を流しながらのプロレス技の刑を受けていた。
「どうも昔から、一夏はいざという時に注意力散漫になりがちな面があるな」
「一応、自分でも気を付けているつもりなんだけどな……」
今は、デュバルと一緒に購買部まで行った帰りで、二人並んで歩いている。
背が低いのはデュバルの方なのだが、説教されながら肩身が狭くなって猫背になっている一夏の方が不思議と歳下の弟のように見えてしまう。
どうやら、一夏はとことんまで『弟キャラ』が定着しているようだ。
「これからは、もっと周囲の状況に気を配ってだな……」
「分かってますって……デュバル! 前!」
「なんだ……きゃあっ!?」
「デュバル!!」
廊下に落ちている紙に足を滑らせて、その場に倒れそうになるデュバル。
それを咄嗟に一夏が庇い、彼女を抱えるようにして一緒に倒れてしまった。
「痛たた……だ…大丈夫か?」
「あ…あぁ……私ならば大丈夫…だ……ありがとう……」
廊下のど真ん中で一緒に倒れている男女。
それだけでも十分に目立つ案件なのに、二人の格好が更にそれを大きくしていた。
「い…一夏……」
「どうした? どこか打ったのか?」
「いや…そうじゃなくて……」
「ん?」
「か…顔が近い……」
「あっ!?」
二人の体勢はお世辞にもいいものとは言えなかった。
一夏の右腕はデュバルの腰に回されていて、逆に左腕は廊下の床に着いている。
そして、二人の顔は今にもくっつきそうな程に接近していて、羞恥心から咄嗟に横を向くデュバル。
「ど…どうやら、画鋲が外れて床に落ちたポスターに足を滑らせてしまったみたいだな……」
「そ…そっか……」
雰囲気に飲まれ、何故かこの体勢のまま動こうとしない両者。
そんな光景を見て、何も思わない思春期の少年少女は一人もいない訳で。
「ゆ…床ドンだ……。壁ドンならぬ床ドンだ……」
「織斑君がデュバルさんを押し倒してから床ドンした……」
「顔に似合わず大胆……」
周囲にいる生徒達の声を聞いて、凄まじい速度で離れた二人。
二人揃って顔が真っ赤になって、頭の中がグチャグチャになっていた。
(な…なんだ今のは…! この私が『きゃあっ!』だとっ!? 幾ら体が少女だとしても、中身は立派な男なのだぞ! それなのに、どうしてあんな女々しい声が出るっ!? もしや…精神の方も女になりつつあるのか……?)
(ヤ…ヤバい…! さっきのデュバル……メチャクチャ可愛かった……! すっごいいい匂いもしたし……あのまま一緒に倒れていたら、もしかしてお互いの唇が重なって……って、バカか俺は!? 馬鹿なのかっ!? そんなの普通に最低じゃねぇか!!)
今度は一緒に頭を抱えだした。
何から何まで息ピッタリな二人に、ひっそりと近づいてきている集団があった。
「おい…鈴。今の見てたか……?」
「ちゃんと見てたわよ…弾」
「じゃあよ……どうする?」
「んなの決まってるじゃないのよ」
憤怒の形相で親指で首を掻っ切るような動きをする鈴。
「
「「「「「イエス、マム」」」」」
鈴たちの後ろに控えていた男子達が一斉に押し寄せて、一夏の体を持ち上げてどこかに運ぼうとした。
「ちょ…なんだよお前らっ!?」
「い…一夏っ!?」
「黙レ……!」
「俺達ノあいどるヲコンナ場所デ押シ倒シヤガッテ…!」
「万死ニ値スル……!」
またもや血涙を流しながらの必死の形相。
こうなったらもう、彼らを止められる者はいない。
「大丈夫よジャン。あなたの貞操はあたしたちが絶対に守ってあげるわ」
「いや、それはいいのだが一夏が!?」
「あいつなら心配いらないわ。ちょっと身の程を教えるだけだから」
「身の程となっ!?」
ジタバタと足掻きながらも、複数人で体を抑えられれば何も出来ず、そのまま一夏は廊下の向こうに連れ去られていく。
「「「「「コッチニ来イィィィィィィィッ!!!」」」」」
「なんでさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
廊下には一夏の困惑の叫びだけが木霊し、消えていった。
その後、昼休みが終わるギリギリの時間に一夏は満身創痍の状態で戻ってきたらしい。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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「はぁ……本当に今日は厄日だ……」
夜になり、大きな溜息を吐きながら入浴の準備を済ませて浴場に向かう一夏。
無類の風呂好きの彼にとって、数少ない癒しの時だ。
「ゆっくりと風呂に入ってから、嫌な事は忘れよう……」
ささっと服を脱いでから風呂に続く曇りガラス戸を開ける。
この時、一夏は昼間にデュバルに注意されたことを思い出すべきだった。
もっと周囲に気を配ってさえいれば、この場に自分の着替え以外に複数の着替えがある事に気が付いた筈だ。
「ふ~んふふふ~ん……え?」
「「「…………」」」
そこには、全身に泡を付けている一糸纏わぬ三人の少女達の裸があった。
大事な部分は
「「「この変態野郎が――――――――!!!」」」
「すんませんでした―――――!!! べぶら!!」
デュバルの投げた洗面器が顔に、ソンネンの投げた洗面器が腹に、ヴェルナーの投げた洗面器が股間に直撃し、言葉に出来ない痛みに悶絶しながら必死に戸を閉めた。
「うぅぅ……まだ厄日は続いてるって事かよ……」
「あっ! 一夏お兄ちゃんに、まだデメお姉ちゃんたちがお風呂に入ってるよって伝えるの忘れてた!」
悪意のないうっかりにて今日最後のラッキースケベを発動させてしまった一夏なのであった。
一夏、まさかのラッキースケベ4連発。
やっぱり、一夏とこれは切っても切れないですよね。
次回はちょっとだけシリアスになるかも。
一気に時間を飛ばして、鈴ちゃんの『例の話』をしようと思ってますので。