インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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なんか、このまま行くと原作に入る頃には確実に70話とか越しちゃいそうな気がします。

それを自覚してしまったせいでしょうか、急にポコンと入浴中にアイデアが降り注いで、あっという間に数話分のプロットが完成してました。

恐らく、暫くはこの作品の更新を優先するかもしれません。







進路相談

 中学二年も半ばまで来れば、否が応でも高校受験の話が出てくる。

 そして、同じように授業とは別に先生と生徒でごく近い未来の事を話し合う『進路相談』もしていく訳で。

 勿論、今は立派な女子中学生となっている『彼女達』も進路相談を行っていた。

 

「では、今から進路相談を行う」

「よろしくお願いします」

 

 生徒指導室を借りてから、午後の授業を一つ潰してからの進路相談の時間を設けた。

 少し手狭な部屋にあるテーブルを挟んで、担任教師(白髪交じりの中年男性)とデュバルが向かい合うように座っていた。

 

「お前の成績ならば、どんな高校でも間違いなく一発合格するだろうな。いや、もしかしたら学校側から推薦状も出せるかもしれん」

「推薦状……」

 

 それは、デュバルからしたら非常に嬉しい話だった。

 どの高校に進学するにも、かなりの学費が必要になる。

 だが、推薦で入ることが出来れば、入学費などが免除される。

 少しでも院長の負担を軽く出来るのであれば、それに越した事は無い。

 越した事は無い……のだが……。

 

(今の私には…いや、私達には絶対に行かなければいけない場所がある。先生には非常に申し訳ないが、推薦などの話は……)

 

 そんな事を考えている間に、担任は手元にあるデュバルの成績表などを見ていた。

 

「いや、少し話を急ぎ過ぎたな。まずは、デュバルが進学したいと思っている高校を聞こうか」

「分りました」

 

 この質問を待っていた。

 自分の中では、とうの昔に答えは決まっている。

 

「私が受験したい学校は……」

「学校は?」

「……IS学園です」

「…………そうか」

「え?」

 

 想像よりも呆気ない反応に、逆にデュバルの方が呆けた声を出してしまった。

 

「どうした? まさか、俺が反対でもすると思っていたのか?」

「いえ……流石にそこまでは。でも、少しは何かを言われるとは思っていました」

「そうだな。もしもこれが他の生徒だったのならば、確実に色々と言っていただろう。だが、お前はこの学校は愚か、付近の中学全部を合わせても1・2を争うほどの成績の持ち主である上に、生活態度も申し分ない。しかも……」

「しかも?」

「他の先生たちが言っていたんだよ。お前やデュバル、ホルバインたちがよく三人でISの事を話していたとな」

「なんと……」

 

 聞かれていた。

 『壁に耳あり、障子に目あり』とはよく言ったものだ。

 

「それを聞いたせいかな……。なんとなく、お前達がいつの日か必ず『IS学園に行く』と言い出すんじゃないかと、心のどこかで予想はしていた」

「先生……」

 

 前世でどれだけの人生を重ねていても、やっぱり『教師』という人達には敵わない。

 普段から尊敬の念を抱いている担任教師だったが、今回の話を聞いてその思いが増々大きくなった。

 

「IS学園は非常に倍率が高いが…お前ならきっと大丈夫だろう。必ず合格するさ」

「ありがとうございます」

 

 在り来たりな言葉だが、尊敬する担任から言われれば、その重みは全く違う。

 担任のこの一言が、今のデュバルのやる気をさらに後押しした。

 

「そうだ。IS学園の受験を希望しているのならば、一足先早くに教えておいてもいいだろうな」

「何をですか?」

「実はな、今年度末辺りに政府からの要請で、この学校でも『簡易IS適性検査』を執り行う事になってな」

「他の学校で行われている事は存じていましたが、とうとうこの学校でも……」

「ああ。それで高い適性値を出せれば、お前が合格する確率は更に高くなるだろう」

「はい」

 

 デュバルの目を真っ直ぐに見て、まるで父親のような顔で笑った。

 

「頑張れよ。担任として、一人の人間として、お前の事を応援してるからな」

「はい……全力を尽くします」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 二番目はソンネン。

 車椅子に座っているので、最初からあった椅子は端の方にどかしてある。

 

「さて、お前はどこの高校に進学すr……」

「IS学園一択だ」

「せめて、最後まで言わせてくれ……」

 

 教師の面目、丸潰れである。

 

「自分の教え子にこんな事は余り言いたくはないんだが、敢えて問うぞ」

「おう」

「お前……本気なんだな?」

「当たり前だ。伊達や酔狂でこんな事を言うような女に見えるのか?」

「いや。女子としては口調などは荒っぽい方だが、それでもお前が誰よりも誠実で真面目なのは俺が一番よく知っている」

「へへ……」

 

 正面から褒められて照れくさいのか、少しだけ顔を赤くして頬を人差し指で掻いている。

 仕草だけならば、もう完全に立派な少女だった。

 

「お前は足が悪い。通常の高校を受験するにあたって、これは相当なハンデになる」

「知ってる」

「普通ならば、お前には障害者の子達が通うような高校に行って貰いたいのだが……お前はそれを良しとはしないだろうな」

「今更。……オレだって、本当がそっちの方がいいって分かってはいるんだよ。けどな先生……」

 

 ここでソンネンは、担任の事を逆に見返し、その目を見つめる。

 

「約束をしちまったんだよ。昔、すっごい世話になった大恩人で、尊敬する人と」

「どんな約束だ?」

「『IS学園でまた会おう』ってな」

「ソンネン…お前は……」

 

 担任はそこで初めて、ソンネンが言っていることが冗談抜きで本気である事を悟った。

 まだ幼さすら残している少女の瞳の中に宿っているのは、『信念』という名の真っ赤な炎。

 これを否定することは、誰にも出来ないだろうし、許されないだろう。

 

「足が悪いお前は、健常者である受験生たち以上に厳しい判定が下されることになるだろう」

「それがどうした。寧ろ、望むところだぜ」

「実技試験もあると聞いている」

「それなら大丈夫だ。『手』はちゃんと考えてある」

 

 勿論、彼女の言う『手』とは、言うまでも無く自身の『愛機』の事を指している。

 

「はぁ……説得するだけ無駄…か」

「当然だっつーの」

「そうだな……。お前の場合は、成績がいい上に人望もある。それが強みになってくれれば或いは……」

「或いは、なんて可能性の話はどうでもいいよ。自分の未来ぐらいは自分自身の手で切り開く。それぐらい出来ねぇと、デュバルやヴェルナーに置いて行かれちまう」

 

 この言葉で初めて知った。

 自分が普通の子達よりも劣っている事は、彼女自身が一番よく自覚していた事を。

 だからこそ、それを悟られぬように必死に明るく振る舞い、勉強を頑張ってきたのだと。

 彼女は常に必死だったのだ。必死に、友人たちと一緒にいる為に陰で誰よりも努力をしてきたのだ。

 

「お前の決意はよく分った。そっち方面で話を進めていくことにしよう」

「あざっす! 流石は先生だな! 話が分かる!」

「褒めても何も出ないぞ。あと、少しは敬語が使えるように努力しろ」

「分りましたよ。先生」

「………普通に違和感しかないな」

「酷っ!?」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 三人目はヴェルナー。

 彼女の場合は担任でも全く心の内が読み切れないでいた。

 なので、ここはストレートに尋ねてみる事に。

 

「あ~…ホルバイン?」

「なんスか?」

「デュバル、ソンネンと二人続いて同じ高校を受験すると言ってな。そこで尋ねたいんだが、もしかしてお前も……」

「行くつもりだけど? IS学園に」

「そうだよなぁ~……」

 

 もう完全に分りきっていた事。

 学校内でも有名な仲良し三人組の内、二人がIS学園に行くと言い出したのだ。

 残りの一人も同じ学校に行くと言うのは必然だった。

 

「お前も、あの二人に負けず劣らずの成績だしなぁ……」

「勉強は学生の義務だしな」

「それを普通に言えるお前を、先生は本気で凄いと思うよ」

 

 担任から見たヴェルナー・ホルバインという少女は、どこか空気のように掴み所のない生徒だった。

 だが、先程も言った通り成績に関しては申し分ないし、こう見えて友達思いの優しい少女であるのは周知の事実だ。

 誰かが困っていたら迷わず手を差し伸べる。

 それ故に、実はヴェルナーの内心は非常に高評価だったりするのだ。

 

「俺の知らない間に…お前らは大人になっていってるんだな……」

「それは、オレたちが大人になりたいって望んだからだよ」

「そんなもんか……」

 

 教師は子供達を教え、導く職業。

 だが、時には子供達に何かを教えられることもある。

 それがまさに今だった。

 

「ウチの学校、そしてウチのクラスから三人もIS学園受験希望者が出てくるとはな」

「意外っスか?」

「正直に言うとな。だが…なんでだろうな。不思議とお前達なら大丈夫な気がするんだわ」

「なんだそりゃ。先生はエスパーかなにかッスか?」

「覚えとけ。教師ってのはな、自分の教え子の事なら、なんでも分かっちまうんだよ」

「マジか。スゲーな」

「そうだ。スゲーだろ。そう思ったのなら、これからはもっと担任には敬意を持って接しろ」

「今までも十分に敬意を持って接してるつもりなんだけどな」

「お前の場合は、その敬意がよく分らないんだよ……」

 

 どこまでも飄々としているヴェルナーは、やっぱりどこまでもよく分らない少女なのだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 放課後の屋上。

 鈴に呼び出されて、いつもの三人娘が訪れていた。

 

「聞いたわよ。あんた達、揃いも揃ってIS学園を受験するって言ったらしいじゃない」

「なんで知ってるんだ?」

「先生がすっごく悩ましげな顔をして廊下を歩きながら、アンタ等の事をぶつぶつと呟いてたから」

「「「……………」」」

 

 本人達からすれば、普通に自分の望みを言っただけなのだが、それが相当なプレッシャーになってしまったようだ。

 なんだか急に申し訳なくなってしまった。

 

「あたしは……どうしようかな……」

「鈴の進路相談は明日だったな」

「うん。もうすぐ転校するあたしに何を聞くのよって感じだけど、あの先生の事だから、普通に思い出話で終わる可能性もあるわよね」

「かもな」

 

 ここで沈黙が流れ、それを助長するように風が吹いた。

 各々の髪が靡いて、顔を覆い隠す。

 

「ねぇ……」

「どうした?」

「もしも…もしもよ? あたしもIS学園を受験して、無事に合格とかしたら、またアンタらに会えるのかな……?」

「私たち全員が合格出来たら、確実に会えるだろうな」

「そっか……」

 

 それを聞いて、今まで沈んでいた鈴の顔に徐々に活気が戻ってきた。

 まるで、真っ暗な洞窟の中を彷徨っている最中に、一筋の光を見つけ出した冒険者のように。

 

「……決めた」

「「「何を?」」」

「あたしもIS学園を受験する!」

「ほぅ……?」

 

 そう叫んで振り向いた鈴の目には、もう涙は一滴も無かった。

 眩しい笑顔を見せながら、高らかと宣言する。

 

「あそこなら、中国に戻っても普通に受験できる。なんなら、いっそのこと代表候補生とか目指してみようかしら?」

「いいんじゃないか? お前は頭もいいし運動神経も抜群だ。しかも、かなりの努力家ときてる。並大抵の事じゃないだろうが、可能性はゼロじゃない」

「そうよね! よぉ~し…なんか元気出てきた!」

 

 大きく両手を空に向けて振り上げて、思い切り叫ぶ。

 もう鈴には、微塵も悲壮感はなかった。

 

「それじゃ、早く帰りましょ。一夏と弾が下駄箱で待ってるんでしょ?」

「待たせ過ぎて勝手に帰ってなければいいけどな」

「その時は、一夏だけ夕飯抜きだな」

「ナイスアイデア」

 

 少女達は帰路につく。

 明日への希望を抱いて。

 もう……迷いも嘆きも無い。

 未来へ向かって突き進むだけだ。

 

 

 

 

 

 




例の『酢豚の約束』とは別に、IS学園での再会フラグを立てました。

こっちの方が鈴ちゃんっぽくていいと思って、こうしました。

そして、次回は遂に……。
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