インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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デメテル強かったよぉ~!

50ターン近く使って、ようやく撃破……長かった……。

それに比べてアフロディーテの弱い事。

冗談抜きで拍子抜けでした。

あれなら、その前に戦う羽目になるコンスカヤの方がずっと手応えがありましたね。






また会う日まで

 今日の皆はどこか様子がおかしかった。

 なんだか浮ついているような、緊張しているような。

 特に、一夏の態度が明らかに変で、どう見ても何かを隠しているようにしか見えなかった。

 

「あんた…何かあたしに隠し事とかしてない?」

「べ…別に? そんなの全然ないぞ?」

「ふ~ん……」

 

 超挙動不審である。

 それを見て、デュバル達と弾が呆れて頭を押さえていた。

 

「嘘が下手過ぎか……」

「首から上はいつもの表情をしているが、首から下が携帯のバイブレーションみたいに振動してるしな」

「逆に、あんな事をしてよく疲れないよな」

「バカ丸出しだな……」

 

 一夏、言われ放題である。

 

「っと。こんな所で油を売っている暇はないんだったな。ソンネン」

「分かってるって。はぁ……」

 

 大きな溜息を吐きながらソンネンは車椅子を動かして鈴に近づき、一夏に目配せをする。

 すると、それですぐに察したのか、彼は皆の元まで行って鞄を手に持った。

 

「ソンネン。私達は先に帰るからな」

「おう」

「お前は鈴と後でゆっくりと帰ってこいよ」

「はぁ?」

 

 全く状況が分らない鈴は、完全に混乱状態に。

 そんな彼女の制服の袖を引っ張って、ソンネンがいつもの笑顔を浮かべる。

 そうこうしている間に、皆は揃って教室を出て行った。

 

「今日…何かあるの?」

「ちょっとな。それよりも、オレらも帰ろうぜ。今日も孤児院に寄るんだろ?」

「う…うん」

「じゃ、とっとと行こうや」

 

 なんとも、もどかしい気持ちになりながらも、ソンネンの言う通りに一緒に帰る事に。

 

(今日って…誰かの誕生日とかだったかしら?)

 

 その推理は惜しいと言っておこう。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「そんで、これがその時の写真だ」

「どれどれ~…?」

 

 帰り道、ソンネンが自分のスマホで撮影をした写真を鈴に見せると、すぐに彼女の顔に満面の笑みが。

 

「キャ~♡ これ…めっちゃ可愛い……」

「だろ?」

「うん……猫たちの寝ている姿って反則よね……」

 

 画面には、ミカを初めとする孤児院で飼っている猫たちが仲良く寝ている姿が写っている。

 アングルも明るさも申し分なく、見事な一枚だった。

 

「あ~…早く孤児院に行って、この子達をモフりたいわ~……」

「分かる。その気持ちはものすご~く分かる」

 

 あのソンネンが真剣な顔で頷く。

 猫とはここまで人間を変えてしまう生き物なのか。

 

「そういえば、この子達って首輪とかは着けないの?」

「完全に家猫だしな。こいつらも自分から外には出ようとはしないし」

「あそこの中庭だけでも、この子達的には充分に広いでしょうしね。運動不足にだけはならないか」

 

 ミカ達、孤児院の猫たちはよく院内にある中庭にて無邪気に遊んでいて、今ではそれがご近所の中でも名物のようになっている。

 中には猫たちを一目見たいという理由から孤児院を尋ねる人間もいるほど。

 

「着ければ可愛いんでしょうけどね」

「なんか嫌がりそうな気がするから、無理矢理つけるような真似だけはしたくないんだよ」

「そうよね。それが一番よね」

 

 そうして話している間に、孤児院の姿が見えてきた。

 だが、今日はなんだか不思議と静まり返っている。

 

「あれ? なんか妙にシーンとしてるような気が……」

「気のせいじゃねぇか? 兎に角入ろうぜ」

「そ…そうよね」

 

 そして、孤児院の扉を開けると、そこには……。

 

「「「「「「おかえり!!!」」」」」」

 

 デュバル、ヴェルナー、一夏だけじゃなく、孤児院に住んでいる子供達、果ては何でかクラスメイト全員に加えて担任の先生までいた。

 しかも、ロビーに掛けられてある大きな紙にはこう書かれてある。

 

【凰鈴音 送別会】

 

「…………へ?」

 

 今度こそ、冗談抜きで放心した。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「いや~! ちゃんと時間を稼いでくれてありがとね! ソンネンさん!」

「別にどうってことねぇよ。車椅子のオレに出来る事なんざ、これぐらいしかねぇからな」

「いやいやいや! 全然そんな事無いから!」

「皆、いつも勉強とか宿題とか見せて貰ってマジで助かってるし!」

「そうかぁ~?」

 

 隣にいた筈のソンネンも混ざってから何かを話し始めている。

 どうやら、彼女もグルだったようだ。

 

「ちょ…これって何? なんなの?」

「んなの決まってるだろ。送別会だよ。そ・う・べ・つ・か・い」

「送別会……」

 

 まさかのサプライズに、まだ思考が停止したままの鈴。

 そこにクラスの皆が状況説明をし始める。

 

「因みに、これをしようって言い出したのはデュバルさん達なんだよ」

「そ…そうなの?」

「より正確に言うなら、最初に提案をしたのは院長さんなんだがな」

「え……?」

 

 その院長さんは、ジュース片手に担任と何やら昔話に華を咲かせていた。

 

「まさか、君がウチの子達の担任だったとはねぇ~」

「あはは……」

「なんとも世間とは狭いものだ。なんだか、またあの子達繋がりで昔馴染みに会いそうな予感がするね」

 

 院長先生。しれっとフラグを立てる。

 

「けど…どうしてこんな……」

「鈴が転校する日まで、もうあと少しだろ?」

「湿っぽい別れなんてオレ達らしくないし、お前だって望んじゃいないと思ってな」

「どうせ同じ別れなら、派手に見送ろうって院長さんと話してたのさ」

「それをクラスの皆や先生にも話したら……」

「全員がすぐに賛成してくれたって訳だ」

 

 ソンネン達に加え、一夏と弾も一緒に説明をする。

 実はこのお別れ会を主導したのは、この五人だったのだ。

 

「本当なら食堂でやろうかって思ってたんだけど……」

「どうせサプライズするなら、ドア開けて一番に見えるようにした方がインパクトがあると思って」

「みんな……」

 

 親友たちの、クラスの皆の優しさが最高に嬉しい。

 思わず涙が零れそうになるが、そこですかさず女子達が鈴の前に『マスコット』を見せる。

 

「鈴。そんな風に泣いてると、この子達に笑われるわよ?」

「この子達って……あぁっ!?」

「「「「みゃ~」」」」

 

 女子達が抱きかかえていたのは、皆が大好きな孤児院のマスコットである四匹の猫たち。

 だが、今日はなんだか様子が違った。

 

「リ…リボンをつけてる……」

「その通り! 鈴ちゃんが喜ぶと思って、つけてみました~!」

「苦労したんだよ~? 撫でたりする分には何にも問題無いのに、私達がリボンを付けようとすると抵抗するんだもん」

「でも、なんでかデュバルさん達がつけようとすると、この子達って凄く大人しいのよね~」

「やっぱり、懐き度が足りないのかな?」

 

 ミカは青いリボンを、昭弘は茶色、シノはピンク、オルガは白いリボンだった。

 そのどれもがとても似合っていて、意外と気に入っている様子だった。

 だが、そんな事とは関係無しに鈴は猫たちの新たな可愛らしい一面を見て感動に打ち震えていた。

 

「か…可愛い……めっちゃプリティー……」

「でしょっ!? もうさ…私達もこれを見た時はマジで悶絶したもん」

「今度の日曜にでも、ペットショップ行ってこようかな……」

 

 鈴が女子達と盛り上がっている中、男子達もそれぞれに騒いでいた。

 

「ここが…あの美少女三人組の住んでいる孤児院か……」

「いや、今は俺も一緒に住んでるんだけど……」

「男は黙れ。慈悲は無い」

「酷っ!?」

 

 今回の貧乏くじ・一夏。

 

「な…なぁ……」

「どうした?」

「これはチャンスなんじゃないのか?」

「自分達の家でもある孤児院にいるお蔭で気分もリラックスしているから……」

「今ならば、お近づきになれる、またとない機会……!」

 

 決意をするが早いが、男子達は他の女子達と話しているデュバルに近づいていき、明らかなキメ顔で話しかける。

 

「や…やぁ…デュバルさん」

「ん? どうした? ジュースのお替りならばあそこに……」

「きょ…今日もまたとても綺麗だね……」

「いや、別にいつもと変わらないと思うが……」

 

 中学生の言葉ではこれが限界か。

 すぐに一緒にいた女子達に白い目で見られる。

 

「あんた達…なにデュバルさんの事を口説こうとしてんのよ……」

「今日は鈴ちゃんの送別会なのよ? それなのに……」

「なに? 今のは私の事を口説こうとしてたのか?」

「「「え……?」」」

 

 男子達、戦う前から敗北。

 リングの上にすら上がらせて貰えなかった。

 

「あははははははは! アンタ達にジャンを口説くなんて無理よ! この子、超真面目っ子なんだから。よね? 一夏」

「確かにデュバルは真面目だよな。って、あいつ口説かれてたのか?」

「「「「…………」」」」

 

 二人揃って鈍感星人だった。

 

「このにーちゃん達、ジャンねーちゃんに色目使ってる~!」

「色目色目~!」

「な…なんちゅー事を言い出すんだっ!? こんガキャー!」

「つーか、そんな言葉、どこで覚えたんだよっ!?」

「「「「先生が言ってた~!」」」」

「「「今時の小学校はどうなってんだっ!?」」」

 

 孤児院に住む小学生の男の子たちにからかわれ、必死に反撃するが、それにより現代の小学校事情の闇を垣間見る事となってしまった。

 

「この小魚のフライって、ホルバインさんが作ったんだよね?」

「そうだぞ。美味いだろ」

「うんうん! 大きさも手の平サイズで丁度いいし、意外と後味もサッパリもしてるから、なんかお菓子感覚で食べれちゃうかも!」

「流石はホルバインさん……女子力高いわ……」

「これぐらい普通だろ? なんなら教えてやろうか?」

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 ホルバイン料理教室開催決定。

 因みに、この子魚は全てヴェルナーが自分で釣ってきたものである。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「この雰囲気ならば大丈夫か?」

「だな。言うなら皆が揃っている今がいいかもしれない」

「じゃあ、早く言っちまおうぜ」

 

 デュバル、ソンネン、ヴェルナーは小声で少しだけ相談すると、いきなり手を叩いて皆の注目を集めた。

 

「皆、ちょっと聞いてほしい」

 

 全員の視線が三人に集まる。

 それを確認してから、デュバルが粛々と話し出す。

 

「このような場で言うのもどうかと思うのだが、この機会を逃せば、またいつになるか分からないので、ここで言いたいと思う」

 

 一回だけ深呼吸をし、心を落ち着かせてから改めて話す。

 

「実は…私達三人は、IS学園を受験しようと思っている」

「「「「「え…え―――――――――っ!?」」」」」

 

 予想通り、クラスメイト全員が驚くまくった。

 このご時世、IS学園の名を知らぬ者は殆どいない。

 知らないのはそれこそ、相当な田舎に住んでいる人間だけだろう。

 

「ア…IS学園で、正真正銘の超エリート校じゃないの!」

「そんな所を受験する気なのかよ……」

「すっげー……俺等とはスケールが違い過ぎるわ……」

 

 クラスメイト達が驚いている中、まだ詳しい事を知らない小学生たちは話に着いて行けないでいた。

 

「IS学園って、どこかで聞いたことがあるような……どこだっけ?」

「テレビじゃないっけ? よく分らないけど」

 

 それそれで放置しておいて、話を進める事に。

 

「知っているかもしれないが、IS学園は全寮制だ。つまり……」

「もしも、オレ達が合格したら、向こうの寮に三年間、住むことになるわけだ」

 

 この言葉の意味は小学生たちも理解出来たようで、急に悲しそうな顔になった。

 

「え……? ジャンねーちゃんたち……行っちゃうの……?」

「ちげーよ。別にこの孤児院からいなくなるわけじゃなくて、少しの間だけ別の場所で過ごすってだけだ。千冬さんみたいにな」

「そ…そうなの?」

「あぁ。だから、心配すんな。例え何があっても、ここが俺達三人の『いつか帰るべき場所』な事は変わらないからよ」

「うん!」

「よし。いい返事だ」

 

 今にも泣き出しそうになっていた年少組の頭を撫でてから満面の笑みを浮かべて、彼らの事を慰めたヴェルナー。

 そこには、この孤児院での年長者の一人としての優しさが溢れていた。

 

「ヴェルナーが言った通り、私達はここを離れる訳ではないが、それでも暫くの間、孤児院を開ける事には違いない。それで皆に頼みたいことがあるんだ」

 

 賑やかな雰囲気から一転、真剣な空気になった三人に、この場にいる全員も自然と静かになる。

 

「決して毎日とは言わない。だが、週一ぐらいの間隔で構わない。この孤児院に遊びに来てやってほしい」

「心配性だと笑ってくれて構わない。それでもオレ達は……」

 

 張りつめた雰囲気の中、一人の女子が前に出てデュバルの肩に手を乗せた。

 

「今更、何言ってんのよ」

「え……?」

「そんな風に言わなくたって、普通に頼んでくれれば喜んでするって!」

 

 にこやかにウィンクをしながら応えた女子に続くように、他の皆も同じように前に出て言い出す。

 

「その通りだぜ! お三方!」

「ウチにも弟とかいるから、そんな事なら楽勝だぜ!」

「寧ろ、自分達から進んでいくって言うか!」

 

 皆の優しさに、久し振りに涙がこみ上げてくる。

 けど、ここはまだ流すべき場面じゃないと判断し、なんとか堪えた。

 

「どうやら…私達の杞憂だったようだな」

「らしいな……」

「友情…絆……か。いいもんだな」

 

 しみじみと呟く三人の傍に、鈴と弾と一夏もやって来た。

 

「まさか、そんな事を考えてたなんてね」

「三年間だけとはいえ、ここを離れる事に若干の不安があってな……」

「それだけ、この孤児院の事が好きだって証拠かもな」

「そうだな……。いつの間にか、ここがオレ達にとっての『故郷』になっちまってたんだな」

「俺も、蘭と一緒に遊びに来るようにするよ。あいつもきっと喜ぶだろうし」

「そいつは嬉しいね。お前等なら一安心だ」

 

 自分の教え子たちが一つになって団結していくのを見て、担任は年甲斐も無く泣きまくっていた。

 

「教師生活35年……こんなにも感動した事は無い……!」

「よい生徒達を持ったね」

「はい……最高の生徒達です……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 時間も遅くなってきたので、キリのいいところで送別会を終える事に。

 皆揃って片づけをしてから帰る準備を整えていく。

 その最中、鈴はふと思い出したかのように、いきなり特大の爆弾を落とした。

 

「そうそう。因みにだけど、あたしもジャン達と同じようにIS学園を受験するつもりだから」

「「「「「マジでっ!?」」」」」

「マジでよ。だから、もしも合格したらまた日本に戻って来れるって訳。あくまで合格したらだけどね」

「は…初めて聞いた……」

「俺も……」

 

 一夏も弾もお口ポカーン状態。

 その顔はどこぞの『菌』のようだった。

 

「ソンネン達は知ってたのかっ!?」

「勿論だとも。だが、これは私から言うべき事ではないからな」

「それは…そうだけど……」

 

 まさかのサプライズ返しに一同驚愕。

 それを見て満足したのか、鈴は八重歯を見せながらニコッと笑った。

 

「鈴。必ず再会できると信じているから、ここで別れの言葉は言わないぞ」

「それはこっちのセリフよ。あんた達こそ、絶対に合格しなさいよね」

「言われるまでも無いぜ」

「任せときな」

 

 三人と鈴はお互いに見つめ合い、決意の言葉を告げた。

 

「それじゃあ……」

「「「IS学園で待っているぞ」」」

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 鈴は離婚をした母と一緒に中国へと帰国していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




鈴ちゃん、一時離脱。

徐々に原作が近づいてきましたね。

といっても、ここが終わったら次は大佐を中心としたドイツ編を始めるんですけど。
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