インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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今回からドイツ編に突入ですが、原作に入るまでは三人娘の出番は一切ありません。
 
ドイツ編での主人公はカスペン大佐の予定ですから。

もしかしたら、千冬と大佐のW主人公になる可能性もありますが。

そして、このドイツ編にて遂に『砲術長』も登場です。

アンケートを取ったのはかなり前なんですけどね……。

登場を待っていた皆さんは本当にお待たせしました。







ドイツ編 ~戦乙女と大佐と砲術長と~
再びドイツへ


 ドイツ フランクフルト国際空港。

 日本からの直行便も出ているこの空港に、一人の日本人が降り立った。

 

「まさか、またこの国に来る羽目になるとはな……」

 

 彼女の名は『織斑千冬』

 ついこの間行われた第二回モンドグロッソ世界大会にて今日にの二連覇という偉業を成し遂げた元日本代表IS操縦者だ。

 そんな彼女がどうしてドイツの地にいるのか。

 それは、ドイツが彼女の実力を見込んで日本に頼み込み、千冬を自国にあるISの部隊の教官として一年間の契約で呼んだからだ。

 

「さて……事前に聞いた話が確かなら、空港の中で向こうの関係者が待っていてくれている筈だったな」

 

 キョロキョロと周囲を見渡し、その『待ち人』を探す千冬だったが、それらしき人影は全く見当たらない。

 

「どこにいるんだ?」

 

 取り敢えずはこの場から移動しようと歩き出すと、すぐ後ろから日本語で声を掛けられた。

 

「ミス織斑。こちらですよ」

「なに?」

 

 急いで声のした方を振り向くが、何処にも誰もいない。

 左右を確認しても同じで、誰も見当たらない。

 

「下です」

「下?」

 

 言われるがままに視線を下げると、そこには見覚えのある軍服を着た金髪の美幼女が立っていた。

 

「ようこそいらっしゃいました。織斑千冬殿」

「お前は確か……」

「はい。以前にも一度だけお会いしましたね。いい機会ですから、改めて自己紹介をさせて貰いましょうか」

 

 美幼女は見事な敬礼をし、真剣な顔で自分の名と所属を言った。

 

「自分はドイツ軍IS特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ隊』隊長。ヘルベルト・フォン・カスペンであります。階級は大佐。そして、もうご存知かも知れませんが、この度、新たにドイツ国家代表に就任しました」

「あ…あぁ…よろしく。織斑千冬だ」

 

 彼女とは、第二回モンドグロッソの時に一度出逢っている。

 あの時は警備を担当する責任者として話をしたのだが、余りにも幼い容姿が衝撃的で、名前はともかく、その存在自体はよく覚えていた。

 

 彼女の出した手を恐る恐る握り返し、軽く握手を交わす。

 その手はとても小さく、少しでも自分が力を咥えればすぐに折れてしまいそうだ。

 

「外に車を待たせています。早速参りましょう」

「分かった」

 

 カスペンの先導に従って歩き出すが、その時ふとある疑問が頭をよぎった。

 

(まさか……この子が車を運転する訳じゃないよな?)

 

 流石にそれは考え過ぎだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 空港の駐車場で待っていたのは、軍用車として使用されているジープで、かなり車高が高かく、カスペンは乗るだけで相当に苦労していた。

 最終的には千冬が手伝う形で収まったが、最初に乗った時はどうしていたのか猛烈に気になった。

 運転席に座っていた男性軍人は、その光景をとても微笑ましく見つめていた。

 

「お恥ずかしい所をお見せしました。申し訳ありません」

「い…いや。そこまで気にする必要はない」

 

 物凄く軽かったしな。

 そう言い掛けたが、恥ずかしそうに顔を赤くしている彼女を見て言葉を呑み込んだ。

 

「しかし、貴女も大変ですね。故国である日本でゆっくりする暇も無く、そのままUターンをするような形でまたドイツに来る羽目になるなど」

「今更だ。過ぎたことを気にしても仕方がない」

「そんな風に割り切れる貴女が羨ましいですね」

 

 見た目や声は間違いなく幼い少女のソレだが、体から発する空気は全く違った。

 まるで、歴戦の軍人を彷彿とさせるような独特のオーラ。

 千冬はこれと似た空気を放つ少女達をよく知っていた。

 

(まるで…デュバルやソンネン、ヴェルナー達のようだな)

 

 彼女達も相当に特殊な少女達だが、それ以上に頼りになる存在だ。

 だからこそ、千冬は迷う事無く弟である一夏の事を任せられたのだから。

 

(もしかしたら、三人のうちの誰かが私の義妹になる可能性もあるしな……)

 

 あの三人ならば、例え誰であっても喜んで祝福できる自信がある。

 千冬自身も、彼女達の事は実の妹のように可愛がっているので尚更だ。

 

「どうしました?」

「いや。少し知り合いの事を思いだしていた」

「お知り合い…ですか?」

「あぁ。大佐とよく似た雰囲気の少女達でな」

(あの三人か……)

 

 カスペンも、千冬が友人たちと親しい中なのは存じていた為、そこまで不思議には思わなかった。

 それどころか、彼女達と自分が似ていると言われ、年甲斐も無く嬉しく思ってしまったほど。

 

「そういえば、決勝戦の少し前に貰った寄せ書きに、大佐の名前も書いてあったが、まさか君とアイツ等は……」

「はい。貴女はご存じないかもしれませんが、私と彼女達…ジャン・リュック・デュバルとデメジエール・ソンネン、ヴェルナー・ホルバインの三人とは古い友人なのです」

「そうだったのか……」

 

 千冬も、あの三人の全てを知っているわけではないから、自分の知らない交友関係があっても不思議じゃない。

 だが、流石にドイツに友人がいたのには驚いた。

 

「私は彼女達から多くの事を教えられました。だからこそ、今度は私が彼女達の力になってやりたいと考えているのです」

「大佐……」

 

 三人の事を話す今のカスペンが、千冬には歳相応の少女に見えた。

 どれだけ自分を律していても、少女である事だけは変えられないのかもしれない。

 

「よかったら、日本での彼女達の事を教えてくれませんか? どうせ、基地に到着するまではまだ時間がありますし」

「そうだな。いい暇潰しになりそうだ」

 

 誰も知り合いなんていないドイツの地で上手くやっていけるか不安があったが、カスペンがいるなら大丈夫かもしれない。

 千冬は、共通の知り合いを持つこの少女に対し、少しだけ心を許し始めた。

 

 因みに、さっきからずっと運転に集中している男性軍人はと言うと……。

 

(あの大佐があんなにも可愛らしい一面を隠し持っていたとは! 流石は天下のブリュンヒルデ……会ってすぐに大佐と仲良くなるとは……羨ましい!!)

 

 バックミラー越しに見るカスペンの笑顔に夢中だった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「到着です」

 

 約一時間間ぐらい掛けて着いたのは、『ある一点』をを除けばテレビや雑誌などでもよく見かける基地だった。

 その『ある一点』とは、本来ならば戦闘機や戦車などが配備、格納されている場所にISが並んでいる事。

 それ以外は、ISの整備に必要な機材や機器、基地内の移動用に使う車両が精々だ。

 

「驚きましたか?」

「あ…あぁ……。見た目は私が想像していた基地そのものだが……」

「そうです。ここには他の基地には普通にある物が全くない。ここはどこまでも『ISの運用を第一に考えた基地』なんですから」

 

 ISの軍事運用は条約で禁じられているが、どんな条約にも抜け道はあり、それによって生み出される『例外』は数多く存在する。

 この基地も、カスペンが隊長を務める部隊も、その数少ない『例外』の一つだった。

 

「世界規模で見れば、今のご時世にこのような場所は決して珍しくは有りません。アメリカや中国などを初めとする大国の殆どが、似たような部隊を編制していると聞きます」

「……世も末だな」

「それには私も同感ですが、ここでそれを言っても始まりません」

 

 ジープから降りて、運転席にいる男性軍人に車を格納庫に持っていくように指示してから、またもやカスペンの先導に従って歩き出す。

 

「まずは基地司令の元までご案内します」

「き…緊張するな……」

「大丈夫ですよ。他の基地司令ならばいざ知らず、ここの司令官はかなり話しやすいと思います」

「そうなのか?」

「えぇ。ここはISを運用する都合上、嫌でも女性隊員が多く所属しています。それ故に、頭となる司令官にもそれ相応な人物を置かないといけないのです」

「成る程な……」

 

 今や、ISは世界の華といっても過言ではない。

 そのISの部隊を指揮する人物が堅物だったら、軍の評判も落ちる可能性があるし、部隊全体の士気向上の妨げにもある。

 どこの国も、IS関係は非常にデリケートな問題なのだ。

 

「では、参りましょうか」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 そこは、軍事基地の中とは思えない程に荘厳な趣の扉だった。

 まるで、中世ヨーロッパの城などにありそうな木製の扉で、見ただけでかなりの高級品であることが分る。

 

「司令! ヘルベルト・フォン・カスペン大佐、只今、空港より織斑千冬氏をお連れしました!」

『入室を許可する。入りたまえ』

「失礼します!」

 

 カスペンが静かに扉を開け中へと入ると、そこには真っ赤なカーペットが敷かれた司令室があった。

 ピカピカに磨かれた机に肘をついて座っていた初老の男性がこちらを見る。

 

「初めまして、織斑千冬教官。私がここの基地司令をしている『ウォルター・カーティス』中将だ。よろしく」

「織斑千冬です。これから一年間、お世話になります」

 

 まずは定型文の挨拶から。

 

「まずはお疲れさまと言わせて貰おう。よくドイツまで来てくれた」

「いえ。こうしてドイツを訪れるのは二度目になるので、問題は有りません」

「そういえばそうだったな。だからと言って、上の我儘に答えてくれたのもまた事実だ。労いの言葉ぐらいは言わせてくれ」

「は…はい。ありがとうございます」

 

 軍事基地の指令と言うから、どんな人物かと覚悟を決めていたが、完全に拍子抜けをしてしまった。

 着ている軍服や、それに着いている勲章などからも彼が歴戦の軍人なのは明らかだが、本人はまるで孫や家族を大切に想っている好々爺のような雰囲気がある。

 成る程。カスペンが言った事とはこういうことだったのか。

 千冬は心の中で納得をした。

 

「しかし、君も大変だな。話で聞かされてはいるが、表向きのお題目を盾にして、日本とドイツの上の連中に振り回されて」

「そう…ですね。確かに大変ではありますが、これも自分に与えられた仕事だと思って、今では割り切っています」

 

 普通ならばこんな発言は許されないだろうが、不思議とこの人物の前ならば大丈夫だと思ってしまった。

 だから、日本では言えなかった愚痴が自然と零れてしまう。

 

「見事な覚悟だ。だが、それで無理をしては意味が無い。何か困ったことがあったり、欲しいものがあったりする時は遠慮なく言って欲しい。隣にいるカスペン大佐に言えば大抵の事はなんとかなる筈だ」

「その時が来たら、そうさせて貰います」

 

 教官と言うよりは、完全に客人扱い。

 自分がIS関係で限って言えば、かなりのVIP扱いされている事は知っていたが、他の国でも同じ扱いだとは思わなかった。

 

「寝泊まりは基地内にある宿舎を要しておいた。カスペン大佐や他の部隊員たちも使っている部屋だから、快適性においては問題は無いと思う」

「ありがとうございます」

 

 普通ならば、軍の宿舎と聞かされて、かなりの小部屋を想像するだろうが、ここにいるのは女性の隊員ばかり。

 つまり、この基地の宿舎も最初から女性が寝泊まりをすることを前提にしていることとなる。

 それならなんとかなるかもしれない。

 そう思い、千冬は密かに胸を撫で下ろしていた。

 

「今日は流石に疲れているだろう。教官としての仕事は明日からで構わないから、今日はゆっくりと休んでくれ。大佐」

「はっ!」

「後で構わないから、基地内を案内してあげなさい」

「了解です!」

 

 一通りの挨拶を終えてから指令室を出ようとすると突然、ウォルターに止められた。

 

「あ~…大佐、君は少しだけ残っててくれ」

「はっ!」

 

 千冬に扉の前で待っているように伝え、彼女が廊下に出たのを確認してから、二人は改めて向き合った。

 

「どうやら、彼女も相当な苦労人のようだな」

「そのようで。ところで、どうして私を残したので?」

「少し君の意見を聞いてみたくてね」

「私の意見?」

 

 一体何を聞くつもりなのか。

 カスペンには皆目検討がつかなかった。

 

「君から見て…織斑千冬はどう映った?」

「……私の私見でよろしければ」

「構わない」

 

 一呼吸を置いてから、カスペンは静かに語り出す。

 

「肉体的にも精神的にも、彼女はとても素晴らしい人物でしょう。車の中で少し話しましたが、雑誌やテレビなどで持て囃されているような超人ではなく、何処にでもいるごく普通の女性です」

「そうだな。私も同じように感じたよ」

「スポーツマンとしては非常に優秀かもしれませんが、それだけです。少なくとも、このような軍事基地にいていいような女性ではない」

「うむ……」

「個人的には、織斑千冬がここで教官をすることを余りよくは思ってはいません。決して彼女の事が嫌いと言う訳ではなく、本来ならば私達軍人が守るべき存在を、自分達と同じ場所まで引っ張ってくる。どのような理由があろうとも、これは軍人がすべき事ではないと考えます」

「そうか……」

 

 カスペンの一語一句を全て聞き入るように耳を傾ける。

 その瞬間だけは、カーティスの中にある軍人としての面が引き出されていた。

 

「正直に言うと、私も貴官と同意見だ」

「司令も……?」

「そうだとも。だがしかし、どのような経緯であれ、彼女自身が自分で決めてここまで来た以上、私達はそれを受け入れるしかない」

「分かっています」

「……せめて、私達だけは出来る限り彼女の負担を和らげられるようにしよう」

「はい……そうですね」

 

 元々、ウォルターは軍内でもかなりの穏健派で、ISを軍事利用すること自体が反対だった。

 だが、ISの性能を目の当たりにした上層部に押し切られる形でISの軍事利用が決定。

 ならばせめて、自分の目の届く範囲でバカな連中の玩具にされないようにしようと思い、彼は自らこの基地の指令をすることを言って出たのだ。

 その結果、自分の孫やひ孫と同い年の少女達が部下になるとは思わなかったようだが。

 

「大佐も、国家代表に就任したからと言って、余り無理はしないでくれ。君に倒れられでもしたら、お父上であるカスペン中将に申し訳が立たないからね」

「御心配なさらずとも、どんな時も軍務を優先するつもりであります」

「と言いつつ、明日の予定は?」

「………雑誌のインタビューです」

 

 カスペンが国家代表に就任したニュースは、すぐにドイツ全土に知れ渡り、その可愛らしい容姿と、見た目からは想像も出来ない程の実力で、文字通りあっという間に人気が爆発した。

 今では完全に国を挙げてのアイドルのような扱いとなっている。

 

「あ~…私の方からも根回しをして、軍務に支障が出るような過剰なスケジュールだけは組まないように進言しておこう」

「ありがとうございます……うぅ……」

 

 今はまだいい。今はまだ。

 雑誌のインタビューぐらいならば全然大丈夫だ。余裕で乗り切れる。

 問題があるとすれば、これから先の事だった。

 

(ネットで調べた限りでは、他の国家代表などはテレビに出演したり、イベントなどもしていると聞く。だが、それ以上に厄介なのは……なんでか写真撮影がある事だ! いや…普通の写真撮影程度ならば問題は無い。女性物の服を着る事に対する抵抗感はもうないからな。だがしかし……)

 

 『ソレ』を想像して、少しだけ気分が悪くなる。

 

(なんで水着で撮影会をしないといけないんだ!? 国家代表はアイドルじゃないんだぞっ!? アメリカのイーリス・コーリングはまだメディアへの露出を控えめにしているらしいが、イタリアのアリーシャ・ジョセスターフなどは普通に水着で撮影をし、凄い時はセミヌード写真を撮っていると聞く! バカかっ!? バカなのかっ!? 何が悲しくて自分から人前に肌を晒さないといけないのだっ!? 全く持って理解出来んっ! まさか…私もいつか…? いやいやいや! 自分で言うのもアレだが、こんな幼女体型の少女の裸を見て喜ぶような変態がどこにいと言うのだ! そうだよな! こんなの私の杞憂だよな! 司令も根回しをしてくれると言ってくれてるし! うん! きっと大丈夫だ! 何も問題は無い!)

 

 さっきからずっと百面相をしているカスペンを見て、ウォルターは密かに彼女にいつか必ず有給休暇を取らせようと心に決めたのであった。

 

 

 

 




まずは導入ですね。

次回からは本格的なドイツでの話になります。

そして、あと少しで『砲術長』も……?

ところで、美幼女なカスペン大佐の水着写真集って絶対に爆売れですよね。
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