インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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今回、遂にあの二人が登場。

まだまだ小さいですけど。

因みに、今回のサブタイトルには複数の意味があります。






ターニングポイント

 ヨーツンヘイム孤児院には、当然ではあるがソンネンとデュバル以外の子供達も住んでいる。

 上は高校生から、下は二人よりも幼い子供達も。

 外見は幼くとも、中身は立派な大人である彼女達は、必然的にお世話係のような立ち位置となっていた。

 

「待てよ~」

「あははははは!」

「こ~ら~! 大人しくしなさい!」

 

 小さな男の子二人が追いかけっこをし、それを中学生ぐらいの少女が叱る。

 早くも見慣れつつある光景になっていた。

 

「子供達は元気だな」

「あぁ…全くだ。どこにあんな体力があるのか分らねぇぜ」

「いや…二人も立派な子供だからね?」

 

 到底、五歳児とは思えない会話をする二人に対し、孤児院にいる子供達の中でも最も歳上に位置する青年が呆れながらツッコむ。

 

「デメもそうだけど、ジャンもまた凄く大人びてるね」

「そうなのだろうか……?」

「オレらは普通にしてるだけなんだけどな~」

「少しは我等も子供らしくするべきなのか…?」

 

 全く別のベクトルの悩みが発生する。

 だが、前世では立派な中年男性だった彼らに、子供らしさを追求させるのはかなり酷だろう。

 

「別に無理矢理に変えようとしなくてもいいさ。落ち着いた性格も、大人びた口調も、二人の立派な個性なんだから」

「個性……」

「ねぇ……」

 

 微笑みながら頭を撫でられることに何の違和感も抵抗感も生まれないのは、ある意味で二人の精神が子供に近づいている証拠なのか。

 個性と言われても、二人にとっては素で過ごしているだけなので、なんともいえない。

 

「む? ソンネン、そろそろ時間ではないのか?」

「マジか。じゃあ、行くとするか」

 

 特別に貰ったスマホをポケットの中へと入れて、二人は玄関のある方へと向かう。

 

「二人とも、出かけるのかい」

「おう。ちょっと行ってくるぜ」

「友達と待ち合わせ?」

「友達…というよりは、知り合いですね」

 

 少なくとも、常識的に考えて五歳児と女子中学生が友達関係にはなりにくいだろう。

 だから、敢えてここは『知り合い』と呼称した。

 

「それでも十分に凄いと思うけどね。前からいたソンネンはともかく、ジャンはまだ来て少ししか経ってないのに、もうそんな人が出来るなんて」

「言われてみればそうだな……」

「つっても、あれは事故みたいなもんだろ?」

「うむ……」

 

 衝撃的な出会いであったことは否定出来ない。

 あの時の二人は、もう本当に色んな意味でお腹一杯だった。

 

「あっ! ジャン姉ちゃんとデメ姉ちゃん! お出かけするの?」

「お友達の所に遊びに行くんだってさ」

「いいな~!」

 

 性格がしっかりしているお蔭か、二人は既に孤児院の中でも歳とか関係無しにかなり頼りにされていた。

 元々が部下を持っていた身なので、誰かの世話をするのはお手の物な二人は、あっという間に全員の信頼を勝ち得ていた。

 

「ジャン、デメ。遊びに行くのはいいけど、車とかには気を付けるのよ。まぁ…二人とも、私達以上にしっかりしてるから、大丈夫だとは思うけど……」

「心配すんなって。んじゃ、行ってくるぜ」

「おみやげよろしくね~」

「無茶を言うな……」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 この間と同じ公園に行くと、私服に着替えた千冬がベンチに座って待っていた。

 だが、今回は彼女一人だけではなく、もう一人、小さな男の子も一緒だった。

 

「お待たせした」

「いや。私達もたった今、来たばかりだ」

 

 これが年頃の男女ならばロマン溢れる会話なのだろうが、生憎とここにいるキャストは幼女二人と女子中学生である。

 流石にロマンスを求めるのには無理があった。

 

「ん? アンタと一緒にいるガキンチョは誰だ?」

「俺はガキンチョなんかじゃないぞ!」

「ソンネン」

「こら一夏!」

 

 今回はどっちにも非があったので、お互い平等に軽く叱られた。

 

「私の弟の『織斑一夏』だ。流石に家に一人にする訳にも行かないから、今日は仕方なく連れてきた」

「ふ~ん…そうか」

 

 本来ならここで『両親はどうした?』とか尋ねる場面だろうが、二人は前回の初対面の時から既に彼女も今の自分達と同様に、かなり特殊な立ち位置にいると察し、何も聞かないでいた。

 

「一夏。挨拶はどうした?」

「……織斑一夏だ」

「デメジエール・ソンネンだ。よろしくな」

「初めまして。ジャン・リュック・デュバルと言う」

「変な名前!」

「一夏っ!」

 

 いきなりの失礼発言に、千冬が軽く一夏の頭を小突く。

 それでもかなり痛かったのか、一夏は頭を押さえていた。

 

「なにするんだよ~! 千冬姉!」

「お前が彼女たちに失礼なことを言うからだろうが!」

「だって~…」

「だってじゃない! ちゃんと謝れ!」

「……ごめんなさい」

「いいってことよ。あんま気にすんなよ。千冬さんよ」

「我々ならば平気ですから」

「しかしだな……」

 

 子供に名前を馬鹿にされるぐらい、この二人からすれば可愛い方だ。

 なんせ、彼女たちは嘗て、味方の悪意によって信念とプライドをズタズタにされたことがあるのだから。

 それに比べれば、この程度は蚊に刺された程にも感じない。

 屈辱的な経験の果てに、図らずも鋼のメンタルを手に入れてしまっていた元軍人たちだった。

 

「そういや、束の奴はまだ来てねぇのか?」

「あいつになら私の方から連絡をしておいた。こっちから行くから迎えに来る必要はないとな」

「そうですか。ならば、もう行きますか?」

「そうだな。あまり待たせたら、どんなヒステリを起こすか分らんからな」

 

 そういうと、千冬は前と同じようにソンネンの車椅子の後ろに周り込んだ。

 

「車椅子では大変だろう。私が押していこう」

「オレは別に平気だぜ?」

「……私がそうしたい気分なのさ」

「なら…いいけどよ」

 

 千冬はもう、この二人の事を他人とは思っていなかった。

 自分達と同じように両親がいない少女達。

 いつの間にか、デュバルとソンネンの事は実の妹のように感じていた。

 だからこそ、少しでも助けてあげたい。

 これが己の我儘であると頭では理解しているが、それでも、この言葉に出来ない気持ちは抑えきれなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 篠ノ之家に行く道中。

 ずっとソンネンの事を見ていた一夏が、唐突に聞いてきた。

 

「なんでそんなのに乗ってるんだ?」

「い…一夏!」

「あ~…だいじょーぶだよ」

 

 頭を掻きながら、ソンネンは気怠そうに答えた。

 

「昔……足を怪我しちまってな」

「そっか」

 

 どうやら、純粋に聞きたかっただけで、それ以上は追求してこなかった。

 仮に説明をしても、今の彼に理解するのは難しいだろうが。

 

「……事故か?」

「交通事故さ。どこにでもある…な」

「そうか……」

 

 どう考えても普通じゃない。

 直感的に千冬はそう思った。

 色々と原因は考えられるが、確実に碌なものじゃないと感じたからだ。

 

 そこからは、何気ない話をしながら道を進んでいく。

 すると、なにやら見覚えのある姿の人物が純和風な家の前に立っていた。

 

「ちーちゃ~ん! ソ~ちゃ~ん! デュ~ちゃ~ん!」

「あのバカが…! 少しは羞恥心というものを覚えろ……!」

 

 外にて大声で自分達の名前を叫ばれれば、誰だって似たような反応をするだろう。

 ソンネンやデュバルは平気そうにしていたが、千冬は恥ずかしそうに顔を赤くしていた。

 

「あれ? あれあれ? もしかして、いっくんも一緒に来たの?」

「束さん! 久し振り!」

「久し振り~!」

 

 仲良さげにハイタッチをする一夏と束。

 テンションだけは非常にそっくりだった。

 

「いっくんが来たんなら、こっちも箒ちゃんを呼ばないとね! 箒ちゃ~ん! いっくんが来てるよ~!」

 

 玄関を開けてから、奥に向かって大きく叫ぶ。

 すると、誰かが走ってくる足音が聞こえてきて、子供用の道着を着たポニーテールの少女がやって来た。

 

「一夏が来たというのは本当かっ!?」

「本当だよ。ほら」

 

 少女が一夏の姿を見た途端、その目が一気に輝いた。

 

「よく来たな一夏!」

「おう!」

 

 見ただけで、この二人が仲の良い関係なのが分った。

 これが子供らしさなのか…と思いつつ、元おっさんの幼女たちはしみじみとしていた。

 

「箒ちゃん。この子達が前に私が言った子達だよ」

「こいつらが……」

 

 まるで品定めをするかのように、二人の事を上から下までじっくりと見ていく。

 観察が終わったのか、彼女は徐に自己紹介をした。

 

「篠ノ之箒だ……よろしく」

「ジャン・リュック・デュバルだ。こちらこそ、よろしく」

「オレはデメジエール・ソンネン。こんなナリをしてはいるが、まぁ気にしないでくれや」

「二人は外国人なのか?」

「一応な。つっても、向こうにいたのはほんの少しだけだし、あんまし故郷って感覚は無いんだよな」

「私もだ。この国の方が居心地がよくて落ち着くな」

「そうだろう! そうだろう! 日本はとてもいい国だからな!」

 

 急にテンションが上がる箒。

 どうやら、生まれて初めて見る外国人に対し、警戒心を抱いていたようだ。

 だがそれも、二人が普通に日本語を話せることと、日本の事を褒めたことで払拭された様子。

 子供特有の単純さで、あっという間にデュバル達を受け入れたようだ。

 

「えっと…そっちはジャンで、お前は……」

「オレらの名前は長くて呼び難いだろ。オレのことはソンネンで、こいつの事はデュバルでいいぜ」

「分かった!」

「俺も分かった!」

 

 千冬と束を余所に、仲良くなっていった少年少女を見て、なんだか和やかな雰囲気に包まれた。

 

「箒ちゃん達とソーちゃん&デューちゃんが仲良くなったところで、早速、私のお部屋にご招待……」

「ちょっと待ってくれないだろうか?」

「急にどうした?」

 

 テンションが上がった状態の束が、そのままの勢いで二人を家の中へと案内しようとすると、突然デュバルが待ったをかけた。

 

「ここに来る途中で、千冬さんからここには道場があると聞いた。前々から日本の武道には興味があってな、そちらの都合さえよければ、是非とも見学をさせて欲しいのだが……」

「えぇ~? でもぉ~…あんな所に行ってもつまんないと思うよ~? それよりも、私のお部屋で……」

「いや。オレも見てみたいな。いやな、知識としては知ってるんだが、実際にこの目では見たことがねぇからな。こんな機会、滅多に無いだろうし、見れるんなら見ときたいぜ」

「うぐぐ……」

 

 自分が認めた幼女達からの熱い視線には束も敵わなかったようで、大きな溜息を吐き出しながら肩を落とした。

 

「はぁ~…仕方がない。他でもない、ソーちゃんとデューちゃんがそこまで言うんなら、案内してあげるよ……」

「「おぉ~!」」

 

 生まれ変わってから初めて本気で嬉しそうな顔になる二人。

 やっと見せてくれた子供っぽい一面に、千冬は自然と安堵していた。

 

(随分と大人びた子達だと思っていたが、こんな顔も見せるんだな……)

 

 ブ~ブ~と頬を膨らませながら、束を先頭に家に隣接している道場の方へと向かう面々だった。

 

 

 

 

 

   




原作主人公&原作ヒロイン登場。

でも、二人の関係が原作通りになるとは限らない……?
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