インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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最近思ったんですけど、この作品の話って約9割が完全オリジナルなんですよね。

それでここまでの高評価を受けてるって事は、私はもしかして原作付きの二次創作よりも、オリジナルを書く方が向いているのでは? なんて分不相応な事を考えてしまっています。

いつの日か、完全オリジナルの作品も書いてみたいな~なんて思ってはいるのですが、それが実現するかはわかりません。

ネタ自体はずっと前から温めていた物があるのですが、それを文字にする勇気がまだ湧きません……。







過去に立ち向かえ

 これまた毎度御馴染みの束の移動式ラボ。

 今回もまた束はモニター越しに何かを見ていたようだ。

 

「ほっほ~……にゃるほどね~。スーちゃんがちーちゃん達と一緒に態々会いに行ってるから、なんなんだろうな~と思っていたら、こんな事だったとはねぇ~」

 

 何かイヤらしいことでも考えているのか、ニヤニヤしながらモニターを眺める。

 そこには、カスペンと話しているアレクの姿が映し出されていた。

 

「何が『にゃるほど』なんですか?」

「クーちゃん」

 

 ジト目をしながらお茶を持っていたクロエが、束の近くに湯呑を置き、彼女が見ているモニターに視線を向けた。

 

「この方は……」

「スーちゃんのお友達だって」

「スーちゃんさまとは……この間、デュバルさん達がドイツに行った際に束がお知り合いになられたという現ドイツの国家代表選手…ですよね?」

「そうなんだよ~! あんな可愛い見た目をしてるのに、これまで常勝無敗なんだよっ!? 凄過ぎでしょっ!?」

「そうですね。私よりも小さいのに、歳が上だなんて…信じられません」

「『事実は小説よりも奇なり』ってよく言うけど、まさか天然の金髪美幼女がいるとは私も想像してなかったよ。あれだね。間違いなく、色んな意味でスーちゃんは世界の宝だね」

 

 束も女らしく、可愛いものには目が無い性格をしている。

 特に、カスペンのような美幼女は束の好みにドストライクだった。

 

「多分、三回目のモンドグロッソじゃ、スーちゃんが三代目のブリュンヒルデになるんじゃないかな?」

「それ程なのですか?」

「私も実際にこの目で見るまでは半信半疑だったけどね。ネット上にスーちゃんが試合をしている映像が流れてたんだ。ぶっちゃけ、圧倒的。他の有象無象なんて歯牙にすらかけないってレベル。あそこまで無双を見たのは、ちーちゃんの時以来かも知れない」

「束さまにそこまで言わせるとは……」

 

 クロエが持って来てくれたお茶を一口飲んでから、今度はアレクが映っているモニターに目を向ける。

 

「にしてもまさか、この眼帯っ子ちゃんが、あの『ヨルムンガンド』の操縦者だったとはね」

「それは確か、この前に束さまが……」

「そ。余りにもスーちゃんが困っていたから、ずっと前にデューちゃん達から預かっているUSBの中にあったデータの一部を別のUSBにコピーして、そのままスーちゃん個人にあげちゃった」

 

 束は普通に言っているが、他の人間が聞けば飛んで驚くことだ。

 『天災』篠ノ之束が一個人の為に尽力したのだから。

 

「一応、既存の技術でどうにかなるように私の方で一部を再設計(魔改造)しておいたから、なんとかなるんじゃないかな。ドイツの技術力って中々に侮れない所があるから」

「『ドイツの科学力は世界一』…ですか?」

「いやいや。世界一なのは束さんの技術力だから」

「自分で言いますか」

「事実だもん」

「だもんって……」

 

 自分の主人の言葉に出来ない一面を見せつけられて、なんて反応したらいいか本気で困るクロエ。

 近い内、彼女にもまた『胃薬』という新しい友達が出来るかもしれない。

 

「艦隊決戦砲『ヨルムンガンド』。それ自体が戦艦に匹敵する程の巨躯を誇り、超高出力核融合プラズマ収束砲を発射する、ある意味最強の浪漫兵器」

「一回発射するごとに超高額なコストがかかる上に、連射も不可能で、地球の磁場の影響を受けやすいプラズマ弾で、味方からの観測情報が無いと正確な射撃が出来ない。欠点を言えばキリがないですが……」

「その威力はまさに一撃必殺。仮に直撃を避けられても、掠っただけで伝送系は全て破壊される。そんな代物をスーちゃんは本気でISサイズにまでダウンサイジングしようと頑張っていた」

 

 頬杖をついてモニター越しにカスペンを見る束の顔には、何の裏も無い純粋な笑顔があった。

 

「あんな風に可愛い困った顔を見せつけられたら、私じゃなくても手伝ってあげたいって気持ちになっちゃうよ」

 

 束の中ではもう、完全にカスペンも『身内』に入っている。

 いや、もしかしたら妹のように想っているかもしれない。

 

「そう言えば、データを送る際、何か別の物も一緒に送っていませんでしたか?」

「あー…あれ? あれはね、ヨルムンガンドを真の意味で完成させる為のダメ押しであると同時に、私からスーちゃんへのプレゼントだよ」

「プレゼント…ですか。で、何を送られたんですか?」

「私が新しく作ったISのコア」

「…………は?」

 

 一瞬、クロエの思考が普通に停止した。

 

「ア…ISのコアを送られたんですか……?」

「そうだよ。あのままじゃ目標の出力には遠く及ばなかった。ならどうすればいいのか? 答えは簡単」

「ヨルムンガンドにISコアを設置し、そこからエネルギーを持ってくればいい……」

「その通り。本来ならば、ISコアは色んな事にエネルギーを割いてるから、結果的に攻撃に向けるエネルギー自体はそこまで高くない。だからこそ、外付けでいろんな武装を設置してるんだしね」

「でも、ヨルムンガンドは、そのエネルギーの全てを攻撃に向けられる」

「間違いなく後にも先にもヨルムンガンドを越える攻撃力を持つ武装は生まれないだろうね。なにせ、原型機にあった欠点の殆どを克服しちゃってるからね」

「それを任されたアレクサンドロ・ヘンメさん……この方も他の皆さんと同様に優れた才能を秘めているのでしょうね」

 

 口では褒めているように聞こえるが、クロエの目はモニターに映っているアレクの事をジーっと睨んでいた。

 正確には、その歳不相応な胸を睨んでいた。

 

「データによると、目視観測で直撃させてるらしいんだよね。その時点で普通に『天才』の領域だよ。多分、私でも同じことは難しいだろうし」

 

 最近になって束が誰かを褒める事が多くなった。

 それは偏に、彼女の周りに千冬以外の『超越者』が増えてきたからに他ならない。

 

「アレクサンドロ・ヘンメ……アーちゃんだね!」

「私…この人の事、余り好きになれそうにありません」

「なんで?」

「だって…だって……!」

 

 お茶を運んできたお盆を力一杯握りしめ、クロエは思いのたけを叫んだ。

 

「私と少ししか歳が違わないのに、どうしてあんなにも発育がいいんですかっ!? 絶対におかしいですよ! 見ましたっ!? あの人、歩く度に思いっ切り胸が揺れてたんですよっ!? しかも、谷間が丸見えになるような服装で! あれですか? 未だにまな板な私に対するあてつけですかっ!?」

「いや…成長の個人差に文句を言われても……」

「デュバルさんやソンネンさんやヴェルナーさんは、ちゃんと少しの膨らみがある程度なのに!」

「私が思うに、デューちゃんはあと10年ぐらい経つと私やちーちゃんすらも超えるグラマラスボディになってそうな気がするんだよね……」

「まさかの裏切りですかっ!? 私と同じ同志だと信じてたのにッ!?」

 

 デュバル、勝手に裏切り者扱いされる。

 

「アーちゃんと実際に話してみたいなぁ~……」

 

 また嫌なフラグが立った。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 カスペン達がやって来た日の夜。

 アレクは一人、自分の部屋のベッドの上で電気も付けずに黄昏ていた。

 

「ヨルムンガンド……か」

 

 忘れられない。忘れる訳がない。

 前世における自分の死に場所であり、同時に自分の大砲屋としての誇りと魂の全てを掛けた相棒。

 

「オレは……」

 

 昼間はあんな事を言ったが、実際はまだ迷っていた。

 ずっと前、自分がまだジオン軍人だった頃、アレクとヨルムンガンドは見向きもされないどころか、MSの隠れ蓑にされてしまった。 

 生まれ変わって女の身になった今でも、その時の事を昨日のように鮮明に覚えているアレクは、ある種の『教訓』を得た。

 

(例えどれだけ信頼する仲間がいても、大切な友がいても……いざと言う時に助けてくれるとは限らない。絶体絶命の危機に駆けつけてくれるとは限らない…)

 

 だから彼女は、物心ついてからすぐに町工場を経営している父に頼み込んで、彼の持つ機械工学の全てを叩き込んで貰った。

 学校などにも一切行かず、只管に父の仕事を手伝い続けた。

 前世の記憶のお蔭で勉学などは必要なかったし、工場でしか学べない事を必死に勉強し、今では父と同等の仕事が出来るようにまでなった。

 勿論、仕事の合間に自分自身の体を鍛える事も忘れておらず、体つきも少女とは思えない程にしっかりしている。

 別の部分も大幅に成長してしまっているが、それは普通に悩みの種だった。

 

 それらの努力は全て『一人でも全てをこなせるようになる為』だったが、それが夢物語なのはアレク自身が一番よく理解していた。

 生まれ変わったカスペンと再会したのも、その頃だった。

 

「どれだけこっちが平穏を望んでも……戦場からは逃げられない……か」

 

 軍とは無縁の生活を送るにつれて、アレクは段々と『日常』を愛するようになっていった。

 だが、本当は分かっている。

 この魂に染みついた『大砲屋』の魂が戦場を望んでいる。

 それは否定したい事実。

 戦争なんて無ければ一番。戦場なんて行かない方がいいに決まっている。

 誰もが知っている事。分かっている事。

 だからこそ、昼間にカスペンが言ったことが理解出来てしまうのだ。

 

「あぁ……分かってるよ。これは…これだけは、『オレ達』にしか出来ない事だ」

 

 戦場を、戦争の恐ろしさを、悍ましさを肌で知っているからこそ、それをこの世界で『今』を謳歌する人々に味あわせる訳にはいかない。

 軍人の本分とは、無辜の人々を守護する事なのだから。

 

「おほ~! これまた近くで見るとすっごい美少女だね!」

「うわぁっ!?」

 

 完全に考え事に没頭していた時に、いきなり見知らぬ機械のウサ耳を着けた女が顔を覗かせた。しかも、自分の部屋で。

 流石のアレクも大きくその場から飛び跳ねて、危うくベッドから落ちそうになった。

 

「あ…あんた誰だっ!? どうやってここに入ったッ!?」

「君がアレクサンドロ・ヘンメちゃんか~。なんとも束さん好みの美少女ですにゃ~♡」

「人の話を聞けっ! ……って、今なんつった? 束さん…だと?」

「そうで~す! 私がISの開発者にして天才科学者の篠ノ之束さんで~す!」

 

 余りにも呆気なく自分の素性を話す束に、アレクは頭が痛くなってきた。

 

「……そういや、アンタの顔は前になんかの雑誌で見たことがあるような気がする……。その天才さんが、なんでまたオレん所にいるんだ?」

「ちょっと君の事が気になってね。あのスーちゃんのお友達って聞いてるから」

「スーちゃん? 誰の事だ?」

「ヘルベルト・フォン・カスペン。私はスーちゃんって呼んでるんだよ」

「そういや、あいつもアンタと知り合ってたって言ってたっけ……。あいつも苦労してるんだな……」

 

 今度来た時は、いつも以上にカスペンを握らってやろうと心に決めた。

 

「因みに、君は『アーちゃん』ね」

「好きにしろ……」

 

 話しているだけで疲れている為、変に抵抗するのは止めた。

 ここは流水のように受けが成すが吉だと判断する。

 

「んでもって、普通に窓から入ってきました。ちゃんと戸締りはしなきゃダメだよ? アーちゃんみたいな美少女を狙っている輩は世の中にはいっぱいいるんだから」

「そこらの軟弱な野郎に組み伏せられるような軟な鍛え方はしてねぇよ」

「みたいだね。この引き締まった太腿がまたなんとも…げへへ……♡」

「どこ見てんだゴラァッ!!」

 

 余談だが、今のアレクの格好は紺のタンクトップに純白のショーツ姿。

 基本的にアレクの寝る時はこんな感じである。

 

「アーちゃんさ……何か悩んでたでしょ」

「な…なんでンな事が分んだよ……」

「顔にそう書いてあるから」

「そうかよ……」

 

 否定はしない。事実だから。

 

「『今の』私はあくまで部外者だから、偉そうなことは言えないけどさ、お姉さんから一つだけアドバイスをあげるよ」

 

 精神年齢的には自分の方が圧倒的に上だ。

 なんて言える空気でもないので、ここは黙っておいた。

 

「自分の心に嘘だけはつかないで」

「自分に…嘘……」

「どんな結論を出したとしても、それはアーちゃんが悩んだ末に出した答えなんだから、私もスーちゃんも文句は言わない。けどね……」

 

 束がアレクの隣に座り、その目を真っ直ぐに見つめる。

 

「自分の『才能』に、自分の『能力』に、自分の『過去』から目を背けないでほしい。他の子達と同じように、アーちゃんにしか守れない人達だっているんだから」

 

 その言葉を聞いて、真っ先に思い浮かんだのは自分の父と工場の皆。

 父は当然だが、他の皆だって今ではもう家族同然に思っている。

 

(そういや……カスペンの奴も言ってたっけ……。例の三人も、ダチ公を守る為に国境まで超えてから戦場に自らの意志で舞い戻ったって……)

 

 拳を握りしめてから、目を閉じる。

 

(カスペン…デュバル少佐…ソンネン少佐…ヴェルナー少尉…今度はオレの番って事か……)

 

 例え直接的に面識がないとはいえ、同じ軍、同じ艦、同じ時代を共に生きた仲間達が自分と同じように生まれ変わり、今度は何かを守る為に戦場に戻る決意をした。

 自分にだって大切な人達、守りたい人達がいる。

 他の皆がそうだったように、自分が戦う理由、戦場に立つ理由なんてそんなシンプルなものでいいんじゃないか?

 

「オレも…他の皆の事は言えないな……」

「アーちゃん?」

「へへ……ゴチャゴチャと悩むだなんて、大砲屋失格だな。一度撃つと決めた以上は、引き金から手を離すなんて論外だ」

 

 顔を上げたアレクにはもう、先程まであった眉間の皺が無くなっていた。

 それどころか、どこかスッキリとした笑顔まで浮かべている。

 

「ありがとよ。あんたのお蔭で本当の意味で吹っ切れた」

「どういたしまして。それじゃ、ここいらでお暇しようかな?」

 

 来た時と同様に、窓から出て行こうとする束に声を掛けて引き留めた。

 

「今度来る時は、ちゃんと正面から来いよな。泥棒と間違えちまうだろ」

「また来てもいいの?」

「そっちが来たいと思ったんならな。そんじゃ、おやすみ」

「うん…うん! おやすみ、アーちゃん! またね!」

 

 窓から飛び降りるように身を投げた束。

 彼女がいなくなってからすぐに窓の外を覗いてみると、そこにはもう誰も何もいなかった。

 

「つーか……割とマジで神出鬼没すぎるだろ……」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 次の日。

 アレクは私服を着てハーゼ隊の基地の前に立っていた。

 

「……行くか」

 

 カスペンから渡された許可証を握りしめ彼女は歩き出す。

 確固たる決意と胸に、少女は再び相棒に会いに行く。

 こうしてまた一人、第603技術試験隊のメンバーが集まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




砲術長、本格参戦。

そして次回、ヨルムンガンドがどのような形で復活したのか、その全貌が明らかに。
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