インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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本当はもっと先まで進めたいけど、分割した方がより細かく書けそうな気がするので、今回は一段落つくまで何回かに分けていこうと思います。

恐らく、物語の原点に迫るのは次回ぐらいからかも……?







好奇心

 なんだか嫌々な感じの束とは違い、嬉しそうに道場へと案内する箒。

 彼女が喜んでいる理由は言うまでもないだろう。

 

「外から行けるのか?」

「そうだよ。中からでも行けはするけど、外から行った方が早いと思うし」

「へぇ~」

 

 初めて入る和風な家に興味をそそられているのか、先程からずっとソンネンとデュバルは篠ノ之宅を観察していた。

 

「千冬さんよ。流石にずっと車椅子を押し続けるのは疲れるんじゃねぇか? もうそろそろ離してもいいぜ?」

「心配するな。この程度で疲弊するような軟な鍛え方はしていない。寧ろ、このまま帰りまで押して行っていいぐらいだぞ?」

「そこまでして貰うのは、ちーっとばっかし気が引けちまうな……」

 

 前世での関係から粗暴なイメージが先行しつつあるが、実際には他者への気遣いが出来るできた人物なソンネン。

 だからこそ、戦車教導団教官なんて地位に立てて、多くの人間達から尊敬されたのだ。

 

「私もソーちゃんの車椅子を押したい~!」

「お前だけは絶対にダメだ」

「なんで~っ!?」

「もしもお前に車椅子を押させたりなんかしたら、そのまま魔改造とかするだろ」

「え? ダメなの?」

「当たり前だ!」

「ちぇ~……」

「「魔改造って……」」

 

 歴戦の戦車兵であるソンネンでも、自分の車椅子を魔改造されると聞くと、流石に嫌な予感で冷や汗をかいた。

 逆にパイロットでありながらも技術者気質があるデュバルは、例えばどんな改造をするのかと想像し、少しだけ興味がそそられた。

 

「着いたぞ! ここだ!」

「「おぉ~…」」

 

 大きな木造の建物に到着すると、箒が外側に隣接している引き戸を開いた。

 すると、中では剣道着を着た男性が竹刀を持って一人で構えていた。

 

「……む?」

 

 男性がこっちに気が付いたのか、強面の顔をこっちに向けた。

 その途端に一夏と箒は緊張したように背筋を伸ばしたが、束と千冬は普通にしている。

 ソンネンとデュバルもそれは同様で、それなりのプレッシャーは感じてはいたが、実際の戦場を何度となく経験している二人にとっては微風のようだった。

 

「柳韻さん。ご無沙汰してます」

「千冬君か。それに一夏君に……その子達は?」

「私達と、いっくんや箒ちゃんの新しいお友達だよ」

「束……」

 

 場に何とも言えない空気が流れる。

 とてもじゃないが自己紹介なんて出来る雰囲気ではないが、それでも一応はしておかないと失礼にあたる。

 幸いなのは、二人がこれぐらいでビビるような繊細な神経をしていなかったことか。

 

「ジャン・リュック・デュバルです」

「デメジエール・ソンネンです」

「篠ノ之柳韻だ。束と箒の父であり、この『篠ノ之道場』の道場主をしている」

 

 相手が外国人の子供だというのに、普通に話してくれる。

 それだけで、この人物が良識的な人間であると判断できた。

 

「君達のような海外の子がこの町にいる…ということは、もしや二人はあの孤児院の子供達か?」

「その通りです」

「矢張りか。あそこの院長とは20年来の友人だ。昔から困った人間は放っては置けない気質があってな。それ故に、自分の金で孤児院を創り上げたらしい」

「そうだったのかよ……」

 

 ここで知る自分達の親代わりとなっている院長の過去の一部。

 だからと言って、見る目が変わったりはしないが。

 

「ところで、どうして道場に来た? 客が来たのならば家に挙げればいいものを……」

「我々が無理を言って、ここを見学してみたいと言ったからです。どうか、ご息女を責めないで頂きたい」

「そうだったのか。いや、そのようなことで娘を責めたりはしない」

 

 竹刀を締まってから、柳韻は手招きをしてきた。

 

「いつまでもそんな所ではあれだろう。遠慮はいらないから、こちらに上がってきなさい」

「それは願ったり叶ったりですが…よろしいのですか?」

「構わんよ。どうせ、今日は道場は休みの日だからな」

「道理で他の連中がいないわけだ」

「そういう事だ」

「それならば……」

「「「お邪魔します」」」

 

 因みに、ちゃんと言ったのは千冬とソンネンとデュバルの三人だけである。 

 一夏は何も言わずに上がり、箒と束は自分の家なので当然のように普通に入った。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「……あのよ」

「どうした?」

「なんでオレ様は千冬さんに抱っこされてんだ?」

 

 許可を貰って道場内へと入れたのはいいが、足が不自由で車椅子であるソンネンは上がりたくても上がれない。

 そこで助け舟を出したのが千冬で、ソンネンの事をヒョイと抱え上げ、そのままの状態で道場内へと入ったのだ。

 勿論、抱き方はみんな大好きなお姫様抱っこだ。

 

「仕方がないだろう。車椅子のまま上がるわけにもいかず、かといってお前は自力では上がれない。となれば、こうして誰かがお前の体を持つしかあるまい?」

「いや、オレだってそれぐらいは理解してるんだけどよ? 問題はだな、どうしてこんな抱え方をしてるんだって話よ」

「こっちの方が楽だからだ。イヤか?」

「そうじゃねぇけどよ……あっちがな」

 

 ソンネンの視線の向こうでは、束が恨めしそうに千冬の事を見ていた。

 

「ちーちゃんばかりズルい~…! 私もソーちゃんをお姫様抱っこしたい~…!」

「あいつは無視しておけ。関わるだけ無駄だ」

「そこまで言うのかよ……」

 

 半ば呆れつつも、千冬の言い分の方が正しいと思い、そのまま黙っておくことにした。

 一方、デュバルの方は柳韻からこの道場の事や剣道の事などを真剣に聞いていた。

 

「……というわけだ。少し難しかったかな?」

「いえ、そんな事はありません。聞いた話のどれもが非常に興味深く、同時にとてもいい勉強になります。これまでに全く縁が無かったからこそ、見聞きすることの全てが真新しく新鮮に映ります。恥ずかしながら、興奮している自分がいますから」

「いや…君ぐらいの歳の子はそれぐらいが丁度いいのだよ。沢山の事を知り、沢山の事を学ぶといい。その全てが君にとって掛け替えのない財産になるだろう」

「勿論です。学ぶという行為に終わりは有りませんから。私はここでしか学べない事を学びたい」

 

 どう考えても五歳児の言葉じゃないが、それを普通に受け入れている柳韻も柳韻なのかもしれない。

 この娘にしてこの親あり…である。

 実際、一夏と箒が目が点になっていた。

 

「出来れば、実際に剣道の型などをこの目で見てみたいのですが……」

「そうだな……。千冬君」

「はい。なんでしょうか?」

「そこにある竹刀を使って構わないから、彼女に少し型とかをみせてくれないか?」

「分かりました。束、ソンネンを頼む」

「やった!」

「言っておくが…変なことをするなよ?」

「もちのロンだよ~」

「なんて言ってはいるが、何かされたら遠慮なく叫べ。すぐに私が駆けつけてやる」

「了解だぜ」

「まだ私の信頼性ゼロなのね……」

 

 ソンネンの体は千冬の手から束に渡されて、そのまま彼女の小さな体を抱きかかえたままで隅の方まで行き座り込んだ。

 

「板張りの床ね……」

「珍しい?」

「うんにゃ。孤児院にもこの手の床は普通にあるしな。特に珍しいってもんでもねぇよ」

「その割には興味深そうに見てない?」

「まぁな。こんな固い床の上で竹の剣を振るんだろ? 倒れたら怪我とかしそうなのにすげぇなって思ってよ」

「その辺はちゃんと受け身とかとるし、防具も付けるしね」

「そういや、そうだったな。つーことは、箒が今着てるアレを防具の下から着るのか?」

「そうだよ……あ」

 

 ここで束の頭の上に豆電球が強く光る。

 同時に、なんだか嫌な予感がソンネンの背中を走る。

 

「ねぇ…ソーちゃん?」

「な…なんだよ?」

「ちょっとだけでいいからさ…道着着てみない?」

「オレが? なんで……」

「ほら。折角こうして道場に来ても満喫出来てないっぽいし、ならせめて道着だけでも着て気分だけでも味わった方がいいんじゃないかなって思って」

「いや、オレは別に……」

 

 このままだと束に無理矢理に着替えさせられそうだと判断したソンネンは千冬やデュバル達の方を見るが、向こうは向こうでなんだか盛り上がっていた。

 

「まずはこう構えて……こう動く!」

「ほぅ……。これはまた……」

「千冬姉かっこいい!」

「お見事です! 千冬さん!」

「うむ。相変わらず見事な動きだ」

 

 どうやら観念するしかないっぽい。

 

「そうと決まったら、早速、魅惑のお着替えタ~イム!」

「ちょ…ちょっと待てっ!? おい! 束っ!?」

 

 なんとか抵抗して両手をバタつかせるが、人外染みた身体能力を誇る束には全く効果がなく、結局はそのまま連行される羽目に。

 

「おぉっ!? 思ったよりも可愛い下着をつけてるっ!?」

「普通に凝視してんじゃねぇ! 涎を垂らすな! 鼻血を出すなっ!」

「んほぉぉぉっ♡ 萌え――――――っ♡」

「萌えじゃねぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「か…か…か…」

「はぁ……」

「可愛いっ!!!」

 

 鼻息荒い束の前には、箒と同じ剣道着を着たソンネンが横座りで座っていた。

 本人は完全に諦めの境地に至ったのか、ハイライトの消えた目で横を向いている。

 

「そこで何をしてい…る……」

 

 ここでようやくこちらの変化に気が付いた千冬たちがやって来た…のだが、ソンネンの格好を見た途端に動きが止まった。

 

「なんで道着を着てるんだ……?」

「それを聞く前にまずは鼻血を拭け」

「おっと」

 

 ポケットから出したティッシュで鼻を拭くが、すぐにまた出た。

 

「ほら。ソーちゃんは思うように動けないから、せめて恰好だけでもと思って」

「む…そうだったな。私達だけで盛り上がってしまったな……」

「配慮が足りなかったな…済まない」

「いや…気にスンナ……」

「…大丈夫か?」

「ダイジョーブ……」

 

 ヒラヒラと袖を振っていると、なにやら一夏がソンネンをじ~っと見ていた。

 その顔は赤くなっていて、ふとソンネンと目があった。

 

「なんだ~? もしかして、このソンネンさまの新たな魅力にメロメロってか~?」

「ち…ちげーよ! お前なんて全然見てねーし!」

「い~ち~か~?」

「何でお前が怒ってるんだよ?」

「うるさい!」

 

 ここで子供同士の痴話喧嘩勃発。

 元を辿れば束が原因なのだが、当の本人はいつの間にかいなくなっている。

 なんでかデュバルも一緒に。

 

「あれ? 姉さんがいない?」

「あいつめ…どこに消えた?」

「ここで~す!」

 

 奥からやって来た束が手を繋いでいたのは、ソンネンと同じように道着に着替えたデュバルだった。

 

「うんうん! ソーちゃんもすっごく可愛かったけど、金髪美幼女のデューちゃんの道着姿も最高に可愛いね!」

 

 喜ぶ束を余所に、デュバルは先程からずっと体を動かして自分の格好を見ていた。

 

「ふむ……思ったよりも動きやすいのだな。これは中々……」

「お前…大丈夫だったか?」

「何がだ?」

「いや…なんでもない」

 

 どうやら、MSの開発に携わっている人間というのは、想像以上に強かなようだ。

 

「……束。確か、お前のお古の服や着物が押入れの中にしまってあった筈だな? それを持ってきなさい。私が何を言いたいか…分かるな?」

「合点承知!」

 

 見事なサムズアップを見せてから、束は自宅の方へと走っていった。

 この親子、実はかなり仲がいいのではないだろうか?

 

「どうせ仕舞っておいても虫に食われるだけだ。それならば、君達にあげた方がずっといい」

「つってもなぁ……」

「折角のご厚意だ。有り難く受取ろう。少しでも節約できるのならば、それに越したことは無いのだからな」

「それを言われると何も言えないよな……」

 

 その後、束が紙袋に入れて持ってきた洋服や着物の数々を貰った二人。

 図らずも、たった一日で多くの服を手に入れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんかソンネンがメインになってた気がする。

可能な限り、二人平等に出番をあげたいのに……。
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