インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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前回まで束が二人と出逢っていたという事は……分りますよね?

今回はそんな話です。






『2番目』と『3番目』

「「あ」」

 

 ハーゼ隊基地の前にて、二人の少女がバッタリと出逢った。

 一人はモニク・キャデラック。

 もう一人はヒデト・ワシヤだった。

 二人は揃って一般人が特別に基地内へと入ることが許されている『許可証』を手にしていた。

 

「……ここに来ているって事は、あなたも博士と出逢ってから、ここに来るように言われたのね?」

「ってことは、特務大尉も同じような事を言われたんスか?」

「そうよ。『ここで私を待っている子がいる』って」

「オレの場合は置手紙だったんですけど、こう書いてあったんです。『ここでオレの翼が待ってる』って」

「翼……ね。言い得て妙だけど、ある意味で最も妥当な言葉でもあるわね」

「かもですね。で、どうします?」

「決まってるでしょ」

 

 モニクは許可証を翳しながら、力強く言い放った。

 

「ここまで来てしまった以上、引き下がるわけにはいかないでしょう? ほら、行くわよ。まずは入り口でこの許可証を見せないと」

「了解であります。特務大尉殿」

 

 堂々と歩くモニクに続く形で、その後ろからヒデトも着いて行った。

 

「にしても、まさかこんな形でずっと前に大佐から貰った許可証が役に立つとは思いませんでしたね」

「全くだわ。あの人の事だから、いつかこんな日が来ることを見越して私達にコレを渡していた可能性もあるけど」

「あ~…それマジであるかも。あの人程の軍人ともなれば、確実にオレらとは違う場所を見てそうですもん」

 

 そんな話をしながら、二人は門の所にいる軍人に許可証を見せて、基地内に入る許可を貰ったのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 基地内の格納庫にて、ある問題が発生していた。

 

「なんでしょうか…コレ」

「さぁな。全く見当がつかん」

 

 部下に教えられて急いで格納庫までやって来たカスペンの目の前には、二つの大きなコンテナがあった。

 デフォルメされた可愛らしいウサギがペイントされているソレは、文字通り正体不明の存在だった。

 

「送り主は分かっているのか?」

「それが全く。いつ、どうやってここに置いたのかさえ全く分らないんですよ。本当に、いつの間にかここにあったとしか……」

「ふむ……」

 

 整備員も完全にお手上げ状態。

 実際に手を挙げて顔を振っているから、本気で困っているのだろう。

 

「せめて、この中身が分れば少しは対処のしようがあるんですけど……」

「それも分からないのか?」

「はい。一応、考えうる全ての方法を試してみましたが、全部ダメでした。少なくとも、我々の手ではこのコンテナを開ける事は不可能だと思います」

「我々の手では? その言い方だと、まるで他に人間には可能なように聞こえるが?」

「っていうか、実際にそうみたいなんです。これを見てください」

 

 整備員がカスペンを手招きして、コンテナの右側に案内する。

 すると、そこには大人の手の平ぐらいの大きさのパネルがあった。

 

「これは?」

「恐らく、生体認証システムだと思われます。これに登録されている人間以外には……」

「このコンテナを開けることは不可能…か」

「でしょうね。それを調べるとなると、かなりの設備と労力が必要になりますし……」

「八方塞がり……か」

 

 よく見たら、二つのコンテナにはそれぞれ『2』と『3』と書かれている。

 これが何か重要な意味を持っているのだろうか。

 

「こんな所で一体どうした?」

「「織斑教官」」

 

 ここで千冬のご登場。

 どうやら、今は小休止の時間のようだ。

 

「実はですね……」

 

 整備員が千冬にこれまでのあらましを説明する。

 聞き終わった千冬は、急に顔が青くなった。

 

「ど…どうしました?」

「いや…なんでもない」

 

 なんて言ってはいるが、千冬はこのコンテナの送り主が誰なのか一発で分かっていた。

 

(こんなファンシーなウサギを書いたコンテナを誰の目にも触れずに持ってくれる奴なんて、束以外にいるわけないじゃないか…! あのバカが……今度は何を企んでいるっ!?)

 

 仮にも自分が親友だと思っている相手が、こんな破天荒な事を普通にしていたら、千冬でなくても頭が痛くなるものだ。

 事実、千冬は苦虫を噛んだような顔で頭を抱えている。

 

「大丈夫ですか? どこか具合でも……」

「本当に大丈夫だ。気遣いありがとう、大佐」

 

 天才な親友のせいで皆に迷惑を掛けてしまって頭が痛いです。

 そんな事を言えるわけも無く、またもや胃がキリキリ痛み出す。

 

(今度会った時は、まずは一発殴ろう)

 

 束、今から痛い未来が確定した瞬間である。

 

「移動ぐらいは出来るんで、取り敢えずは邪魔にならない場所に置いておきましょうか?」

「今はそれぐらいしか出来ないか。仕方あるまい。もし仮に危険物だった場合、少しでも被害を抑えないといけないしな」

「では、早速準備をしますよ」

「頼む」

 

 整備員がコンテナを運ぶためのフォークリフトを持ってくるために奥に向かうと同時に、今度は整備室の入口に別の軍人がやって来た。

 

「失礼します! カスペン大佐はいらっしゃいますでしょうか?」

「私ならばここだ。一体どうした?」

「大佐にお客様が来ておられましたので、ここまでご案内しました」

「私に客? それをここまで案内した?」

 

 普通ならば、客が来たなら基地内にある応接室にでも案内するのが普通の筈。

 それを自分がいる場所まで案内させたという事は……。

 

「まさか……?」

 

 カスペンの『まさか』は見事に的中する事となる。

 

「「大佐」」

「お前達は……」

 

 そこにいたのは、ついこの間も会ったモニクとヒデトの二人だった。

 

「ワシヤ中尉にキャデラック特務大尉。どうして君達二人がここに?」

「ちょっと用事がありまして」

「用事だと?」

 

 少なくとも、カスペンは彼女達二人に用事なんてない。

 だが、二人はここに用事があると言う。

 この矛盾はなんなのだろうか。

 

「大佐。この二人は?」

「おっと、そうでした。まずは紹介をしなくては」

 

 いきなりの事でそれぞれの紹介を完全に怠っていた。

 と言う訳なので、ここはお互いに自己紹介をして貰う事にした。

 

「初めまして。モニク・キャデラックです。大佐とは個人的に親しくさせて貰っています」

「ヒデト・ワシヤです。大佐とは……腐れ縁? 的な感じです」

「そ…そうか。私は……」

「織斑千冬さん…ですよね。顔はよく知っています。IS関係の雑誌でよくお見かけしてましたから」

「恥ずかしい限りだよ」

「そんな事は無いと思いますが……」

 

 少なくとも、モニクは千冬の事を一人の女性として、人間として尊敬している。

 かといって、ミーハーなファンたちのように興奮する事は無いのだが。

 

「オレ、有名人って始めて見たかも…って、昨夜も普通に会ってたわ」

「私もね」

(まさか……)

 

 千冬の額に嫌な汗が流れる。

 

「あの、サイン貰ってもいいッスか?」

「ちょ……いきなり何を言ってるの!」

「いいじゃないスか。またとないチャンスなんだし」

「全くもう…すみません。この子はいつもこうで……」

「私ならば別に構わないぞ」

「いいんですかっ!?」

「あぁ。もう完全に慣れっこだしな。今更だよ。で、何に書けばいい?」

「このスマホケースにお願いします」

「これまた意外な物をチョイスしてきたな……」

 

 今回は予め自分の家から持って来ていたマジックペンを千冬に貸す形でサインをして貰った。

 千冬は非常に書き難そうにしていたが。

 

「出来たぞ」

「あざっす! 大切にします!」

 

 ヒデト・ワシヤ。昨日に引き続き、またもや宝物が増えるの巻。

 

「んで、ンな場所で何をしてたんスか?」

「あれだ」

 

 カスペンが親指で二つのコンテナを指すと、急にモニクとヒデトの目が大きく見開かれた。

 

「まさか…あれがそうなの?」

「間違いないッスよ! それっぽいの、あれしかないですもん!」

「お…おい? 二人とも急にどうした?」

 

 カスペンと千冬を置いてきぼりにしたまま、二人はそそくさとコンテナのある場所まで向かって、その周りをぐるぐると回りだす。

 

「大尉! なんかコンテナの右側にパネル的な物がありますよ!」

「これが『鍵』…なのかしら?」

 

 ここまで来れば、もうカスペンにも千冬にも大凡の見当がついた。

 このコンテナは元々、この二人の為だけにこの場所に運び込まれたのだと。

 

「大佐! このコンテナ、開けても大丈夫っすか?」

「あ…あぁ。開けられるのなら、我々は一向に構わないのだが……」

「よっし! そんじゃ大尉……」

「許可もちゃんと頂いたし、開けましょうか」

 

 ヒデトが『2』と書かれたコンテナのパネルに、モニクが『3』と書かれたコンテナについているパネルに手を当てると、その瞬間に何かを確かめるようにパネルが二人の手を赤外線レーザーのような物でなぞっていく。

 

【選抜者『ヒデト・ワシヤ』を確認。コンテナを開きます】

【選抜者『モニク・キャデラック』を確認。これよりコンテナを開きます】

 

 パネルにそう表示されたと思ったら、いきなりコンテナがゆっくりと開き始める。

 二人は急いでその場から離れてカスペン達の元に戻り、コンテナの中身を確認するように目を凝らす。

 そうして、コンテナの中から出てきた物、それは……。

 

「こ…これは……!」

「なん…だと……!」

「はは……やっぱりかよ……」

「……………」

 

 蒼く輝くボディを持つ全身装甲のIS『ヅダ』が二体並んでいる姿だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 それは、自分の親友が持っている機体と全く同じ姿をしたIS。

 違いがあるとすれば、頭部に隊長機であることを示すブレードアンテナが無い事と、シールドの部分にそれぞれ『2』と『3』の数字が書かれてある事だけだ。

 

「ちゅ…中尉、大尉……ちゃんと説明をしてくれるんだろうな?」

「いいですよ」

 

 二人はそれぞれに昨夜、自分達の部屋で起きた出来事を話した。

 モニクは束と話してからかわれつつも背中を押して貰った事を。

 ヒデトは束と意気投合して親友になった末に、寝落ちするまでずっと話し込んでいた事を。

 そして、二人して共通していたのは、最後には束に『この基地に来るように言われた』ことだった。

 

「あの束が…身内以外の人間に興味を示した…だと……っ!?」

「それ以上に色々とツッコミたいことはありますが……」

 

 ここはグッと我慢した方がいいと思う。

 

「驚きもしたし、からかわれもしたけど……彼女がいなかったら、今でも私は延々と迷っていたと思います」

「まさか、あいつが誰かを応援するような真似をするとはな……」

 

 それだけ、束も密かに成長していると言う事なのかもしれない。

 それを思うと、親友としては嬉しくも感じる。

 

「つーか、束さんってマジで愉快で楽しい人なんスね! あんなにも息が合った人、本気で久し振りに会いましたよ!」

「つ…疲れなかったか?」

「全然? それどころか、話している内に増々テンションが上がってくるぐらいですよ!」

「……世の中は広いな」

「へ?」

 

 まさか、あの束のテンションに真正面から付いて来れる逸材がこの世に存在するとは本気で思わなかった。

 もしかしたら、このワシヤという少女は別の意味で世界を変える存在かもしれない。

 

「しかし、二人の話を統合すると、あの篠ノ之博士が中尉と大尉の為にこの二体を製造して、コンテナに収納した状態でこの基地に置いて行った…と言うことになるのか?」

「そのようだな。確かに、こんな物を民家の玄関先に置かれては溜まったものじゃないが。…あいつにも、そんな常識的な部分があったんだな」

 

 千冬、何気に親友の事をディスる。

 

「いずれはこちらの方から正式に依頼をするつもりだったのに、よもや向こうから本人達に渡してくるとは……いい意味で予想外だが、心臓に悪すぎるぞ……」

 

 渋い顔をしながら自分のお腹をさするカスペン。

 彼女の胃もまた痛み出したのだろうか。

 

「だが、流石は篠ノ之博士だな。この基地ならば、容易に他の手に渡ることはないし、私もいるから二人の事に関しても色々と便宜を図れる。…これを置く瞬間が誰も分からなかったのは些かショックが大きいが……」

 

 眼を細くして猫の口になるカスペン。

 軍人として、一部隊を預かる身として、科学者に完全に上を行かれるのは結構に堪えるものがあるのかもしれない。

 

「コンテナ自体が二人の生体データでしか開かないようになっていたのならば、この二機のISもまた二人にしか動かせないようになっているに違いない。事実上の『専用機』になるわけか」

「大丈夫なのか? 彼女達は民間人だろう? 幾ら束が気に入っているからと言って、それを……」

「司令に相談すれば、その辺りはどうにかなると思います。問題があるとすれば……」

「すれば?」

「情報処理などで、また忙しくなるって事ですね……」

「その……頑張れ。そして、済まない……あのバカが……」

「いえ…いつもの事ですから……はぁ……」

 

 意気消沈するカスペンと千冬を見て、モニカとワシヤは互いに顔を見合わせる。

 

「もしかして、私達って……」

「悪い事をしちゃったみたいッスね」

 

 そう思っても、時既に遅し。

 後はもう突き進むしかないのだ。

 

 

 

 

 

 




次回、またも動きます。
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