インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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私の作品は基本的に予定通りに行かない事がしょっちゅうです。

前回も、本当ならとっくに二機のヅダの試運転を終わらせているつもりでしたから。

でも、なんでかいつの間にか文章が長くなってるんですよね。

これは小説を書き始めた頃からの癖になってます。

それでも、昔に比べれば今はかなりマシになってるんですけど。







蒼の乱舞

 二体のヅダが大空目掛けて飛んできたのを見て、地上の訓練場に集まっているハーゼ隊の面々は驚きの顔を見せていた。

 

「あれが……」

「篠ノ之博士が作った新型?」

「なんだろ…どこかで見たことがあるような気が……」

 

 隊員達が各々に反応する中、ラウラだけが必要以上に驚愕していた。

 彼女だけがそんな顔をしている理由は明白で、以前に一度だけ目撃をしているからだ。

 

「あ…あの…大佐。少しよろしいですか?」

「ん? なんだ?」

 

 ラウラに連れられる形でカスペンは少しだけ離れた場所に移動する。

 

「あの二体のISは、あの時…第二回モンドグロッソにて大佐のご友人が操縦していた機体の同型機なのでは……」

「いや、同型もなにも、あの二機もあの時の機体も同じ『ヅダ』なのだが」

「そ…そうなのですか?」

「というかだな、そもそもヅダは将来的に量産することをコンセプトとして開発されているから、同じ形状の機体が複数あってもなんら不思議じゃないんだぞ?」

「あ…あんな高性能機を量産っ!?」

「あくまで『コンセプト』だけだよ。実際に量産されるかどうかは不明だ」

「ならば、あれらの機体は……」

「所謂、先行試作量産機だな。あの時、デュバル少佐が搭乗していたのが一番機で、たった今出てきたのが二番機と三番機になる」

「今回の機体と、大会で見た機体とでは何か違いがあるのですか?」

「見た目では、隊長機を示すブレードアンテナが無いぐらいか。後は武装面の違いだな。一番機は他のとは違って色んな武装を積んでいる。一応はそれぐらいか。もう質問は無いか?」

「あ…いえ。ありがとうございます」

「なに。部下の疑問に答えるのも、隊長としての立派な仕事だよ」

 

 軽くラウラの頭を撫でてから、カスペンは元の位置に戻っていった。

 その背中を見ながら、ラウラは撫でられた頭に自分の手を乗せていた。

 

「大佐……」

 

 頭を撫でられた時、不思議な安心感があったと同時に、胸の鼓動が激しくなった。

 これが指し示す感情を、ラウラはまだ知らなかった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方、ヅダを纏って空に上がった二人は、カスペンからの指示を待って待機をしていた。

 

「オレ……今、空を飛んでるんだ……」

「普通なら少しは怯えたりするんでしょうけど、なんでかしらね……地に足を着けているよりも、何故か安心するわ」

「もしかして、オレ等の宇宙生活が長かったせいですかね? 無重力空間に慣れ過ぎて、上下左右に重力が無い場所に感覚が根付いてるっていうか……」

「一応、生まれ変わってからはずっと地上で生活をしてきてるんだけどね……」

「それでも精々が12年ぐらいですよ? 宇宙で暮らしてた時間の方がずっと長い」

「それもそうね……」

 

 これもまた、スペースノイドとしての悲しい性なのかもしれない。

 まだ重力が存在する空中ですらこうなのだから、水中ともなれば、今以上の安心感を得るのかもしれない。

 

『二人とも、機体の具合はどうだ?』

「問題ありません。2番機、3番機共にオールグリーンです」

『それはなにより。では、いつでも好きなタイミングで動いてもいいぞ』

「え? そんなんでいいんですか?」

『勿論だ。今の貴官らは軍属ではないんだ。注意喚起ぐらいはするが、命令権は存在しない。ただ、無茶だけはするなよ。今は制空権とか五月蠅いからな』

「「了解」」

『では、まずは機体の具合を確かめてくれ。武装の確認などはその後からだ』

 

 ここで通信が切れた。

 二人は装甲越しに顔を見合わせてから、ジェスチャーを交えながら話をする。

 

「ですってよ」

「そんじゃ、お言葉に甘えて……」

「「いきますか!」」

 

 背部ブースターに火を入れてから、二人は一気に加速して別々の方向に向かって飛行を始める。

 

「イヤッホォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

「こら! さっきまでの緊張感はどこにいったのよ!」

「別にいいじゃないッスか! こんなにも気持ちがいいんですから! 大尉は違うんですか?」

「わ…私は……」

「私は?」

「あ~…もう! そうよ! 私も楽しいわよ! 悪いっ!?」

「誰もそんな事は言ってないんですけどっ!?」

 

 いつも通りの会話を繰り広げながらも、モニクもヒデトもIS初心者とは思えない程に見事なマニューバを見せてくれている。

 モニクは丁寧かつ慎重に動きながらも、その一つ一つの動きの全てが洗練されていて、逆にヒデトの方は本能に従って文字通り好き放題に飛び回ってはいるが、決してモニクに衝突はしないように細心の注意を払っているのが分かった。

 

「2番機だ! オレの2番機だ―――――――――!!」

「気持ちは分かるけど、もうちょっと集中しなさい! 幾らなんでも興奮し過ぎよ!」

「あははははははははははははは!」

「話を聞け―――――――!!」

 

 もう、本当にやりたい放題である。

 それでも全く操縦ミスが無いのは、嘗ての戦闘経験が無自覚の内に活かされている証拠か。

 少なくとも、他の正真正銘の初心者が見れば、愕然として地に膝をつくのは必然だろう。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「なんなんだ…あれは……」

「お~お。こりゃスゲーや。あいつら、意外とやるじゃねぇか」

 

 ISを誰よりも嗜んでいる身である千冬は、初心者とは思えない程の操縦技術を余すことなく披露している二人に開いた口が閉じなくなり、アレクは純粋に二人の実力に感心していた。

 

「ふふふ……流石だ。こうでなくてはな」

 

 カスペンの方も二人に全くブランクらしきものが見受けられない事に嬉しさを隠しきれないが、以前の事もあって、なんとか全力で喜びたいのを我慢をしている。

 だが、それでも頭のアホ毛は素直なようで、さっきからずっと激しく左右に揺れっぱなしだった。

 

(隊長のアホ毛が揺れてる……)

(アホ毛が揺れてる……)

(そんな隊長も可愛くて素敵です……♡)

 

 どんなに我慢をしても、クラリッサからは逃げられないようだ。

 一体どうすれば、彼女の魔の手から解放されるのだろうか。

 

「…………」

「驚いたか?」

「え? いや…その……はい」

 

 もう嫉妬するのも馬鹿馬鹿しくなる程に見事な腕前を見せつけられては、ラウラも黙るしかない。

 

「あれは、あの二人が努力や経験を積んだ結果だ。特に、ワシヤ中尉はな」

「彼女が…ですか?」

「そうだ。嘗て、中尉は操縦適性が高いと診断されていても、得意な科目と不得意な科目の成績差が激しかったことが原因でパイロットになれなかった経緯がある」

「そうだったんですか……」

「だが、そんな上の意見には耳を貸さず、彼女の純粋な能力だけを認めた人物がいた。それが……」

「『少佐』…なんですね」

「あぁ。周りの意見に流されず、自分の目で見たことを信じて中尉を認めた。私も、その判断は決して間違いじゃなかったと思っている。きっと、私があの場にいれば、同じ判断を下していただろう」

 

 どれだけ座学の成績が良くても、実戦で引き金を引けなけば意味が無い。

 ヒデトはまさに、そんな現実を周りに見せつけた人間達の一人だった。

 

「周りから何を言われようとも、努力を続ける奴を見捨てる者は絶対にいない。必ず誰かが見ていて、その努力を正当に評価してくれる日が来る」

「はい……そうですね」

 

 気が付けば、ラウラはヒデトに自分の影を重ねていた。

 いつの日か、私も彼女と同じように認められる日が来る。そう信じて。

 

「よし! もうその辺でいいだろう! 二人とも、今度は武装のチェックを頼みたい!」

『それはいいですけど、具体的にはどうするんですか?』

「私に任せておけ。こんなこともあろうかと…とな」

 

 通信越しにモニカの疑問に応えながら、カスペンは予め持って来ていた端末を操作する。

 すると、いきなり格納庫から小さな『ナニか』が沢山飛び出してきた。

 

『な…なんだぁアレっ!?』

「訓練用の小型ドローンだ。思い切りやってくれて構わんぞ。安物だし、私達も普段から訓練でメチャクチャに壊してるからな」

『ド…ドイツ軍って贅沢なんスね……』

「なに。私達の事をマスコット扱いしているのだから、これぐらいの事はしてやらねばな」

((((意外と根に持ってたんだな……))))

 

 特に、カスペンはその容姿も相まって、国家代表となる前からずっとドイツ軍のマスコット的な扱いをされてきた。

 国家代表になってからは、更に勢いづいてきたが。

 

「だから、遠慮なく斬るなり撃つなりしてくれ」

『お願いだから、本気で反応に困る事を言わないで下さいよ……』

 

 これには、流石のモニクも装甲の下で苦笑いをしていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 またまた場面は変わって上空。

 

「で、結局どうします?」

「大佐がああ言ってるんだし……」

 

 モニクはその手にIS用マシンガンを取り出して装備した。

 何度も何度も使い、ジオン軍内で最も使用されてきた武装の一つでもある為、拡張領域からは難なく出すことが出来た。

 

「やるっきゃないんじゃない?」

「なんて言って、本当は大尉も暴れたいんじゃないんですか~?」

「うっさいわね。思わずそっちに向けて誤射されたくなかったら、黙って武器を出しなさいよね」

「は~い」

 

 間延びした返事をしながら、ヒデトはIS用バズーカを取り出して手に取った。

 これもまた使い慣れた装備な為、苦も無く装備可能だった。

 

「このドローンって、なんか虫みたいで鬱陶しいわね」

「見た目は、よくあるプロペラタイプのドローンですけど」

「大きさの問題よ。だから……」

 

 最初と同じように背部ブースターに点火し、一気に加速をしながらもドローンの群れを追い越し、そのまま背後に回り込みながら体の向きを変えてからマシンガンを連射する。

 お世辞にも動きが機敏とは言い難いドローンたちは、瞬く間に撃破されてスクラップと化していった。

 

「ヒュ~♪ さっすが大尉、やるな~。オレも負けてられないぞ……ってな!」

 

 モニクとは反対方向に突撃し、一体のドローンを足蹴にしながらバズーカの標準を合わせる。

 ほぼゼロ距離に近い場所でバズーカの引き金を引く。

 そんな場所で撃たれれば、当然のように命中はする。

 爆発に巻き込まれないように、急いでその場から離脱をしながら別のドローンに狙いを定める。

 

「イェ~イ! 赤い彗星の真似~♡」

「調子に乗らない!」

 

 叫びながらも、空いている左手に握っているヒートホークをドローンに突き刺して、もう片方の手でマシンガンを撃って別のドローンを破壊していた。

 

「お~! すっげ~なぁ~! それならオレは~……」

 

 シールド内にあるグリップを握り、折り畳み式のクローを展開、そのまま前に突き出しながら最大速度で突撃した。

 それが『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』と呼ばれる高等技術である事を使った本人であるヒデトは全く知らない。

 

「これしかないっしょ!! おりゃ――――――!!」

 

 唯でさえヅダの速度はそこらの量産機なんて目じゃないレベルなのに、最大速度で突撃なんてしようものなら、訓練用ドローンでなくても回避は非常に困難となる。

 結果、ドローンの一体が見事な串刺しとなった。

 

「もう一丁!」

 

 ドローンを突き刺したまま、ヒデトは別のターゲットに目掛けて突撃。

 二体目もブスリと突き刺してから、体全体を大きく横回転させてクローに刺さっていたドローンを空中に放り出す。

 破壊寸前なドローンは、まだ無傷な別のドローンと空中衝突をして動きを止め、それを狙ってマシンガンで一網打尽にした。

 

「はい、終わりっと!」

 

 三体のドローンの爆発を確認してからモニクと合流。

 彼女も彼女で相当数のドローンを破壊したようで、もう残りも少なくなっていた。

 

「これで決めるわよ!」

「あいよ…っとな!」

 

 そのまま、背中合わせに周りながら、マシンガンを撃ちまくる。

 全ての残弾を撃ち尽くすかのように引き金を引きっぱなしにして、ドローンの爆発が連鎖していく。

 やがて、マシンガンの弾を全て使い切ってカチカチとトリガーが乾いた音を鳴らし、全ての弾を使い切った証を出すと、あれだけ沢山いたドローンが一つ残らず破壊され尽くし、周辺空域には静寂だけが残った。

 

「これで終わり…なんスかね?」

「後続が出ないところを見る限り、多分そうなんじゃないかしら」

 

 少ししてからマシンガンを収納し、念の為に周囲の確認。

 

「敵影は無し…と。本当に終わりみたいっすね」

「じゃ、戻りましょうか」

 

 意外と喜びの声とかは上げずに、大人しく地上へと戻っていった二人だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 戻ってきた二人を出迎えたのは、先程まで見学をしていたハーゼ隊の隊員達。

 隊長であるカスペンが前に出てから、ISを解除した二人にタオルを手渡す。

 

「ご苦労様。機体の調子はどうだった?」

「「完璧」」

「そうか!」

 

 ここで遂に喜びが爆発。

 派手な動きはないものの、誰もが見惚れるような満面の笑みを浮かべた。

 

「まさか、あのサイズで原型機のエネルギーゲインを殆ど再現してるとか想像もしてませんでしたよ」

「しかも、前はあったエンジンの欠陥も完全に克服しちゃってるし。マジでどうなってるんスか?」

「それは、ヅダを生まれ変わらせてくれた張本人にでも聞いてくれ」

「確かにね」

 

 不思議と、またどこかで会えるような気はしているので、ここで無理に聞く気にはなれなかった。

 

「大佐から見て、私達の動きはどうでした? 思っているよりは動けてたとは思うんですけど……」

「パーフェクトだ」

「おぉっ! あの大佐から褒められた!」

 

 カスペンの放つ最高のサムズアップ。

 もしも広報部にこれを見られていたら、即座に広告にされていただろう。

 

「これで、全てのチェックは完了したってことでいいんですよね?」

「そうなるな」

「オレらの処遇ってどうなるんスかね?」

「表向きは今まで通りでいいだろう。だが、そうしてISを手にした以上は整備や訓練などは絶対に必要になってくる」

「でしょうね」

「だから、アレクと同様にここにいつでも通えるようにはしておいてやる。そっちの都合がいい時で構わないから、ここに来てくれると色々と助かる。二人の存在は隊員達にもいい刺激になるからな」

 

 そういって周りを見渡すと、そこには尊敬の眼差しで二人を見てくる少女達が。

 沢山の視線に思わず後ずさりをしてしまうが、千冬が前に出てきたことでそれは阻止された。

 

「まさか、またもや本気で驚かされるとは思わなかった。二人とも、何かしていたのか?」

「私は空手を少々」

「少々……?」

「何よ。なんか文句あるの?」

「いえ……」

 

 少なくとも、対格が上の大人を軽々と投げと成す程の実力者を『少々』とは言わないと思う。

 

「オレは別に何もしてないッスよ」

「貴女の場合は、元から普通に運動神経が良かったものね。あと、無駄に元気だし」

「なんか余計な一言が追加されたっ!?」

 

 あれだけの動きを繰り広げた後でも、普通に会話を交わしている。

 実力だけでなく、体力の方もかなりあるようだ。

 

「二人が良かったら、他の隊員達と一緒に訓練でもするか?」

「いいですね。私は喜んで参加します。勿論、アンタもね」

「まさかの強制参加っ!?」

「おうおう! やれやれ~!」

「砲術長までっ!?」

「ははははは……」

 

 こうして、二機のヅダのお披露目は何事も無く幕を閉じたのだった。

 ヒデトの悲鳴を除けば。

 

「ちょっとぉっ!? オレはチフユ・ザ・ブートキャンプに参加するなんて一言も口にしてないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 世の中、諦めが肝心である。

 

 

 

 




これで原作前に揃う物は揃いました。

後はもう突っ走るだけです。

道は既に出来ています。

それをどんなペースで行くか決めるだけですね。
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