インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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これでドイツ編ラストです!

結局、70話越えで原作突入になりました。

なんか、完結させる自信が無くなってきた……。






新たなる愛機

 無事に日本へと到着したカスペンと千冬。

 二人は空港の入り口の前に立ち、これからの事を話していた。

 

「大佐はこれからどうするんだ? IS学園へと直行するのか?」

「いえ。学園よりも先に行くべき場所があるので、まずはそちらに行こうかと」

「行くべき場所と言うと……」

「倉持技研です。私の新たな愛機を受領しに行かなければ」

「そういえば、前にそんな事を言っていたな……」

 

 自分の戦闘スタイルとレーゲンの性能がマッチしていないことを早い段階から悟っていたカスペンは、千冬がドイツに滞在している間に何回かISに関する相談を行っていた。

 その時に、倉持技研にて開発中の新しい機体の事を話していたのだ。

 

「確か、打鉄をベースにしたカスタム機…だったな」

「えぇ。私が最も得意とする距離は中~近ですから。それに合わせたセッティングと装備にして貰う予定となっています」

「なんだか勿体無いような気もするがな……」

「大丈夫ですよ。レーゲンの方はラウラが受け継いでくれます。きっと、彼女ならば私以上にレーゲンを乗りこなしてくれる筈です」

「随分と信頼しているんだな」

「私の自慢の部下であり、大切な相棒(バディ)ですから」

 

 向こうにいた頃から、カスペンとラウラの仲がいい事は知っていた。

 お互いに歳が近いからだと思っていたが、今のカスペンの笑顔を見て、決してそれだけではないと理解した。

 

「場所は分かるのか? なんなら今から案内をしても構わないが……」

「大丈夫です。ナビアプリがちゃんとありますから」

「……現代っ子だな」

「いや、私は立派な現代っ子ですよ?」

 

 中身は全く違うが。

 

「そちらはどうするので?」

「私は、まずは普段から世話になっている孤児院に顔を出そうと思っている。弟も預けているし、久し振りにソンネン達とも会いたいしな」

「そうですか……」

 

 今、自分は彼女達と同じ国、同じ地に立っている。

 そう思うとなんだか感慨深いものがあるが、頭を振って払拭した。

 

「大佐に時間があるのならば、孤児院に一緒に行こうと思っていたんだが……」

「非常に有り難い提案ですが、今はまだ会うべき時ではありません」

「と言うと?」

「私は彼女達に『IS学園で待っている』と言いました。本心を言ってしまえば、私だって彼女達には会いたい。けれど、それはお互いに望まない再会になるでしょう。会うのならば、IS学園の校舎の中で再会したい。きっと、彼女達だってそう思っている筈です」

「……そうか」

 

 カスペンとあの三人の中には、自分なんかが介入出来ない程に強い絆が育まれている。

 己の提案は無粋だったと、今更ながらに反省した。

 

「なので、出来れば私が今、こうして来日している事も内緒にして貰えませんか?」

「分かった。絶対に言わないと約束しよう」

「ありがとうございます」

 

 その後、千冬は近くに止まっていたタクシーを捕まえてから孤児院へと向かい、カスペンもまた別のタクシーを捕まえてから倉持技研へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 倉持技研に到着すると、自動ドアをくぐってから研究所内のロビーへと入っていく。

 途中、背の小ささが災いして自動ドアの反応が鈍かったのは内緒。

 

「失礼。少しよろしいかな?」

「はい? ……って、誰もいない……」

「こっちだ。こっち」

「あっ!?」

 

 話しかけた受付嬢がキョロキョロと辺りを見渡す。

 カスペンの姿が完全に埋もれてしまい、彼女の視界からは全く見えなかったのだ。

 

「こ…子供?」

「ヘルベルト・フォン・カスペンだ。前々から、ここに私の機体製作を依頼していたはずだが?」

「ヘルベルト…って! 新しく就任したドイツ代表のっ!? し…失礼しました!」

「別に気にしていない。慣れてるからな」

 

 慣れとは怖いものである。

 

「事前に聞いた話では、完成間近だと聞いているが?」

「は…はい! 数日前に無事に完成し、つい先程、最終チェックも完了したと報告がありました!」

「それは結構。では、早速案内を……」

「その必要はないよ」

「ん?」

 

 奥から歩いてきたのは、一人の小柄な眼鏡を掛けた白衣の女性。

 普通ならば大なり小なり訝しむところだろうが、カスペンは彼女の出す雰囲気で一発で理解した。

 彼女は倉持技研における重要人物の一人であると。

 

「初めまして。君の噂は聞いているよ。史上最年少の天才美幼女国家代表IS操縦者のヘルベルト・フォン・カスペン大佐」

「失礼ですが、貴女は?」

「私はこの倉持技研で技術班のチーフをしている『篝火ヒカルノ』だよ。よろしく」

「よろしくお願いします」

 

 互いに握手を交わす二人だが、その目は全く笑っていない。

 手を握りながらも、ずっと腹の探り合いをしていた。

 

(この女…只者ではないな。何者だ……?)

(ふ~ん…この可愛い子がねぇ~…。人は見た目で判断できないとはよく言ったもんだよ。このお人形みたいな子のどこにあれ程の力が宿っていると思うかね)

 

 顔は笑顔のまま、体から立ち上る雰囲気は重苦しい。

 受付嬢の目には、二人の視線の間に激しい火花が散っていた。

 

「この子は私が案内するよ」

「で…でも……」

「いいって、いいって。どっちみち、機体について色々と説明をしなくちゃいけないんだし」

「わ…分りました。お願いします」

「おっけー。ってなわけで、こっちだよ。着いてきて」

「了解です」

 

 一緒に並んで奥へと去っていく二人の背中を見て、受付嬢が小さく呟いた。

 

「大丈夫かな……?」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 倉持技研には様々な部署が存在し、それぞれに担当が違う。

 ヒカルノが在籍しているのは、新型ISの開発チーム。

 今向かっているのは、そんな彼女が主な仕事場としている格納庫だった。

 

「本当は、もっと色々と見学したいのだろうけど、そっちも忙しいんでしょ?」

「はい。ついさっき日本に到着したばかりで、機体を受領した後は、そのままIS学園に行く予定です」

「うひゃ~! 私には到底無理なスケジュールだわ~!」

「向こうにいた頃は、もっと忙しかったので、この程度はまだまだ余裕です」

「国家代表ってのも大変なんだねぇ~」

「代表ですから」

 

 歩きながら無難な話をしていく二人。

 だが、カスペンの視線はずっと周囲の様子に向けられている。

 例え忙しくても、何も吸収せずに立ち去るなど論外だから。

 ほんの僅かでも、学べる事があれば学ぶのがカスペンなのだ。

 

「君の機体だけど、ご注文通りに完全完璧に仕上げたよ。実際に見て貰えば分ると思うけど、文句なしの出来栄えだ」

「それは楽しみですね」

 

 話している間に、いつの間にか格納庫へと到着していたようで、ヒカルノが扉の部分にある指紋認証装置に手を翳す。

 すると、赤外線センサーによって彼女の指紋が読み取られ、ゆっくりと扉が開いていく。

 

「厳重ですね」

「当然だろ? 今や、ISは世界経済の中心と言っても過言じゃない存在だ。それを扱っている以上、必要以上に厳重になるのは当然さ」

 

 非常に広い格納庫の中を二人でまた歩いていく。

 だが、今度はそこまで時間が掛からずに到着した。

 

「お待たせ。これこそが君の新しい愛機の『打鉄弐式』だ」

「これが……」

 

 目の前のハンガーに固定されていたのは、鉛色のISで、とてもじゃないが形状は原型機である打鉄からは大きく変化している。

 全体的な形状が鋭角的になり、シールドの代わりに非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)として装着してある可変式の高機動用ブースター。

 更には、両肩部にはカスペンの嘗ての愛機である『ゲルググ』を模した大型の増加装甲があり、そこにはちゃんとカスペンのパーソナルマークである『赤い襟の一本角の髑髏』が描かれていた。

 

「ご感想は?」

「見事です……。まさか、これ程の完成度とは……!」

 

 言うべき言葉が見つからない。

 今のカスペンは、まさにそんな状態だった。

 

「弐式自体は少し前から存在していて、組み上げること自体はそこまで苦じゃなかった。でも、こいつを君仕様にカスタムするとなると話は別になってくる。ノーマルな状態でも十分にじゃじゃ馬な弐式を、高機動用にカスタムしてくれなんて注文が来るとは思わなかった。しかも、それにより低下する防御は肩部に装甲を追加した上、盾を装備することで補うって……プラスなのかマイナスなのか、よく分んないよ」

「いえ…少なくとも、私にとっては大きくプラスですよ」

 

 興奮の余り、左手の義手がギシギシと軋む。

 一刻も早くこれを纏ってみたいと思う自分がいるが、幼い子供ではないのだから焦ってはいけない。

 

「武装の方はどうなっています?」

「そっちも注文通りさ」

 

 ヒカルノが投影型ディスプレイを展開し、カスペンに見せた。

 そこには、様々な武装の一覧が表示されていた。

 

「まずは、専用の『ビームライフル』。さっき言った楕円形の大型シールド。それから、近接用の『ビーム・ナギナタ』」

「完璧です」

「ありがとう。でもね、たったこれだけじゃ流石にアレだから、こっちの独断でもう少しだけ追加させて貰ったよ」

「なんですって?」

 

 ヒカルノがディスプレイをスライドさせると、そこには注文はしていないが見知っている武装の数々が。

 

「まずは、背部の装着可能なキャノン砲。こっちもビームになってる」

(これは…ゲルググ・キャノンの物じゃないか?)

「こっちが、試作型ビームバズーカ。威力の方は保証済みさ」

(ガトー少佐の乗っていたリック・ドムの装備していた物か……)

「そんでもって、トドメの手持ち型のロケットランチャー。勿論、実弾」

(あれは…ジョニー・ライデン少佐のゲルググの……)

 

 図らずも、どれもが良く知っている武器の数々だった。

 これがMSならば、色々と文句も言っていたかもしれないが、ISには拡張領域がある為、実質的な重量増加にはならない。

 それどころか、これで射程距離が大幅に伸びて戦術の幅が広がる。

 

「どうかな? 気に入らないのなら、すぐにでも外すけど……」

「いえ、結構です。寧ろ、有り難い限りですよ」

「そう? そんな風に言われると、こっちも頑張った甲斐があるけど……」

 

 この機体ならばいける。

 カスペンには不思議な確信があった。

 

「それじゃ、ドイツから持ってきたコアをくれる? 装着しなきゃだから」

「分りました」

 

 手荷物の中から何重にも鍵の掛かった重厚な箱を取り出し、開錠してから中にあるISコアを出してヒカルノに手渡した。

 

「ありがと。そんじゃ、すぐに終わらせるから」

 

 ハンガーにある作業アームを使い、あっという間に機体にコアを装着し同調させていく。

 

「最初からコアにデータがあるから、余計な調整とかしなくて済むね~」

「それはどうも」

「そういや、ここまではどうやって来たの? タクシー?」

「そうですが?」

「道理で日本語が流暢なわけだ。なんで?」

「勉強しました」

「日本語って世界の言語の中でもトップクラスに難解だって言われてるのに、それを『勉強』の一言で片付けるって…天才児って怖いわ~……」

「いや、分からない事を勉強するのは当たり前の事じゃ……」

「後で試運転とかする?」

「話逸らしたし…。いえ、したいのは山々ですが、時間も無いので。それらは学園に行ってから自分で行います」

「りょーかい。ま、君なら心配いらないでしょ」

 

 なんて長々と話している間に、機体とコアの調整が終了した。

 すると、打鉄弐式が輝きを放ち、指輪のような待機形態となった。

 

「これで私のお仕事は完了っと。はい、君の機体」

「本当にありがとうございました」

 

 指輪を適当に左手に填めて、改めて見てみる。

 初めて填めたけど、意外と悪くない。

 

「何か機体の事で困ったことがあれば、いつでも来ていいから。もう君は、ここのお得意様みたいなもんだし」

「その時は、遠慮なく尋ねさせて貰いますよ。では、今日はこの辺で」

「うん。そんじゃね~」

 

 自分が打鉄弐式を装備した時の事を想像しつつ、カスペンはヒカルノに手を振りながら倉持技研を後にした。

 その後、地味にヒカルノとの腐れ縁が続いていくのは、また別の話。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 またもやタクシーを利用しモノレールの駅まで行って、そこから更にモノレールに乗ってから本来の目的地であるIS学園の前までやって来た。

 

「ここが…IS学園……」

 

 校舎の全てが真新しく、全ての設備が最新式になっている。

 見ただけで、この学び舎が世界で最も最先端なのが伺えた。

 

「ようやく、ここまで来た……。いや違うな。ここから全てが始まるのだ(・・・・・・・・・・・・)

 

 期待と不安に胸を膨らませながら、学園の門を通る。

 その顔には、もう何の迷いも無かった。

 

「待っているがいい…亡霊共。今日、この日から私達の反撃が始まるのだ……!」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 亡国機業が所有する施設のにある一室。

 そこでは、三人の美女たちがあるモニターと睨めっこをしていた。

 

「スコール。ようやく、あの会場であたし等をボコッた連中の事が分かったって?」

「分かったと言っても、判明したのは名前だけよ。それ以外の事は本当にサッパリ」

「それだけでもいいさ。教えてくれよ」

「いいわ。まず……」

 

 スコールがコンソールを操作して画面を変える。

 そこには、褐色肌の少女の顔が映し出された。

 

「オータム。アナタと交戦した子の名前は『ヴェルナー・ホルバイン』」

「ヴェルナー・ホルバイン……」

「南国系の美少女って感じね。ちょっと好みかも」

「おいおい! こいつはあたしの獲物だぜ!? 幾らスコールでも、こればっかりは譲れねぇよ!」

「分かってるって。んで、私が目を付けてるのが、この……」

 

 今度は金髪碧眼の少女の顔が映し出される。

 

「ジャン・リュック・デュバルちゃんね」

「成る程。確かにこいつはスコール好みの美少女だわ。敵じゃなかったら、あたしも速攻でナンパしてる」

「でしょ? この顔で凄まじい戦闘力を持ってるんだから。絶対にモノにしてみせるわ」

「そうかよ」

「それじゃ、最後にツァリアーノ大佐が戦った相手の事を……」

「その必要はねぇよ」

「「え?」」

 

 壁に寄り掛かっているフェデリコが詰まらなそうに応える。

 今回も彼女は煙草を吸っていた。

 

「名前は『デメジエール・ソンネン』。和服を着た黒髪で車椅子に乗った女だ」

「な…なんで知ってるのよっ!?」

「お互いに自己紹介したからだ」

「なんですってぇっ!? なんでそれを先に言わないのっ!?」

「一度も聞かれなかったから」

「あなたねぇ~…!」

 

 スコールの眉間に血管が浮き出る。

 本当ならばここで拳骨の一つでも振り下ろしたいところだが、ここは大人の余裕でぐっと我慢した。

 

「にしても、よく連中の名前なんて調べられたな」

「人の口には扉は建てられないってよく言うでしょ? 日本にいる潜入工作員達が、下手にネットワークなどに頼らずに地道に調査していった結果よ」

「ご苦労なこって」

「それでも、判明したのは本当に名前だけ。そこから他の事も調べようと試みたけど全く駄目だった。まるで、何か巨大な何かが背後に潜んでいるかのように、微塵も手掛かりを得られなかったわ」

 

 大きく溜息を吐きながら、スコールは背凭れに体を預ける。

 

「別にいいじゃねぇか」

「なんでよ?」

「オレには分かる。いずれ、あいつらとオレ達はまた必ずぶつかることになる。その時まで静かに待っていればいいのさ」

「何を根拠にんなことを言ってんだ?」

「元軍人としての勘さ」

「勘って……」

 

 煙草を携帯灰皿に入れて火を消してから、フェデリコは部屋を出ようとする。

 

「どこに行くの?」

「訓練。今度こそは野郎を絶対にぶっ殺す。その為には、オレもちっとは本腰を入れて鍛え直さなくちゃいけないと思ってな。それに……」

「それに?」

「最近になって、なんでかMの奴が無駄に張り切ってやがる。別に頑張るのはいいが、それで倒れられちゃ意味がねぇ。年上として、ここはブレーキ役にならねぇとな」

 

 それだけ言ってから、フェデリコは訓練場へと向かっていった。

 

「なんだかんだ言って……」

「面倒見がいいのよね……あの子」

 

 素直になれないフェデリコを見て、苦笑いを浮かべるスコールとオータムであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、原作前の最後の番外編。
今日になって誰にするかが決定しました。
マイナーだけどマイナーじゃない。そんな人にしました。

一応、原作に入っても番外編はやっていきますので、お楽しみに。

それと、本気で次回がアンケートの最終締め切りです!
 
投票するなら今しかないですよ!

それから、ついでにカスペン大佐の新しい機体について少しだけ解説を。

簡単に言うと、見た目は完全に簪の『打鉄弐式』と一緒です。
でも、色の方を地味にして、更には肩にゲルググの肩部装甲をくっつけて、本来ならば沢山のミサイルが搭載されている『山嵐』の部分が全て高機動用ユニットになっています。
云わば『カスペン大佐専用 打鉄弐式』って感じですね。

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