インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
今回から本格的に原作突入です!
といっても、まずはその前に受験のお話ですけど。
ちゃんと順序は守らないと、いきなり学園から始まっちゃ意味不明な事になりますから。
そして、久し振りに三人娘の登場です。
連載開始の頃は幼女だった三人が、気が付けば原作ヒロインズと同じ15歳に。
なんだか感慨深いですね。
皆で一緒に受験に行こう
千冬がドイツから帰ってきてから年月が流れた。
織斑姉弟がすっかり孤児院にも馴染み、千冬がIS学園の教師として勤務し始めて、デュバルやソンネン、ヴェルナーや一夏達は中学三年生となり、時期は完全に受験シーズンとなっていた。
現在は2月の最終週。
その早朝に、孤児院のロビーにて受験生組が揃って出かける準備をしていた。
「確か、千冬姉は一足先にIS学園の受験会場に向かったんだよな?」
「そうだと聞いてる。他の事ならばいざ知らず、IS学園の受験には実技試験もあるからな。あの人以上に試験官としての適任者はいないだろう」
「なんたって、モンドグロッソ二連覇の覇者だもんなぁ~」
「学園でもワーワーキャーキャーと騒がれて、気が休む暇がないって、酒を飲みながらぼやいてたぜ。酔った勢いで思い切り抱きしめられたけど」
鞄の中に必要な物を確認しながら入れていく。
それと一緒に、四人はその首元にマフラーを巻いていた。
今日の天候は雪で、豪雪とはいかないまでも、朝からしんしんと雪が降っていて、かなり冷え込んでいる。
かくいう先に出た千冬も、四人と同じようにマフラーを巻いて行った。
「四人共、頑張ってね!」
「大丈夫よ! 今まで一生懸命に勉強してきたんだし、絶対に合格するわよ!」
「ありがとな。その言葉だけで勇気が湧いてくるよ」
孤児院の子供達の励ましを受け、少し緊張気味だったソンネンの顔に余裕が生まれた。
「俺は藍越学園を受験するけど、なんでか会場は一緒なんだよな……なんでだ?」
「大方、経費削減とか、その辺なんじゃねぇの?」
「身も蓋も無いな……」
「世知辛らいねぇ~……」
話をしながらも、ちゃんと手の方は動いていて、着々と準備が進んでいく。
「よし。これでOKっと。こっちは終わったぜ」
「こちらも終わった。が、しかし……」
「「「ん?」」」
ここで急にデュバルが眉間に皺を寄せる。
長い付き合いである一夏は、彼女のその顔を見て猛烈に嫌な予感がした。
「念には念を入れて、忘れ物が無いか最終チェックを行う!」
「「「え~っ!?」」」
「え~っ!? ではない! 万が一の事が起きらないとも限らない。今日は私達のこれからを決定する大事な受験の日だ。用心に用心を重ねて損は無い」
「道理で、バスの時間よりもずっと早くに準備をし始めたわけだ……」
全ては、このためだったのか。
こうなった時のデュバルには誰も逆らえないのは皆が知っているので、素直に諦めて忘れ物確認をすることに。
「まず、受験票はあるか?」
「あるぜ」
「バスの定期券」
「バッチリだ」
「筆記用具一式」
「ほらよ」
「私とソンネンとヴェルナー限定だが、ISスーツは?」
「「中に着こんでる」」
「勿論、私も中に着こんでる」
「うわぁっ!?」
あろうことか、ISスーツの確認をする為に、三人はいきなり自分の制服のスカートを捲りあげたのだ。
中に着ているのがISスーツである事を知らない人間が見たら、間違いなく痴女だと思われるだろう。
「なんでスカートを上げるんだよっ!?」
「「「この方が手っ取り早いから」」」
「頼むから、少しは女の子らしい恥じらいを持ってくれよなっ!?」
「「「いや、ちゃんと持ってますけど」」」
「今の状態で言われても説得力皆無だわ!!」
「「うんうん」」
一夏のツッコミに、孤児院の少女達も同意する。
どうも、この三人は下着を見られることに対する抵抗感が薄いように感じられる。
それが一夏の精神をガリガリと削っていくのだ。現在進行形で。
「と…とにかく、これで準備完了だよな?」
「そうだな。これでいつでも行ける」
ようやくデュバルのチェックから解放される。
一夏達が胸を撫で下ろすと、そこに院長がやって来た。
「四人共、準備は大丈夫かい?」
「はい。つい先程、忘れ物が無いか再確認をしましたが、何の不備もありませんでした」
「それはなにより。気をつけて行ってきなさい」
「「「「はい!」」」」
ここで敢えて凝った言葉を出さないが院長なのだ。
いつも通りに子供達を送り出し、いつも通りに出迎える。
どんな時も『日常』を忘れてはならない。
「よし。バスの時間まで英単語の復習だ」
「「「マジでっ!?」」」
「時間は有効に活用しなくてはな。ではいくぞ! 第一問!」
その後、三人は時間が許す限り、デュバルの英単語地獄に付き合わされたのだった。
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それから少しして、四人は無事に受験会場へと到着した。
「流石は二つの学園の合同会場……」
「無駄にデカいな……」
「果たして、これは本当に節約と呼べるのだろうか? 寧ろ、金を豪勢に使ってないか? 二学園一緒に」
「ここまで来て、ンな事を気にしてもしょうがねぇだろ。それよりも、早く中に入ろうぜ? 寒くてかなわねぇよ」
積もるほどではないとはいえ、雪が降っている外はかなり寒い。
さっきからずっと、話す度に白い息が出て、このままだと普通に風邪を引きそうだ。
「ヴェルナーの言う通りだな。まずは会場に入ってからだな」
この会場、入り口の時点でIS学園と藍越学園とで区切られているが、実は中では繋がっていたりする。
この区分けは、あくまで気休めに過ぎないのだ。
中にさえ入ってしまえば、後は迷う事なんてないだろうと言う謎の自信が垣間見えた。
「私達はこちらで……」
「俺がこっちか」
四人は互いに円陣を組むように向かい合ってから、拳をぶつけ合った。
「頑張れよ、皆!」
「お前もな、一夏」
「いつも通りにな」
「ケアレスミスとかすんなよ?」
こうして、四人はそれぞれに己が受験する学園の会場へと足を踏み入れたのだった。
だが、この時はまだ誰も知らなかった。
この後にこの会場であの束ですら予想してなかったとんでもない事態が発生するだなんて。
それが、彼女達の運命すらも大きく左右することになるだなんて。
本当に、全く想像もしていなかった。
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会場に入ると、そこは大勢の受験生でごったがえしていた。
「ここにいる連中が全員、IS学園を受験するのか……」
「こりゃ、ライバルが沢山だな」
「どれだけいても問題無いさ。三人揃って合格すればいい。それが……」
「「「
この三年間、ずっとカスペンとの約束だけを胸に頑張ってきた。
そして今日、これまでの成果を発揮する。
三人の思いは一つになっていた。
「ところで、受付は……」
「人の流れに沿っていけばいいんじゃないか?」
「それが良さそうだな。変に動きまわってたらマジで迷いそうだ」
車椅子であるソンネンに合わせて歩き、受付に辿り着く。
そこで三人は、他の受験生たちと同じように話して、受付嬢に呪分たちの受験票を提示した。
「はい。確認出来ました。受験番号236番、デメジエール・ソンネンさん。受験番号237番、ジャン・リュック・デュバルさん。受験番号238番、ヴェルナー・ホルバインさん…で、間違いないですね?」
「「「はい」」」
「ようこそいらっしゃいました。筆記試験の会場はあちらです。番号が書かれた席でお待ちください」
受付嬢が教えてくれた方向に、かなり大きな扉があった。
『筆記試験会場』と張り紙があることからも間違いないだろう。
「んじゃ、行こうぜ」
ヴェルナーが先頭になって進んでいき静かに扉を開けると、其処には既に大勢の少女達が真剣な面持ちで席に座って、試験の時を今か今かと待ち侘びていた。
「オレ達の席は~……」
「多分、あそこじゃねぇか?」
「どこだ?」
「あそこだよ。あ・そ・こ」
ソンネンが指さした場所には、一つだけ椅子が無い席があった。
「前に先生から教えて貰った通り、オレに合わせて椅子を取っ払ってくれてるんだな。お蔭ですぐに見つかった」
「となると、私達はその隣か」
「そうと決まれば早速……」
席と席の間を慎重に通っていく。
こんな場所では、誰もが無意識の内に『静かにしなければ』という謎の強迫観念に捕らわれている。
それは三人娘達も例外じゃなかったようで、先程からの会話もずっと小声で話していた。
「やっぱ、オレみたいのは目立つみたいだな」
「かもしれん。だが、気にするな。例え足が不自由であっても、今のお前は並の健常者よりもずっと凄いよ」
「当たり前だ。このオレを誰だと思ってやがる」
「「戦車教導団の鬼教官」」
「鬼は余計だ。ボケ」
IS学園の試験会場に車椅子の少女がいる。
唯でさえ車椅子というのは目立つのに、この会場では更にその特異性が際立っているようだ。
だがしかし、当の本人は全く気にしてはいない。
堂々たる姿勢で自分の席へと向かっていく。
「ここだな」
席に着くと、ソンネンは車椅子を細かく調整してから丁度いい位置で固定した。
その隣に並ぶようにして、デュバルとヴェルナーも座り、受験票と筆記用具を鞄の中から取り出した。
その時、ソンネンはふと隣から自分に向けられている視線に気が付いた。
「なんだ?」
「あ……」
視線を向けていたのは、日本人にしては珍しい水色の髪を持つ眼鏡を掛けた少女で、振り向いた瞬間に気まずそうに顔を逸らした。
「あぁ……お前さんも、この車椅子が珍しいのか?」
「いや…その……ごめんなさい……」
「そこで謝られても困るんだけどな……」
なんだか自分が彼女を責めているような感じがして、逆にこっちが申し訳なくなってくる。
「こんな体でIS学園を受験するのっておかしいって思うか?」
「それは……」
「別にいいさ。それは普通の反応だ。今更、その程度の事で目くじらなんて立てないさ」
「……………」
遂には黙ってしまった。
これまでにも似たような反応をする人間は沢山いたが、こんな風に泣きそうな顔をされたのは流石に初めてだった。
しかし、そこは孤児院で多くの年下の子供達の世話をしてきたソンネン。
こんな時の対処法は誰よりも弁えていた。
「ドロップ……食うかい?」
「え?」
「甘いから、少しは緊張が解れるぜ」
「あ…ありがとう……」
「どういたしまして」
ドロップを口に入れることで、少女に笑顔が戻った。
ソンネンの方も、それでようやく安心した。
「甘い……」
「フルーツ味だからな」
ソンネンも同じように容器からドロップを出して口に入れる。
舌の上で転がすと、すぐに淡雪のように溶けて消えた。
「そこの二人。そろそろ時間のようだぞ」
「「え?」」
話している間に、会場の全ての席が受験生で埋まっていて、一番前には会場全体に声が聞こえるように拡声器を持った担当官が立っていた。
『それでは、これよりIS学園の筆記試験を開始します!』
その言葉で会場全体の空気が張りつめて、受験生全員が真剣な顔になる。
『今から試験用紙を配ります。こちらが『開始』と言うまでは、決して用紙をめくらないでください』
別の担当官達が一人一人の席に一枚ずつ試験用紙を配っていく。
ソンネン達の席にも配られ、それを親の仇のように鋭い目つきで見つめる。
『全員の席に行き渡ったようですね。では……試験開始!』
バッ! っと試験用紙をめくり、全ての問題に目を巡らせる。
一番最初の難関が今、始まった。
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一方その頃。
「あれ? ここってさっきも通らなかったか? チクショー! 緊張してて、碌に案内板を見てこなかった~!」
一夏は一人ぼっちで自分以外誰もいない廊下を寂しく歩いていた。
「なんでこんな一番大事な場面で大ポカをやらかすんだよ~! 俺の馬鹿野郎~!!」
どれだけ叫んでも、ここには自分以外誰もいないので、ただ虚しく廊下に響くだけだった。
「こうなったら最後の手段……!」
いきなり壁に右手を着いて、そのまま歩き出す。
「前にマンガで呼んだことがある! 迷路とかで迷った時は、こうして片手をついて歩いて行けばゴールに辿り着くと!」
残念ながら、ここは迷路ではなくて受験会場である。
よって、その法則は全く通用しない。
というか。一夏の場合はそれ以前の問題だった。
「おかしいぞっ!? さっきからずっと同じ場所をグルグルと回ってるぞっ!?」
円柱に手をついて歩いても微塵も意味が無いと気付け。
「俺は諦めないからな~! 絶対に会場についてみせるぞ~!」
まずは受験その1。
受験の本番はやっぱり実技試験ですよね。