インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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ここからが入試の本番。

さぁて、どう乗り越えるかな?






実技試験

 アナウンスに従って、ソンネン達三人は揃って簡易更衣室の前までやって来た。

 そこには係員と思われる女性が立っていて、彼女達に簡単な説明をしてくれた。

 

「お待ちしていました皆さん。まずは、ここでISスーツに着替えて貰い、それからそれぞれに別のアリーナへと行って貰い、そこで用意されているISを装着、ステージに降り立つと、そこには試験官が待っているので、そこからはその試験官の指示に従って下さい。ここまでで何か質問は有りますか?」

「んじゃ、一つだけ」

「どうぞ」

 

 本当は三人共が同じ質問を思い付いたのだが、ここはソンネンが代表して聞いてみる事に。

 

「実技試験ってのは、その試験官とやらに勝てばいいのか?」

「まさか。流石のIS学園も、貴女達にそこまでの事は求めてはいません。確かに、どれだけ動けるかは重要ではありますが、それ以前にISを起動できるかどうかの問題が出てきます」

「成る程な……言いたいことは大体分かったよ」

 

 見た目は可愛らしい生娘でも、中身は未だに歴戦の軍人である彼女達に掛かれば、全てを聞かずとも相手が何を言いたいかは大凡の見当がついた。

 

(要は、ISを起動させること自体が第一関門って事か)

(ならば、何の問題も無いな)

(なんつーか…リアルに拍子抜けだな)

 

 若干の緊張感に包まれていた三人であったが、係の女性の説明を聞いて逆にリラックスできてしまった。

 どんな時も常勝を求められる軍人だった彼女達には、非常に温い関門だったから。

 

「……………」

「ん? どうしたんだい?」

「あ…いえ。何でもありません。失礼しました」

(この女…明らかにオレさまの脚を見てやがったな。こんなナリで大丈夫なのかって思ってたに違いない)

 

 流石のソンネンも、こう何度も似たような視線に晒されれば、呆れを通り越して感心すらしてしまう。

 他に何か考える事は無いのかと。

 

(まぁ…だからこそ、こいつらの度肝を抜かせた時が爽快なんだけどな。千冬の姉御も、きっとどこかでこっちの様子を見ているに違いない。オレ達の機体を見てどんなリアクションをするのか、今から楽しみだぜ……)

 

 その後、係の女性が最後に軽く注意事項などを言って立ち去ってから、三人は更衣室へと入っていった。

 

「ま、予想はしてたけどな」

「こんなモノだろ?」

「気にしたら負けだって。それよりも、とっとと着替えちまおうぜ」

 

 そこは、大量のロッカーが並んでいる、まんまな感じの更衣室だった。

 彼女達からすれば、非常に見慣れたタイプの部屋だが。

 

 三人は並んでロッカーを使用し、中に自分達の荷物を入れるが、流石にソンネンは高さの関係で収納することが難しく、他の二人に手伝って貰っていた。

 

「着替えっつっても、オレ達の場合は一瞬で終わるんだけどな」

「そう言うな。それでも、その『一瞬』は裸に近い格好になるんだ。見られないに越した事は無いさ」

「オレは別に気にしないんだけどなぁ~…」

「「ヴェルナーは少しは恥じらいを持て」」

 

 その言葉は、そっくりそのままブーメランになるが、ツッコミがいないのでそこで終わってしまう。

 こんな時、一夏や鈴(ツッコミ係)の重要性が再認識される。

 

「あらよっと」

 

 三人同時に指をパチンと弾くと、その体が青白い粒子に包まれ、着用していた制服が拡張領域に収納され、その代わりに三人専用に束が製作したISスーツが装着される。

 

「これでよし…っと」

「いや、マジで束には感謝だよな。これのお蔭で、着替えが格段に楽になった。もうお前達に手伝って貰わなくても済む」

「それはそれで、少し寂しいような……」

「完全に、朝の日課になってたからな」

 

 あのドタバタ感も、慣れてしまえば不思議と楽しく感じてしまう。

 意外と、彼女達は揃って似たような気質だったのかもしれない。

 

「で、後はこの先にあるっていう即席で作ったアリーナに行けばいい…んだよな?」

「あの説明を聞く限りではな」

「どんな事をするんだろうな?」

「それは、行ってみないと分らんだろうさ」

 

 本当に試験前の女子中学生の会話なのかと疑いたくなる程に、三人の会話は日常的だった。

 因みに、今までの受験生の少女達は、この段階でガチガチに緊張して腹痛になったり、吐き気を催したりしている。

 三人の神経が図太いのか、それとも、単に場馴れしているだけなのか。

 恐らく、三人の場合は後者だろう。

 結局、そんな会話は更衣室を出てアリーナに辿り着くまで続いていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「来ましたね」

 

 先程の係の女性が、なんとも仄暗い部屋中で三人を待っていた。

 恐らくはここが『ピット』に該当する場所なのだろう。

 視線の先には、IS学園からここに搬入したらしきISが何台かハンガーに固定されている。

 

「少し時間が押しているので、簡単に説明します。今から貴女達には実技試験を行って貰います」

「「「はい」」」

「まず、あそこにある第二世代型量産IS『打鉄』に乗って貰い、それから……」

「それなのですが、少しよろしいですか?」

「なんでしょうか?」

 

 今度はデュバルが手を挙げる。

 本当に先を急いでいる様子で、なんだかイライラした感じで返事をした。

 

「実は私達は、非常に特殊な事情により専用機を所持しているのです」

「……今……なんて?」

「ですから、我々は専用機を所持しています。ですので、急いでいるのならば、どこからアリーナへと行けばいいのかの説明だけで結構です」

「え…っと……そこの番号の書かれたゲートを潜れば、そのままアリーナへと出ます……。デュバルさんが一番で…ソンネンさんが二番…ホルバインさんが三番でお願いします……」

「分りました。ありがとうございます。では、行くぞ」

「「おう」」

 

 未だに呆然としている係の女性を放置し、三人はそれぞれに指定されたゲートへと向かっていく。

 彼女達が去ってから、ようやく女性の意識が再起動した。

 

「え…えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!? 専用機ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 

「えっと…このまま進んでもいいのか?」

 

 二番のゲートに入っていったソンネンは、カタパルトと思わしきレールの上を車椅子で移動していた。

 本当ならば、ここから勢いよく発進とかするのだろうが、機体の関係上、どっちみち使用は不可能だった。

 

「お。ここか」

 

 そのまま進んでいくと、明るく開けた場所に出た。

 即席で作られているので、公式のアリーナに比べればなんとも味気ないが、実技試験の会場ならばこれぐらいでも問題は無いだろう。

 

「思ったよりも高いな。どうする?」

 

 カタパルトから飛び出すのがデフォルトのようで、ステージの地面と発進口の間にはそれなりの高さがあった。

 少なくとも、このままでは降りられないだろう。

 だが、どうするか考えていたソンネンに救いの手が差し伸べられた。

 

「わ―――――――――――っ!? ちょっと待ってくださ――――――い!!」

 

 突然、緑色の髪で眼鏡を掛けた女性がIS『ラファール・リヴァイヴ』を纏った状態で飛んできて、静かにソンネンを車椅子ごと持ち上げた。

 

「危ないですから、しっかり捕まっててくださいね」

「お…おう。ありがとな」

「これぐらい、教師として当然です」

(そのナリで先生かよ…。生徒って言われた方が、まだ納得出来るぜ……)

 

 そう思わずには言われない程に、女性の容姿は幼く見えた。

 同級生と言われても違和感はないだろう。その巨大な胸以外は。

 

「よいしょっと。もう大丈夫ですよ」

「流石だな。動きに無駄が無い」

「そ…そうですか? えへへ……」

 

 受験生に褒められて喜ぶ試験官。

 なんとも変な構図だ。

 

「えっと…貴女は確か……受験番号236番のデメジエール・ソンネンさん…ですね」

「よく覚えてるな」

「いえ。普通にISで検索しました」

「そ…そっか。普通はそうだよな」

 

 地味に彼女の頭脳に感心してしまった自分を恥じた。

 

「私は『山田真耶』。本来はIS学園の教員ですが、今回は実技試験の試験官の一人をしています」

「人手不足…って訳じゃないな。その方がより確実な評価が出来るからか」

「お察しの通りです。といっても、この試験の様子は別室でもモニターしてるんですけど」

「ふ~ん……」

(ってことは、今からする試験を千冬の姉御も見てるって事か。こりゃ…無様な姿は見せられないな。嫌でも気合が入っちまうじゃねぇか!)

 

 拳を強く握りしめ、普段の可愛らしさが全て吹き飛ぶほどの獰猛な笑顔を浮かべる。

 下を向いているから真耶にはよく見えていないが、今のソンネンは三年前にドイツで死闘を演じた時の精神テンションに非常に近くなっていた。

 要は、超やる気満々ということだ。

 

「それでですね…えっと……あんまりこんな事は言いたくないんですが……」

「なんだい?」

「ソンネンさんは、脚が不自由ですから、健常者の子達よりも評価が厳しくなっています」

「だろうな。想像はしていたよ」

「で…でも! それを差し引いても、ちゃんと公平に審査はしますので安心してくださいね!」

「そうか。それは嬉しいね」

 

 どっちが子供なのか分からなくなる会話。

 完全に精神年齢が逆転している。

 

「そういえば、ISはどうしたんですか? まさか、ここで纏う気じゃ……」

「あ~…そうだったな。悪ぃ。何もかもが初めてなもんで、どんな風にすれば分らなかったから、ついここまで普通に来ちまった」

「い…いえいえ。気にしないでください。今から持ってきましょうか?」

「いや。その必要はねぇよ。それよりも、少しだけ離れててくれないか? 危ないぜ?」

「はぁ…分りました」

 

 言われるがまま、真耶はソンネンから少しだけ距離を取る。

 それを確認したソンネンは、目を閉じて精神を集中させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吼えろ!! ヒルドルブ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、ソンネンの座っている車椅子が量子化し、彼女の体の周りを覆い隠し、そのまま物質化して形になっていく。

 それは、少女と共に戦場を駆ける鋼鉄の孤狼。

 全てを貫く破壊の化身。

 

「せ…戦車っ!?」

「そいつは違うぜ、山田先生。こいつはオレの掛け替えのない相棒であり、まだこの世に一機しか存在しない新カテゴリー『I・T(インフィニット・タンク)』の第一世代機にして、試作一号機…『ヒルドルブ』だ!!」

「インフィニット・タンク……ヒルドルブ……?」

「要は、地上戦に特化したISだとでも思っててくれ」

「い…いつの間にそんな物が……というか、なんでソンネンさんがそれを持ってるんですかっ!?」

「その辺の事情はまだ話せないんだわ。恐らく、千冬の姉御辺りは察してるとは思うけど」

「そ…そうなんですか?」

「付き合いは長いからな。先生には…オレ達が三人揃って無事に入学で来た時にでも話すよ。なんとなくだが、その方が良さそうな気がする」

「わ…分りました」

 

 ヒルドルブの中で、ソンネンは喜びに打ち震えていた。

 装甲に顔が隠れているからいいものの、今の彼女は決して人に見せていい顔をしていない。いい意味で。

 

(やっと…やっと! 試験名目とはいえ、ヒルドルブでちゃんとした試合が出来る! コイツがISの世界でどれだけ通用するのか、今から楽しみで仕方がないぜ!!)

 

 頬を赤くし、誰もが見惚れるほどの満面の笑み。

 一夏が見たら本気で惚れてしまいそうな、千冬が見たら思わず抱きしめてしまいそうな。

 まさに『100万ドルの笑顔』だった。

 

「さぁ…始めようぜ! 試験官さんよ!」

「は…はい! では、試験を開始します!」

 

 こうして、ソンネンとヒルドルブの入学を賭けた実技試験が始まった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方、その様子を見ていた千冬はというと……。

 

「……………」

 

 眉間に青筋を立ててマジ切れしていた。

 

(なんだあの機体はっ!? あんなものは今まで見たことも聞いたことも無いぞ! ソンネンの機体はまるで戦車そのものじゃないか! 恐らくは足の不自由なソンネンでも動かせるようにと設計した機体なのだろうが…束め……私に一言ぐらいは相談しろ!! ソンネンの身に何か起きたら、どう責任を取るつもりだ!! あいつは私の義妹候補の一人であり、今では家族同然になっているんだぞ! しかも……)

 

 他のモニターを見ると、デュバルとヴェルナーもまた見たことが無いISを身に纏っている。

 勿論、その『見たことが無いIS』というのは、ヅダとゼーゴックのことなのだが。

 

(デュバルとヴェルナーにも専用機を与えているとは…! あれもまた私が全く知らない機体だ。どう考えても、自分が製作した試作機のテストパイロットを頼んでいるとしか思えない。確かに、三人共常人を遥かに凌ぐ能力を持ってはいるが、それでも、あいつ等を巻き込んでいい理由にはならんだろうが!!)

 

 もうお分かりだと思うが、千冬は完全に三人娘の事を妹同然に思っていた。

 幼い頃から彼女達の事を見てきたから、その思いは並大抵のものじゃない。

 

「あいつめ……今度会ったら、まずは一発顔面パンチだな」

 

 束の知らない所で、次々と不穏なフラグが立っていく。

 果たして、次に束が千冬に会った時、顔の原型を留めていられるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・・

・・

 

 

 

 

 今回の一夏。

 

「えっと……ここはさっき通ったから……今度はこっちか?」

 

 矢張り、神頼みじゃダメだと判断したのか、今度は復習の為に持って来ていた勉強ノートの空いている部分を使って、今いる場所のマッピングを始めた。

 だが、今更そんな事をしたところで、簡単にゴールに着ける筈も無く……。

 

「あ。ここさっき見たわ」

 

 似たような所を延々とグルグルしていた。

 果たして、一夏は試験云々以前に、無事に会場から脱出できるのか?

 

 

 

 

 

 




次回、試験開始。

本当は今回でしたかったけど、毎度のように長引いてしまいました。
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