インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
そんなわけで、彼の登場も確定にします。
技術屋さんの登場を望む声も多いですが、彼は彼で考えていることがあるので少しだけお待ちを。
それとは別に、恐らくは最後になるであろうアンケートをしようと思います。
残ったメンバーと言えば、勿論『彼』ですよね?
束の口から突然『複数の高熱源反応』という言葉を聞いた途端、いきなり何かが取り憑いたかのように動き出したソンネンとデュバル。
二人はすぐに端末の前にある椅子に座り、五歳児とは思えないほどの速度でコンソールを操作していく。
「これは……!」
「ミサイルかっ!? なんでまたそんなもんが!」
「さぁな! だが、このままいけば被害が甚大な事だけは確実だ!」
「確かにな!」
「ソンネン! 私は弾道を予測した上で、このミサイル群がどこから発射されたかを分析する! そっちは任せたぞ!」
「おうよ! オレはオレで状況分析とかを……こいつは!」
「どうしたっ!?」
「へへ……! 流石はプロだな。この異常事態をすぐに察知して、空自と海自が動き出したみたいだぜ!」
「やるな……!」
「しかも、海自の方はイージス艦を持ってきやがった! これなら何とかなるかもしれねぇ!」
もう彼女達を自分達の弟や妹達と同じようには見れなかった。
明らかに話している事も、行っている事も普通ではない。
今になって、千冬は二人の事が少しだけ恐ろしく感じてしまった。
「なんという事だ……!」
「今度はどうした?」
「巧妙に隠蔽されているのか、発射先は特定出来なかったが、ミサイルの種類は判明した」
「そりゃなんだ?」
「……大陸間弾道ミサイルだ」
「なんだとぉっ!?」
大陸間弾道ミサイル。通称『ICBM』
有効射程距離が非常に長大で、北アメリカ大陸とユーラシア大陸間など、大洋に隔てられている大陸間を飛翔可能な弾道ミサイル。
大陸間弾道弾とも呼称されている。
アメリカ合衆国やソビエト連邦間では、戦略兵器制限条約(SALT)により、有効射程が『アメリカ合衆国本土の北東国境とソ連本土の北西国境を結ぶ最短距離である5,500㎞以上』の弾道ミサイルと定義された。
「それが、非常に多く確認された……」
「非常に多くって…数は分らねぇのか?」
「詳しい数までは分析出来なかった。だが、弾頭のMIRV化に伴って一基のミサイルに複数弾頭を搭載出来るようになっているが故に、一発で事足りる筈の大陸間弾道ミサイルを多く発射するなど、普通では有り得ない」
「施設もそうだが、それだけの事をやってのける組織、もしくは国が確実にいやがるって事だな。そいつらは絶対に頭のネジが外れまくってるだろうがな」
「私も同意見だ。幾らなんでも、これはおかしすぎる」
「まぁ……『あんな事』をやっちまった国に所属してたオレらが言っても説得力は無いだろうがな」
「言うな。それよりも、少しだけ朗報がある」
「なんだ?」
「通常、大陸間弾道ミサイルには核弾頭が搭載されている筈だが、こっちに飛んできているミサイル群には核反応が無かった。つまり……」
「核は搭載されてない…つまりは通常弾頭ってわけか」
「それで十分に脅威ではあるが、少なくとも爆発の余波で放射能が拡散する心配だけは無くなった」
「現状では、なんとも微妙な朗報だけどな」
「無いよりはマシだ。それよりも、状況はどうなっている?」
「どうやら、自衛隊の連中は海の上で迎撃する気みたいだ」
「妥当な判断だな。市街地に到着する前に全基を撃墜できれば、被害を最小限に抑えることもできる」
「そういや、ミサイルの種類とかって分ってるのか?」
「一応はな。だが、余り参考にはなりそうにはない」
「どういう意味だ?」
「アメリカの『MGM-16 アトラス』と『MGM-25A タイタン』、それからロシアの『R-7』と『R-9』、中国の『東風-5』もある」
「複数の国のミサイルを使うことで、自分達の正体を特定させないつもりかよ」
「恐らくはな。どこの誰かは知らんが、恐ろしく巧妙な連中なのは確かだ」
二人が何を言っているのかサッパリ分らなかった。
千冬は当然だが、『兵士』としての知識なんて微塵も無い束にすら、目の前にいる幼女達が何を話しているのか理解が出来ないでいた。
「ふ…二人とも? さっきから何を言ってるの?」
「お前達は一体……」
「んぁ? あぁ…なんかオレ達だけで話を進めちまったみたいだな。ワリィ」
「簡単な状況だけ説明すると、現在、日本に向けてどこからか複数のミサイルが向かってきている」
「な…なんだってっ!?」
「嘘でしょっ!?」
「んな事で嘘なんかついてどうするよ。んで、それをなんとかする為に、今は自衛隊のおっさん達が頑張ってんだよ」
「そうか……自衛隊が出動したのならば安心だな……」
「まぁ…それで飯食ってる連中だからな。ちゃんと給料分の仕事ぐらいはしてくれるだろうさ……って、おぉ? 思ってるよりも頑張ってるじゃねぇか」
目の前にあるモニターには、次々とイージス艦や戦闘機がミサイルを撃墜していく様子がレーダーに映し出されていた。
「これ…なんで分かるんだ? 今更だけどよ」
「う~ん…秘密♡」
「そうかよ」
ツッコむだけ無駄だと判断した二人は、スルーすることに。
そんな暇も余裕も無いから、余計に何かを言う気が失せている。
「事後承諾にはなるが、これを私達が勝手に使っても大丈夫だっただろうか?」
「それぐらいは全然平気だよ。寧ろ、君達がこれをここまで使いこなせてるのが本気で驚き。やっぱり、私の目に狂いは無かったって証拠だし」
「「…………」」
思いっきり前世の記憶と技術に頼りきっているだけなのだが、言っても信じるとは思えなかったので、ここは敢えて沈黙で答えた。
「私にも何かお手伝いできないかな?」
「つってもな……」
「今の私達は単なる傍観者にすぎない。出来ることがあるとすれば、万が一の時に備えて、いつでも避難勧告が出来るようにしておくとか、自分達が避難できるように準備を整えておくこととか……」
「なら、私はこの周辺の放送機器でもハックしておくよ」
「しれっと大胆な事を言ってやがる……」
「本当に大丈夫か……?」
状況が状況だから、心配になってしまいつつあるが、それでも彼女の持つ能力だけは本物だと判断して、ダメ元で頼んでみることに。
「よしよし……この調子なら何とかなりそうだ」
「この部隊は練度が高かったのだろうな。先ほどから次々とミサイルを撃破していく」
「このまま、何事もなく事態が収束してくれたらいいんだけどね……」
「不安になるようなことを言うんじゃねぇよ……」
目の前で、自分以外の三人が己に出来ることを一生懸命にやっている。
先程は少しだけ疑ってしまったが、今にして思えばそんな事はどうでもいいと思っている。
彼女達がどんな存在であっても、決して悪い人間ではないのは既に自分も知っている事実。
少なくとも、こんな状況で何も出来ないでいる自分に二人をどうこう言う資格は無い…と千冬は考えている。
と同時に、彼女はかなり焦燥していた。
(何か……何か私にも出来ることは無いのか……! この際、なんでもいいから…束やソンネン、デュバルの役には立てないのか……!)
自分に出来る事と言えば、体を動かす事だけ。
決して頭が悪いわけではないが、それでも、ここにいる三人のような芸当は流石に出来ない。
「なっ……!」
「どうしたっ!?」
「一発だけミサイルを撃破し損ねた! 他の機体も撃破しようと試みてはいるが、上手くいってないようだ! このままではこっちまで来てしまうぞ!!」
「冗談じゃないんですけどっ!?」
……これだ!!
心を決めると、千冬は躊躇うことなく束が製作したISの方へと向かった。
「ち…ちーちゃんっ!? 何をする気っ!?」
「こっちに来ているミサイルを私がこれで叩き落とす!!」
「はぁっ!?」
「何言ってんだアンタはっ! ンな事、素人のアンタに出来る訳ねぇだろうが!」
「下手をすれば怪我では済まないのだぞ!」
「承知の上だ!!」
「自衛隊に目撃されたら、事情聴取だけじゃ確実に終わらねぇんだぞ! 捕縛される危険性だってある!!」
「それはお前達がどうにかしてくれるだろう?」
「ちーちゃん……」
言い争っている間に千冬がISの前まで行き、その装甲に手を触れる。
すると、ISはこうなる事が最初から分かっていたかのように装甲を開き、彼女の事を受け入れた。
「お前達がなんと言おうと私は行くぞ! そう決めたのだから!」
有無を言わせないまま、千冬はISの操縦席へと身体を預ける。
装甲が閉じて、千冬の頭の中にISに関する知識が一気に流れ込んできた。
「うぐ…! これは……!」
「コアの方からちーちゃんの脳に直接、機体データとかをフィードバックしてるんだよ」
「ンな事をしても大丈夫なのかよっ!?」
「理論上はね。特にちーちゃんなら……」
心配そうに千冬の方を見ると、息を整えながらもISを完全に身にまとった姿の彼女がいた。
白いバイザーに目元が隠れている為、その表情は読みにくくなっているが。
「はぁ…はぁ…」
「お…おい……」
「もう平気だ…! 時間が無い、早く私を出せ……!」
「でもよ……!」
「……了解だ」
「デュバルっ!!」
コンソールを操作し、出撃準備をしようとするデュバルの胸倉を掴むソンネン。
だが、彼女はそれを真正面から受け止め、キッと睨み付ける。
「ならばどうすればいいのだ!! 私とて本当は彼女を出撃なんてさせたくはない! だが、迎撃し損ねたミサイルをどうにかするには、もう彼女に頼るしかないのだ!! お前にだって分っているだろう! 今の我々では情報分析が精々だということは!!」
「……クソがっ!!」
悔しさに顔を歪めながら、ソンネンもデュバルの手伝いをし始めた。
「……済まない」
「それは千冬の姉御が戻ってきてから本人に言え」
「そうだな……」
「ソーちゃん……デューちゃん……」
普段はとても仲がいい二人が、ここまで喧嘩をする。
それは偏に、千冬の身を心から案じての事だった。
「心配するな。絶対に戻ってくる」
「ごめんね…ちーちゃん」
「お前が謝るなんて、明日は雨か?」
「もうっ!」
冗談を言ってみせた千冬だったが、装甲の下では冷や汗を掻きながら体が密かに震えていた。
彼女だって本当は怖いのだ。だが、行かないわけにはいかない。
自分の親友を、唯一の家族を、心優しい少女達を守るために。
「……ところで、私はどこから外に出るんだ? まさか、このままの状態で玄関から出る訳じゃないだろうな?」
「まさか。ちーちゃんは今から、私がこっそりと家の地下に造っておいたゲートから出て貰うから」
「ゲートだと? おい…まさか……」
ISの脚部が固定され、そのまま後ろに下がっていく。
「それじゃあ……いってらっしゃい」
「束ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
千冬の叫びと共に、ISは彼方へと消えて行った。
「なんだか自分が情けないな……」
「それはオレ達もさ……」
「……………」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
街に向かいつつある一基のミサイル。
だが、それは突然、一刀両断されて空中で爆発した。
「ここから先は絶対に通さん!!」
白騎士、降臨。
ここから歴史が動き出す。
次回、白騎士事件完結。