インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
一体どうなるのでしょうか?
IS学園は通常の高校よりも勉強しなければいけない事が非常に多い為、必然的に授業数も大幅に増加している。
故に、入学初日から早くも授業が開始され、少女達は否が応でも自分達が通常とは異なる場所に来たのだと認識されられる。
「あぁ~…うぅ~…」
一時間目の授業が終わり、生徒達は思い思いの場所へと向かう。
そんな中、一人の少年が机に突っ伏して疲労から来る唸り声をあげていた。
「おいおい…マジで大丈夫かよ?」
「授業に着いていけなかったのか?」
「いや……三人のお蔭で、辛うじてギリギリなんとか着いていけた……」
「あれだけスパルタで教えてても『辛うじて』なのかよ」
「いや…冗談抜きで授業のレベルが高過ぎだから。三人に勉強を教えて貰ってなかったら、マジで全く授業内容を理解出来ずに知恵熱で頭から煙を出してたから」
「「「そこまで言うか……」」」
この学園で唯一の男子生徒である一夏は、自分が非常に世話になった幼馴染の三人の少女達に心配されつつ、僅かな癒しを得ていた。
「しっかし……さっきから凄い注目されてんのな……俺」
「当たり前だ。女子しかいない環境でたった一人の男子。後々はともかくとして、最初は興味津々になって仕方あるまい」
「そういうもんか……」
「そういうもんだ。少なくとも、あと数ヶ月は我慢することだな」
「冗談キツすぎだろ……」
これから先の事を考えて、早くも落ち込む一夏。
幾ら顔見知りが多いとはいえ、それでも同性が全くいない環境は、彼の精神に相当な負担を与えていた。
そんな中、別方面からそれぞれに少女達が一夏達がいる場所へと近づいてきていた。
片方はモニクやワシヤ、オリヴァー達といった嘗ての仲間達。
そして、もう一方は緊張を不安の入り混じった表情で歩いてきた箒。
双方は、全く同じタイミングで彼女達に話しかけてきた。
「あ…あの…ソンネン少佐」
「ソ…ソンネン」
「ん?」
「「え?」」
ここで、モニクと箒の視線が交わる。
二人に話しかけられたソンネンは、いきなりの事で目を丸くしていた。
「おい…なんだ貴様は」
「そっちこそ何よ」
「お…お~い?」
いきなり始まった女同士の熾烈な戦い。
モニクと箒の間に激しい火花が散っていた。
「ほ…箒? 凄い久し振りだけど……物凄く話しかけずらい雰囲気……」
「こんな時は黙っているに限る」
「「「うんうん」」」
自分達に飛び火しないように、デュバルが一夏にアドバイス。
それに賛同したヴェルナーとワシヤとオリヴァー。
触らぬ神に祟りなし…である。
「私は篠ノ之箒。ソンネンの『幼馴染』だ!」
「モニク・キャデラックよ。私はその…ソンネン少佐の教え子よ!」
「ちょ…お前ら?」
別の意味で完全に二人の世界に入っている。
仮にこの場に介入できるものがいたら、まず間違いなく二人の制裁を受ける羽目になるだろう。
「教え子…だと? それはどういう事だっ!?」
「教え子は教え子よ! それよりも『幼馴染』ですって? 少佐! 彼女は一体何なんですかッ!?」
「それはこちらのセリフだ! ソンネン! こいつは誰なんだっ!?」
「誰とか何とか言われても…どっちも事実だとしか言いようがないっていうか……」
二人に挟まれて、珍しく本気で狼狽えるソンネン。
こんな事は後にも先にも初めてなので、全く対処方法が分らない。
そして、周りにいる年頃の少女達がそんな事に気が付かない訳も無いわけで。
「入学早々に三角関係勃発?」
「なになに? 織斑君を巡って二人の美少女が喧嘩でもしてるの?」
「うんにゃ。彼は全く関係ないみたい」
「車椅子に乗った和風な改造制服を着た美少女を巡って争ってる……」
「百合ですな。これはこれでアリ!」
離れた場所から好き放題に言っている。
もしも当人たちに聞かれていたら、どんな目に遭うのやら。
「ソンネンも運が無いな。まぁ、ここは時間が解決するのを待つしかあるまい」
「「賛成」」
完全に部外者になる気満々。
真面目一辺倒だったデュバルも、それ相応に周囲の環境に順応してきてるのかもしれない。
「ところでさ、其処にいる子達もデュバル達の知り合いなのか?」
「うん? そうだな。彼…じゃなくて、彼女達は…そうだな。私達三人にとって共通の大切な友人たちだよ」
「……そっか」
自分の全く知らない幼馴染達の友人。
それに対して何も思わないと言えば嘘になるが、だからと言ってそれを表に出すような事はしない。
一夏も、孤児院に住んでそれなりに成長はしているのだ。
「さっきは自己紹介できなかったから、ここでしとくわ。オレはヒデト・ワシヤ。日系なんだけど、生まれも育ちもドイツのドイツ人だ。よろしくな!」
「おう。こっちこそよろしく。俺は……」
「知ってるよ。織斑一夏だろ。今や、IS関係者でお前さんの名前を知らない奴はいないだろ」
「そ…そうだったな。普通に忘れてた」
黒く長い髪が綺麗なワシヤと話し、一夏は自然と自分の同性の友人である『五反田弾』を連想した。
性別や髪の色、出身地などは全く違うが、根っこの部分が非常に似ているを感じたから。
(このワシヤって子と弾を会せたら、すぐに仲良くなりそうだな……)
ある意味、皆が一度は見てみたい組み合わせかもしれない。
「にしても、お前があの千冬さんの弟ねぇ~…」
「え? 千冬姉の事を知ってるのか?」
「知ってるも何も、オレやキャデラック特務大尉は、ドイツにいた頃にあの人からメチャクチャに扱かれたんだよ。いや……あれはマジで地獄だったわ……」
「そ…そうか……」
『特務大尉ってなんなんだよ?』とか『どうして千冬と知り合ったのか?』とか、色々とツッコミたい事があったが、それ以上にワシヤに対して本気で同情してしまった。
「あはは……。ボクは『オリヴァー・マイ』といいます。その…今回は大変でしたね?」
「う…うん」
今まで全くいなかった『清楚系美少女』のオリヴァーと話して、流石の一夏も動揺を隠しきれなかった。
物腰が柔らかで丁寧、しかも礼儀正しい。
その点に関してはデュバルも同じようなものなのだが、彼女はどちらかと言えば『委員長気質』だった。
逆にオリヴァーは『図書委員』的な感じで、窓際でそよ風を受けながら読書をしているイメージがある。
「そ…その…マイさんも…デュバル達とは知り合い…なんだよな?」
「そうだね。知り合いってよりは…『恩人』かな」
「恩人?」
「うん。この人達には沢山助けられた。色んな事を教えられた。どれだけ感謝してもしきれないよ……」
彼女達がいたから自分達は生き延びられた。
彼女達がいたから学んだ事もあった。
オリヴァーにとっての三人娘は『大恩人』であり『仲間』であり『友人』だった。
互いに生まれ変わり、こうして再び遠い地にて再会出来た。
今度は自分が彼女達を支え、助ける番だ。
その為に、オリヴァーは必死に色んな事を勉強した。
「それと、ボクの事はオリヴァーでいいよ。こっちも君の事は『一夏くん』って呼ばせて貰うから。ダメ…かな?」
「ぜ…全然っ!? 寧ろ、喜んでだよっ!?」
オリヴァーの乙女な視線に本気でドギマギした。
しかも、これを天然でしているのが普通に怖い。
「なんだ? 一夏、お前…技術屋に惚れたのか?」
「ちょ…そんなんじゃないから! ただ、普通に魅力的だと思っただけだから!」
「み…魅力的? そ…そうカナ……」
「「んあ?」」
前世でも一度も言われたことのない言葉。
例え、お世辞だと分かっていても反射的に照れてしまった。
だが、それがソンネンを巡って睨み合いをしている少女達の逆鱗に触れてしまった。
「ちょっと……少佐だけじゃなくて、私のオリヴァーにも色目を使ってる訳? いい度胸をしてるじゃないの。よし、貴方のお姉さんから直々に教わったトレーニングをその体で教えてあげるわ」
「一夏…貴様……暫く見ない間にどれだけ女たらしになっているんだ! はっ! まさか……私がいない間にデュバルやヴェルナー達にもその毒牙を……」
「なんかおかしなことになってるんだけどッ!? 千冬姉直伝のトレーニングとか普通に死んじゃうから! それと、鉄壁のガードを誇るこの三人に手なんて出せるわけないだろッ!? もし出そうとしたら、確実にこっちが返り討ちに遭うわ!」
織斑一夏。必死の言い訳。
傍から見ていると相当に見苦しい。
「それもそうか。そもそも、一夏がソンネン達に敵う訳がないな。悪かった」
「そうよね。ソンネン少佐達がそう簡単に籠絡なんてされるわけないわよね。ごめんなさい」
「あれ~? 誤解が解けたのに素直に喜べないぞ~?」
一夏、誤解が解けた代償に男としての尊厳を少し失う。
「っと、そうだ。元々、私はお前達と話をしに来たんだった。久し振りだな、四人共」
「お…おう。かなり久し振りだな」
「元気そうで安心したぞ」
「まさか、ここでまた会えるとは思わなかったけどな」
「それはお互い様だ」
デュバルやヴェルナーはともかく、ソンネンはついさっきまで至近距離で迫力ある箒を見ていたので、少しだけビビっていた。
本当に少しだけ。いやマジで。
「ところで、そこの二人もソンネン達の知り合い…なんだろう?」
「まぁな」
ここで改めて、箒に向けて自己紹介。
だが、初対面がアレなので、オリヴァーとワシヤは普通に冷や汗を掻いていたが。
「成る程。三人共、揃ってドイツからやって来たのか」
(だから千冬姉と知り合いだったのか……)
ドイツ出身だからと言って、千冬と知り合いだという可能性は決してないのだが、先程のワシヤの発言がそれを完全否定している。
我が姉の意外な交友関係がまた一つ明らかになった瞬間だった。
「しっかし、箒は全く変わってないな。少し離れた場所から見てもすぐに分かったぜ」
「それはこちらのセリフだ。三人共、あのまま大きくなった感じだ」
「人間、そう簡単に変わったりはしないさ」
((それ…オレ(ボク)達が一番言っちゃいけない台詞なんじゃ……))
生まれ変わって性別まで変わっているのに、そんな台詞が出てくるデュバルに呆れてしまうオリヴァーとワシヤ。
もしかしてギャグで言っているのかと思ったが、彼女がそんな性格じゃない事は二人はよく知っている為、すぐにこれが天然で放たれた言葉だと悟った。
「そうだ。新聞見たぞ。剣道の全国大会での優勝、おめでとう」
「し…知っていたのか……」
「当たり前だろうが。自分達の幼馴染の活躍なんだぞ? ちゃんとチェックぐらいしてるっつーの」
「そ…そうか……チェックしてくれていたのか……」
離れていても、ちゃんと自分の事を見てくれていた。
その事は純粋に嬉しくて、思わず微笑んでしまった。
「そうそう。実は箒が引っ越してからも、ちゃんとデュバルは剣道の練習を続けてたんだぞ」
「な…何ッ!? デュバル! 今ヴェルナーが言った事は本当なのかッ!?」
「あぁ。箒のお父上から学んだことは、私にとって非常に勉強になったし、新しい扉を開く切っ掛けにもなった。いい運動にもなるし、サボる理由が無い」
「デュバル……お前と言う奴は……」
箒の中ではもう、デュバルも立派な『篠ノ之流』の門下生だった。
実際、彼女は短期間でかなりの技を習得してみせている。
元々が生真面目で努力家だった事に加え、実は剣の才能も持っていたという事なのだろう。
「あのデュバル少佐が剣道って……」
「冗談抜きで鬼に金棒じゃねぇか……」
「圧倒的加速から繰り出される一撃必殺の剣撃……間違いなく凄まじい攻撃力になる筈だ……」
ヅダが剣を持った場合の戦闘能力を真面目に考察するオリヴァーの横で、モニクとワシヤは普通に戦慄していた。
少しは彼女に近づくことが出来たと思っていたが、それは自惚れだった。
自分達が成長しているように、デュバルはそれ以上のスピードで強くなっていた。
「少尉とも、こうしてゆっくりと話すのは初めてだよな」
「そうなるかな。オレとしても、お前さんとは一度、話してみたいと思っていたよ」
「はっはっはっ! それは光栄だな! 今日からは、『あの時』に話せなかった分、思い切り色んな事を話そうぜ」
「喜んで。ついでに、自慢の魚料理を御馳走してやるよ」
「マジでッ!? 日本の料理ってめちゃくちゃ美味いって聞いて楽しみにしてたんだよ! ……噂に聞く『サシミ』も作れるのか?」
「出来るぞ」
「よっしゃ! やっぱ、持つべきものは仲間だよな! うんうん!」
花より団子。
女になっても自分に素直なワシヤだった。
「「「ん?」」」
「「あ」」
「「「え?」」」
ここでチャイムが鳴って、散らばっていた生徒達が一斉に戻ってきて席に着いて教科書などを机の上に出す。
それを見て彼女達もまた自分達の席に戻り、同じように教科書や参考書、ノートを出した。
「すげー……まるで前にテレビで見た軍隊みたいだ……」
「実際の軍はこんなもんじゃないぞ。もっと厳しい」
「……俺には絶対に馴染めないな」
少しだけげんなりしながら、一夏も同じように教科書を出して次の授業に備えた。
全員が準備を完了した直後に、教室の扉が開いて千冬と真耶が入ってきた。
いつものことながら、休み時間だけで5000字消費……。
次回は、学園入学時に存在が危なく思われていた『彼女』を登場させる予定です。