インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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今回は当初、入学出来るかが危ぶまれていた『彼女』が登場します。

さて、どのような事になっているのでしょうか?






イギリスから来た少女

 二時間目の授業が始まったが、開始10分で早くも一夏はダウン寸前だった。

 

「……で、あるからして…ISの基本的な運用をするには、現時点では各国家群の認証が必要不可欠であり、万が一にでも規則を逸脱した運用をした場合は、従来の法律と同様に刑罰に処され……」

 

 教壇に立って教科書の内容を読んでいく真耶。

 授業の内容がまだ初期の初期の段階だったのが幸いしてか、なんとかギリギリで授業についていけていた。

 

 ふと、窓際にいる箒の事を横目で見てみる。

 彼女は何度も頷きながら、教科書と参考書の間を視線で行き来しながらノートを書いていた。

 それだけで、箒もこの授業にちゃんとついていけていることが分る。

 

 ふと、自分の机の上に重なっている重厚な教科書や参考書の数々を見て、改めて実感する。

 自分はとんでもないエリート校へと入ってしまったのだと。

 

(俺……少し前まではコレを勉強してたんだよな……あの3人に教わって)

 

 一夏がISを動かしたことが発覚してから、彼は三人の幼馴染達からスパルタに近いスケジュールで勉強を見て貰っていた。

 時間が僅かしか無かったので、仕方がないと言えばそうなのだが。

 

(こんな凄い学校の試験を受けたんだよな……周りにいる皆は)

 

 IS学園の筆記試験ともなれば、まず間違いなく、この授業よりも遥かに難しい内容になっている筈だ。

 それを突破してこの教室にいる少女達。

 そう思うだけで、何とも言えない居た堪れない気持ちになっていく。

 

 真耶が少しだけ余所見をした瞬間を狙い、一夏は後ろの席にいるソンネンの事をチラッと見てみる。

 彼女のノートには、それこそ所狭しと様々な単語や数式が書かれていて、見ているだけで頭が痛くなってきた。

 

「ん? どうした?」

「あ…いや。なんでもないよ」

 

 見ていた事に気が付かれ、慌てて謝ってから前を向く。

 授業中に余所見はよくないよな。

 そう思いながらも、自分の幼馴染達がどれだけ凄かったのかを心で理解してしまった少年だった。

 

「織斑君。どこか分からない所とかありますか?」

「え? あっと……」

「もしも分からない所とかがあったりしたら、無理せず遠慮なく聞いてくださいね。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥…ですよ?」

 

 確かに、ここは真耶の言う事が全て正しい。

 これから先の事も考えれば、分からない事は全て先生である真耶に教わるのが最善と言えるだろう。

 だが、悲しいかな。先程も言った通り、一夏は『ギリギリ』ではあるが授業には着いていけているのだ。本当にギリギリで。

 

「い…今はまだ大丈夫です。一応、ソンネン達に勉強を見て貰っていたので……」

「そうなんですね。それなら大丈夫そうですね。だって、ソンネンさん、デュバルさん、ホルバインさんの三人は、いずれも非常に優秀な成績で合格してますから」

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 ここで真耶がまさかの爆弾発言。

 彼女からしたら、普通に褒めているだけなのだが、他からしたらそうではない。

 

「え? オレらってそんな事になってたのか?」

「頑張ったつもりではあったが、そうか……」

「あれぐらいなら、やるべき事をちゃんとしてれば、誰だって楽勝だろ」

「「「「「…………」」」」」

 

 自覚無き天才こそが最も恐ろしい。

 実際、彼女達からすれば、ジオン軍の入隊試験に比べれば、IS学園の試験程度は、ちゃんと勉強さえ怠っていなければどうとでもなるレベルだった。

 

「まさかの天才少女が三人も……」

「一組って…もしかして、めっちゃ凄い人材が揃ってたり?」

「大当たりの組に来ちゃったのかも……」

 

 授業中だというのに、瞬く間に生徒達に話が広がっていく。

 年頃の少女達にとって、新鮮な話題はそれだけで食いつく理由になる。

 だが、当然のようにそれを許さない存在もいる訳で。

 

「静かにしろ!」

「「「「「!!!!」」」」」

 

 教室の端にて授業を見ていた千冬が、騒ぎ始めた生徒達を一喝する。

 それはまさに鶴の一言。

 一発で騒がしかった教室内が静けさに支配された。

 

「山田先生。気持ちは分かるが、そういうのは休み時間か放課後にして貰いたい」

「はい。済みませんでした」

 

 真耶の謝罪で、再び授業が再開する。

 しかし、そんな事なんて気にならない事が生徒達から集中力を削いでいた。

 

((((気持ち……分かっちゃうんだ……))))

 

 ごく自然とシスコン発言をしてしまった千冬。

 当の本人はその事に全く気が付いていはおらず、それどころか……。

 

(またやってしまった……! デュバル達に嫌われたらどうしよう……もしも、そうなったら…生きていく自信が無い……)

 

 紙装甲なメンタルで自爆していた。

 どこまでも義妹達が大好きな織斑先生なのだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 無事に二時間目の授業も乗り切った一夏は、ボドボドなメンタルを少しでも回復させる為に机から一歩も動かずに体を休めていた。

 

「なんだ一夏。まさか、もう疲れたとか言い出すのではあるまいな。情けないぞ」

「仕方がないだろ……ここにいるだけで精神がガリガリと削られていくんだからさ……」

 

 周りから放たれる視線のレーザービームは、一夏からしたら削岩機に等しい破壊力があった。

 幼馴染達がいなければ、一夏はとっくの昔に保健室へと駆け込んでいただろう。

 

「ま、こればかりは慣れるしかねぇわな」

「勉強の事ならば幾らでも協力してやれるが、これはお前の問題だからな」

「愚痴なら好きなだけ聞いてやるからよ。今は取り敢えず頑張ろうぜ」

「皆……」

 

 なんとなく、この三人娘が皆から慕われる理由が分かった気がする。

 これは箒達でなくても惚れる。

 いや、もしかしたら一夏もとっくにそうなっているかもしれない。

 

「お前達は大丈夫だったか?」

「はい。私達も勉強に勉強を重ねてますから」

「オリヴァーに勉強を見て貰っていたのがデカいですけどね」

「そんな事は無いよ。皆が頑張った成果が出てるだけさ」

 

 昔から謙虚な精神を持っていたオリヴァー。

 そんな彼…ではなくて彼女だからこそ、多くの人々に慕われるのだろう。

 

「オリヴァーはそんなにも頭がいいのか?」

「そりゃ勿論。元々から機械工学を専攻してたから、戦術的な知識はともかく、技術的な知識なら、そこらの生徒達の遥か先を行ってるんじゃないかな?」

「暇潰しにISの整備マニュアルを読んでるぐらいだしね」

「それは……徹底してるな」

 

 皆から『技術屋』『技術バカ』と呼ばれるだけあって、知識だけならば群を抜いていた。

 間違いなく、学年トップクラスの頭脳の持ち主だろう。

 そして、ソンネン達の会話に聞き耳を立てていた生徒達は、非常に強力な味方が傍にいる事を理解した。

 

(もしも、分からない事や宿題を忘れてしまった時は……)

(迷わずにマイちゃんに頼ろう!)

(ふんわり系金髪美少女と二人っきりで勉強会とか……最高すぎますな…ぐへへ…♡)

 

 約一名、よからぬことを考えている輩がいるが、気にしない方がいいだろう。

 もしもオリヴァーにそんな事をしたら、即座にモニクの鉄拳が炸裂するのだから。

 

「あの……少しよろしいでしょうか?」

「ん?」

 

 ここで、一人の少女が会話に入ってきた。

 長い金髪をロールさせている、いかにもなお嬢様。

 その見た目だけで、彼女がお貴族様であると理解した。

 

「君は?」

「イギリスから来た『セシリア・オルコット』と申します。これでも、イギリスの代表候補生をやっておりますの」

「代表候補生……」

 

 何も知らない頃の一夏ならば、すぐに『なんだそれ?』を聞き返す単語。

 だが、今の一夏はそんな事にならない。

 

(それって確か……国家代表の卵みたいな子達…なんだよな?)

 

 彼女もいずれは国家代表になる事を夢見て頑張っているのか。

 つくづく、人は見た目じゃないと思い知らさせる。

 

「そのセシリア・オルコットが何の用だ? お前さんも一夏の事が珍しいのか?」

「いえ。確かに、男性でありながらISを動かしてみせた彼に興味が無いわけではありませんが、今回は彼に用があって来た訳ではありません」

「それじゃあ、誰に用があって来たのよ?」

「貴女ですわ」

「オレ?」

 

 セシリアの視線は真っ直ぐにソンネンの事を見据えていた。

 まさか、自分に用があるとは思っていなかった彼女は、思わず自分の事を指差した。

 

「無礼を承知でお聞きします」

「おう」

「このIS学園の受験には筆記試験の他に実技試験も存在している。ISを動かし、搭乗した後に試験官と対峙をして簡易的な試合を行う」

「知ってるよ。ここにこうしているんだしな」

「ですが、貴女のような身体的に障害を持つ人がISに搭乗することは難しい…というよりも、まずは不可能な筈です。特に、そのように足に障害を持つ人は」

「アナタ…!」

「貴様…!」

 

 ハッキリとした物言いに、反射的にモニクと箒が飛び掛かりそうになるが、それをソンネンが手で制する。

 彼女には分かっているのだ。

 セシリアはソンネンの事を馬鹿にしたり、貶めようとして話しているのではないのだと。

 彼女は何処までも純粋に、代表候補生としてソンネンの事が気になっているのだ。

 

「それなのに、貴女は見事に合格をし、こうして皆と同じ学び舎にいる。知りたいのです。一体どうやって実技試験を突破し、合格を勝ち取ったのかを」

「なんだ、そんな事か」

 

 いずれは必ず聞かれると思っていた事。

 デュバル達は勿論、同じように転生をしたモニク達は何も言わずとも事情を把握している。

 箒や一夏も、身近にISに関わりが深い人間がいるから、その人達が何かをしたのだと思うだろう。

 だが、完全な第三者はそうはいかない。

 何も知らないからこそ気になってしまう。

 普通ならば不可能な事を、どうやって可能にしたのかを。

 

「別に大したことじゃないさ。『努力』と『相棒』。この二つで乗り越えただけだ」

「努力は分かりますが、相棒とは……まさか……貴女も……!」

 

 ここでセシリアは答えに辿り着く。

 ソンネンにも専用機が存在するのだと。

 しかも、足が不自由でも全く問題が無い、彼女の為だけに生み出された正真正銘の専用機が。

 

「……成る程。それならば納得がいきます。誰が、どうやって…という疑問は残りますが、そこを追求するのは流石に無粋でしょうから、聞かない事に致しますわ」

「そうか」

「最後に、貴女のお名前を聞かせて貰えないでしょうか?」

「デメジエール・ソンネンだ。こう見えても、オレも一応はイギリス出身なんだよ。子供の頃から日本に住んでるから、自覚はあんまりないけどな」

「同郷の方でしたのね……」

「因みに、このデュバルもイギリス出身だ」

「まぁ…貴女も?」

「一応な。ジャン・リュック・デュバルだ。よろしく、オルコット嬢」

「セシリアで構いませんわ。こちらこそ、よろしくお願いします。ジャンさん」

 

 完全に忘れがちになるが、デュバルとソンネンもイギリス人なのだ。

 今ではすっかり死に設定となっているが。

 

「では、これで失礼しますわ。デメジエールさん、何かお困りの事がありましたら、ご遠慮なく私のことを頼ってくださいな」

「その時が来たらな」

 

 去り際に指先でスカートを摘まみ、お辞儀をしてから自分の席に戻っていったセシリア。

 その仕草はまさに、お嬢様と言う他なかった。

 

「本物のお嬢様って始めて見たかも……」

「私もだ。どんな家に住んでいるのか、一発で想像できる」

「同じお嬢様なのに、特務大尉とは偉い違いだ……うぎゃっ!?」

「何か言った? 足を踏んづけるわよ」

「もう踏んでるから! 踏んでますから~!」

「やれやれ……」

 

 どうして自ら虎の尾を踏みに行くのか。

 呆れながらオリヴァーは首を振る。

 

 一方、ソンネンは去っていった少女の事を考えていた。

 

「セシリア・オルコット……か」

 

 前世において、戦車教導団の教官をしていたからか、不思議と目や仕草などを見ただけで、相手の能力をある程度理解出来るスキルがあった。

 そんなソンネンには、セシリアが普通とは明らかに違って見えていた。

 

(まだまだ粗削りで未熟ではあるが……あれは間違いなく磨けば光る『原石』だな。今のアイツは、まだ発掘されたばかりの鉱石だ。どれだけ訓練を積んでも、専用機を手に入れても、全くセシリア・オルコットという原石は『研磨』されてない。もしかしたら、イギリスの連中も、それを理解して敢えてセシリアをIS学園に送り込んだのかもしれないな……)

 

 これまた、暇をすることが無くなりそうな要因を見つけ、これからの学園生活の楽しみを見出したソンネンであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




セシリアはいい子ちゃんでした。

一夏の事は全く見下してもいないしバカにしもしてはいませんが、かといって好意的に見ている訳でもない。
全くのニュートラルな感じですね。

そして、ソンネンとはどのような関係になっていくのか?

このまま行くと、まず間違いなくモニカや箒のライバル確定ですね。
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