インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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無事に危機的状況を逃れたので、穏やかな日々に感謝しつつ投稿です。

部屋の片づけにめっちゃ苦労した……。








部屋割り

 初日の授業が全て終了し、現在は放課後。

 生徒達は早くも各々に仲良しグループを形成し、これからどうしようか話し合っている。

 そんな中、机に突っ伏して頭から煙を出している男子が一人。

 

「ちくせう……中途半端に授業内容が理解出来てしまうから、逆に頭を必要以上に酷使してしまう……」

 

 なんて言ってはいるが、これでも一夏が入学前に三人娘から受けた『緊急スパルタ勉強会』の内容に比べれば、相当にイージーな内容だった。

 だからこそ、この程度のダメージで済んでいるのだが。

 

「あの時は…一体何回、心が折れかけたか……」

 

 だが、そのスパルタが無ければ、今の自分が地獄を見ていたのもまた事実なのだ。

 感謝こそすれ、恨み言なんて全く無い。

 

「ま~た倒れてんのか?」

「仕方がないだろ……」

「こんな事なら、勉強と一緒にメンタルを鍛える特訓でもするべきだったか?」

「お願いだから勘弁してください」

 

 後ろから話しかけてきたソンネンの何気ない一言に、一夏は本気で顔面蒼白になった。

 唯でさえ勉強だけで限界だというのに、更に他の事まで同時進行でさせられたら、それこそ一夏のキャパシティが完全にオーバーしてしまう。

 

「そうやって項垂れるのもいいが、そろそろ起きたらどうだ?」

「疲れてるんなら、このまま学生寮に直行したらどうよ」

「そっか……それも有りだよな」

 

 今は兎に角休みたい。

 自分の体が欲する危険信号に従って、一夏はゾンビのような動きで席から立つ。

 だが、それを見て真面目一辺倒の彼女達が何も言わない訳も無く……。

 

「一夏! もっとシャキっとせんか!」

「それでも男なのっ!? 背筋を伸ばしなさい!」

「来たよ……」

「「あ?」」

「ナンデモアリマセン……」

 

 箒とモニク。

 性格がそっくりなこの二人が一緒の時、自分は絶対に勝てないと言葉ではなくて心で理解をした一夏。

 変に刃向えば絶対に碌な事にはならないのは明白なので、渋々と従う事に。

 

「まぁ…その…がんばれ。お前の気持ちは理解出来るよ」

「周り全部が異性な環境だからね。精神的に疲弊してしまうのも無理ないよ。我慢しないで、今日はゆっくりと休んだ方が良い」

「ヒデト~…! オリヴァ~さ~ん…!」

 

 少女二人の何気ない優しさが身に染みる。

 因みに、なんでか一夏はオリヴァーの事だけ『さん』付けで呼んでいる。

 本人曰く、『不思議とそう呼ばないといけないような気がした』らしい。

 

「あ、織斑君。それに、ソンネンさん達も」

「山田先生じゃねぇか。一夏に用事か?」

「そうなんです。少しよろしいですか?」

「は…はい」

 

 先生からの呼び出しで緊張しない生徒が一体どれだけいる事か。

 少なくとも、一夏は普通に緊張する。

 その事を察してか、デュバル達も一緒に着いていった。

 真耶が何も言ってこなかったので、彼女達が一緒でも問題が無い話なのだろう。

 

「色々と難航していたんですけど、ようやく織斑君の寮の部屋が決定しました。それ系の話は…聞いてますか?」

「一応は。最初は家(孤児院)から通う予定だったけど、俺の場合は事情が事情だから、それは無しになって、他の皆と同じように最初から学生寮に住むことになる…でしたよね? 入学する少し前に千冬姉から聞かされました」

「そうだったんですね。なら話が早いです」

 

 ポケットから一枚のメモ紙を取り出して、それを一夏に手渡す。

 見てみると、紙には部屋番号と思わしき『1025』という番号が書かれてある。

 

「もしも、ここで知らされてたりしたら、荷物とかで困りそうだな」

「その時は院長さんがちゃんと学園に届けてくれるだろうさ」

「あ……」

 

 ここで千冬の登場。

 別にこれといった用事は無い筈なのだが、なんでか真耶に付き添う形でやって来た。

 その理由は一つしか存在しない。

 

(これからまた仕事で忙しくなるからな……ここらでソンネンとデュバルとヴェルナーという『義妹パワー』をチャージしておかなくては)

 

 三人が入学してから、一気にシスコンになった千冬。

 彼女も色んな意味で吹っ切れてしまったのかもしれない。

 

「そう言えば、ここの学生寮は基本的に相部屋だった筈。一夏もまた誰かと相部屋になるのですか?」

「仕方なくな。こちらも部屋割ばかりに時間を割く訳にはいかんのだ。取り敢えずは一ヶ月の間だけ、織斑は相部屋になる事になる」

「一ヶ月か……」

 

 たった一ヶ月。されど一ヶ月。

 長いような短いような、なんとも半端な時間だった。

 

「一か月後には個室に移動になるんですね」

「マイの言う通りだ。その頃には学内も落ち着き、こちらにも幾分かの余裕が出来ると判断してな」

 

 唯でさえIS学園は非常に特殊な学校で、その入学式直後ともなれば相当に忙しい事が予想出来る。

 一先ずは適当に部屋を決めて、仕事が一段落ついてから改めて経話槍を決めていけばいい。

 そうでもしないと、本気で教師陣が過労で倒れてしまう。

 

「ちふ…織斑先生はどうなるんだい? そっちも寮に住むのか?」

「そのつもりだ。お前達だけならばともかく、一夏もこっちに来る以上は私だけが向こうから通う訳にはいかないからな」

「う……ごめん」

「気にするな。前とは違い、今回は別に国外にいる訳ではない。帰ろうと思えばいつでも帰れるのだしな」

「そう…だよな」

 

 孤児院に一緒に住むと決めておきながら、千冬があそこで過ごせた時間は本当に短い。

 だが、だからと言って悲観するような千冬ではない。

 短いのであれば、これから少しずつでもいいから増やしていけばいいだけの話だ。

 

「そうだ。ソンネンさん達がいるのなら、ついでに『大浴場』の事も説明しておきますね」

「「「大浴場?」」」

 

 普段から余り聞き慣れない単語。

 孤児院にも大きな風呂は存在するが、あれはまた別だろう。

 

「はい。学生寮にある様々な種類のお風呂がある場所なんですけど、学年によって使える時間帯が違うんです。それに関しては生徒手帳に記載されているので、後で確認しておいてください。勿論、女の子だけですよ? 織斑君は今は使えませんからね?」

「いや、流石にそれぐらいは分かってますよ?」

「本当か~?」

「一夏に関しては『前科』があるからな」

「「「なにっ!?」」」

 

 デュバルの爆弾発言に反応したのは、千冬と箒とモニクの三人。

 一気に般若の顔になり、一夏の方を力強く掴んだ。

 

「一体どういう事なのか……」

「詳しく話を聞かせて貰うぞ……!」

「一夏……!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 戦力増加。

 唯でさえ勝てない二人に、世界最強の姉が加わってしまった。

 最初から勝ち目ゼロな状況が、マイナスな状況に陥った。

 

「え…? もしかして織斑君って……」

「むっつりスケベ?」

「あの美少女三人組の裸を見るとか……万死に値する!」

 

 約一名、別世界から眼鏡を掛けた紫髪のおかっぱがいるようだ。

 

「お…織斑先生! そろそろ会議の時間ですよ!」

「はっ! そうだった…怒りの余り、うっかり忘れるところだった」

 

 真耶の機転で危機脱出…と思いきや、世の中そう甘くは無かった。

 

「時間がある時…ちゃんと話を聞かせて貰うからな……!」

「ハ…ハイ……」

 

 どう足掻いても、姉の掌からは逃げられないようだ。

 

「言っておくが……」

「まだ私達もいるんだからね……!」

「さいでした……」

 

 背後から箒とモニクから鋭く睨み付けられる一夏。

 彼の受難はまだまだ続くようだ。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 本当は生徒会長を務めているカスペンの元に挨拶に行こうと思ったが、同じ学校にいるのだから、そこまで急ぐ必要もないと判断し、今日だけはそのまま学生寮の向かう事にした六人娘。

 そこに一夏、箒、いつの間にか合流をしていた本音を加えて、全員で学生寮へと向かった。

 

「オレは……こっちか」

「ソンネンは向こうなのか」

「ボク達の部屋とは反対側なんですね」

「みたいだな」

 

 一夏やデュバル達とは逆方向に足を向けるソンネン。

 

「後で部屋の番号をメールとかで送るよ。気軽に遊びに来てくれや」

「遠慮なくそうさせて貰うッス!」

「それでは少佐。また後で」

「おう」

 

 皆に向かって軽く手を振ってから、自分の部屋へと向かっていく。

 廊下の造りやドアの一つ一つを見て、思わず口笛を吹いて感嘆する。

 

「フュ~♪ こりゃ、想像以上に金が掛かってやがるな。ジオン軍の士官学校の寮を思い出すぜ」

 

 久し振りに昔を懐かしんでいると、すぐに自分の部屋がある場所へと辿り着く。

 そこは、他の部屋とは違って車椅子のソンネンでも簡単に出入りが出来るように、少し低い位置にドアノブが設置してあった。

 

「事前に聞いていた情報通りだな。ちゃんと、オレの部屋だけバリアフリー設計になっているみたいだ」

 

 ちゃんと確認をしてから、改めて室内に入ろうとした…その時だった。

 

「あら? 貴女は…デメジエールさん?」

「んあ? お前さんは…セシリアか?」

 

 隣から真っ白で綺麗な肌を持つ腕が伸びてきて、ソンネンと同じドアノブを掴もうとして止まる。

 誰かと思って振り向くと、其処にいたのは先程、教室で話したセシリアだった。

 

「まさかとは思うが…お前もこの部屋なのか?」

「そうですけど…デメジエールさんも?」

「あぁ……」

 

 まさかの、対戦の約束を交わした相手と同じ部屋。

 流石のソンネンも、この状況には固まってしまう。

 そして、それはセシリアも同じだった。

 

「……入るか」

「そうですわね……」

 

 何とも言えない空気になりながら、二人はこれから自分達が住む部屋へと入っていった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「おいおい……マジかよ」

 

 寮の外観もそうだったが、寮の部屋もまた凄かった。

 一流ホテルも真っ青なレベルの室内になっていて、少なくとも今も昔もこんな部屋を拝んだことは一度も無い。

 

「ちゃんと段差が斜めになってましたわ。学園側も、ソンネンさんの事を考慮した部屋作りをしたんですのね」

「受験の際にそれらに関することは予め伝えておいたからな」

 

 因みに、その際の学園側の返事は『普通にOK』だった。

 まず間違いなく、生徒会長であるカスペンが裏で手を回していると確信していた。

 

「ところでよ……この天蓋付きのベッドはセシリアのか?」

「えぇ。実家から取り寄せましたの。流石にベットを丸ごと…とはいきませんでしたので天蓋だけ」

「そ…そうか」

 

 英国貴族は考えている事のスケールが違う。

 自分がどれだけ日本に染まっているのか、改めて再認識したソンネンだった。

 

「オレ達の荷物は…あれか」

 

 二人の私物が入っていると思わしき段ボールが複数、部屋の隅に置かれていた。

 段ボールにはそれぞれ、二人の名前が書かれてあるので一目瞭然だった。

 

「あ~……悪いけどよ、出来れば車椅子からオレを降ろしてくれないか?」

「そうでしたわね。少しお待ちくださいまし」

 

 ソンネンの体を下から持ち上げる形で抱き上げるセシリア。

 軽々と彼女の体を持ち上げてみせたが、それは単にセシリアが鍛えていたからだけが理由ではなかった。

 

「か…軽いッ!? デメジエールさん、幾らなんでも軽すぎですわよっ!? ちゃんと食事はしているのですかっ!?」

「三食ちゃんと食べてるッつーの。寧ろ、お替りするぐらいだわ」

「そ…それにしては軽いですわよ……? 世の女子達が嫉妬するレベルで軽いですわ……」

 

 これに関しては、単純にソンネンの体質だった。

 俗に言う『食べても太らない』タイプなのだ。

 それを聞く度に、中学時代のクラスの女子は血の涙を流す。

 

「降ろしますわよ」

「頼む」

 

 ソンネンの事を考えて、そっと降ろしてくれたセシリア。

 それだけで、彼女がどんな風に育てられてきたかが伺えた。

 

「これから先、同じような事を何度も頼むことになるかもしれねぇけどよ、よろしく頼むわ」

「これぐらい、お安い御用ですわ。英国の淑女たる者、大切なルームメイトのお手伝いぐらいは容易くこなしてみせますとも」

「そりゃ頼もしいぜ」

 

 最初は驚きを隠せなかったが、これはこれでいい相手だったかもしれない。

 一週間後には互いに銃を向けあう立場だというのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

 それどころか、楽しみが更に増えてきた。

 

「にしても、まさかオレ達がルームメイトとはねぇ……」

「この組み合わせに関しては予め決められていた事でしょうし、とすれば教室であのような話をした時点で拙かったのかもしれませんわ」

「かもな。けど、過ぎた事をグチグチと言っても仕方ないさ。それよりも、これからの事を考えようや」

「フフ…その通りですわね」

 

 ソンネンの傍に座り、段ボールを開けようとしている彼女を手伝い始めるセシリア。

 まずはルームメイトの荷解きを手伝うことが、彼女なりの第一歩なのだろう。

 

「お手伝いしますわ」

「お。ありがとな」

 

 中を探っていくと、まずはソンネンの私服である着物が出てきた。

 それを手に取り、セシリアは思わず目を輝かせる。

 

「これが噂に聞くジャパニーズ・キモノなんですのね……美しいですわ……」

「日本独特の文化の集大成の一つだからな。小さい頃からずっと着てるけど、オレもかなり気に入ってる」

「その気持ち…分かりますわ……」

 

 早くも共通の話題で盛り上がる二人。

 性格は似ていなくても、意外といい友人同士になれるのかもしれない。

 

「あら。これはもしかして『A1E1インディペンデント重戦車』の模型?」

「お? やっぱ分かるか?」

「勿論ですわ。イギリスは『戦車の母国』と呼ばれているんですのよ? こちらは『ヴァリアント歩兵戦車』に『キャバリエ巡航戦車』。『シャーマン・ファイアフライ』まであるじゃありませんの」

「オレの自慢のコレクションだ。まだまだあるぞ」

 

 どうやら、二人の荷解きはまだまだ時間が掛かりそうだ。

 だが、本人達が楽しそうにしているのだから良いのかもしれない。

 

 

 

 

 




まずはソンネン&セシリアがルームメイトに。

次回は他のメンバーの様子を描きたいと思います。

果たして、誰と誰がルームメイトになっているのでしょうか?
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