インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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人生の楽しみが少しだけ増えました。








顔合わせ

 夜が明けて次の日になり、生徒達はそれぞれに登校の準備を済ませてから、学生寮の中にある食堂へと集まってくる。

 昨日の今日だというのに、もう既に馴染んでいる生徒達が沢山いた。

 これが若さ故の強さなのかもしれない。

 

「本当に悪いな。色々と手伝って貰ってよ」

「昨日も言いましたでしょう? 気にしないでくださいまし。これもまたいい経験ですわ」

 

 生徒達で賑わう廊下の一角に、ソンネンが乗っている車椅子を後ろから押しているセシリアの姿があった。

 二人とも、揃ってちゃんと制服を着ている様子から察するに、セシリアがソンネンの着替えを手伝ったようだ。

 

「いつもはデュバルやヴェルナーに手伝って貰ってるんだけどな。あいつ等以外の奴に手伝って貰うのは、なんだか新鮮だったよ」

「あら? 三人は一緒に住んでるんですの?」

「一緒にっていうか、オレ達は孤児院で暮らしてるんだよ」

「あ……」

 

 孤児院で暮らしているという意味を理解出来ないセシリアではない。

 聞いてはいけない事を聞いてしまったと思い、セシリアは暗い顔になってしまった。

 

「おいおい。そんなに気にするなって。あそこでの暮らしは楽しいし、同じ屋根の下で過ごしてると、血が繋がっていなくても兄弟姉妹のように感じるんだよ。だから、セシリアがそんなに気にする必要はねぇよ」

「デメジエールさんはお強いんですのね……」

「そんなんじゃないよ。皆が一緒だったから頑張れた。それだけさ」

 

 朝から妙にしんみりとしてしまったが、気にせずに先に進むことに。

 すると、食堂の入り口付近でデュバル&箒コンビと合流をした。

 

「お、おはようさん」

「おはようございます」

「ソンネン…と一緒にいるのはセシリア・オルコット嬢か」

「私の事は『セシリア』でよろしいですわよ。ジャンさん」

「そうか? 君がそう言うのならば遠慮なく呼ばせて貰うが……」

 

 名前の呼び方一つとっても昔の癖が出てしまう。

 この名前呼びが自然になってくる頃には、二人の仲も進展しているだろう。

 

「二人が一緒という事は、ソンネンのルームメイトはセシリアなのか」

「対戦する予定の二人が一緒の部屋に住むというのはどうなんだ…?」

「その話は昨日もしたよ」

「それに関しては、明らかに対戦の予定自体が後付けなので仕方がありませんわ」

 

 まさか、学園側も一緒に住む予定の二人が試合をするだなんて思いもしなかっただろう。

 色んな意味で予想外の出来事である。

 

「そっちも、デュバルと箒が一緒の部屋なのかよ?」

「その通りだ。こちらは最初から気が楽だったぞ」

「だろうな。なんたって昔馴染み同士だしな」

「思わず、昔話に花が咲いてしまったよ」

 

 そうして話している間に食堂に人が集まってきたので、四人は中に入って朝食を食べることにした。

 勿論、一緒の席に集まって。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「なんか……」

「大所帯になってしまったな」

 

 あれから、食堂に次々と集まってくる生徒達に混じって、他のメンバーも続々と集結して来て、気が付けば総勢12人という膨れ上がっていた。

 皆は揃って、大人数が座れる席に集まって食事をしている。

 因みに、楯無や簪といった、クラスや学年が違うメンバーとは初めに会った時に軽く自己紹介をしている。

 

「つーかよ、なんで技術屋と一夏が一緒の部屋なんだよ?」

「いや、オレに聞かれても困るし」

 

 確かにその通りだ。

 

「おい、オリヴァー。お前さん、こいつに何もされてないか? 例えば、着替えを覗かれたり、入浴中に突撃されたりとか……」

「一夏! 貴様…そんな事をしたのかッ!?」

「してないしてない! 神に誓ってそんな事は絶対にしてないから!!」

「私達には普通にしたのに?」

「あれは純然たる事故だろーが!!」

 

 ソンネンに怪しまれてからの箒の説教。

 トドメはデュバルの一撃で、一夏は完全に女性陣を敵に回してしまった。

 

「織斑君……」

「な…なんだ? キャデラックさん……」

「もしも私のオリヴァーに何かしたら……」

「したら?」

「……グルグル回して捩じり切るわよ」

「何をッ!?」

 

 それを言ったら確実にセクハラになるのでやめよう。

 少なくとも、朝の食堂で言うべき事ではない。

 

「ねぇ……お姉ちゃん」

「な…何かしら? 簪ちゃん……」

「ここは一年生の寮の食堂だよ? なんで二年生のお姉ちゃんがいるの?」

「そ…それは……」

 

 目の前に座っている簪の当然の疑問に、楯無は冷や汗ダラダラで言い淀む。

 もしも事実を言ったが最後、確実に姉としての威厳も上級生としての威厳も完全崩壊する…が、そんな楯無の心境なんて全く知らないヴェルナーは、容赦なく同居人の失敗を言い放った。

 

「部屋の場所を間違えたんだよ。本当は一夏の部屋が目的だったらしいけど、番号を見間違えてオレの部屋に入ってたんだ」

「お姉ちゃん……」

「お願いだから、そんな目でお姉ちゃんを見ないでぇぇぇぇぇぇぇっ!! というか、なんで言っちゃうのヴェルナーちゃんっ!? ここは普通、空気を読んで内緒にしておく場面でしょっ!?」

「え? バレちゃ拙かったのか?」

「どう考えても恥ずかしいじゃないっ! 黒歴史確定じゃないっ!」

「そーなのか……ごめん」

「……そこで素直に謝られると、反応に困るんだけど」

 

 どんな時もマイペースなヴェルナー。

 伊達にニュータイプ疑惑を持たれている訳ではない。

 

「しっかし、まさか少尉が上級生と一緒の部屋だなんてな~。ある意味、めっちゃ美味しいじゃないか」

「そーか? よく分からん」

 

 ワシヤにそう言われて小首を傾げるが、何にも疑問に感じない。

 普通に考えれば、学生寮で上級生と一緒の部屋というのは、かなり特殊な状況なのだが。

 

「にしても、IS学園ってのはメシまで美味いんだな! お蔭で朝からご飯が入る入る!」

「本当に美味しいよね~! ワッシー!」

「だな!」

 

 コミュ力怪物コンビがまさかのルームメイト同士という事実に動揺が隠せない一同。

 似た者同士という事で、あっという間に仲良くなったようだ。

 『類は友を呼ぶ』とは、まさにこの事か。

 

「…で、貴女が簪ちゃんと同じ部屋のモニクちゃん?」

「その通りです、更識先輩」

「えっと…簪ちゃんの事をよろしくお願いね?」

「言われなくても、そのつもりですよ。そちらも、ホルバイン少尉の事をよろしくお願いしますね。彼女、かなり天然な所がありますから」

「そうみたいね……本気で何を考えてるのか読めないから……」

 

 まるで保護者同士の会話。

 楯無とモニク。

 同じ『姉』同士として、今のところは仲が良さそうだ。

 

「けど、まさか俺が生徒会から保護対象にされてるとは思わなかったな」

「貴方は世界で唯一の男性IS操縦者ですもの。その貴重性は君の想像以上よ。基本的にIS学園にいる限りは大丈夫だけど、それでも万が一って事はあるから」

「その為に、生徒会から更識先輩が派遣されてきた…って事ですね」

「御名答。会長が言ってた通り、頭の回転が速いみたいね、オリヴァーちゃんは」

 

 こちらが色々と考える前に、二手三手先を考えて手を打つ。

 生徒会長になった事で、嘗ては大隊指揮をしていたカスペンの才能が十二分に発揮されているようだ。

 

(ジャン・リュック・デュバルにデメジエール・ソンネン。この子達もヴェルナーちゃんと同じように亡国機業の幹部を単独で撃破してるのよね……。見た感じは、其処ら辺のアイドルが裸足で逃げ出すレベルの美少女なのに、この小さな体のどこにそれ程の力が秘められてるのかしら……)

 

 予め、カスペンから彼女達について色々と聞かされていた楯無は、話をしながらも冷静に観察をする。

 ヴェルナーもそうだったが、楯無にはまだ彼女達のどこにドイツ代表であるカスペンが全面的に信頼する要素があるのか把握しきれないでいた。

 

(そして、モニク・キャデラックとヒデト・ヤシヤ。オリヴァー・マイ…ね。モニクちゃんとヒデトちゃんはドイツで専用機を受領していて、オリヴァーちゃんは超一流の整備技術を持っているって話だけど……)

 

 これまた、見ているだけではごく普通の少女達だ。

 先の三人と同様の美少女であるという事を覗けば。

 

「そうだ。ヴェルナーちゃんに聞いたんだけど、来週の月曜の放課後に、デメジエールちゃんとセシリアちゃんが試合をするんでしょ?」

「そうですわ。本来の目的はデメジエールさんの実力を生徒の皆さんに知らしめるためですけど、私個人としても彼女の実力に興味がありましたの」

「ほんと、今から楽しみだよな。流石はIS学園だよ。入学して早々から暇させてくれない」

 

 下半身不随という身体的ハンデを背負っているにも拘らず、ソンネンの顔は自信に満ち溢れていた。

 楯無も、ソンネンが実技試験にて真耶を圧倒してみせたという報告は受けているが、俄かには信じられなかった。

 

(この和風美少女が、元代表候補生で世界的に見ても最上級クラスの実力を持つ山田先生を圧倒した…ねぇ……)

 

 基本的に、楯無は自分の目で見た事しか信じない。

 だからこそ、ヴェルナーと一緒の部屋になれた事は怪我の功名とも言えた。

 

「その試合、当日は私達も見に行けるのかしら?」

「どうなんだろうな?」

「その辺は先生達に聞いてみないと、何とも言えませんね……」

 

 試しに聞いてはみたが、仮にダメだとしても色々と言い訳をして身に行くつもり満々だった。

 というか、同じ話をカスペンにすれば、生徒会長権限を使って『絶対に見に行く!』と言うに決まっているので、いざとなれば彼女に頼るのも手だ。

 

「あ」

 

 ここで楯無がある事を思い出す。

 

「ねぇ、ヴェルナーちゃん、デメジエールちゃん、ジャンちゃん。それからオリヴァーちゃんにモニクちゃん、ワシヤちゃん」

「なんですか?」

「もしも、今日の放課後に何も予定が無かったら、生徒会室に来てくれないかしら?」

「それまたなんで?」

「うちの会長が皆に会いたがってるのよ。勿論、他に予定があれば無理強いはしないけど」

「そうだな……」

 

 確かに、一度は絶対に挨拶に行かないといけないとは思っていた。

 実際、殆どのメンバーは予定らしい予定なんて全く無かった。

 約一名を除けば…だが。

 

「箒。済まないが……」

「いいさ。私のことは気にせずに行ってくるといい。お前の大切な恩人なのだろう?」

「今度、一緒に見学に行こう。約束だ」

「う…うむ! そうだな!」

 

 デュバルがそっと小指を出して、それに箒も同じように小指を絡める。

 軽く振ってからのゆびきりげんまん。

 

「よかったら、貴女達も一緒に来る?」

「え? 俺達も一緒に行っていいんですか?」

「構わないわよ。特に織斑君は一度、会長と会っておくべきだと思うし」

「俺が?」

「これから先、あの人が貴方の護衛をすることがあるかもしれないから。一度も話したことが無い相手よりは、少なからず顔見知りが相手の方がいいでしょ?」

「それもそうですね……」

 

 因みに、一夏は入学式の際に、ガチガチに緊張をしていて碌に話とかも聞いていなかったので、未だに生徒会長の名前も姿も知らない。

 

 話が盛り上がって来た所で、いきなり食堂にジャージ姿の千冬がやって来て、中にいる生徒達に向かって大声を出した。

 

「お前達! いつまで食べているつもりだ! もうすぐ時間だぞ!」

 

 これを聞き、他の生徒達は急いで目の前の食事を口に詰め込み始める。

 そんな中、話ながらもちゃんと食事を勧めていた面々は、空になった容器を重ねてから席を離れた。

 

「……どうして二年である筈の更識がここにいる?」

「聞かないでください……」

「実はだな……」

「お願いだから黙っててぇぇぇぇぇぇっ!(泣)」

 

 これまた、千冬の当然の疑問に素直に答えようとするヴェルナーの口を急いで押さえて黒歴史の流出を防いだ楯無。

 それを見て、千冬は地味にショックを受けていた。

 

(意外と仲が良さそうだな……この二人。だが、お前にヴェルナーは渡さんからな!)

 

 シスコンはそう簡単には諦めない。

 世界最強は伊達じゃなかった。

 

(というか、ソンネン達が食堂にいるって気が付かなかった! また怖いお姉ちゃん像を見せてしまった……)

 

 ショックを受けたり、燃え上がったり、落ち込んだり。

 なんとも緩急の激しい女教師だった。

 

 因みに、ソンネン達は生徒達に喝を入れた千冬を見て、ジオン軍人時代を思い出して地味にカッコいいと思っていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




生徒会訪問は、恐らくは次々回になるかと。

次回は一夏の専用機の話。

けど、ここもまた原作とは大きな違いがあるかも…?
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