インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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前回に引き続き、生徒会室での話です。

今回は、原作でもあった『とあるフラグ』が既に崩壊していることが示唆されます。

それにより、一夏に対する『とあるヒロイン』のフラグが完全消滅します。











楽しい生徒会

 生徒会室にてカスペン達と初邂逅を果たした一夏達と、久し振りの再会になった603メンバー。

 これまでずっと待っていただけあって、話す事は本当に沢山あり、生徒会室は今までで一番の賑わいを見せていた。

 

「そうだ。新入生の諸君はもう部活の方は決めたのか?」

「「「部活?」」」

「ですか?」

「そうだ。このIS学園は校則もかなり特殊でな。何故か全校生徒に部活所属の義務が課せられているんだ」

「しかも、大会の類には出場できず、あくまで『趣味の延長線上』としての部活のようなのです」

「なんだそりゃ……」

 

 なんとも意味不明な校則をカスペンから聞かされ、困惑しながらも呆れる一同。

 特に、特殊な事情で入学した一夏はかなり困った顔をしていた。

 

「お前達の気持ちも分かるよ。一年の時の私達も同じ心境だった」

「最初は驚いたわよね~」

「今となっちゃ、どうでもいいけどな」

 

 上級生にとってはもう過ぎた話なのか、なんとも達観した意見だった。

 

「部活か…どうするかな」

 

 今思えば、中学時代には部活なんて何も入っていなかったデュバル達。

 車椅子であるソンネンは仕方がないとしても、他の二人が入っていなかったのは単純に孤児院の事が忙しかったからだ。

 だが、今いるIS学園は寮生活。

 つまり、今ならばこれまで出来なかった部活動が出来るということだ。

 

「私は今度、箒と一緒に剣道部に見学に行くことになっている」

「つまり、私とデュバルはもう決定しているに等しい」

 

 なんでか胸を張ってドヤ顔を見せる箒。

 それを見て簪が少しだけ殺気を漏らしたのは内緒。

 

「ついでだ。一夏も剣道部に来るといい。箒と一緒に一から鍛え直してやる」

「それはいいな。デュバルから相当に鈍っていると聞かされているからな。この際だ。徹底的にやってやろう」

「マジかよ……。いや、変に迷うよりはそっちの方が良いだろうし…俺も剣道部ぐらいが妥当だと思ってたし……」

 

 剣道部。早くも新入部員三名確保。

 

「新しく部活を作るのはアリか?」

「出来るぞ。部員を五人以上集めてくれば設立可能だ」

「じゃあ『戦車部』なんてのは……」

「いや、流石にそれは却下だ」

「なんでだっ!?」

「IS学園に戦車なんてあるわけないだろう? 仮に設立できたとしても、予算会議で即座に却下が出るぞ。戦車一台でどれだけの金が掛かるか、分からない少佐じゃあるまい?」

「うぐ……!」

 

 真正面から完全論破されて少しだけ落ち込むソンネン。

 よくよく考えれば無理な相談だった。

 

「ここは大人しく諦めな。オレも入学した時は大佐に『大砲部』を作りたいって進言したけど、すぐにダメだって言われちまったし」

「あんたもかよ……」

「それ以前の問題として、どうして『大砲部』や『戦車部』が通用すると思った?」

「「なんとなく、イケるかな~って」」

「なんとなくって……」

 

 戦車乗りと大砲屋。

 ある意味で似た者同士な役職の二人は、性格もそっくりだった。

 

「戦車道……したかったな~…」

「あれはあくまでアニメの話だからな?」

 

 ソンネンは『ガルパン』の熱狂的なファンだった。

 劇中に出てきた戦車の模型もちゃんと持っている。

 

「んじゃ、『模型部』ってあるか?」

「それならあるぞ。部員も募集していた筈だ」

「マジか。なら其処に決めるか。後で入部届を職員室に貰いに行かないとな」

「その必要はない。虚」

「はい、会長」

 

 カスペンが命じると、虚が端の方に置いてある棚から人数分の書類を持ってきた。

 

「職員室だけでなく、この生徒会室にも入部届はあるんだ」

「流石は生徒会室……この手の物はちゃんと揃ってるんだな……」

 

 書類を受け取りながら関心する一夏。

 それで思い出す。中学の時の生徒会室にも色んな物があった事を。

 

「少尉はどうするんだ?」

「ん~……『釣り部』ってあるか?」

「無い。少尉は釣りが好きなのか?」

「釣りが好きって言うか、海とかに関わること全般が好きなんだよ。ほら、オレって漁師の孫だし」

「そうだったな」

 

 ここでは敢えて言わなかったが、元海兵であることもまた大きく起因しているのだろう。

 いつもならば、ソンネンのように自分も設立しようと言ってみるところだが、ニュータイプ的な勘でそれは無意味だと悟り、すぐに頭の中で他の妥協案を考える。

 

「水泳部は?」

「そっちならちゃんとあるわよ。一応、授業で使うプールもあるし。ヴェルナーちゃんは泳ぎが得意なの?」

「おう。ガキの頃はよく、ちょっとした崖から飛び込んだりしてたもんさ」

「み…見た目通りにワイルドな女の子なのね……」

 

 幼い頃のヴェルナーが大自然に囲まれた場所で海に飛び込む姿が容易に想像出来た楯無。

 同時に、幼女だった頃にヴェルナーを妄想して顔がにやけてしまう。

 

「他の皆はどうする?」

「別に、今すぐに入らなきゃダメって訳じゃないから。ここで無理に決める必要はないわよ?」

 

 そう言われても、いつかは必ず入らないといけないと分かっていると、今決めた方が良いんじゃないかと思ってしまうのは当然。

 だからこそ迷ってしまう。どんな部活に入ろうかと。

 

「いざとなれば、この生徒会に入るってのも一つの手だがな」

「は? なんでそこで生徒会の話が出るんスか?」

「実は、IS学園では生徒会も部活の一つとして扱われているんだ。もしも、本当に何もしたい部活が無かった時は、ここに来るといいだろう。君達ならば、誰が来ても私達は大歓迎だ」

 

 カスペンの話を聞き、ようやくワシヤは得心がいった。

 本音が初日から余裕だったのは、既に生徒会メンバーに入っていたからだと。

 

「私はテニス部に入部する予定ですわ。祖国でもよくテニスをやっていましたから」

「へぇ~…そいつは凄いじゃねぇか。暇な時にでも見学に行ってやるよ」

「ソンネンさんなら、いつでも大歓迎ですわ」

 

 同じ部屋だからなのか、一日でかなり仲良くなったソンネンとセシリア。

 とても、一週間後に試合をする者達とは思えない。

 

「簪ちゃんは?」

「私は『漫画研究会』に入ろうかと思ってる」

「あぁ~……」

 

 それには一瞬で納得。

 簪は俗に言う『オタク』なので、そういった部活に入るのは必然だった。

 

「私は生徒会に入らせて貰えませんか?」

「え? モニクさん…本当に?」

「えぇ。多分、私は他の部に入るよりは、ここの方が性に合いそうなのよね」

(元は総帥府所属だったしな……)

 

 前世での経験が故に、こういった場所の方が却って落ち着くのかもしれない。

 どのような理由であれ、彼女が頼りになる人材である事には違い無いので、カスペンからしたら断わる理由は無かった。

 

「いいだろう。私達は喜んで歓迎しよう。これからよろしく頼むぞ」

「はい!」

 

 これで、残るはオリヴァーとワシヤの二人だけ。

 昔もよくつるんでいた二人が残されるのは、なんだか皮肉である。

 

「オレっちも生徒会に入ろうかな~」

「貴女も? 本気?」

「本気も本気ッスよ。ほら、ここには本音ちゃんもいるし」

「ワッシ~…♡」

 

 なんとも安直な理由だが、それでも本音としては非常に嬉しかった。

 着実に本音の好感度を上げていくワシヤ。

 これは、冗談抜きで二人が結ばれる日も近いかもしれない。

 

「ボクは……」

「技術中尉。実はだな、君にぴったりの部活があるんだが…行ってみないか?」

「ボクにピッタリの部活?」

「その名も『技術部』。整備班に所属する生徒で構成された部活だ。貴官ならばすぐに馴染めるだろう」

「技術部……」

 

 自分でも驚くほどにしっくりくる響き。

 技術士官であった自分の為に存在するような部活ではないか。

 

「ちょっち質問。整備班って何だ?」

「IS学園は二年から操縦などを勉強する者達とは別に、機体の整備技術などを専攻する者達とで分かれる。それを『整備班』と呼んでいる。因みに、其処にいる虚も整備班で専攻している生徒の一人だ。主に私の専用機の整備を頼んでいる」

「そうだったんですか……」

「そこまで誇るような事でもありませんが……」

 

 身近に自分と同じような人間がいた。

 オリヴァーの目が急に輝き始め、キラキラとした視線を虚に送り出した。

 

「ボク……技術部に入ります。なんだか凄く気になります!」

「そう言うと思っていた。明日にでも見学に行ってみるといい。きっと気に入る筈だ」

「了解です!」

 

 とても生き生きとした表情で敬礼をしたオリヴァーの顔を見て、目が釘付けになってしまった一夏。

 やっぱり、正統派ヒロインは強い。色んな意味で。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「そう言えば、噂で聞いたぞ? 今度、ソンネン少佐とオルコット嬢とで試合をするらしいな?」

 

 これまた突然の話題変更。

 今度のカスペンは、さっき以上にワクワクウキウキしているようだった。

 その証拠に、頭のアホ毛が犬の尻尾のように激しく揺れて、その大きな目はキラキラしていた。

 

「昨日の今日で、いつの間に噂になってたのかしら……」

「学校ってのは一種の閉鎖社会だしな。少しでも噂の種が生まれれば、広がるのなんてあっという間だろうさ」

 

 なんとも実感の籠ったソンネンの言葉。

 これは何も学校だけに当て嵌まらない。

 会社や軍といった場所も十分に該当する。

 要は、集団生活をしている場では例外なく、噂話はあっという間に広がっていくものなのだ。

 

「多分、黛の奴が広げたんだろうな。あいつ、無駄に地獄耳だし」

「そうでしょうね。あの子の嫌な笑いが目に浮かぶようだわ」

 

 二人揃って大きな溜息を吐く楯無とアレク。

 どうやら、その『黛』とやらには相当に迷惑しているようだ。

 

「誰ですか? その黛とかいう人物は」

「黛薫子。二年生でアレクと楯無のクラスメイトで整備班。そして、新聞部の副部長をしている」

「お姉さんがプロの記者をしているとかで、それを目指して色々と頑張っているのですが……」

「どうにも空回りしてるっぽいのよね~。よく捏造とかもするし」

「新聞部なのに捏造って……」

 

 生徒会役員たちからの説明を聞き、頭が痛くなるモニク。

 生真面目が服を着て歩いているような彼女からすると、捏造なんてもってのほか。論外なのだろう。

 

「勿論、当日は私も見に行くからな! 二人の雄姿が今から楽しみだ!」

「「そ…そうですか……」」

 

 物凄く期待している純粋無垢なカスペンの瞳を見て、ソンネンとセシリアは二人揃ってこう思った。

『これは無様な試合は出来ないな』…と。

 

「もしかしたら、試合の日はアリーナが観客席が生徒達で埋まるかもしれないわね」

「特に新入生達は上手い具合に食いつくでしょうね。入学して一ヶ月も経過しないうちに、早くも代表候補生の試合が見れるのですから」

「今はそう思わせておけばいいさ。試合が終わってから、その場にいた生徒達が思い知る事になるだろう。咆哮と共に戦場を駆ける鋼鉄の狼の恐ろしさをな」

 

 実際、カスペンが一番楽しみにしている事はそれだった。

 足が不自由だから。車椅子だから。

 ソンネンの事をそんな先入観で見ている生徒達の考えを、真っ向から粉々に打ち砕く瞬間を。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 生徒会での話が終わり、全員が学生寮へと帰ろうとする中、簪だけが一人残っていた。

 

「それで? 私に話したい事とは何かな?」

「あの…生徒会長……ありがとうございました!」

 

 いきなり頭を下げて礼を言う簪。

 事情を知らないアレクは目をパチクリとして、逆に事情を知っている楯無と虚は嬉しそうに微笑んでいた。

 

「倉持技研の人から聞いたんです。『例の件』で開発が中止になりそうになっていた私の専用機である『打鉄弐式』に自分の機体の戦闘データや運用データを使って開発を再開させるように訴えた人がいて、それがIS学園の生徒会長だって……」

「やれやれ。そんな事を吹聴したがるのは、篝火主任とかか。全く…私は別に恩を着せる為に協力したわけではないというのにな……」

 

 呆れながらも、ちゃんと自分に向かって礼を言った簪に感心するカスペン。

 同時に確信した。自分のやった事は間違いではなかったと。

 

「私の機体も同じ『打鉄弐式』だしな。装備や仕様が違うとはいえ、基本的な部分に大した違いは無い。上手く流用出来たようでなによりだ」

「はい。あと少しで完成するって、この前、電話がありました」

「そうか。まぁ…仕事自体はちゃんとしてくれる連中だしな」

 

 人間性は二の次。重要なのは『使えるか、使えないか』。

 軍人らしい思考の末、カスペンは倉持技研を技術的な面では信用するようにしていた。

 

「けど…どうしてあんな事を……」

「善意が半分、打算が半分と言ったところかな」

「えっと……?」

 

 何が言いたいのか、いまいちよく分からなかった簪は首を傾げる。

 

「目の前で才能ある人間が大人の都合によって潰されていく様を傍観出来なかった。私もよく知っているんでね……似たような目に遭って、優れた才能や技術を無残にも潰されていった者達を……」

 

 敢えてここでは名前は出さなかった。

 今の彼女達には無縁の事だろうから。

 

「今のが『善意』の部分だ」

「じゃあ『打算』の部分は……?」

 

 少し楽な体勢になって椅子に座り直し、ジッと簪の顔を見つけた。

 美幼女に凝視されて、恥ずかしそうに視線だけを逸らしてしまった。

 

「来たるべき『決戦』に備えて、どうしても君の存在が必要だと判断したからだ」

「決戦……?」

「そう…裏で蔓延っている『亡霊共』との決戦だ」

「それって…もしかして……」

 

 簪とて『更識』の人間だ。

 『亡霊』と聞かされただけで、すぐにそれが何を指す単語なのかを理解した。

 

「楯無から聞いたよ。君には非常に優れたプログラミングスキルがあるそうじゃないか」

「それは……」

「私達は、良くも悪くも前線で戦う事しか能のない連中ばかりだ。かく言う私だって、最前線で指揮をしながら戦うので精一杯になるだろう。だからこそ、君の様な能力を持つ者は貴重なんだ。電子戦に強く、しかも日本代表候補生としての実力も兼ね備えている。正直、それを聞かされた時は絶対に君を味方につけようと思ったぐらいだ」

「私を…味方に……?」

 

 今まで、誰にも言われたことが無かった言葉。

 初めて会ったカスペンに言われた一言が、簪の胸に深く突き刺さった。

 

「勿論、他にも私の知り合いの中で電子戦に強そうな人間がいるので、彼女にも応援を頼むつもりだが、それでも必ず限界はある。人間、一人で出来る事にはどうしても限界があるからな……」

 

 軍属の人間だからこそ、強い説得力を持つ言葉。

 信頼する仲間達と協力することで、一人の力が何倍にも膨れ上がる事を身を持って知っているからこそ言える言葉だった。

 

「だから、改めて頼みたい。『更識楯無の妹』としてではなく、『日本代表候補生 更識簪』として、私達に力を貸してくれないか」

 

 真っ直ぐで真摯な瞳。

 自分の気持ちを偽りなく言われて、首を横に振るような人間ではなかった。

 

「私なんかで良ければ…喜んで協力します」

「そうか……ありがとう……!」

 

 椅子から降りて、簪の元まで歩いてきてからの、彼女の手を取ってから感謝の握手。

 自分よりも一回りも小さな手を見て、簪は胸が急に苦しくなる。

 

(この人は…こんな小さな手と身体で、色んな物を一人で背負おうとしてるんだ……)

 

 庇護欲のような、母性のような、言葉に出来ない気持ちが簪の心を満たしていく。

 守りたい。支えてあげたい。

 この小さくて強い、勇気ある生徒会長を。

 

(あぁ…そっか。だから、お姉ちゃん達はこの人の下で頑張ってるんだ……)

 

 見た目の可愛さだけでなく、その心でも人々を魅了していく。

 姉たちの気持ちが少しだけ理解出来たような気がした簪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




簪、実は密かに一夏へのフラグが折れていた件。

その代り、カスペンやモニクに対する好感度が爆上がりしていきます。


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