インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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今回はとあるキャラの初登場であると同時に、繋ぎと言う名の日常回。

個人的には、そのテンションが好きなので気に入っているキャラです。

性格がハッキリとしているので、非常に動かしやすいですしね。







その出会いは必然だった?

 ローランツィーネ・ローランディフィルネィは、一年三組に所属しているオランダの代表候補生である。

 典型的なレズビアンで、名目上は『代表候補生としての研鑽をするためにIS学園に来た』とされているが、本人はそれとは全く別の目的がある。

 その目的と言うのが、『IS学園にて記念すべき100人目の恋人を見つける』事なのだ。

 あくまで本人申告なので確たる証拠はないのだが、彼女は祖国に99人の恋人(全員が女性)がいるらしく、色んな意味で欲深い彼女はそれだけでは飽き足らず、政府のお偉方に口八丁手八丁で見事に言いくるめ、IS学園にやってきた経緯があり、学園内にて100人目の恋人をゲットすべく入学初日から早くも行動を開始していた。

 

 そんな彼女は今、校舎内の廊下を恍惚とした顔で優雅に歩いていた。

 

「ふぅ……流石は天下に名高いIS学園だ。どこを見ても美少女や美女ばかり。本当に目移りしてしまうよ。特に、入学式で見た生徒会長……」

 

 目を瞑り、頭の中で当時の光景を思い出す。

 彼女は、こと美少女関係になると途端に神憑り的な記憶力を発揮する。

 

「あぁ……今思い出しても、本当に可愛らしかった……♡ あの小さな体で一生懸命に話をしていた姿……是非とも、彼女にこそ私の100人目の恋人になって欲しい……」

 

 他の女の子達に声を掛け捲ってはいるが、彼女の本命は生徒会長であるカスペンのようだ。

 傍見ると犯罪臭がハンパないことを本人は自覚しているのだろうか。

 

「しかし、彼女は最上級生である三年であり、同時に生徒会長でもある。となると、手っ取り早くお近づきになるには生徒会に入る方が賢明か……む?」

 

 腕組みをしながら歩き、カスペンと親密になる方法を考えていると、いきなり彼女の目の前に(本人視点で)とてつもない光景が映り込んできた。

 

「はぁ……あいつら、まだかな~……」

 

 それは、黒い髪の着物風に改造をした制服を着ている車椅子の少女。

 それだけで分かるとは思うが、ロランが見たのは廊下の窓際で珍しく一人で佇んでいるソンネンだった。

 普段は他の仲間達や幼馴染達と一緒に行動をしている彼女は一人でいるのはかなりのレアな光景だった。

 

「か…彼女は……」

 

 ソンネンの姿に、ロランは一瞬で目を奪われた。

 本人は全く自覚なしだが、ソンネンはそこらのアイドルと比較しても遜色が全く無いレベルの美少女だ。

 それこそ、中学時代に密かに他の二人と一緒にファンクラブが作られる程に。

 典型的なレズビアンであるロランが、そんなソンネンに出逢えば、当然のようにとる行動は決まっていた。

 

「そこの見目麗しいお嬢さん……」

「ん? それって…まさかオレの事か?」

「おぉ……なんて美しい声をしているんだ……。一瞬、妖精の囁きかと錯覚してしまったよ」

「なんじゃそりゃ」

 

 いつもは強気なソンネンも、芝居がかった言い回しをするロランには若干引き気味。

 それもその筈。ロランはよく祖国では歌劇をしていて、男装で男役を演じていたのだ。

 

「もしよろしければ、美しい君の名前を教えてくれないだろうか?」

「人に名前を聞きたいんなら、まずは自分から名乗るべきなんじゃないのか?」

「おっと。確かに君の言う通りだ。君の美しさに翻弄された余り、礼を失していたようだ」

 

 普通の少女達が見れば一発で惚れそうな程の笑顔を浮かべながら、ロランはその場に跪き、ソンネンの手を優しく自分の両手で包み込みながら名乗った。

 

「私は『ローランツィーネ・ローランディフィルネィ』。君と同じ一年生で、三組に所属している。そして、オランダの代表候補生もしているよ」

「へぇ~…お前も代表候補生なのか」

「その言い方だと、君には代表候補生の知り合いでもいるのかな?」

「二人程な」

「それは奇遇だな。ふふふ……」

 

 気持ち悪い。

 今までの人生の中で、ここまで露骨に自分がレズである事をアピールしてきた人間はいない為、全く耐性が出来ていなかったソンネンは本気でドン引きしていた。

 足が不自由でなく車椅子じゃなかったら、すぐにでもこの場から走って逃げ出したくなる程に。

 

「それで、今度は君の名前を教えてくれないかな?」

「しゃーねーなぁ……」

 

 渋い顔をしながら頭を掻きつつも、名乗られた以上は名乗り返すのが礼儀と思い、自ら名乗る事に。

 

「デメジエール・ソンネンだ。ソンネンでいい。クラスは一組」

「デメジエール・ソンネン……なんて力強く綺麗な名前なんだ……」

「そーかよ」

 

 お願いだから、本気で誰か助けて。

 心の中でそう願ったのが神に通じたのか、やっとソンネンの待ち人たちがやって来てくれた。

 

「すまない。思った以上に購買部が混んでいてな。買うのに苦労してしまった」

「けど、ちゃんと目的の品はゲットしてきたぜ」

「オリヴァーはどうした?」

「彼女なら、飲み物を買いに行っている。すぐに戻って来る筈だ」

 

 やって来たのは、その手に惣菜パンや菓子パンの入ったビニール袋を下げているデュバルとヴェルナーの二人。

 だが、すぐに彼女達は場の異常に気が付いた。

 

「ところで……お前の前に跪いている彼女は一体誰なんだ?」

「見たことが無い顔だな。ソンネンの知り合いか?」

「ンな訳ねーだろ。なんかいきなり話しかけてきたんだよ。こっちの方が混乱してるッつーの」

 

 困惑しながらも、これでどうにかなると安心しながら戻ってきた二人と話していると、ロランの表情が急に固まった。

 

「う……う……」

「「「う?」」」

「美しい……」

「「「は?」」」

 

 これまた突然の『美しい』発言。

 その言葉が向けられているのは、デュバルとヴェルナーの二人だった。

 

「ソ…ソンネン……この美少女達も君の知り合いなのかい…?」

「知り合いッつーか、仲間…ダチ公だよ」

「ダチ公…つまり、君の友ということだね?」

「まぁな」

 

 二人を見ながら静かに立ち上がり、今度はデュバルの両手を掴んでグイっと体を引き寄せてきた。

 

「私はローランツィーネ・ローランディフィルネィ。白百合の如く美しいお嬢さん……君の名前を聞かせてほしい……」

「ジャ…ジャン・リュック・デュバル……白百合って何だ……」

「あぁ……!」

 

 またも芝居がかった口調で右手を額に当てて、演劇のセリフのような言葉を言い出す。

 もうこの時点で、デュバルはさっきまでのソンネンと同様にドン引きしていた。

 

「なんて可憐な名前なんだ…! デュバル……君の美しさの前では、世界三大美女たちでさえも霞んでしまうだろう……」

「本気で何を言ってるんだ……」

 

 真面目一辺倒なデュバルには、彼女の様なキャラに対するマニュアルは存在していない。

 さっきから何度も目をぱちくりとさせて、誰かがこの状況を打破してくれることを祈っている。

 

「お前、なんか面白い奴だな」

「そういう君は、まるで南国に咲き誇る向日葵の様な魅力を感じるね。さんさんと降り注ぐ太陽に向かって聳え立つ、今までに出逢った事が無い健康的な肉体美……君もまた美しい……」

「初めて言われたな。そんな台詞」

「大丈夫。これから私が毎日のように言ってあげるよ」

 

 デュバルが解放されたかと思ったら、お次はヴェルナーにターゲットが移る。

 だが、彼女の場合は他の二人とは違って、そこまで動揺している訳ではなく、いつも通りにニコニコしていた。

 

「ヴェルナー・ホルバインだ。えっと……」

「私の事は愛を込めて『ロラン』と呼んでくれたまえ。恋人達からも、そう呼ばれているからね」

「「恋人達……」」

 

 達ってなんだ。達って。

 その時点で十分に怪しいのだが、下手にその事にツッコめば、また碌な頃にならないと判断し、ここは敢えて何も言わないで黙っていた…が、そんな事が天然キャラであるヴェルナーに通用する筈も無く……。

 

「なんで複数形なんだ?」

((なんで言っちゃうんだよっ!?))

 

 願いは通じなかった。

 これがニュータイプなのか。(違う)

 

「ふふ……聞かれると思っていたよ。私には祖国に99人の恋人たちがいてね。記念すべき100人目の恋人を探している最中なのさ」

「マジか。なんか凄いな」

((単なるバカじゃないのか……?))

 

 そう思ってしまうのも無理はないが、忘れてはならない。

 ここにいる三人はいずれもロランに狙われている事を。

 

「それにしても……ははは……」

「いきなりどうした?」

「いやね……運命の女神というのは、どうしてこうも気紛れなのかと思ってね」

「「「どーゆー意味だ」」」

「まさか、100人目にしたいと思う女の子が一気に四人も現れるとは……なんてことなんだ! 私は……選べない! 君達の中から一人だけを選ぶだなんて! 仮に私が誰かを一人を選んだとしたら、他の子達が必ず悲しんでしまう……! 私は君達の涙は見たくない……」

((心配しなくても、誰も泣かないよ))

 

 そうツッコみたいが、なんか意味なさそうなので心の中だけに留めておいた。

 

「四人って…他にもいるのか?」

「あぁ。あの可愛らしい生徒会長ともお近づきになりたいと思っていてね」

((よりにもよって大佐かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?))

 

 まさかのカスペン狙いだと知り、別の意味でロランの事を尊敬しそうになった。

 幾らなんでも、彼女の事を本気で恋人にしたいと思うのは怖いもの知らずにも程がある。

 仲間や上官としては間違いなく最高の人間だが、一人の女性として見るのはどうなのだろうか。

 前世からカスペンの事をよく知っている二人には、真っ向からそんな事を言われた彼女がどんな反応をするか全く予測が出来なかった。

 

「ははは! お前ってば面白いな!」

((そんな一言で済ますな!))

 

 変な言葉でナンパされた身からすれば溜まったもんじゃない。

 少なくとも、宝塚に対する変な苦手意識が生まれそうなレベルで鳥肌が立った。

 

 とっととここから離れたい。

 何かいい切っ掛けは無いものか……そう考えて色々と模索していると、飲み物を買いに行っていた彼女が戻ってきた。

 

「遅くなってすみません! やっぱり、この時間帯は自販機でも込みますね~」

 

 自分の物なのか、エコバッグのような物に人数分のジュースを入れてやって来たのは、少し息が荒くなっているオリヴァー。

 流石に廊下を走るわけにはいかないので、早歩きで来たのかもしれない。

 

 勿論、突如として現れた四人目の美少女に何の反応もしないロランじゃない訳で。

 

「な…なんという事だ……! またもや最上級の美少女が出てきた…だと…!」

「はい?」

「窓から差し込む陽光に照らされた君は、まるで神に祈りを捧げる神子のように美しい……」

「はぁ……それはどうも……」

 

 自分が褒められている自覚が全く無いオリヴァーは、取り敢えず適当に返事をしておくことに。

 今さっき来たばかりなので、状況が把握出来ないのも無理はない。

 

「あの…この人は?」

「三組の生徒で、オランダの代表候補生なんだと」

「オランダの代表候補生……」

「ローランツィーネ・ローランディフィルネィ。気軽に『ロラン』とでも呼んでくれ。許されるならば、君の名前も教えてくれないかな?」

「えっと……オリヴァー・マイ…です」

「オリヴァー……あぁ! オリヴァー! 君に相応しい可憐な名前だ!」

「そうなんですか?」

「こっちに聞くなって」

 

 一度に四人もの美少女に出会ったロランの暴走っぷりは止まる様子も無く、さっきからずっと廊下のど真ん中でクルクルとポーズを変えながら独り言を繰り返していた。

 

「こんな…こんな事があっていいのかッ!? ソンネンにデュバルにヴェルナーにオリヴァー……一体どうすればいいんだっ!? 私は君達四人を平等に愛したい! だが、しかし………いや、待てよ? なんで私は100人目にばかり拘っていたんだ? 冷静になれロラン……別に彼女達の中から一人を絶対に選ばないといけないなんて決まりは何処にも無いじゃないか! それは、私が勝手に決めたルールに過ぎない! そうだ! 何人目だろうと関係ない! そこに確かな愛さえあれば何の問題も無いのだ!」

 

 完全に自分の世界に入っているロランを余所に、ソンネンは他の三人に向かって軍人時代に学んだハンドサインで『この隙にここから離れよう』と皆に提案し、全員が大きく頷いた。

 一人芝居をしているロランを置いて、ソンネン達は一組の教室へと戻っていった。

 

「私は決めたぞ! 必ず君達四人を私の恋人にしてみせると! ……あれ?」

 

 ロランが振り向くと、そこにはもう誰もおらず、彼女一人だけがポツンと残されていた。

 

「フッ……。まるで、あの出会いが幻であったかのように消えてしまった。だが、この程度で私の決意は挫けない! 君達への愛が私に無限の力を与えてくれるのだから!」

 

 こうして、三人娘とオリヴァーはなんとも厄介な少女に目を付けられてしまったのだった。

 この事を知った時、箒やモニクはなんて反応をするのやら。

 少なくとも、今以上に厄介な事になるのは確実だろう。

 

 

 

 

 

 

 




はい。色んな意味でキャラが濃いロランの登場です。

このシーンだけは初期のプロットの時点で存在していました。

ロランと彼女達を絡めたら面白そうな予感がしたので。





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