インフィニット・ストラトス IS IGLOO   作:とんこつラーメン

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久し振りに番外編です。

少し前にリクエストがあったのですが、まだプロットが完成していないので、まずは前々からずっと温めていた話を投下します。

今回も、個人的に大好きな人達のオンパレードです。

ぶっちゃけ、一年戦争に出てくるキャラでは1・2を争うぐらいに好きかもしれません。







番外編⑥ コロニーの落ちた地で…

 学年別トーナメント一年生部の一回戦。

 

 組み合わせは噂の男性IS操縦者である『織斑一夏』と、フランスから来たもう一人の男子という名目で現在は在籍しているシャルル・デュノアと、ドイツから来た代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒとランダムで決められたパートナーである篠ノ之箒の対決。

 

 箒が早々に脱落し、一夏とシャルルは自分たちなりに考えた作戦で格上であるラウラを徐々に追い詰め、シャルルの放った六十九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』の一撃にて勝敗は決した…かに見えたが、次の瞬間に誰もが驚くような事象が起こった。

 

 突如として、ラウラのISが泥のように溶けて、そのまま彼女を吸収した後に別の存在へと変態したのだ。

 それを見た時、一夏は我が目を疑った。

 

「ち…千冬…姉…?」

 

 その姿は、まるで暮桜を纏った一夏の姉である『織斑千冬』に酷似していた。

 どうして、そんな姿になったのか、なんでこんな事になっているのか。

 誰にも何も分からなかったが、一つだけはっきりと言えることがあった。

 あれには間違いなく千冬のデータが使用されているという事。

 それを察した時、一夏の怒りが一瞬で頂点に至った。

 

「あいつ!!」

 

 咄嗟に斬り掛かろうとする一夏だったが、相手の動きは想像以上に早く、彼の剣は簡単に避けられ、そのまま返す刃でカウンターを食らいそうになった…が、そこに一筋の閃光が煌めき、変化したISの腕を貫通した。

 

「な…なんだっ!?」

「あの人はっ!?」

 

 攻撃があった方に振り向くと、そこには打鉄を強化改造した『打鉄弐式・近接型』に搭乗している右目に眼帯を付けた金髪の少女がビームライフルを構えて立っていた。

 

「ドイツの国家代表にして、『荒野の迅雷』の異名を持つIS学園三年生の『ヴィッシュ・ドナヒュー』先輩!!」

「し…知ってるのか?」

「勿論だよ!」

 

 緊急事態にも拘らず、シャルルは興奮した様子で語り出した。

 

「冷静沈着な判断力に超一流の指揮能力も兼ね備えている人で、一撃離脱戦法を最も得意としている凄い選手なんだよ! 噂では、並の国家代表の三倍の戦績を誇っているとかなんとか……」

「そ…そうか……」

 

 シャルルの様子に怒気が抜かれた一夏は、自分達の目の前に入りてきたヴィッシュに目を奪われた。

 

「許せんな……」

「え?」

「何も知らないラウラを実験台にした挙句、『VTシステム』なんて代物で更なる高みを目指そうとするとは…今この瞬間も世界中で切磋琢磨し続けている全てのIS操縦者に対する、これ以上ない冒涜だ!!!」

 

 ヴィッシュもまた一夏と同様に怒っていた。

 だが、その矛先が違った。

 一夏は姉のデータを使われたことに怒っていたが、ヴィッシュはVTシステムを生み出したこと自体に憤怒していた。

 

「アレを生み出した連中は気が付いていないのだろうな。あんな歪んだシステムを使ってしまった時点で、自分達の限界を教えてしまっている事を。自分自身に敗北しているという事を!」

 

 ライフルを持っていない左手にビームナギナタを展開し、後ろにいる一夏とシャルルの方を振り向いた。

 

「お前達、ここはオレ()がなんとかする。だから、一刻も早く避難しろ」

「で…でも、俺は!!」

「オレに二度も同じ事を言わせる気か?」

「う……」

 

 ヴィッシュの言葉に噛み付く一夏であったが、彼女から発せられる威圧感に思わず口を紡ぐ。

 

「アレは並の奴に倒せる相手じゃないし、お前達は先程の試合で機体共々疲弊しているだろうが。ハッキリ言って足手纏いだ。まぁ、仮に万全の体勢であっても意見は変わらないが…な!」

 

 話している間に斬り掛かってきたISの剣を易々と受け止めるヴィッシュ。

 自分が全く反応できなかった攻撃に着いていけている時点で、彼女と己の差が非常に大きい事が分かる。

 

「ま…待ってください。さっき…『達』って言いましたよね?」

「確かに言った。オレは一人ではない。最強の宿敵であり、味方でもある連中が背中を守ってくれるからな」

「それって……!」

 

 ヴィッシュの言葉が何を意味するのか。

 それがすぐに理解出来たシャルルは、先程以上に激しく心臓を鼓動させる。

 まさか、まさか『彼女達』もいるのかと。

 

「ふん!」

 

 受け止めていた剣を力づくで弾き飛ばし、相手がよろめいた隙に蹴りをかまして距離を取る。

 その瞬間、ヴィッシュがやって来た方向から再びビームの一撃が黒いISの右肩に直撃した。

 

「全く…一人で突っ走りすぎだッつーの!」

「そう言うな。彼…じゃなくて、彼女の実力はお前だってよく知っているだろう?」

「そりゃ、そうだけどさ!」

「言い争っている場合ではないぞ。今は一刻を争うんだ」

「「はい!」」

 

 ヴィッシュの傍に降りてきたのは、真っ白に染められている『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』を纏った三人の少女。

 一人は金髪のセミロングで、一人は黒髪のショートヘア、もう一人は茶髪のロングヘアーの少女だった。

 

「オ…オーストラリア最強のISチーム『ホワイト・ディンゴ』っ!? IS学園に在籍しているとは聞いてたけど、まさかこの目で見られるだなんて!?」

「えっと…この人達も凄い人達なのか?」

「凄いなんてもんじゃないよ! ヴィッシュ先輩の宿命のライバルにして一番の親友でもある、オーストラリア代表にしてホワイト・ディンゴのリーダー『マスター・(ピース)・レイヤー』先輩に、チームメイトにして代表候補生でもある『レオン・リーフェイ』先輩と『マクシミリアン・バーガー』先輩だよ!」

「お…おう……そっか……」

 

 完全に説明役になっているシャルルに若干引きながらも、一夏はレイヤーたちを見た。

 その立ち姿を見ただけで、素人である一夏にもハッキリと理解出来た。

 この人達は只者じゃないと。自分とは別次元にいる人達だと。

 

「白い狼の専用エンブレムが描かれたリヴァイヴのホワイト・ディンゴ専用カスタム機……あの三人の為に採算度外視の魔改造が施されてるって聞いてるけど……」

「ま…魔改造…?」

 

 見た目は白く塗られただけのリヴァイヴ・カスタム。

 シャルルが纏っている機体と差は無いように思えた。

 

「君達、ヴィッシュの言う通り、今はここから離れるんだ。ファング2!」

「お待たせしました。篠ノ之箒を回収してきました」

「箒!」

「篠ノ之さん!」

 

 レオンに抱えられるようにして、打鉄を纏った箒が戻ってきた。

 本人は凄く恥ずかしそうにしていたが、先輩が体を張って自分を運んでくれた事に感謝をしているので、頑張って羞恥心を抑え込もうとした。

 

「あ…ありがとうございます……」

「気にするな。先輩として当然の事をしたまでさ」

 

 箒を降ろした後、レオンもヴィッシュの援護をしに前へと向かって行った。

 

「織斑一夏くん」

「は…はい」

「君は、君が今出来る一番の『ベスト』を尽くすんだ」

「俺が出来るベスト…?」

「そうだ。怒りに任せて剣を振るう事が君のすべきことではない事は分かっているのだろう?」

「それは……」

「それとも、君は彼女達の命よりも自分の感情を優先するような自分勝手男なのかな?」

「そんなことはねぇ!!」

「だったら……自分のやるべき事は分かるな?」

「…………はい」

 

 悔しいが、レイヤーの言っている事は全て正しかった。

 ここで怒り狂って剣を振るう事は簡単だ。

 けど、そうなった時に一体誰が箒とシャルルを守るというのだ?

 頼りになる先輩達が『二人を守れ』を言ってくれたのだ。

 自分みたいな素人に銃後の守りを任せてくれたのだ。

 ここでその期待に応えなければ、それこそ本当の自分勝手だ。

 

「…アイツの事…お願いします」

「任せてくれ。我々は我々のできる最高のベストを尽くしてみせる」

「はい!」

 

 力強く頷くと、一夏とシャルルは左右から箒を抱えるようにしてピットへと戻っていった。

 

「これでよし…と。アニタ!」

『呼びましたか? 隊長』

「そちらからラウラ・ボーデヴィッヒのバイタルと機体の状況はモニター出来ているか?」

『バッチリです!』

「よし! では、情報を逐一、我々の機体に送信してくれ! 頼んだぞ!」

『了解です!』

 

 ホワイト・ディンゴの専属オペレーターである『アニタ・ジュリアン』との通信の後に、レイヤーは盾を構えつつビームサーベルを展開した。

 

「相手はブリュンヒルデの劣化コピー…か。確かに強敵だが、我々ならばやってやれない相手ではない!」

 

 救出対象と打倒すべき相手を見据え、レイヤーは一気にブーストを掛けて突撃する!

 

「隊長!!」

「援護します!!」

 

 マイクのロングレンジライフルによる正確無比な射撃と、レオンの持つミサイルランチャーを受けて、黒いISは大きく怯んだ。

 両腕を激しく損傷しはしたが、断面が気味悪く蠢いて再生しようとする。

 

「ちょ…冗談だろッ!?」

「まるでSF映画に出てくる化物だな…!」

 

 思わず二人が顔を顰めるのも無理はないが、ビームの剣を握りしめたレイヤーとヴィッシュは微塵も驚かない。

 二人は取り込まれたラウラの位置と、この現象の根幹であるVTシステムがある場所を割り出していた。

 

『隊長! ヴィッシュ中尉! ボーデヴィッヒさんのバイタルが危険域に!』

「ちっ…! やるぞ! レイヤー中尉!」

「あぁ! これで決める!!」

 

 両腕が完全に再生しきる前に、左右から挟み込むように接近し、ジャンプした後に上から斬り下ろす!

 

「偽りの戦乙女よ! 命運尽きたな! 滅び去れ!!」

「覚悟ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 着地したと同時に交差するように全力で斬り裂く!!

 

 そのダメージが決定打となったのか、腹部から僅かにラウラの姿が見えた。

 彼女は裸の状態で蹲るようにして気を失っていた。

 

「ヴィッシュ!!」

「任せておけ!! ラウラ!! 今、助けてやるぞ!!」

 

 ラウラの姿が見えなくなる前に急いで彼女の腕を掴み、そのまま体を傷つけないようにしながら慎重に引っ張り出す。

 

「よし…救出成功だ!」

「ならば後は!」

 

 ヴィッシュは急いで離脱し、レイヤーもまた同時に離れる。

 二人は武装をビームライフルに持ち替えた後、先程までラウラがいた場所から少し上…胸部付近に狙いを定めた。

 

「「これで終わりだ!!」」

 

 引き金が引かれ、二人のビームが憑代を失って人型を保てなくなった黒いISを貫いた。

 その一撃はVTシステムのコアを撃ち抜き、風船のように大きく膨れ上がったと思った瞬間、破裂するように爆発、四散した。

 

「任務完了だ」

「最初はどうなるかと思いましたが、大した被害も無いようでなによりです」

「よぉし! やったぜ!!」

「フッ……それでこそだ。ホワイト・ディンゴ。最強の宿敵は、同時に最強の味方でもあるという事だな」

 

 爆発した場所には大きく破損しているラウラの専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』が転がっていた。

 

「損傷は激しいが、奇跡的にコアに傷はついていないようだな。あれならば予備パーツに取り換える事で応急処置ぐらいは出来るだろう」

「それはなによりだ。アニタ、彼女のバイタルはどうなっている?」

『ヴィッシュ中尉に救出された瞬間に安定しました。今は気を失っているだけです。それよりも! 女の子をいつまでも裸でいさせちゃダメですよ! 急いでタオルを持っていくから、そこで待っていてください!』

「りょ…了解だ」

 

 アニタの実に当たり前の言葉に気圧された四人。

 ホワイト・ディンゴで最強なのはアニタなのかもしれない。

 

 こうして、学年別トーナメントで発生したVTシステムを巡る事件は収束した。

 この一件でホワイト・ディンゴと荒野の迅雷の名は今まで以上に学園内で英雄視されていくことになるのだが、それはまた別の話。

 

 その後、ラウラは憑き物が無くなったかのように素直な性格となり、救出された恩を感じてか、ヴィッシュとホワイト・ディンゴの面々に非常に懐いていったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久方振りの番外編は『マスター・P・レイヤー』と『ヴィッシュ・ドナヒュー』のW主人公でした。

今回の彼女達の容姿にはこれといったモデルは有りません。
お好きなように想像してください。

ヴィッシュとホワイト・ディンゴの皆は揃って三年生で、ヴィッシュとレイヤーは国家代表、レオンとマイクは代表候補生となっています。
オペレーターのアニタは候補生ではありませんが、専属の凄腕オペレーターという事で、別の意味で優遇はされています。

ヴィッシュの機体は、本編でもカスペンが専用機としている『打鉄弐式』の近接戦特化型で、高出力のビーム・ナギナタでの近接戦を得意としています。

ホワイト・ディンゴ隊の専用機は、シャルロットの機体と同型の『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』なのですが、機体色は真っ白で、脚部装甲にはディンゴ隊のエンブレムが刻まれています。
同じリヴァイヴでも、三人の為にかなりの魔改造が施されていて、性能だけで言えば紅椿に匹敵します。

レイヤーの機体は万能型で、レオンは近接戦仕様、マイクは射撃戦に特化した装備と性能を持っています。
機体の性能と三人の実力には、千冬や束すら舌を巻くレベル。
ヴィッシュの実力にも本気で感嘆していて、束は数少ない例外として認めています。

因みに、レオンは新聞部に、マイクは軽音部に所属しています。
そして、ヴィッシュとレイヤーは一緒に天体観測部に所属しているとか。

最後に、ヴィッシュをドイツ代表にしたのは、単純に『眼帯』繋がりからです。


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