インフィニット・ストラトス IS IGLOO 作:とんこつラーメン
そう、前回の予告通り、デュバルの愛機を原作キャラ達にお披露目するのです。
読者さん達にはもうお披露目してますしね。
放課後になり、再び第三アリーナへとやってきた面々。
本来ならば、来る予定だったのは当事者である一夏と、彼の付添であるデュバルだけだったのだが、なんでかいつもの面々が揃っていた。
「なんで箒達も一緒なんだよ……」
「お前がデュバルに不埒な真似をしないか見張る為だ」
「右に同じよ。デュバル少佐には私だって凄くお世話になってるんだから」
「私は単純に、代表候補生として織斑さんのISに興味があるからですわ」
一夏、未だに女子達からの信用獲得ならず。
「まぁ、オレ達もオルコットさんと同じ理由かな~」
「あぁ。言葉だけじゃ何にも分らないからな」
「ヴェルナーとワシヤはそうだろうと思ってたよ。で、会長と副会長、それからアレク先輩はどうして?」
「生徒会として、校内にある専用機の事は知っておく必要があるからな。つまりは仕事だ」
「そう言う事。私や会長みたいな専用機持ちは、機体のデータなんかを学園に対して登録申請をする必要があるのよ」
「知らなかった……」
今までISに縁が無い人生だったのだから、知らないのは当然の事だ。
逆に、自分の幼馴染達がいつの間にか登録申請なんてものをしていた事が驚きだった。
「そういや、ソンネンとオリヴァー、布仏さんや更識さんがいないな。どこに行ったんだ?」
「あいつ等なら、今頃は格納庫にてヒルドルブの修復作業を行っている頃だろう」
「ちふ……織斑先生」
ギリギリセーフ。
なんとか途中で軌道修正できたので出席簿は回避できた。
因みに、ちゃんと真耶も一緒に来ている。
「主に修復をしているのはマイだが、更識妹と布仏はアイツの手伝いをする為に一緒に向かった」
「ソンネンさんは、ヒルドルブの操縦者として修復作業を傍で見ているそうです」
「成る程……」
今日の朝から急激にソンネンと猛アタックし始めたセシリアが何も言わないのはその為か。
想い人だからこそ、彼女の意志を最大限に尊重もするのだろう。
「お前の専用機に関してだが、あと少しで到着するとの事だ。まだ時間はあるから、その間に予め渡しておいたISスーツに着替えてこい」
「あ~…あれな。分かったよ」
千冬に言われるがまま、一夏は自分のISスーツが入っている袋を持って更衣室へと歩いて行った。
「それとデュバル」
「何でしょうか?」
「念の為にお前も準備をしておいてくれないか? 一応、各種設定の後に軽く試運転もさせるつもりなんだが、お前も知っている通り、一夏は超ド素人だ。何が起きるか分からないからな。それに備えて……」
「私も一緒に飛行をする…というわけですね。了解です」
デュバルと千冬の会話を聞いた箒、セシリア、楯無、真耶の4人は揃って共通のことを思った。
もしかしたら、デュバルの専用機も一緒に見られるのか、と。
幼馴染として、代表候補生として、暗部の人間として、副担任として。
どうしても知っておきたかった。
あのソンネンが全幅の信頼を置くデュバルがどんな機体を持っているのか。
そして、デュバルの実力の一端だけでも見られれば嬉しかった。
「ISスーツ自体は制服の下に着ているから問題はありません。今からでも着替えましょうか?」
「い…いや、あのバカが戻ってきてからでいいから更衣室で着替えてこい」
「はぁ…分かりました」
(正直、物凄く見たくはあったが、そうなると自分の理性を抑え切れる自信が無いからな……精神の修行が足りないな……)
欲情を抑えるための訓練とは、これいかに。
だが、千冬と同じような考えを持つ人間がもう一人いた。
(うぐぐ……千冬さん…余計な事を…! だが、もしもここでデュバルの生着替えなんて見せられたら、部屋に戻った瞬間に私は野獣になるかもしれない…。やはり、デュバルとは健全な付き合いをだな……)
こんな事を考えている二人だが、ここで一番重要な事を失念していた。
それは、束もまたこの光景を見ている可能性が高いという事。
デュバルの着替えの瞬間なんて見たら、彼女もまた同じように暴走して部屋に突撃してくるかもしれない。
(箒さん…貴女のお気持ち…手に取るように分かりますわ。私も、今朝のデメジエールさんのお着替えをお手伝いする時に、どれだけ必死に理性を抑え込んだか……)
そんでもって、声には出さないが意外な共感者がいる事を箒はまだ知らない。
セシリア・オルコット。
これからは毎日が自分の本能との戦いだった。
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一夏がISスーツに着替え、それを入れ替わるようにしてデュバルもまたISスーツへと着替えてきた。
一夏の着ている男性用のスーツは色自体は一般的な物と同じ紺色だが、形状が全く違っていた。
下はスッパツのようになっていて、上半身の方も胸部分だけを覆うようなデザインになっている。
一方のデュバルのISスーツは、デザイン自体は他の生徒達も持っているISスーツと全く同じだが、その色が全く違っていた。
嘗て、自分が所属していたジオン公国軍のイメージカラーとも言うべきダークグリーンに染まっていたのだ。
かなり引き締まった体で、出ている所は出ていて、引っ込んでいる所は引っ込んでいる。
今はまだ箒やセシリアには敵わないが、あと10年もすれば大きく変貌すると思われる可能性は秘めていた。
「サイズはピッタリのようだな」
「お…おぅ……」
返事をしながらも、一夏の視線は隣にいるデュバルに向けられる。
彼女は腕組みをしながら立っていて、そのスタイルがより強調されていた。
「ん? こっちを見てどうした?」
「い…いや…なんでもない……」
男として恥ずべきことだと分かっていても、本能にはそう簡単には逆らえない。
実際、千冬と箒はさっきからずっとデュバルの体を見ながら必死に『愛』が溢れるのを抑え込んでいた。
(こ…これは……!)
(きょ…強烈だ…!)
もしも、この場に箒と千冬とデュバルの三人しかいなかったら、即座に『案件』になってしまっていただろう。
人間、頑張れば意外となんとかなるものだ。
そこに、いつの間にか姿が見えなくなっていた真耶が戻ってきた。
「織斑く~ん! 織斑先生~! 例の機体がやってきましたよ~!」
「やっとか」
「お…俺の専用機……」
唾を飲み込みながら真耶の後ろに注目すると、大きな総鉄製の扉が開き、そこからハンガーに固定されたISが自動で運び込まれてきた。
それは一夏達の数メートル前で停止し、まるで自分の主を待っているかのように沈黙を保っている。
「そうですよ。これこそが織斑君だけの専用機、その名も『
「びゃく…しき……」
初めて見るのに、不思議と何故か懐かしい。
前にもISには触れたが、その時とはまた違った雰囲気を漂わせていた。
「ふむ…機体形状にそこまで目立った特徴は見当たらないが……」
「まだ初期状態ですから。真の姿になるには『
「オルコットの言う通りだ。織斑、まずは白式に搭乗しろ。その後に各種設定を行う」
「わ…分かったよ」
恐る恐る白式の装甲に触れる。
すると、機体の装甲が観音開きになって、一夏を迎え入れるような形になった。
「一夏。ISに乗る時は座るような感覚になればいい」
「こ…こうか?」
「そうだ。ちゃんと体が入りさえすれば、後は自動で装甲が閉じる仕組みになっている」
デュバルの丁寧な指導により、難なく白式の操縦席に乗り込めた一夏。
今までよりも頭身が高くなったことで、何とも言えない優越感に満たされる。
「よし。後はこちらで各種の設定を行う。お前はそのままじっとしていろ」
「そのままって…どれぐらい?」
「25~30分ぐらいだ」
「思ったよりも長いんだな……」
「完全な初期設定だからな。それぐらいかかって当然だ」
そうこう言っている間に、真耶がハンガーに設置されているコンソールを使って白式の設定をし始める。
「山田先生。よろしければ私も手伝いましょうか?」
「デュバルさんが? それは凄く助かりますけど……」
「御心配なく。これでも勉強はしていますから」
真耶が思わず千冬に目配せすると、彼女は迷う事無く頷いた。
「じゃあ…お願いできますか?」
「任せてください」
真耶の隣に並んで、素早くコンソールを操作する。
その目はひっきりなしに動き、指先は早過ぎて全く見えない。
「なんと……」
「デュバルさんに、このような才能がお有りになるなんて……」
箒とセシリアは驚きを隠せないが、そんな二人を見て密かにモニカはほくそ笑んでいた。
(この程度、デュバル少佐には朝飯前よ。なんたって、この人はヅダの開発に基礎段階から携わっていた程の人なんだから)
操縦者としてでなく、プログラマーとしても一流の実力を兼ね備えていたデュバル。
天は見事に彼女に対して非常に大きな『二物』を与えていた。
「一夏。今の調子なら半分の時間で済むかもしれないぞ」
「マジかッ!? それでも15分は掛かるんだよな……。普通に暇だぞ…」
「なら、オレたちが話し相手になってやるよ。そうだな……中学の時に一夏が廊下のど真ん中でデュバルの事を押し倒した話でも……」
「「「なに……!?」」」
「ちょ…ちょい待ちヴェルナー! どうして、よりにもよってその話をするっ!?」
「いや…だって、普通に面白そうだなって思って」
「俺にとっては苦い過去なんですけどッ!?」
箒と千冬とモニクに殺意の籠った目で睨まれながら、一夏は身動きしたくても出来ない自分の身を呪った。
それを聞き流しながら、当のデュバルは『そんな事もあったなー』程度の認識しかなかった。
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「よし。これで終わりだ」
デュバルがエンターキーを押すと、途端に白式が眩しく光り出す。
それは一瞬の事で、光が収束した後には本来の姿となった白式が立っていた。
「これは……」
カスペンが目を見開いて白式を眺める。
純白の装甲に、大きなウィングバインダー。
その姿は、彼女にとって…否、ジオン軍にとって最も畏怖した怨敵に酷似していた。
(まるで…連邦の秘密兵器と目されていた『ガンダム』みたいだな……)
もう過ぎた過去だと思っていても、そう簡単には忘れられない。
数多くのエース達を倒し、連邦逆転の切っ掛けともなったMS。
実際、数多くの同胞達がたった一機の白いMSによって倒されていった。
「会長? なんだか険しい顔してますけど、どうかしました?」
「え? い…いや、なんでもない」
楯無に言われて軽く頭を振る。
昔の事を思い出す事は良いが、過去に捉われる事はしてはいけない。
自分の使命を忘れる事だけは絶対にあってはならないのだ。
「ハイパーセンサーはちゃんと稼働しているな?」
「た…多分……なんか、それっぽいのは表示されてるけど…」
「よし。それでは早速、試運転をする…と言いたいが、いきなり『飛べ』と言っても流石に無理があるだろう。デュバル」
「はい。私の出番ですね」
「頼む。お前の専用機を展開し、飛行の手本を見せてやってくれ」
「了解しました。皆、少しだけ離れててくれ」
デュバル自身も前に行き、それに合わせて他の皆も距離を取る。
そして、常に首から下げている淡い青の羽を模した首飾りを手に持って精神を集中させた。
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そこは何も無い真っ白な空間。
専用機持ちならば、誰もが一度は訪れる場所だ。
デュバルの目の前には一人の少女が悠然と立っていた。
「随分と待たせてくれるじゃないの」
「済まなかった」
アイスブルーの長い髪を靡かせ、金属質で鋭角的なフォルムの脚部を持ち、それとは対照的な小柄な体格、そしてなだらかな胸部を持つ美しい少女だった。
股間の部分に関しては敢えて何も言わないでおく。
「だが、もう待たせることは無い。思う存分に飛び回れるぞ」
「そうでなくちゃ困るわ。私と貴女は一心同体で運命共同体なんだから」
「承知しているよ。私の魂は常に君と共にある」
「……どうして、そんな台詞を素面で言えるのよ」
「???」
本人としては、自分の気持ちを素直に言っただけなのだが、それでどうして彼女が顔を赤くするのか分らなかった。
「と…とにかく! もう二度と、空中分解なんて無様は絶対に晒さないわ。あの『黄金女』を今度こそ完膚なきまでに倒す為にもね」
「私も同じ気持ちだよ。次こそは決着を付けよう」
「当然よ。私は戦場を舞う可憐で美しきプリマドンナ。そんな私をリードするのが貴女の役目よ。マスター」
「ダンス経験は余り無いが…全力を尽くすと約束しよう」
少女が差し出した細くて華奢な手に、自分の手を静かに添える。
「一緒に舞い踊ろう。あの広い大空を」
「喜んで。マイ・バディ」
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そこに屹立していたのは青い全身装甲のIS。
デュバルの魂の化身であり、現在でも猶、世界最速の地位にいる機体。
「こ…これがデュバルのIS…なのか?」
「EIS-10 ヅダ。私の愛機にして、生涯の全てを注いでいると言っても過言じゃない存在だ」
無骨ながらも細身で流線型のボディは、まるで風の抵抗を極限まで減らす為にデザインされているかのよう。
青いISという面で言えば、セシリアの『ブルー・ティアーズ』と同じだが、設計思想が根本から違う。
ヅダはどこまでも『速度』に重きが置かれているから。
「では、これから私が手本を見せてやる。ちゃんと見ていないと、ヅダの速度には追いつけないぞ!」
その場に浮遊し、ゆっくりとステージに向かって移動した後に、ヅダのブースターに一気に火を着ける。
次の瞬間、一夏達の目の前に一筋の青い流星が顕現した。
またもや二話構成になっちゃいました。
因みに、ヅダ(一番機)のコア意識のモデルは、皆大好きなメルトリリスです。
青くて速い女の子といえば誰だろうと考えていたら、ふと彼女が脳裏に過ったので採用しました。
私も普通に好きですし。おすし。
次回は、原作キャラ達に0.01秒の世界を見せてあげましょう。