龍園にとって、今回の依頼はさして大きな意味を持つものでは無かった。
櫛田のすり替えが成功すればそれで良し、失敗していたなら草元が持ってきてくれればそれでも良し。
ついでに、もし草元がXなのであれば、こちらの意図を勝手に深読みしてくれでも良い。
そもそもあのカラオケルームでの発言を鵜呑みにも出来ない。黒幕であるXである可能性はともかく、メールを送ったという事すら嘘である可能性だってある。
強いて理由を言えば、こちらがスパイである事をバラす際に、加担した事実が多い方が良いから、というぐらいだった。
未だに姿を見せないX。
いずれXへと近づく時に、揺さぶる材料は多ければ多い程良いはずだ。
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今日の放課後、綾小路君に図書館で勉強しないかと誘われた。
当然一緒に勉強をする事になっている佐藤さんへの気も使わないといけないわけで、絶賛キューピット中…とまでは行かずとも応援している身としてはその場に居るのはよろしくない。
ついでに言えば、そろそろ櫛田ちゃんの暴露の時期だったはず。
俺は表向きは櫛田ちゃんの事を性的な目で見ている健全な男子高校生だが、その実櫛田ちゃんの事をクラスでもトップレベルに把握している。
若干龍園君が、俺が斡旋した事をバラしてしまう可能性もあってその辺のリスクヘッジが甘かったと反省。
まあ、そん時はそん時やろ。それこそ最悪櫛田ちゃんを道連れにする事ぐらいは多分出来る。
そんなわけで、なるだけこの話に関わりたくない俺は自室で勉強している。なぜ勉強会に参加しないのかと聞かれるが、俺は音楽をかけて口ずさみながら勉強するタイプだ。実際効率悪いんかも知れんけど……まあ、それ程成績悪くないしええやろ。
たまに綾小路グループの方の勉強会もあるので、そちらには参加している。いつのまにか俺だけ仲間外れになってる…とかは避けたい。
そんなカフェでの綾小路グループの勉強会の一幕。
「随分楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」
長谷部ちゃんが落としたカップを踏みつけて登場した龍園君に、俺達の警戒はマックスとなった。
「どうだ?何か引っかかることはないか?ひより」
少しのやり取りをした後に、龍園君が引き連れていた少女へと問いかけた。
ほぉ…かわええやん。なんか不思議ちゃんって感じがするな。物腰が柔らかそうやし、ヒロインのSSが多かったのもうなずけるわ。
「どうでしょう。現段階ではなんとも申し上げられません。
…どちらも印象の薄い顔で、すぐ忘れそうです」
……。コイツって喧嘩売ってるよなぁ。顔薄いねって言われたら流石にイラってこん?
てかコレあれか、綾小路君と幸村君に向けて言ってるんか…なんか怒りが鎮まってきた。
「ククク、そう言うな。今後長い付き合いになるかも知れない相手だからな」
「幸村さん…綾小路さん…高円寺さん、あとどなただったでしょうか」
「平田です平田」
「そうでした。平田さんでした。どうしてこう、顔と名前は覚え難いんでしょうか」
いやー、ホンマに不思議な子やな。ポワポワしてるってゆうか、掴み所が無いというか…。
てか、俺の事触れられてないけどなんで?結構重要警戒人物ってゆう自覚はあったんやけど…
「流石に高円寺のことだけは覚えたようだな」
「あの方は非常に独特なので覚えやすかったですね」
「…まぁ、アイツのインパクトやしなぁ…」ボソッ
「あなたは確か……、………。……あ…草元くん…でしたか?」
…なんか、絞り出すように出てきたな。
「おぉ。合ってるけど、なんで俺の事なんか知ってんの?」
「ほら、たまに図書室にいるでしょう?顔は覚えていたのでその内名前も覚えました」
へー、図書室ねー。確かにたまーに野菜の本とか料理本とかそうゆうの見てるけど、それも見られてたんやな。流石は図書室の番人。利用者の顔は忘れないってか。
「ほぇー……………まてよ、覚えたって言ってた割には名前出るのに結構時間かかってなかった?」
「すいません。覚えてもすぐ忘れてしまうので」
は?コイツまさか、俺も印象の薄い顔とでも言うんか?
(確かに)そうだよ(便乗)
「一体なんなんだよ龍園。俺たちは忙しいんだ、用件があるなら手短に済ませてくれ」
椎名ちゃんにはらわたを煮え繰り返していると、痺れを切らした三宅君が龍園君に突っかかった。
「何もねえよ。今日はただの挨拶だけだからな。おまえらに伝えておくぜ。近いうちに改めて会おうってな」
「どういう意味だ」
食ってかかる三宅君を無視して、一行は去って行った。
「………で、なんでまだおんの?」
「なんなの?そこに居座ってられると邪魔なんだけどさ」
未だに残る椎名ちゃんに問いかけると、機嫌の悪そうな長谷部ちゃんが続けて言った。
てか、長谷部ちゃんも結構肝座ってるよな。龍園君に物怖じしない女子なんかだーいぶ少ないと思うし。
溶け残った砂糖の量から算出した云々とか言い出した電波ちゃんからCクラスが黒幕探しに躍起になっているという事実を聞いたが、俺達にはまっったく心当たりの無い事()だった。
電波ちゃんが去った後も勉強を続けて、今は帰宅途中。
電波ちゃんという呼び方はしばらく変えるつもりは無い。アイツは頭おかしいぜぇ…絶対。
コンビニに寄って4人は買ったアイスを頬張る中、俺はフライドチキンにかぶり付いていた。
「あー、良い匂いがする。良いなーくさもん」
このくさもんは俺のあだ名。クマモンかな?
「この時期にアイスを食うやつの気が知れへんわホンマに。おでんとか買った方が絶対良かったやろ」
「…ちょっとやめてよ。食べたくなってきたじゃない」
「唐揚げもええなー…肉まんもええなー…」
「ゆ、誘惑には負けないんだから…」
「それも保存料と着色料のオンパレードだがな」
「お、流石はthe・健康志向やな。そんな幸村君に朗報や!そろそろ玉ねぎも食える頃やし、モヤシも安く売ったるで!」
そう!ついに玉ねぎが食えるようになったのだ!というのも玉ねぎは収穫の後干さないといけないらしい。それで中々食えなかったんやけど、ようやく食える状態になった。あぁ…玉ねぎの甘みが恋しい…。
あ、ちなみにこの人達には農業の事を話しました。なんか面白い話ないの?みたいな無茶振りが来たので思わず言ってしまいました。まあ、言いふらすような奴等でも無いし大丈夫やろ。
「どこの八百屋だ」
お、中々小粋なツッコミやな。…うーん、60点!関西人のお笑いの採点は厳しいんやで。
その後なんだかんだで綾小路グループの結成が決まった。
いやー、なんかむず痒いね!下の名前で呼ばね?ってとこから下の名前で呼び始めるのって結構恥ずくない?
はるちゃん(波瑠加やから)じゃないけど清隆って結構呼びにくいから俺もきよぽんって呼ぶ事にするわ。ちょっとぐらい恥かいて貰わんとアカンと思うんですよ俺は。
明人やからあっきーと、啓誠……。けーちゃん……川サキサキさん家の幼女が思い浮かんでしまうからなんか嫌やな。けーぽん…けー…けーちん?…よし。けーちんにしよう。
後は追加で入った佐倉さん…愛里…無難にあいちゃんとかか?あいりん……あいりす…あいあい……微妙やな。まだあだ名付けるのは早いか?まあ、馴染んでしばらくしたらまた考えるか。
因みにあだ名を付けるのに意味は無い。ただきよぽんって呼ぶのは確定してるから、どうせなら全員付けたるか!って感じ。
てな訳で、6人の綾小路グループが結成された。
そしてその日の夜、明日グループで映画に行く事になったわけだが、どうにも参加を決めかねている。
そろそろ櫛田ちゃんが既に問題を渡してるやろうし、早いうちに問題文を確認して置いた方がええやろ。試験問題の写真撮ったらアカンとも言われてないし、その情報を龍園君に送るのは造作も無い事だ。
ただ、それが万が一Dクラスの子にバレでもしたら俺は魔女裁判にかけられて縛り首にされる可能性がある。
そうなると、映画の後カラオケでの作戦会議の入ってる明日が一番Dクラスの人が少ないはず。確率論で言えば明日が一番安全。
なら答えは決まってるな。断りの連絡だけ入れておいて……
と思ったら綾小…じゃなくてきよぽんからメッセージが来ていた。
『明日20時から試験に向けての打ち合わせがあるんだが、剛にも声をかけておいてくれと堀北が。用事があって来れないなら俺から堀北に伝えておくが』
20時なら流石に用事は終わってるし問題無いかな?
『おーけー。多分20時までに用事は済んでるから間に合うわ。後で場所だけ送っといてな』
了解と返ってきたのを見届けて、ベッドに身を投げ意識を手放していった。
放課後になった。
本当は学校に残っておきたいが、用事があると言って断った以上学校でブラブラしている訳にもいかない。
一度帰って、しばらく時間が経ってから学校に向かった。
「失礼します。茶柱先生に用があって来ました」
いつになっても職員室は緊張するわ。特に部活の顧問が怖いとそれに比例して緊張も増します(俺調べ)。
「草元か。どうした?」
「提出されている問題文を見せてもらいに来ました」
そう言うと、一瞬茶柱先生が怪訝そうな顔をした後奥に引っ込んで、すぐに出てきた。
「別に構わんが……」
そう言って渡してくれた問題文を床に広げて、1ページずつ写真を撮り始める。
「な、何を……している…?」
「見て分かりません?写真撮影ですよ。別に写真撮ったらアカンとかそうゆう決まりないですしね」
「いや…そうだが……」
まあ、そりゃ茶柱先生から見たら全く理解出来へんよな。
「お前も……なのか………?」
も…櫛田ちゃんの事かな?大丈夫大丈夫。今回はちゃんと堀北ちゃんが手を打ってるし、三学期が始まる頃には俺はこんな事してないから。
一通り撮り終えたので、封筒に戻して茶柱先生に返す。
「大丈夫です。俺はただ小遣いを稼ぎに来ただけで、クラスの邪魔はしてないですよ」
「…………………」
「…心配せんくても今回はDクラスが勝ちますよ。そうですよね?」
「…………………」
俺の事を怪訝そうに見つめた後、何も言わずに帰って行ってしまった。
正直、また「気付いていたのか…一体いつから気付いていた」→「お前が母ちゃんの子宮ん中おるときからや」が出来るかと期待してたんやけど、そうはいかんらしいな。
ふぅー、これでお仕事終了か。
軽井沢さんが謎癇癪を起こすカオスなカラオケに参加しといたら今日は終わりかな。
あ、龍園君に送ってあげとかなアカンか。
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試験問題の最終提出日。私と綾小路くんは職員室の前で、茶柱先生と話をしていた。
「それにしても難儀なことだな。これまで受け持ってきたDクラスでも、聞いたことのない要望だ。学校のシステム上クラス内でここまで警戒、騙しあうことなど想定の外。いつまでもこう上手くは行かないぞ堀北。クラスメイトに裏切り者を抱えたままでは勝てる試験も勝てない」
「分かっています。ですが、それもこの期末試験で終わらせるつもりですから」
櫛田の裏切りを警戒し、先手を最速で打っていた事が功を奏して堀北の思い通りに事が進んだ。向こうは問題がすり変わっているなんて微塵も思っていないはずだ。
「そうか……」
だが、茶柱先生の様子がおかしい。どこか顔が晴れないようだ。
「…どうかしましたか?」
「…お前には、お前達には話しておく。ついこの前、お前達が来るより前に、櫛田が提出した問題を見せるよう言ってきた生徒がいた。そしてその生徒はその問題を1ページも残さず撮影した」
………………は?
「………そ、それは……本当ですか?」
「残念ながらな」
「櫛田さんではなく?」
「櫛田とは全く別の生徒でだ」
櫛田さん……ではない人物が?
裏切り者が………もう1人……?
どこからかやってきた目眩をなんとか堪えて、茶柱先生に問う。
「誰……ですか、その生徒は」
「……草元剛だ」
期せずして、というかなんというか、龍園の寝返りを待つまでも無く、裏切り者の烙印を押されてしまったようだ。
はい。ガバガバですね。一体なぜ茶柱先生がチクってしまう事を考えられないのでしょうか。
玉ねぎの話ですけど、一応ちゃちゃっと調べたんですよ。でもどんくらいで育つかイマイチわからんくて、でも干さなアカンって事は知ってました。
玉ねぎは一番旨い野菜やと思ってるんですけど、そこんとこ異論あるか?異論あるやつは豚肉と玉ねぎを砂糖と醤油で炒めて、ご飯に乗せて上に卵落とせ。ただの豚丼の完成や!
タイトルどうする?
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変えた方が良い
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変える必要無い
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花山inよう実書いてみてくれ