ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令 作:サイレント・レイ
――― 横須賀女子海洋学校 ―――
ブルーマーメイドとは、幕末の志士・坂本龍馬の姉・乙女を初めとした、海援隊士の妻女のみで結成された女子海援隊を開祖とした、海の治安を守る女性のみの国際機関(此れの男性版としてホワイトドルフィンも存在)である。
そんなブルーマーメイド(略称:ブルマー)の将来を担う女子達を育成学校の1つである横須賀女子海洋学校では現在、第21期生の入学式からのクラス分け(と言うより教育艦への配属振り)からの自己紹介が終わり、間も無く初の海洋実習が行われようとしていた。
「…教官!!!」
だが新編なった教育艦群……その1隻である陽炎級教育艦(嘗ての艦級は駆逐艦)『晴風』では、新入生への艦の引き続き行われてからの海洋実習の為に西乃島新島沖へ向けての出撃が行われようとした直前、岬明乃は自分達の指導教官である古庄薫と峰不二子の2人を探しだして駆け寄っていた。
「岬さん、どうしたの?」
「…あの……どうして、私が艦長なのでしょう?」
どうやら明乃は自分が『晴風』の艦長に任命された事に疑問を感じているようだった。
「その、私は艦長になれる程の成績では…」
況してや、此の『晴風』にはブルーマーメイドの名家にして横須賀女子海洋学校の校長・宗谷真雪の三女である宗谷ましろ(おっちょこちょいだが成績は超優秀)が搭乗していて、彼女は副長なのだから、自他共に明乃を艦長に相応しくないと内心で思う者はそれなりにいた。
「では聞くけど、貴女の理想の艦長とは?」
「…それは……船の中の、お父さん……みたいな。
船の仲間は家族なので!」
明乃なりの理想の艦長像を元気に答え、その事で少し照れてた事もあって、薫は微笑んで“合格”と示した。
「では、そうなれば良いわ。
此の『晴風』の艦長に相応しいように…」
だが直ぐにフォローとして、不二子が微笑みながら明乃の左肩に右手を乗せた。
「古庄教官はね、彼女なりに貴女を買っているんですよ」
古庄の様な“スレンダー”な美人とは真逆に位置する、“グラマラス”な美人である不二子の美貌は同性でも惹かれてしまうらしく、明乃は不二子に顔をほんのり赤くしていた。
「それに女の子はね、危機的状況下で自分が思う以上の力を発揮するのよ。
それに、そうでなくても、頼りなかったら、周りがしっかりフォローしてくれる筈よ」
「…へ?」
不二子が最後に小馬鹿にしたと思ったらしく明乃が変な声を漏らしたが、当の不二子は明乃にウインクをして立ち去っていった。
明乃も彼女なりに2人の教官に期待されている事を察した様で『晴風』の艦橋に駆け足で向かっていった。
「…可愛い娘達ですね」
自分の隣に来て笑った不二子に薫も同じ様に笑って頷いた。
「峰教官、リーダーとしては頼りないけど、周りから支えられる人が近くにいるのですか?」
「どうしてそう思うのですか?」
「いえ、先程の貴女は誰か前例がいるかの様に話していましたから」
「ふふふ……どうでしょうね…」
不二子は薫の指摘に笑ってはぐらかした。
「それでは、私はこれで…」
「ええ、良い航海を」
2人は『晴風』を降りて敬礼をし合うと、薫は艦長を務める大型教員艦『さるしま』に向かい、残留する不二子は施設内へ戻っていった。
そしてその数刻後、『さるしま』を先頭として、学年トップで編成された大和級大型教育艦(嘗ての艦級は戦艦)『武蔵』が、更に他の教育艦群が続いて外洋に乗り出していった。
横須賀女子海洋学校の所属艦艇が、若干おぼつきながらも艦列を整えて出港していく様を不二子以下の残留者達が揃って敬礼をしながら見送っていた。
不二子は近くを過ぎていく『晴風』に変な笑みを浮かべた後に、敬礼を直していた。
だが此の出港から大事件が起きるなどと、誰もが予想出来なかった。
――― 同・数時間後 ―――
「『さるしま』より提供入電、“艦隊は予定通りに西之島新島に到着するも『晴風』と『武蔵』は落伍”との事です。
尚、『晴風』の落伍原因は遅刻だそうです」
『さるしま』からの通信で、『晴風』の落伍原因が伝えられると、全員が揃って苦笑していた。
と言うのも、『晴風』は次世代艦の為に高圧缶等の試作品を多数装備していた事が原因で、他の陽炎級と比べて異常に壊れやすくなっていたので、『晴風』は欠陥艦の烙印を押され、更に乗組員は基本的に成績非優秀者(要するに落ちこぼれ)ばかりだったからだ。
此の為、此の場にいる者全員が『晴風』を馬鹿にしながら笑い合っていて、不二子もその1人であった。
「『さるしま』より急報……え!!?」
だが此の後、全員の血の気が退く一報が入った。
「“『さるしま』が、『晴風』の攻撃を受けて大破、沈没しつつある”との事です!!!」
まさかの一報に全員が一斉に「えっ!?」と叫んだ。
「学生から攻撃を受けたのか!!?」
「至急、海上安全整備局に連絡だ!!!」
「羽田港公安管理局より通信、同じように『さるしま』の通信を受けたそうです!!
早急の応対が求められています!!!」
“そんなまさか”な出来事に、混乱に等しい騒ぎが起き始めていたが、只1人冷静であった不二子は周囲を見渡して誰も自分を見ていないのを確認すると、ゆっくりと後退して、無事(?)に退室すると廊下を走りだしながら右手の指輪の赤い宝石を垂直に回して口元に寄せた。
「…もしもし………今何所にいるの?」
不二子の指輪は超小型無線機であり、通信先の人物は、彼女にとってはいつもの事だが、若干ちゃかしを入れながら所在を教えていた。
「…そう、まだ『大和』に行ってないのね。
ちょっと面白い事が起きたから、予定を変更して行ってほしい所があるの」
不二子のほぼ拒否権の無い要望に相手は驚いていた。
「…“こんなハプニングは聞いてない”?
ハプニングは貴方の専売特許でしょ!!!
兎に角、私が色々するから、貴方達は行く準備をして!」
――― ????? ―――
暗い部屋で何所かの地下鉄の駅を映したバーチャル映像が展開される中、黒人系の大男が自分に向かってくる暴漢達を倒していて、最後の1人に膝蹴りを腹部に叩き付けて倒した直後に、バーチャルの列車が止まった。
「パーフェクトだ、キース。
バーチャルの列車を横切る形で、ICPO(International Criminal Police Organization:国際刑事警察機構)の本部長であるジャン・ピエールは大男ことキース・ヘイドンにスローテンポの拍手をしながら賛辞を送った。
「流石は傭兵上がりの事はある。
君なら必ずあの男を逮捕出来る筈だ」
キースはジャンに意味ありげに微笑した。
「俺は殺しの訓練は受けたが、生きたまま逮捕なんてのは、どうも苦手でね」
「逮捕と言うのは建前だよ」
仮にも警察機構では有ってはならない単語が出ていたが、疑いたい単語を肯定するかの様にジャンの側近がキースに大型で直方体型のアタッシューケースを差し出した。
キースがそのアタッシューケースを開けると、そこにはアメリカ陸軍最新の自動小銃とコンバットナイフが入っていた。
「生死は問わない。
それが君を選んだ理由だよ」
ジャンは邪な笑みを浮かべていたが、キースは自動小銃を取り出すと色々と確認をしてから自動小銃を身構えた。
「…で、俺が殺るのは何人だ?」
「先ずは先に言った4人だ。
だが状況が少し変わっていてね、報告ではあの男はブルーマーメイドの新兵の船を狙っているらしい。
だから、あの男に関与する者達ならば常識の範囲でやりたまえ」
どうやらジャンは黒い企みを計画していて、とある人物達の抹殺に託つけて、近年からICPOと勢力圏争いを繰り広げているブルーマーメイドの没落も視野に入れているようだった
キースはそんなジャンに笑いながらの目線のみで“了解”と示した。
「何か此方で用意する物があれば言ってくれ」
「……棺と墓石」
キースはジャンに返しながら試射として前方の的に連射した。
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次回は一気に飛んで“ハイスクール・フリート”の第4話にあたる場面にいきます。
そしてそこでドタバタしたら別方向に向かいます。