ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令   作:サイレント・レイ

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第10話 銭形警部のピンチ

――― 教育艦『晴風』 ―――

 

 

 横須賀女子海洋学校以下のブルーマーメイドの重要施設が警察(及び陸海の両軍)の強制捜査が行われていた翌日の朝、ルパンによってブルーマーメイドの包囲網と監視網を抜けた『晴風』は切り離した『ルパンキャッチャー』を艦尾に係留して北西太平洋のど真ん中で停泊していた。

 そして明乃達『晴風』乗員の志摩と美波の2人を除いた全員は会議室………と言うが、実際の造りは学生達向けの教育艦らしい教室になっている大部屋に集合して、各々強張った顔で席に座っていた。

 尚、志摩と美波がいないのは、志摩はRATtウイルス感染でいまだに暴れそうだったので銭形によって医務室のベッドの上で雁字搦(ガンジガラ)めの蓑虫(ミノムシ)状態(見にいった明乃曰く「足首以上の顔以下の間を1寸の隙間なく縛られている」)で、美波は観察と監視で同伴している為であり、志摩が拘束を抜けたり脱走した場合は銭形が直ぐに駆け付ける算段であった。

 

「…皆、昨日は御苦労様です!」

 

「起立!!」

 

 そんな明乃達が待つ大部屋に不二子が扉を開けて入室、此れに合わせて明乃の号令下に全員が一斉に立ち上がった。

 不二子に続いて銭形も入室して、此処までは全員許容範囲のであったが…

 

「よう!!」

 

…『晴風』の状況をややこしくした張本人たるルパンが次元と共に入室し、ルパンと次元の存在に全員が各々の形で騒然とした。

 尚、五ェ門は此所には来ておらず、予想外の敵(?)の襲来に備えて艦橋の上で周囲を監視していた。

 まぁ『晴風』クラス各々のルパン(達)への思いは置いておき、不二子の許可の元に明乃の号令で乗員全員が着席した。

 

「…峰教官、銭形警部、此れはどう言う事なのですか!!?」

 

 事前通達では今から不二子から状況説明が行われる予定なのだが、着席から少し間を置いてから洋美が立ち上がりながら不二子と銭形に怒鳴って質問し、ましろは彼女の行為に自分と同じ思いの者がいたと分かって軽めの溜息を吐いていた。

 因みに此の前に『晴風』乗員全員に不二子が偽のブルーマーメイドである事が報されていたのだが、それでも不二子への信頼感は高かったので、不二子本人が承諾していた事もあって『晴風』乗員は引き続き不二子を教官と読んでいた。

 

「何故、ルパンを逮捕しないのですか!!?

しかも『晴風』強奪に協力して、警察の誇り等を捨てたたのですか!!?

更に『晴風』の通信機全てを壊して!!」

 

「……儂だって、好きでコイツを野放しにしているんしゃない。

今直ぐにコイツにワッパを掛けたいんだ…」

 

 洋美は主に銭形に怒鳴っていて麻侖に引っ張られて押さえられたが、当の銭形は“売り言葉に買い言葉”みたいに怒鳴り返すとの予想に反して表情を曇らせるだけだったので、洋美本人も含めて『晴風』乗員全員を戸惑わせた。

 

「コイツを読めば直ぐに分かる」

 

「岬さん、読んであげなさい」

 

 銭形は『晴風』乗員の誰かが理由を訊ねる前に、懐から派手に皺々(シワシワ)の紙を取り出して突き出し、不二子の命で明乃がそれを受け取った。

 明乃が広げて見た処、此れはICPOと警察庁から銭形への命令通達書であった。

 

「…え~と“銭形幸一警部、日本時間の4月1日付けをもって、ルパン三世専従捜査から解任する”………解任!!?」

 

 読み上げた明乃自身もそうで思わず命令通達書を潰してしまったが、『晴風』乗員の全員が“解任”の単語を言いながら各々の形で驚き戸惑っていた。

 

「……そりゃそうだろう………うん()十年、ルパン達を追い掛けて逮捕出来なかったんだからな…」

 

 どうやら銭形はルパン三世専従捜査解任を納得しつつもまだ悔しがっていたらしく、顔を臥せってルパンに慰めされていた。

 明乃は此の命令通達書の状態は銭形の心情を表しているモノだと判断していた。

 

「それが嫌で、警察を辞めてルパンの仲間に加わったのですか?」

 

 ましろは銭形へ自分の予想を言いながら軽蔑の視線を向けていたが、当の銭形は思わず流した涙を右袖で拭ってから首を左右に振った。

 

「だがな、警察庁長官からルパン以上の悪党にワッパを掛けろと命じられたんだ。

“日本への愛国心を見せてみろ”とも言われたしな」

 

 当初は分からなかったが、明乃は銭形に顎で示された事で命令通達書に続きがある事に気付いた。

 

「…“尚、銭形警部にはジャン・ピエールICPO本部長の提言もあって別任務を与える。

別命、銭形幸一警部にショットシェル壊滅捜査を通達する”!」

 

 一般的には“ショットシェル”とは“散弾銃(ショットガン)実包(カートリッジ)”意味なので、明乃達は命令通達書の意味を理解出来ずに隣の者と目線を合わせながらざわついていた。

 入学したての学生では分からないのも無理はなかったが…

 

「ショットシェルって、あのショットシェルの壊滅!!?」

 

「銭形警部、それって不可能任務ですよ!!!」

 

…2年生のヴィルヘルミーナと母関連でましろの2人は例外的に意味を知っていたので、血相を変えて立ち上がって銭形に叫んだ。

 

「銭形のとっつぁんが言っているショットシェルってのは武器密売組織、その世界最大手だ」

 

「ブルーマーメイドも艦艇強奪をかなり許していて、第1級の警戒体制を敷いているわよ。

あ、そうそう、ブルーマーメイドの近代犯罪史の教科書にも載ってましたね…」

 

 次元と不二子によるショットシェルの簡易説明で明乃達もが危険度を認知した。

 只、不二子に教科書の提示が指示されての軽めの講習が行われた事に、芽衣を始めとした何人か(おそらく筆記での赤点組)が嫌そうな顔をした。

 

「…あれ、俺が載ってないじゃん」

 

「ルパン!!!」

 

 近代犯罪史の教科書に自分(達)が載っていない事に不満を言ったルパンと共に不二子に怒られる羽目になった。

 更に銭形は万里小路楓(通称:万里小路さんorまりこー)も目を見開いていた事に気付いた。

 

「そこの、確かお前は万里小路重工の令嬢だったな?

だったら、ショットシェルの事は知ってるな?」

 

 銭形の質問に楓は表情を強張らせながら頷いた。

 

「はい、『伊403』や『春月』の事で御父様(オトウサマ)からよく聞かせれてます」

 

 『伊403』………竣工した西暦1945年から中国の032型潜水艦が竣工する西暦2012年まで潜水艦内で世界最大に長らく君臨した特潜型こと伊400級潜水艦の4番艦『伊403』は駆逐艦『春月』と共に万里小路重工の埠頭で整備中、台風が過ぎ去った翌朝に行方不明になっていた事が判明、当初は捜索に当たった海軍やブルーマーメイド(蛇足だが、此の時の捜索艦隊司令はましろの祖母)は『伊403』と『春月』は台風による高波で沖に流された後に何らかの事故で沈没と判断した。

 処が翌年にアメリカがバラオ級潜水艦『カクス』が改装で伊400級に酷似した姿を現した事で事態が激変、アメリカは未だに全否定していたが、諜報活動を含めた再調査結果『伊403』(と『春月』?)は台風が通過中の真夜中にショットシェルに強奪されて依頼主のアメリカに転売された事が判明、後日の機密資料公開もあって証拠隠滅としてハワイ北西の沖合いの海底で爆破処理が成された『伊403』を発見するに至った。

 此の強奪事件で日本海軍は国外に流失して陳腐化したと判断、更に当時の状況下では伊201級が重要視された事もあって伊400級は練習艦化や予備艦入り等を経由せずに早期に退役(全艦が解体か標的として爆破処分)するはめになったが、『伊403』の件で楓の祖父は幹部共々スパイ容疑で長らく警察に抑留、その間に無茶な取り調べや拷問を受けた為に無罪として釈放された数日後に病死(此等の事は当時のブルーマーメイドによって問題視され、担当した警察官達が全員懲戒免職処分な上に莫大な慰謝料が発生)、万里小路重工自体も東海地方向けのメガフロート建造が受注され続けるも海軍の逆鱗を買った為に艦艇処か小型船舶すら受注されない状態に置かれていた。

 

「ですが、失礼ですが、ショットシェルを相手にするには警察では荷が重いと思われます!

此れは軍に任せるべき案件だと思います!」

 

「その事だが、コイツには軍は動かせんと判断されたからだ。

軍が動いたらショットシェルが警戒するだけでなく、周辺諸国に変な誤解を招きかねないからだ」

 

 話を戻して、銭形の捜査がいかに困難であるかを理解するも、軍を動かすべきだと思ったましろの質問を銭形が理由を言いながら否定したが、銭形は実は警察の黒い目的が最大の理由だったのを察していたが、敢えてそれを言わなかった。

 

「それで、何故ルパン達と組むだけでなく『晴風』を盗む事になったのですか!!?」

 

 更に洋美がルパン達との行為が理解出来なかった為に銭形へ大声で質問したが、当の銭形の代わってルパンが前に出た。

 

「勿論、ショットシェルをぶっ潰す為だよ。

そして組んだのは利害の一致。

つまりだ、とっつぁんはショットシェルを潰したい、俺達はショットシェルが溜め込んでいる現生(ゲンナマ)(現金)を(シッカ)り頂こうって事だ」

 

「……そう言えば、未だに武器の密売は基本的に現金取引でしたね。

世界最大となれば相当な金額の筈…」

 

「俺達もいつまでも若くないし、泥棒には年金が下りないからね」

 

「だから、老後の保証は自分達で確保しないといけないからだ」

 

 ましろはルパン(一味)の最終目標を察してそれを指摘し、ルパンの次元と共にもの冗談交じりの返し、『晴風』乗員全員が納得しつつも彼等2人が変に現実的だった事もあって半分呆れて苦笑した。

 

「んじゃあ、今から此の『晴風』でショットシェルに殴り込むって事か!」

 

「アホか、お前は?

そんなん出来たら、儂等警察やブルーマーメイドがとっくの昔に壊滅させてるぞ」

 

 芽依が猪突猛進な意見を出していき込んだが、直ぐに銭形に注意されるだけでなく、『晴風』乗員の全員に呆れられていた。

 

「いいかい、ショットシェルは極めて慎重に裏の商売をやってるんで、表向きは合法的企業としてニューヨークの1等地の高層ビルに身構えてんだ。

正面玄関から入ったって尻尾は決して捕まえられないんだよ」

 

「……確かに、母さんは何度も悔しがっていた…」

 

 ましろはルパンの指摘から、ある日の夜にショットシェルの壊滅任務に失敗した為に自分達に隠れて悔しがっていた真雪の背中を思い出していた。

 

「って事は、ルパンさんでも正攻法では無理があるのですか!?」

 

「まぁそう言うこった」

 

 明乃はまさかと思いながらルパンに質問したが、当のルパンが右頬を右人差し指で軽く掻きながら肯定した為に他共々ギョッとした。

 

「だからだ、向こうさんから声を掛けられる程の手土産を用意する必要があるって事!

それも、向こう好みの色っぽい女をだ!」

 

「まさか、『晴風』を売りだしてショットシェルを誘き出すのですか!?」

 

「だとしたら、『晴風』をきっちり仕立てないとな!!」

 

「半分正解だが半分外れ。

こんなボロ船に売り手なんか着かん、タダ当然でやっても直ぐスクラップだ」

 

 鈴が怯えながら指摘して麻侖がそれに乗っかったが、次元に否定された。

 只、次元が『晴風』を馬鹿にしたので、内心は納得しつつも、実際に言われたので『晴風』乗員全員がムッとした。

 だが此の時、明乃はルパンの言葉を思い出していた。

 

(いや別に、俺はな、とあ~る女剣士のハートをものにしようとしててな、ものに出来た女剣士をエスコートしてもらおうと此の娘達が欲しかっただけなんだ)

 

(まぁ結果的に、酒癖の悪ぅ~い女剣士を、大和撫子より良い女に仕立てあげた状態で、口説けるって事になったんだがねぇ~…)

 

「……女、剣士………大和撫子…………剣士……侍………宮本、武蔵……やま、と(大和)

 

(何で此の船なんだ!?

お前は我等が『大和』を狙ってたんじゃなかったのか!?)

 

「…『大和』……『武蔵』!!!」

 

 明乃はルパンと進愛とのやり取りも思い出した事でルパンの狙いを察して、叫びながら机を叩いて立ち上がった為、ましろ達を驚かせた。

 

「…貴方は、ショットシェルを誘き出す為に『武蔵』を盗む気なのですか!!?」

 

「おう、せいかぁ~い(正解)!」

 

 ルパンが明乃に満面の笑みで返し、次に狙うは『武蔵』である事が判明してましろ達が一斉にギョッとした。




 感想、または御意見、或いは両方でも良いので、お願いします。

貴方にとってのルパン三世は?

  • 1世たる“山田康雄”
  • 2世たる“古川登志夫”
  • 3世たる“栗田貫一”
  • 実写版1世たる“目黒裕樹”
  • 実写版2世たる“小栗旬”
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