ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令   作:サイレント・レイ

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第2話 乙女のピンチ………からの分岐

――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

 横須賀出港から1週間以上が経過した『晴風』はと言うと、『アドミラル・グラーフ・シュペー』の襲撃からの脱出した副長ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクの救出、『伊201』の夜襲を乗り越えてから、物資(特にトイレットペーパー)の不足を起こした為、明乃は和住媛萌(通称:ひめちゃん)、鏑木美波(通称:みなみさん)、伊良子美甘(通称:ミカンちゃん)の3人を従えて、ある意味で海洋貿易国たる日本らしい海上モールに行く為に、水上バイク・スキッパー2台に分乗してその入り口の水上バスターミナルに来ていた。

 当然、明乃達4人は『晴風』が撃沈許可が降りている程の指名手配状況なので、普段の白を主体としたセーラー服ではなく各々の私服で地元の女子高生に偽装していた……媛萌のがサングラスにマスク姿が逆に怪しさを出していたが…

 

「うはあぁー!!!」

 

「平和だ…」

 

 シャトルバスに乗り換えて、オーシャンモールに辿り着くと、明乃達は年頃の女の子らしい歓声を上げていた。

 

「お茶する時間は有るよね?」

 

「無いから!」

 

「あう…」

 

「んじゃ、入ろうか!」

 

 美甘だけでなく、艦長として気を引き締めさせるべきなのに先頭を切ってはしゃいでいる明乃でさえそうなのだから、今の自分達が指名手配犯と同類になりかけているのを完全に忘れているようだった。

 少なくとも媛萌は自分達の状況は分かってはいる様だったが…

 

「へぇ~…あ~れが、不二子ちゃんの教え子かぁ~…」

 

「ブルーマーメイドってだけに、まだまだ尻の青いガキどもだな」

 

「あらぁ~それ、シャレのつもり?

ちょっと寒いよぉ~…」

 

「……処で不二子の奴、なんでブルーマーメイドに入ってんだ?」

 

「さぁね。 坂本龍馬の財宝でも探ってんじゃねぇの?」

 

 此の為だろう、船着き場から駆け出している明乃達4人の背後を見つめる男性2人に全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同時刻・教育艦『晴風』 ―――

 

 

 一方の『晴風』はと言うと、オーシャンモールから離れた海域で停泊して、整備や応急処置を施しつつ、明乃達の状況に合わせての相応が出来るように待機していた。

 

「はぁ~…学校に帰ったら、私達怒られるのかな?」

 

「まさか停学とか退学とかにならないよね?」

 

「ブルマーになれないとか?」

 

…とか言ってはいたが、実際はほぼ休息タイムと化していて、その証として『アドミラル・グラーフ・シュペー』に破壊された第三主砲の脇で、杏仁豆腐等のお菓子を囲いながら談笑している女子達がかなりいた。

 しかも女子の一部はセーラー服ではなく水着を着ていたのだから言い訳のしようがなかった。

 

「無~い、無~い、だって宗谷さん、校長の娘さんなんだって」

 

「え、本当?」

 

「あ、校長も宗谷だ!」

 

 変に楽観的な意見が出て、その根拠が副長の宗谷ましろ(通称:しろちゃん)であったので、話題は彼女に変わった。

 そして間が悪いと言えようか、此の時に黒木洋美(通称:クロちゃん)と共にヴィルヘルミーナに艦内を案内している途中だった、ましろ当人が物影に辿り着いていた。

 

「え~、でも校長の娘なのに、ウチのクラス?

『武蔵』(横須賀女子海洋学校の成績上位者達が乗艦)とかじゃないんだ」

 

 此の発言、生真面目気質のましろが一番気にしていた事に直結していて、偉大すぎる母や優秀な2人の姉とのコンプレックスもあって、彼女に強烈な罪悪感を感じさせた。

 此の時のましろにとって幸いだったのは、彼女が此の事を顔に出した事で全てを察した洋美が直ぐに動いた事だった。

 

「余計なお喋りは止めない!」

 

 元々『晴風』乗員では怖い方で認知されていた洋美が突然背後からの登場に女子達が全員驚いていたが、更にヴィルヘルミーナも彼女に続いた。

 更に言うと、『アドミラル・グラーフ・シュペー』の副長であるヴィルヘルミーナは唯1人の2年生………つまり『晴風』乗員の最年長な事もあって、上官としては怖い方であった。

 

「此の噂好きのド腐れ野郎ども、修理する箇所が幾らでもあるだろう!!

取り掛かれ!!!」

 

 ヴィルヘルミーナのドスの効いた怒鳴り声に、女子達は「はい!!!」と答えながら蜘蛛の子を散らす様に走り去っていった。

 因みにヴィルヘルミーナは日本語を学ぶ為に、任侠映画“仁義がない戦い”シリーズを見て、更にはまった事で広島弁で日本語を話すようになってしまった。

 

「……気にしないでね、宗谷さん…」

 

 彼女達が去った後、洋美は直ぐにましろをフォローししたが、当のましろは顔を暗くし続けていた。

 だがそんな時に、ましろ達3人の足下で白い鼠が軽く走り回ってから去っていった。

 

「はぁ、鼠?」

 

 ヴィルヘルミーナが鼠に首を傾げたが、ましろが何の気なしに左を振り向くと、妙にデカイ猫………明乃に『晴風』大艦長に命じられた五十六がえらく気が入った表情で鼠を追う途中にいる自分達目掛けて突進してきていた。

 猫が苦手であるましろは五十六に驚いて悲鳴を上げながら後ろに尻餅を着いたが、その五十六は彼女の胸に体当たりをして左に急旋回して、そのまま何事も無かった様に鼠を追い掛けていった。

 

「宗谷さん、大丈夫?」

 

「…まったく、猫なんか乗せるから!」

 

 ましろは五十六と、その五十六の乗艦を許可した明乃に毒突いていたが、自分達が否応なしに巻き込まれた騒動の元凶がいた事に此の時は全く気付かなかった。

 そして自分達の予想を遥かに超える事態に向かう事も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― オーシャンモール・四国沖店 ―――

 

 

「お~めっとうーございま~す!

トォイレットペーパァ~…(いぃ~ち)(ねぇん)分の大当たぁ~り~!!!」

 

 夕暮れで空が赤く染まった時、明乃は買い物で得た1枚の券での福引きで、『晴風』が1番欲されていたトイレットペーパーを大量に手に入れていた。

 

「…艦長……じゃなくて、岬さん、凄!!」

 

「なんて運の良い。

抽選券1枚しか貰えなかったのに…」

 

 見事に賞の1つを当てて照れ笑いをしている明乃対して、美波は無反応であるも美甘が驚いて媛萌が呆れていて、係員2人の内の1人であるお婆さんが踊りに近いレベルの大袈裟な動きでベルを鳴らし続けていた。

 

「トイレットペーパーをまだ買わなくて良かったね」

 

「でも此の量、どうするんだ?」

 

 美柑は単純に喜んで気付かなかったが、美波の言う通りにトイレットペーパー1年分を『晴風』に運べる手段が簡単に思い付かなかった。

 

「ああ~その心配はご無用。

我々が責任もって実家に送りますよぉ~」

 

 もう1人の係員のお爺さんの好意に、明乃達4人はまさか此のお婆さんとお爺さんに『晴風』に運んで貰う訳にはいかず、“不味い”と思いながら集まって頭を寄せると少しの間、小声で話し合っていた。

 

「と、取り敢えず、持ってけるだけ、持っていきますので…」

 

「えぇ~…、そ~んなお気になさらずにぃ~…」

 

 媛萌の要望にお婆さんが反対していたが、当人達はさっさと1人2括り持つと足早に去っていった。

 

「おたっしゃでぇぇ~………っ!」

 

 そんな明乃達4人にお婆さんは机から身を乗り出して手を振っていたが、彼女達が去ったのとは反対方法の人垣の奥にいる、明らかに一般人ではない女性が3人いたのに気付いた。

 そして、その女性達は目線を合わせて頷くと明乃達4人が向かった方角に先回りし、お婆さんが振り向くとお爺さんも女性達に気付いていた。

 

「…行くか?」

 

「行っきましょう!」

 

 お爺さんとお婆さんがお互いの目線を合わせた直後、買い物帰りと思われる主婦がテントにやって来た。

 

「すみません、抽選を…」

 

「あ、すっみません!

もう賞品が無ぁくなったので、まぁた明日来て下さぁ~い!!」

 

 まさかの拒否に主婦は何かを言おうとしたが、お婆さんとお爺さんは素早く片付けると、老人らしからぬ速さで行ってしまった。

 

「「~~~!!!」」

 

「?……ひっ!!?」

 

 少しの間だけ硬直していた主婦が、下の方から呻き声が聞こえたのでテント内の床を覗いてみると、そこには男性2人が猿轡をされての両手足の何ヵ所かを縛られての丸い姿勢で寝っ転がっていた。

 

 此の間、明乃達は『晴風』に戻る為にバスターミナルに戻ろうとしていたが、直ぐ前の脇道からお婆さんとお爺さんが気付いた女性達が立ち塞がって睨んできたが、当の明乃達4人は女性達が何者なのか分からずにいた。

 

「貴女達『晴風』の乗員ね!?」

 

 此の問い掛けに明乃達は、女性達………部下2人を引き連れた平賀倫子二等監察官達3人の海上安全整備局安全調査隊こそが自分達が恐れていた正規のブルーマーメイドの隊員である事に気付いてギョッとした。

 

「…戦略的退却よ!!!」

 

「あ、皆待って!!」

 

 少し間をおいてから媛萌がトイレットペーパーを投げ捨てながら叫んで後ろに逃げ出して美甘と美波も続き、最後に明乃がかなり遅れて続いた。

 倫子達も明乃達の逃走に驚きはするも直ぐに追い掛け……媛萌が突き飛ばして尻餅を着いた男の子を状況を理解せずに介抱した明乃がブルーマーメイドに捕まりそうになった。

 

「あ、艦長!!!」

 

 美甘が他の2人と共に明乃に振り向いて叫んだら、倫子達が明乃を捕まえる直前に驚きながら硬直したを疑問に思ったら、3人の直ぐ脇をワゴン車………質実剛健な車体に広いニーズに答えられるから個人や企業、果てはテロリストにも御用達のトヨタ・ハイエースが過ぎ去って、車尻を振る急旋回(ドリフト)で明乃とブルーマーメイド達の間に割って入って横転直前までに傾いた後に元に戻って停車した。

 因みに明乃が助けた男の子は、ハイエースに驚いて直ぐに何処かに逃げていった。

 

「あ、良かった良かったぁ~…やっと追い付けましたよ」

 

「さ、さっきのお爺さん?」

 

 明乃はハイエースの助手から降りて自分の所に来て自分を立たせたのが、福引の所にいたお爺さんだったので、近くまで駆け寄った美甘達3人と共に驚いていた。

 

「あ~…危ない運転をして、すいませんねぇ~…歳は取りたくないもんですねぇ~…」

 

 同時に反対側の方の運転席からはお婆さんが降りて、頭を何度か下げながら警戒している倫子達の所に歩み寄っていた。

 

「いやぁやっぱり、ウチも在庫関連でねぇ、残りのトイレットペーパーをお届けしようと思いましてね…」

 

「爺ちゃん、今はそんな場合じゃなくて!」

 

 媛萌が状態を理解していない様に見えたお爺さんに思わず怒鳴った、当の本人は完全に無反応だった。

 

「心配なく心配なく。

此の際なので、トイレットペーパーは貴女達も一緒に、向こうの沖にいる『晴風』にお届け致します」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「…爺さん、何で私達が『晴風』の乗員である事と、『晴風』の居場所を知ってるんだ?」

 

 お爺さんの好意に美甘が素直に頭を下げたが、美波の指摘に全員が“えっ!?”とし、倫子達3人も同じようであった。

 否、むしろ倫子達はお爺さん(とお婆さん)が自分達が知らない『晴風』の居場所を知っていた為、衝撃度合いはより強かった。

 

「貴方達、何者なの!!?」

 

「ああ~、私はこう言うモンですぅ~」

 

 倫子達は明乃達4人よりも、此のお婆さんとお爺さんを警戒したが、当のお婆さんはマイペースに自分の名刺を差し出した。

 倫子が反射的に受け取ったその名刺には“琉婆朝清”と書かれていたが、同僚2人共々に読み方が全く分からずに眉間に皺を寄せていた。

 

「ああ、すみません。

此れはね、“ルバアァ~サァ~セイ”って読むんですよぉ~…」

 

「ルバア、サ………ん!?」

 

 完全に調子が狂っていた倫子達3人は、読み方を教えられて軽く納得したが、何かに気付いて硬直した。

 いや、倫子達3人処か、明乃達4人は勿論、野次馬根性で見ていた周囲の人間全員がお婆さんの名前に“まさか”と思って硬直した。

 人間全員が固まって波の音のみが聞こえる中で、お爺さんが此の間に明乃達4人をハイエースのトイレットペーパー満載の後部座に放り込む形で乗せ終わった後、倫子達3人が“錆びたロボット”みたいにゆっくりお婆さんに振り向いた。

 

「……こ……此れって…」

 

「……かなり崩してるけど…」

 

「……まさか“ルパンサンセイ”の当て字?」

 

「そうですそうです。

あのケチな泥棒のです」

 

 全員やっと気付いたが、僅かに変えてはいたが、此のお婆さんの声は明らかに女性のではなかったし、なにより喉をよく見たら女性には無い喉仏が存在していた。

 そしてなにより、お婆さんは擬態するのを止めたらしく、垂直寸前に曲げていた腰を元に戻し、どう言う構造だったのか分からないが、縮めていた両手足4体を元の長さまでに伸ばした。

 

「まさか、本人?」

 

「ええ、そうです。

だから、こんな事も!」

 

 お婆さんは返しながら“ニッ”と笑うと、3本のベルトを握った右手を翳した。

 倫子達3人は少しの間お婆さんのベルトに在視感を感じていたら、それが自分のベルトである事に気付いた直後に倫子達3人のスカートが揃って落ちた!

 

「…悪いね。

あの娘達は、ちょーーと、野暮用で借りるよぉ~!」

 

 下着丸出しになった倫子達3人が揃って悲鳴を上げながら股間を押さえ、同時に周囲の男性達が歓喜の雄叫びを上げた中、お婆さんは下品に笑ってハイエースの運転席に飛び乗ろうとした。

 

「待ちなさ………いぃ!!?」

 

 倫子がお婆さんの後ろ髪を咄嗟に掴んだが、お婆さんの顔の皮が伸びに伸び………文字通りに化けの皮首元から破けて脱げ、倫子が右手の中の化けの皮を少し見つめた後に驚いていた間に、お婆さんだった男性はハイエースの運転席に乗り込んで直ぐにエンジンを掛けた。

 

「なぁなぁなあぁ、言っただろう!!!

赤が有るって!!!」

 

「紫も有ったのに!!」

 

 助手席のお爺さんも、いつの間にかに顎髭を伸ばした素顔を晒してたった今、黒いソフト帽を被った直後、お婆さんだった男性は、派手に空転させながらハイエースを超信地旋回(スピンターン)をして、もと来た方角に急発進させた。

 自分達の状況を全く理解出来ない明乃達3人は仕切りに「え?」を言い続けていた。

 

「…次元大介……速打ちの名手」

 

「……次元、大介!!?」

 

「次元って、確か組んでる相棒って…」

 

「……“ルパンサンセイ”…」

 

 美波はお爺さんに化けていた者を冷静に見抜いていたら、超有名人である次元がバックミラー越しに微笑して肯定すると、明乃達はお婆さんの方の正体を否応なしに理解し、明乃はついさっき倫子達が言った正体に関する単語を思わず呟いた。

 しかも“猫より狭い額”“伸ばしに伸ばしたモミアゲ”“細長い猿顔”等の世界的にも間違えようの無い特徴が確認出来るお婆さんの真顔に在視感があるだけでなく、器用かつ一瞬の内に脱いで窓の外に捨てた変装衣装(同時に倫子達3人のベルトも)の下から代名詞的存在たる赤いジャケットを晒した事(蛇足ながら、赤ジャケットの下の青いカッターシャツの襟に通された桃色のネクタイを修正していた)で確定となった。

 

「「「…ルパン三世!!!」」」

 

「はあぁぁ~い♪」

 

 大量のトイレットペーパーに埋もれながら揺られる明乃達の目の前に世界一の大泥棒・ルパン三世が相棒と共に存在していた。

 此の為、捨てられて海に落ちた変装衣装とベルト3本は、ベルト3本は直ぐに沈んでいったが、変装衣装の方は海に浮かんで波に揉まれながら沖に流されようとしていたが、大勢の客達が海に飛び込んで変装衣装に殺到したので、変装衣装の争奪戦が起きていた。




 感想・またはご意見、或いは両方をお願いします。

 と言う訳で、前回で分かった人はいると思いますが、本作でのハイスクール・フリートのコラボ作はルパン三世であります。

 次回はルパン三世のテレビスペシャル初期のオープニング伝統行事であるカーチェイスをした後にハイスクール・フリート原作から逸脱します。

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