ハイスクール・フリート ルパン三世暗殺指令   作:サイレント・レイ

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第9話 横須賀女子海洋学校がピンチ

――― 横須賀女子海洋学校 ―――

 

 

 “ルパン三世、『晴風』を盗む”

 

 此の一報はルパンが『晴風』と共に逃走した直後に瞬く間に日本中を駆け巡り、全てブルーマーメイドの関係者達を震撼させ、一部はある事を予感させた為に恐怖のドン底に叩き落とされていた。

 当然、『晴風』が所属する横須賀女子海洋学校もそうであり、校長・宗谷真雪以下の上層部の面々は2つのテレビ画面各々に映る宗谷真霜と平賀倫子からその事を報告されて、愕然とせざるをえなかった。

 そして2つテレビ画面には真霜が深々と頭を下げ、倫子はスカートと帽子(海面落下時に行方不明)の2つが無しでのずぶ濡れ状態で土下座をしていた。

 

「…此の馬鹿者どもが!!!

呉の生徒まで動員しておいて、良いようにルパンにヤられおって!!!

オーシャンモールの騒動はネットに流出した為に我々は日本中処か、全世界に恥を晒す事になったんだぞ!!!」

 

 元々『晴風』の騒動に色々と疑問を感じていた真雪(達?)は、真霜を通してオーシャンモール・四国沖店で倫子達に『晴風』を捕縛させて、彼女達の取り調べで『晴風』の無実を照明しようとしていて、本来なら戦力に組み込むべきでない『明石』と『間宮』が包囲艦隊に編入されていたのはその表れであった。

 だがその目論みは、不意打ちで現れたルパンによって『晴風』を盗まれた事で失敗に終わってしまい、真雪の部下の1人が真霜と倫子に怒鳴り始めた。

 真霜と倫子は自分達の非を認め、更に部下や呉女子海洋学校の生徒達を責任追及から守る為に何も答えなかったが、真雪がその部下を睨んで止めさせた。

 

「……宗谷一等監察官、ルパンによって『晴風』に逃げられる結果になりましたが、任務ご苦労様でした」

 

『申し訳ありません。

ですが此の1件で『晴風』の反乱艦認定は確実になってしまいました』

 

「そんな事は分かっています。

下がってください」

 

 真雪はポーカーフェイスを保ったまま、真霜を親子関係でなく上下関係のやり取りをしたが、真霜と倫子のテレビ画面が消えると直ぐに溜息を大きく吐くだけでなく、右拳の握る力を強める事で僅かに悔しさを表面化させていた。

 

「…海上安全整備局はどうですか?」

 

「近い内に『晴風』の反乱艦認定の公表に合わせて対『晴風』部隊………いえ、対ルパン三世部隊を編成する等をすると思われますが、現時点ではかなり混乱していて動きが完全に止まってます」

 

「でしょうね。

あのルパン三世が『晴風』に付いているのですから」

 

「しかし、『晴風』を盗んだルパンは本物なのでしょうか?」

 

 海上安全整備局は兎も角、真雪達は、『晴風』自体はほぼ諦めていたが、ルパンは人身売買や性奴隷化等の非人道的な事を一切許さず(ムシ)ろ非力な者(達)を守るか助ける人格者である事から、少なくとも明乃達『晴風』乗員達が丁重に扱われているだろうと思い、只ロリコンではないがルパンの無類の女好きが不安視されるが、落ち着きだしていた事から、ルパンに対する疑問が出始めていた。

 

「とある大資産家の屋敷の全金庫を攻略するだけでなく、夫人の心までもを盗む。(此の影響で夫人は数日間愛しそうに“ルパン”としか言わなくなった)

ニューヨークの自由の女神を気球で持ち去って、アメリカ全土に警戒体制を敷かせる」

 

「凄かったのが、メッカの石油を利用した金庫を攻略する為だけに、南極で地殻変動を起こして中東全域の石油噴出量を激減さける。

スイス銀行を建物丸ごと盗んで、世界中の資産家をパニックに陥らせる」

 

「嘗てイギリス随一の障害競馬レッドアローを出馬したグランドナショナルレース(世界一過酷な障害レースと称され、リヴァプール郊外で行われる世界最高額賞金額の障害競走)の最中に盗み出す。

後日、レッドアローが激太り状態で返品された事は笑い話になったな」

 

「見つけた財宝や、盗んだ札束や金塊に宝石の総額は最早数値化出来ないと言われてるからな」

 

「思えば、あんな化け物をよく相手にしているな、警察の連中は…」

 

「でもルパンは低価値な品やガラクタ当然の物を稀に盗む事はあったが、軍事兵器や艦艇の盗みは聞いた事が無いぞ」

 

 一部耳を疑うようなルパンの所業が次々に口に出されていたが、近年の日本を騒がした著名な怪盗達とは一線を超え、欧米最強の怪盗たるアルセーヌ・ルパンの孫に相応しい存在なのがルパン三世だと判断していた。

 だがそれでも全員がルパンが『晴風』を盗むとは思えずにいたが、真雪がまた溜息を大きく吐いた。

 

「いえ、ルパンが艦艇を盗んだ事は1度だけ有ります」

 

 真雪の言葉に全員が一斉に「えっ!?」と叫んだ。

 

「今から20年近く前の1993年、ロシアは“最大”“最強”“最新”の三冠を有する原子力潜水艦『イワノフ』を竣工させて、欧米に軍事的緊張をもたらし原潜中心の軍拡競争が起きかけました。

ですが『イワノフ』は軍に引き渡されたその日、厳重な警戒態勢を掻い潜ったルパンに容易く盗まれてしまったのです。

南太平洋の海底に眠る海賊キッドの秘宝を手に入れる為だけに盗まれて、あっさり乗り捨てられて沈みました」

 

「イ、イィ『イワノフ』は、処女航海での原子炉の事故で沈んだんじゃなかったのですか!!?」

 

「それはロシアが世界中にばら蒔いた欺瞞(ウソ)ですよ。

ロシアでなくても、ルパンに盗まれて沈んだだなんて、赤っ恥を晒すような事を普通はしないでしょう。

だから『イワノフ』の真実は、軍やブルーマーメイドで当時現役だった者達だけが知っているんです」

 

 真雪から原潜『イワノフ』の衝撃の真実を伝えられ、唖然とせざるをえなかった。

 

「だとしたら、ルパンは何故『晴風』を盗んだと言うのですか!!?」

 

「『イワノフ』で海賊キッドの秘宝を狙った様に、『晴風』を使って宝探しをやるとは思えません!」

 

「『晴風』に宝が隠されているとも、秘宝の在処(アリカ)が有るとも思えませんし…」

 

「まさか意中の女を口説く為とかの、ふざけたのじゃないだろうな?

1908年型のパッカードを盗んだ時のように」

 

「おそらく、ルパンにとって『晴風』強奪は通過点の1つ、欲したのは『晴風』その物ではなく『晴風』の乗員達だったのでしょう。

ルパンの真の狙いは大和級、逃げた方向から推測して狙っているのは、当校所属の大和級二番艦『武蔵』。

私はてっきりルパンは『大和』を狙うと思ってましたがね…」

 

 真雪は敢えて『晴風』から大和級が狙われたのを言わなかったが、『武蔵』がルパンに狙われた理由としたのは消去法からで『大和』は先述の通り、三番艦『信濃』は『大和』と同様に長期ドック入りの最中、四番艦『紀伊』は所属する佐世保女子海洋学校の長期遠洋航海の艦隊に組み込まれていて現在は南大西洋にいるからであった。

 だが真雪は『武蔵』強奪もルパンにとっての通過点であると思っていたが、それ以降ルパンが『武蔵』を使って何をしようとしているかまでは分からなかった。

 

「だとすれば、不味いですよ!!!

『武蔵』は他の教育艦共々通信途絶の所在不明になっているんです!」

 

「『武蔵』までルパンに盗まれたとなったら我が校(横須賀女子海洋学校)処か、日本ブルーマーメイド全体に影響を及ぼす大騒動に発展する!」

 

「探せ!!!

なんとしてでも『晴風』と『武蔵』を探すんだ!!!」

 

「佐世保女子海洋学校に『紀伊』を急ぎ呼び戻すように伝えろ!

呉女子海洋学校と舞鶴女子海洋学校に『大和』と『信濃』を早期にドックから出せないか確認するんだ!」

 

 真雪は部下達がパニクりながらの動きを冷めた目で見詰め、“海上安全整備局の混乱もこんな感じで此処以上なのだろう”と思っていた。

 

「……どのみち、静観が最悪の選択肢になるのだから、戦わざるをえないと言う事ね。

あのルパン三世と…」

 

「更に不味い事に、ルパンはブルーマーメイドの複数人を殺していますので、かなり危険な状態と予想されます」

 

 真雪に全員が頷くと同時に、顔を引き吊らせていた。

 と言うのも、ルパンの盗みは人の善悪を試すリトマス試験紙に近い性質を持っていたからだ。

 例えば、倒産寸前のフロリダ州マイアミの極小銀行がルパンの盗難被害にあった事で僅か1年でフロリダ屈指の大銀行となり、善意を尽くしていたら被害額の何乗の利益を得る事が出来るので、銀行や宝石店の一部では“ルパンの盗難被害にあう事が超一流のステータス”と捉えていたので、盗みに入ったルパン(達)を歓迎する困った店舗がそれなりにいた。

 処が逆に悪事を重ねているとルパン(稀に銭形の場合有り)によって破滅する事となり、此の一例として国家ぐるみの偽札製造が露見して国家崩壊に至ったカリオストロ公国(現在はフランスの保護観察下で観光立国として国家再建中)はあまりに有名だった。

 海上安全整備局の現状を見る感じだと、どうやらブルーマーメイドには破滅に繋がる悪行が有るらしく、それが本騒動で露見するのを恐れている様に見えた。

 

「そうは言っても、ルパンを相手とするなら、日本中のブルーマーメイド全員を総動員しても足りません」

 

 更に怯える理由の1つ、湾岸戦争での経済不況を払拭しようとした欧米各国(&日本)が、ルパン一世の財宝を獲得しようと、その財宝の在処を知るだろうルパン三世を狙っての多国籍軍(アメリカを主体にイギリス、フランス、イタリア、ドイツ、カナダ)を結成するも、ルパン達には逃げられて財宝は特許申請書付きの真空管ラジオ(当然、現在の価値は1文無し)だっただけでなく、経済政策ミスをルパン一世の財宝で補って秘匿する計画が暴露、此の騒動で歴史的貴重品・ナポレオンの辞書の損失に戦場となった重要文化遺産・ニプル城が完全崩落した事もあって、世界中から非難が殺到して辞任・解任・総辞職が相次いだ事があったからだ。

 

「だからと言って逃げるわけにはいかないでしょう」

 

 また言うが、ブルーマーメイドにとって現時点では静観は選択肢としては最悪であり、しかも此の騒動でブルーマーメイド正規隊員に複数の殉職者が出てしまっていたら尚更であった。

 

「先ずは打てる手は全て打ちましょう。

可能性は極めて低いですが『武蔵』が悪用された事を想定して、先程の意見通り『大和』と『信濃』の早期復帰、『紀伊』の早期帰還を各校に要請!」

 

 方針が決まった事もあってか、真雪の指示に全員が揃って「了解!」と答えた。

 

「それと、遺憾だけど、警察庁に連絡してルパン三世の情報提供、出来ればルパン三世専従捜査官・銭形警部の出向を急ぎ要請!」

 

 警察庁に対する2つのみは、真雪自身を含めた全員が了解しながらも嫌そうにしたが、此れは世界的にもブルーマーメイドと警察(ICPO)が極めて仲が悪いからであった。

 特に日本の場合、元々政府が警察とブルーマーメイドを相互監視態勢として意図的に険悪にしていて、日本領土が徐々に水没している事に合わせて警察の影響範囲が失われて反比例してブルーマーメイドは拡張を続けていた為、世界でも屈指の犬猿の仲と化していた。

 まぁ日本警察とブルーマーメイドの間で無用な揉め事が度々起きているのが珠に傷だったが、少なくともブルーマーメイドによって組織的腐敗による自己満足の暴力機関と化した特別高等警察が解体に追い込まれたのを初めに、警察の冤罪行為や無茶な取り締まり等が暴露されていたのだった。

 だからか、真雪は警察への協力要請に軽く苦笑をしていたが、此処でオーシャンモールでの出来事の違和感をいくつか気付いた。

 

「…オーシャンモールの四国沖店には警察が駐在していましたよね?」

 

「ええ。

あれだけの規模ですから、機動隊だけでも1個大隊くらいはいた筈です」

 

「ルパンが騒ぎを起こしている間、彼等は何をしていたの?

黙って静観していたと言うのですか?」

 

「……我々ブルーマーメイドが動いていたからじゃないのですか?」

 

「それをあの猪突猛進の銭形警部が我慢出来ますか?

そう言えば、銭形警部はオーシャンモールに現れなかったのですか?」

 

 真雪を呼水として、全員がオーシャンモール・四国沖店での警察の動きに疑問を感じざざるをえなかった。

 そんな時に、廊下の方から多数の足音が地鳴りに似た形で響き出し………大扉が勢いよく開くと同時に大多数の機動隊が雄叫びを上げての楯を前に翳しながら駆け込んできた。

 真雪達がまさかの機動隊の登場に驚いて硬直してしまったが、機動隊が入り口付近で複数の横列を構成し、体勢が整うと中央部が斜め前の左右に移動して、そこから警視庁の最高責任者である警視総監・白馬高昭が刑事や警部を多数従えて歩み寄ってきた。

 地域的に本来なら現れるべき神奈川県警でなく警視庁(東京都の警察)だった事もそうだったが、警視総監たる白馬が陣頭指揮で来るとの異常事態なのだから、真雪達は驚き戸惑うしかなかった。

 

「こんな時期にこんな形で失礼をした事だけはお詫びしますよ、宗谷校長」

 

「白馬警視総監、此れはどう言う事ですか!?」

 

「勿論、ルパン三世に関連した事で来たのです」

 

「此所にルパンが潜んでいると言うのですか!?」

 

「そうではありません。

我々はルパンではなく、貴女を求めて来たのですから」

 

 そんな真雪達を無視して、白馬は一歩前に出て胸を張って言い放った。

 

「横須賀女子海洋学校校長・宗谷真雪!!!

貴女を本騒動に於いての公務員職権濫用、そしてルパン三世への共犯及び機密情報流出、此れ等の疑いで身柄を拘束する!!!」

 

 白馬の通達に真雪達が驚き戸惑いの極みで硬直したが、白馬は立て続けて真雪の連行を命じ、刑事や機動隊の隊員達の何人かが直ぐに動いた。

 

「ふ、ふざけるな!!!」

 

「何をもってなんだ!!?」

 

 横須賀女子海洋学校側も真雪を守ろうとしたが、抵抗空しく真雪は機動隊隊員に両脇を固められる形で連行されていった。

 ルパンの『晴風』強奪に加えて真雪の連行だけでも相当なショックだったが、此の数刻後には真霜もオーシャンモール・四国沖店での業務上過失の疑いで警察に拘束、更に数刻後には海軍陸戦隊や陸軍化学防護隊と共に海上安全整備局に強制捜査として突入を開始する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 成田 ―――

 

 

 陸軍の無茶な地上げや立ち引きに建設開始時の反対運動の殲滅戦に近い弾圧が行われた後に建設された飛行船専用基地が民間への払い下げを成り立ちをした成田空港は、日本最大のハブ空港を経由して、20世紀初頭から始まった日本沈降によって機能を失いつつある羽田空港から国際線機能の移転で、現在は日本最大の空港に登り詰めた。

 此の日の夜、その成田空港に特別便の飛行船が着陸しようとしていて、飛行船の着陸を警察庁長官・浄園裕が後ろに横1列に並ぶ大多数の部下達と共に緊張した顔立ちで待っていた。

 そして飛行船から下ろされた(モヤ)い全てが整備員達によって固定され、タラップが掛けられた先の扉が開いた奥からICPO本部長ジャン・ピエールが現れた。

 

「御待ちしていました、ジャン本部長!!!」

 

「御迎え御苦労です、警察庁長官」

 

 浄園は部下達と揃って敬礼しながらタラップを下りるジャンを出迎え、ジャンも下りきると浄園達に答礼した。

 

「私の提案した計画はどうなってます?」

 

「全て順調です!

ブルーマーメイドの横須賀女子海洋学校が騒動を起こしてますが…」

 

「その事は飛行船の中で聞きました。

ついさっき銭形君からの通信報告だと、ルパン達はそれを上手く利用している様だ」

 

 ジャンの返事を聞いて、浄園は強張めていた表情を若干緩めた。

 

「合同記者会見の準備は出来てますが、どうします?」

 

「いえ、今日はもう遅いですから、後日改めてやりましょう」

 

 ジャンは浄園に先導されて、待機されていたリムジンに乗り込んだ。




 感想または御意見、或いは両方でもいいので宜しくお願いします。

 補足情報ですが、海上安全整備局のは前回の末で行われた銭形の通信で急遽行われましたが、宗谷親子のは冤罪覚悟の元から予定されていたモノです。
 此れは宗谷親子にルパン達の行動を妨害されたくなかった事を主としています。

 更に裏設定として、真雪は何時のかは不明だがルパンが起こした騒動に銭形指揮下で参加した事が1度あるとしています。
 但し真雪は兎も角、ルパン(達?)は会ってないので全く知らない、銭形は此の事を完全に忘れているとしています。

 尚、宗谷親子の罪状は知識無しの自分なりに考えたモノなので、間違っていると思ったら、代わりにすべきモノを上げてください。

貴方にとってのルパン三世は?

  • 1世たる“山田康雄”
  • 2世たる“古川登志夫”
  • 3世たる“栗田貫一”
  • 実写版1世たる“目黒裕樹”
  • 実写版2世たる“小栗旬”
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