湯島天神から本郷方面に向かう春日通りを折れると、江戸の屋敷跡をしのばせひっそりした一角に、公園がある。
文京区立切通公園で、園内は三つの部分に分かれ、まず入口は奥行きの深いケヤキ並木、ここを通り抜けると中央は砂場と注進した子供の遊び場。1番奥の部分が洋風庭園となっており、藤枝、花壇、水飲み場などがある。
新聞配達の少年が洋風庭園のベンチに倒れている女を見つけたのは、午前5時半ごろの事だった。
少年の通報で、直ちに所轄の本郷署から捜査員が直行した。
ベンチからずり落ちた格好で絶息していた女性は、20代半場、泡を穿いていた。
死体のはなっ先には、半場からになっていたレモンティーの缶が転がっている。
女の口の辺りに鼻を近づけた鑑識員は、次の空き缶の臭いをかいてから刑事に言った。
「青酸系の毒物らしいですな。」
「遺留品は?。」
鑑識員は慎重に手つきで女のバックから財布を取り出した。
財布には5万円ほどの現金と免許証が入ってた。
「尾崎直美、住所は金沢市」
金沢市という地名から、昨日起きた夜行列車「北陸」で殺された男の殺害犯として追っていた刑事は、万が一を考えて、上野署に設けられた捜査本部に連絡した。
その連絡を受けた本部からは、折からその場に居合わせた捜査一課のベテラン、藤岡部長刑事と上野署の刑事課で最も若い小林刑事が駆けつけてきた。
藤岡、小林両刑事は現場に現れた時、鑑識作業は終わっていた。
「女は青酸入りのレモンティーを飲み、死亡しました。その缶からは、本人以外の諮問鹿採取されませんでしたので、まず自殺とみていいと思いますが、断言はできません。」
「死亡推定時刻は?。」
「詳しいことは解剖の結果を待たなくてはなりませんが、昨夜の9時から12時までの3時間と見ていいと思います。」
「もしこの女が「北陸」で殺害した山根の元妻だとしたら。」
「うん。」
「それにしても、〈北陸〉が上野に到着したのは昨日の朝の6時過ぎです、それから夜に至るまではどこへあるいたんでしょうか。」
「妻を奪った男への恨みを晴らした後、死に場所を探していたかもしれないな。」
「ええ。」
その後、切通公園で女性の死体が発見されたと特捜班に伝えられた。
「えっ、切通公園で女性の死体。」
「ああ、被害者の身元は尾崎直美だ。」
「班長、死因は?。」
「死因は毒殺だ、レモンティーに混入されていたのは青酸系の毒物だ。」
「青酸系の毒物か。」
「班長、「北陸」の個室寝台と切通公園で起きた殺人は被害者の尾崎に罪を着せて口封じで殺害したのではないでしょうか。」
「ああ、恐らくな。」
「本郷署では自殺ではないかと疑われたが、毒入りのレモンティーを渡した人がいたかどうかだ。」
「よし、早速捜査してみましょう。」
「うん。」
そして、特捜班は個室寝台で起きた事件の捜査を続けていた。
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恨みの犯行か、そしてどうやって個室に入って殺害したのか?