愛と真実の悪を貫く!!   作:柴猫侍

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◓前回のあらすじ

コスモス「南を目指しましょう」

レッド「橋使えないってさ」

コスモス「ギーッ」


2:地平線の彼方から
№010:嵐の前の静けさ


 

 

 ホウジョウ地方とセトー地方の特徴を一つ挙げるとすれば、大抵の町が海沿いに存在することだろう。

 それ故、その気になれば陸路ではなく海路だけを進んで地方を巡るといった旅の方法がある。

 

 無論、旅とは言うものの内容だけで言えば観光目的の旅行のようなものだ。

 ジム巡りを目的とするならば、道中の野生ポケモン捕獲のために陸路を進んだ方が賢明だろう。

 しかし、万が一トラブルがあり陸路を通れない―――あるいは急ぎの用がある場合は、直通の船やサメハダータクシーに乗った方が早い場合もある。

 

 ホウジョウとセトーは海と共に栄えた。

 そう、海とは切っても切り離せない関係なのだ。

 

「キョウダンからオキノまで凡そ一日……今日はゆっくり船の上で過ごしましょう」

「……」

「先生?」

「オレ、フネ、ヨう。トイレ、イく」

「船酔いですか」

 

 船に乗り込んだ矢先、顔色を悪くするレッド。

 山に居た時間が長すぎたか―――本人はそのように推察しているが、なんてことはない。元々そういう体質なだけである。では、カントーからホウジョウに来る間はどうだったのか? PPが切れるまでオーロラビームを吐き出していたに決まっている。

 

 名前とは裏腹に真っ青な顔を浮かべる彼は、今にでも口から自主規制の虹色(オーロラビーム)を吐き出しそうになっていた。

 見るに堪えない情けない姿であるが、他人の体調不良を前にも動じないコスモスはリュックから何かを取り出す。

 

「そんなこともあろうかと酔い止めを購入していました、どうぞ」

「タスかる、オレ、カンシャスる」

「お大事に」

 

 人の優しさに触れた怪物のような口調になるレッドを見送る、コスモスは一人甲板に残される。

 

「さて、一人ではすることもありませんね……」

 

 レッドの体調が良ければバトルの指南でもつけてもらうつもりだったが、胃の中がグラスミキサーされているのでは仕方がない。

 ただ海を眺めて暇を潰す―――時間の無駄だ。

 となれば、やることは一つ。

 大概、暇なポケモントレーナーが行うことと言えば限られる。

 ポケモンが動き回れる広い場所へと赴けば、賑わいを感じさせる歓声が耳に入って来た。

 

「やってますね、ポケモンバトル」

 

 白熱した模様を見せるポケモンバトルが、わざわざ甲板に用意されたバトルコートで繰り広げられていた。

 ジョウトから来る際に搭乗した船も同じであったが、大概旅客船というものにはポケモンバトル用のコートが用意されているものだ。

 己を高めたい者、娯楽として興じる者、ポケモンと友好を深めようとする者など、この場に集う者たちの目的は違うかもしれないが、バトルを挑んで断る者はそうそう居ない。大抵は快く受け入れてくれるものだ。

 

「お? 君もバトルしに来たクチかい?」

「ええ、まあ」

 

 手頃な相手を探そうと物色していたところ、早速一人がコスモスに声をかけてきた。

 

(これは……中々)

 

 弾かれるように振り向けば、そこには中年でガタイの良い男性がワインレッド色のスーツに身を包んで立っていた。

 綺麗に整えられた顎髭からは、そこはかとないこだわりを感じられる。

 体の各所にちりばめられている装飾品は、下品な絢爛さこそないが、決して安くない良質なものであった。

 

 ここまできっちりとした装いをする者となれば、良い役職にでも就いているのだろう。

 などと、失礼な視線を向けていたコスモスは、思考を本題へと戻す。

 

「バトルの申し込みですか?」

「お、話が早いねぇ! でも、バトルしたがっているのはオレじゃなくて……」

「?」

「お~い、リーキ!」

 

 チラリと男性が視線を移す先。

 日陰になる場所に座っていたコスモスと同じぐらいの少女が、男性に呼ばれるや駆け足でやって来た。

 

「オレの娘……リーキって言うんだが、バトルしてやってくれないか? 外交的なオレと違って内気な子でな、わっはっはっは!!」

「パ、パパ……」

「っとぉ、悪い悪い!」

 

 父親である男性の袖を掴む少女が、ジッとコスモスを見つめる。

 確かに外交的―――というよりも豪気そうな性格の父に対し、大人しい性格であるようだ。白いワンピースに茶色い長髪と麦わら帽子が似合っている。

 見るからに育ちが良さそうな少女に一瞬顔をしかめてしまったものの、コスモス自身は売られた喧嘩(バトル)は買う主義だ。野良試合のほとんどは“経験値”として見ている。

 

 断る理由もなく「いいですよ」と二つ返事で了承した後は、「リーキ」と紹介された少女と共にバトルコートが空くまで座って待つことに決めた。

 熱い歓声が聞こえてくる中、日陰を涼やかな海風が吹き抜けていく。

 うっかりすれば寝落ちてしまいそうな心地よさを覚えるコスモスであるが、不意に真横から近づいてくる人影により、自然と意識が覚醒する。

 

「なにか?」

「あ、え、えぇっと……お名前……」

「リーキさんですよね。私はコスモスです」

「コスモスさん……ですね。改めまして、わたしはリーキ……です。生まれはオキノタウンで……す。コスモスさんはどこの生まれで」

「どこの生まれ……ですか。キキョウシティということになってますね」

「キキョウシティ……と言うと、あのマダツボミの塔がある町ですね!?」

 

 突然前のめりに近づいてくるリーキ。

 さっきまでのお淑やかさはどこへやら。フンフンと鼻を鳴らし、頬を紅潮とさせる彼女は明らかに興奮した様子だった。

 その勢いはコスモスのルカリオが咄嗟に割って入る程。

 だが、悪意を一切感じられない彼女を強く押しのける訳にもいかないルカリオは、ほどほどの力で押さえるに留まる。

 

 しかし、それで彼女が引いた訳ではない。

 

「マダツボミの塔と言えばキキョウシティを代表する修行僧の修行場!! ジョウト地方に見られる伝統的な建築方式で建てられた三重塔は文化財のみならず一種の芸術品として評価されています!! 一説によれば30メートルを超えるマダツボミが塔の柱になったとか!! それは定かではありませんが、そのマダツボミの体の如く柱が揺れる柔構造から地震に強いとも言われ、ジョウト地方とも所縁のあるオキノタウンでも似たような建築方式の建物が……はっ?!」

 

 コスモスが硬直している姿に気づき、ハッとしたリーキが恥ずかしさから頬を染める。

 その様子に苦笑を浮かべる父親の男性は、「すまんな」と一言置いてから一方的に話を聞かされていた―――というより叩きつけられていたコスモスに目を向ける。

 

「わっはっは! 急に饒舌になって驚いたろ。うちの娘は所謂歴史オタクって奴でな」

「……何事も造詣が深い分にはイイコトだと」

「お、そうか! 良かったぁ、リーキ!」

「パパ! そういう風に言うのはやめてって……! もう! あっち行って!」

「な、なんだって!? オレはお前のことをこんなにも大事に思っているのに……!」

「距離感が気持ち悪いの! オジサンなのを自覚して! あと最近加齢臭がするから物理的に近いのも無理なの!」

「ん゛っふ!」

 

 娘の罵倒が効いたのか、途端に顔色が悪くなった男は「あとは……任せていいかい?」と死にそうな面持ちで去っていった。

 どの世界でも娘に罵られる男の背中は見るに堪えないものだ。

 こちらまで陰鬱になりそうな―――ルカリオが哀れみの瞳を浮かべる程の哀愁が漂ってくる。

 

「……」

「ご、ごめんなさい……ああでもしないと、パパったらズケズケ話に入ってくるから」

「いえ、気にしませんから」

「ありがとうございます……それにしても順番まだですねぇ」

 

 未だバトルは続いており、中々終わりそうな気配がない。

 コスモスにとっては終わるまで待機するなど苦でもない話だが、やや人見知りなきらいのあるリーキにとってはその限りではなかった。

 会話の間が持たないのを恐れているのか、沈黙が流れた途端焦り始める彼女は、何か話題でも思いついたのか「あっ!」と海岸を指さす。

 

「見て下さい! あそこにはミズゴロウの巣があるんですよ!」

「ミズゴロウですか。……見えませんね」

「あれ、おかしいなぁ。普段ならそんなことないのに……」

 

 普段は巣穴近くで戯れるミズゴロウが窺える観光スポット。

 しかし、今はどうだろう? 巨大な岩に巣穴を覆い隠されており、ミズゴロウ一匹見ることも叶わない。

 折角の話題の種を潰されたリーキは難しそうな顔を浮かべる。

 片やコスモスは、ミズゴロウについてポケモン図鑑で調べていた。

 

「ミズゴロウ、ぬまうおポケモン。頭のヒレはとても敏感なレーダー。水や空気の動きから目を使わずに周りの様子をキャッチすることができる……と」

「そうそう、進化形のラグラージは一際その能力が凄くて。パパのラグラージも嵐を予報したりできるんです!」

「じゃあ、もうすぐ嵐が来ると」

「そ、そんな! 天気予報は晴れでしたし、そうでなければ運航だって……」

 

 困惑するリーキ。

 それもそうだ。予め嵐と分かっているのならば船など出さない。

 しかし、時にポケモンは人の技術では計り知れない自然の変化を感じる。

 

 では、もしかするとあの光景も―――?

 

 胸騒ぎを覚えるコスモス。

 その時、それまで聞こえていた歓声がどよめきへと変わった。

 

「な、なんだアレ……!?」

「おい、空が……」

 

 ただならぬ気配を覚えて振り返れば、海岸と反対側の遠洋の空が暗雲に覆われている光景が見えた。

 これから嵐でも起こるかのような空模様。

 唐突な雲行きの変化は海にも影響をもたらした。みるみるうちに時化と化す海に船体が大きく揺られ、中には体勢を崩し倒れてしまう者も現れ始める。

 

「皆さん! 天気が荒れてまいりましたので、ただちに船の中へと避難してくださぁーい!」

 

 そこへ駆け足でやって来た船員が指示を仰ぐ。

 危険なのは火を見るよりも明らかであり、大抵の者は素直に従って船内へと帰る。

 だが、一部の者は野次馬根性でその場に留まり、荒れる海と空をカメラやスマホで撮影していた。

 

「あの人たち、避難してって言ってるのに……」

「ああいうモラルのない人間にはなりたくないですね。さあ、行きましょうか」

「わたし、ちょっと一声かけてきます」

「そういうのには関わらない方が……」

 

 野次馬へ注意に向かうリーキを止めに掛かったコスモスであったが、一歩制止が間に合わず、彼女はそそくさと向かっていってしまった。

 

「はぁ、まったく……」

 

 止める義理もないが、一緒に居たリーキとはぐれている姿を父親の方に見られるのも都合が悪い―――と、そこまで頭が回った訳でもないが、何の気なしに後を追うコスモス。

 

「……ん、風が……」

 

 だが、突如甲板を吹き抜けた強風に立ち止まった。

 目を開けられないほどの勢いの海風に、髪もバサバサと激しく暴れる。

 あまり髪型に頓着しない性格とは言えば、ボサボサのまま放っておくほど無感心でもない。

 

 コスモスは瞼を閉じたまま指を櫛代わりに梳こうとした―――が、

 

「……歌?」

 

 不意に聞こえてきた歌に手を止めた。

 不可解に思ったコスモスの耳には、すぐさま警戒心を露わにするルカリオの唸り声が入ってくる。

 ただ事ではない。

 すぐさま瞼を開き、見据えた先には()は居た。

 

 

 

―――(しろがね)の巨体が。

 

 

 

 ***

 

 

 

「うぇろろろろろ!!」

 

 レッドの オーロラビーム!▼

 

 と、トイレの個室にレッドは立て籠もっていた。

 酔い止めを処方され、少しは良くなるだろう―――そう踏んでいた矢先での時化だ。船体が大きく揺さぶられる度に、落ち着いていた胃の中が暴れること暴れること。

 気分としては、トキワジムの移動床に乗って高速スピンを決めた時と同じだ。

 

(おかしいな、サント・アンヌ号やシーギャロップ号に乗った時は平気だったのに……)

 

 ワクワクは時に船酔いさえ支配する。が、今はその時ではなかった。

 さながら、胃の中はきのみブレンダーの如くかき混ぜられている。

 またもや吐き気を催して蹲る。

 すると、

 

「おろろろろろ!!」

 

 どうやら他にも()が居たようだ。

 隣の個室からもオーロラビームを出す音が聞こえてくる。

 

「ぜぇ……はぁ……うっぷ!」

「……貴方も……船酔いですか……うっ!」

「おっと……先客が居たか……っぷぉ!」

「船……苦手なんですか……?」

「いやぁ……そこまでじゃ……でも、ちょっと娘に強く当たられたんで、酒を一杯ひっかけたらこの様で……下戸なんでねぇ」

「なるほど……世知辛いですね……」

「まったく……結婚して二十年。妻も娘も愛してきたつもりなんですが、事あるごとに邪険にあしらわれる……フッ……」

「……きっと……分かってくれる時が来ますよ」

「そうですか……何と言いますか、貴方とは気が合いそうだ」

「そうですね……あ、ちょっと失礼」

「ええ、オレも」

「「オロロロロロッ!!」」

 

 何とも情けない後ろ姿を晒す男二匹。

 だが、無情にも船はより大きく揺れるばかりだ。

 しかも刻一刻と揺れが激しくなる。これには流石に二人も「おかしい」と面を上げた。

 

 刹那、妙な浮遊感と共に船体が上下に揺れる。

 内臓がフワッと浮き上がる感覚に、レッドはさらなる吐き気を催すものの、それどころではない状況を察して立ち上がる。

 

 ふん! と腹筋に力を入れれば、自然に食道が塞がる―――ような気がした。

 ともあれ、幾分かマシになったレッドは急いで個室から飛び出し、続けて現れた中年の男性と共に通路へと向かう。

 

「あぁ、どうも」

「こちらこそ……って、そんな場合じゃないようだなぁ、こりゃ! っとぉ!?」

 

 一際大きな揺れが襲い掛かると共に、今度は斜めに傾く船体。

 すると、通路の奥で転がり落ちる人の何人かが、欄干を超えて海へと投げ出されるではないか。

 

 まずい―――頭が理解するよりも早く、レッドと男の二人はボールを投げた。

 

「フシギバナ、“つるのムチ”!」

「マンムー、“つららばり”だ!」

 

 ボールから飛び出た二体のポケモン。

 背中の花を揺らしながら繰り出されたフシギバナは、葉の陰から無数の蔓を伸ばすや、自身の体の固定と遠方に放り出された旅客の回収をこなす。

 一方、マンムーは冷気より生み出した氷の針で、旅客の服()()と船体を貫く形で落下を防ぐ。しかも氷柱よりあふれ出る冷気は、そのまま強固な留め具と化していくではないか。

 

「危ない危ない……」

「いいや、まだみたいだな! 外を見てみな!」

「外?」

 

 言われるがまま視線を移す。

 なんだ、やけに海が遠のいているように見える。気のせいだろうかと今度は陸地の方を向く。

 遠い。というか低い。上から見渡しているからか、普通に海岸から見渡しているだけでは見えなかった森が広がって見えている。それも普通に船に乗っているだけではありえないほどに。

 

「この船……浮いてる……っ!?」

「みたいだ! そもそもなんで浮いてるか確認せにゃ話にならんがな!」

「心当たりは……」

「……あるにはある! が、実際に目で見にゃ何事も分からんさっ!」

 

 そう言うや、男はネンドールを繰り出す。

 辛うじて手すりに掴まっていた男は、ネンドールに指示し、自分を“サイコキネシス”で浮かばせた。

 

「君! 飛べるポケモンは持ってるか!」

「……一体だけなら」

「なら、他にも助けが要りそうな乗客が居ないか飛んで回ってくれ! 頼んだぞ! 俺は甲板の方に行く!」

 

 慣れた口振りで端的に指示を飛ばす男は、そのまま浮遊して去っていった。

 言われるがままリザードンを繰り出すレッド。しかし、その背中に乗ることはせず、あろうことか傾いた船の手すりを雲梯のように用いて進んでいく。

 

「俺のことはいい。他の人を助けるんだ」

「バギュアッ!!」

 

 自分を背に乗せるスペースが惜しい。そういう訳だ。

 だからといって腕力に物を言わせて船にしがみつくのはどうかと思われても仕方がないが、彼に背中を押されたリザードンは、力強く羽ばたくや、あっという間に目の前から飛び去って救助に向かった。

 できることならば、リザードンに加えて別の手持ちも救助に参加させたいところだ。

 だが、残るカメックス、ラプラス、カビゴン、ピカチュウは少なくとも今の状況に適しているとは言い難い。

 

(仕方ない……俺が行くしか)

 

 ポケモンがダメなら人力で。

 素でそう考えるレッドは、自身も並外れた身体能力で人命救助へ向かう。

 その時、

 

『ギャアァース!!』

「ッ……ポケモンの鳴き声?」

 

 甲板から轟く鳴き声。

 聞いたこともない―――それでいて凄まじい重圧(プレッシャー)を覚える鳴き声だ。こんなに離れていても肌がひり付くのだから、目の前に居れば委縮してしまうに違いない。

 

(甲板にはさっきの人が行ったけど……)

 

 脳裏に過るのはコスモスの安否だ。

 先日の一件がある。彼女のことならば、事件の渦中に居てもおかしくない―――不思議と確信があった。

 一瞬の逡巡を経て踵を返すレッド。

 杞憂であればいいと願うものの、どこかぬぐいきれない一抹の不安を覚えつつ、彼は甲板へ向かって突き進む。

 

 

 

 硬い意志に燃える真紅の瞳を煌かせながら。

 

 

 

 ***

 

 

 

 甲板では現在嵐が吹き荒れていた。

 空は黒雲に覆い隠され、海は無数の渦潮で荒れに荒れている。吹きすさぶ強風を前には目を開けることさえもままならない。

 体を打ち付ける土砂降りの雨も降ってくる中、飛ぶようにやって来た男は、泳ぐように宙を舞う銀色の巨体を前にほくそ笑んでいた。

 

「これはこれは……出会えて光栄だな、()()()よ……」

「……」

「ところで一つ聞きたいんだが……うちの娘知らないか? そこに落ちてる麦わら帽子の持ち主なんだがな?」

「……」

「全部が全部あんたの仕業ってんなら……ちょっと手荒な真似くらいじゃ済まなくなるな、()()()!!」

 

 男は叫ぶ。

 その声に瞳を細める銀色の巨体―――ルギアは、一度大きく翼を羽ばたかせる。

 巻き起こされる風は、たまたま柱に引っかかっていた麦わら帽子を吹き飛ばす。

 

 

 

 だが、その持ち主も―――最後まで傍らに居た少女の姿さえ、今はこの甲板の上には居なかった。

 




Tips:リーキ
コスモスと同い年の長い茶髪女の子。
普段は内気な性格で人見知りなきらいがあるが、歴史の話になると話が止まらなくなってしまう熱狂的な一面も備えている。
オキノタウン出身であり、時折善意で余計な口を出してくる父親にはほとほと困り果てている様子。

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