愛と真実の悪を貫く!!   作:柴猫侍

32 / 62
◓前回のあらすじ

レッド「なんかデパートにたくさんポケモン湧いて出てきた」

コスモス「それを全部倒すなんて流石です」

ホムラ「えぇ……」


№031:かもしれない運転は大切

 青い空。

 白い雲。

 耳朶を打つさざ波の音は自然の清涼剤だ。乱れた心を穏やかにしてくれる不思議な力がある。

 

 ここはスナオカタウン───の一角にあるプライベートビーチ。

 小粋な柄のビーチパラソルが差された砂浜には、二人の人間の背中が見える。

 

「どう、日光浴? ポカポカしてきません?」

「私には暑いですが」

「太陽と炎は似てるの。強過ぎれば傷つけてしまうけれど、こうして皆を温めてもくれる」

「私には暑いですが」

「ジブンは太陽みたいな人間になりたいんです。皆に温もりを与えられるような、優しい炎に……」

「私には暑いですが」

 

 と、ある意味我が道を行く者同士のポケモントレーナーたちは会話を繰り広げていた。

 

 片や普段よりラフな格好にも関わらず晴天の暑さにやられて汗だくだくのコスモスと、片や女児の眼前でマイクロビキニ&サングラスという破廉恥極まりない恰好を披露するスナオカジムリーダー・ヒマワリである。

 

「……お気には召さない?」

「暑いのは苦手です」

「あちゃあ。それは残念」

 

 口ほど残念がってはいないヒマワリがサングラスを外す。

 

「あんなこともあったから気分転換になると思ったんだけど」

「私にとっては些細な事件ですので」

「メンタル強いんだ」

「割り切れる方だと自負はあります」

「そっか」

 

 緩く言葉を交わしながら、持ってきたクーラーボックスを開く。

 

「何飲む?」

「……ドクター・ペリッパーで」

「美味しいよね、それ。杏仁豆腐みたいで」

「杏仁豆腐とは思いませんが」

「あちゃあ」

 

 違ったか、とはにかむヒマワリはサイコソーダを手に取る。

 キャップを回せばソーダの風味が炭酸と共に溢れ出、潮風に交じった爽快な香りが鼻腔を吹き抜けた。

 続いてコスモスも受け取ったドクター・ペリッパーを開ける。ヒマワリが言った通り、味わいや香りは杏仁豆腐に近い。人によって好みが分かれる風味であるが、杏仁豆腐の好き嫌い以前に時たま飲んでいるコスモスにとっては些事であった。

 

 チビチビと口に含み、一服。

 クーラーボックス内でキンキンに冷えていた液体が喉を通過し、体の内側へと降りていけば、心なしか体温がいくらか下がった気がする。

 

(……なんで私はここに……)

 

 熱でボーっとしていた思考が冷静になっていく。

 

(そういえば───)

 

 

 

「……事情聴取が済んで疲れた時に、助けてくれたジムリーダーの人が自宅のビーチでリフレッシュしたらどうかって提案してくれたけど休めてる……?」

 

 

 

「先生」

 

 コスモスが全部説明してくれた声の方へと振り向けば、ピカチュウの手によって砂へ埋められたレッドが頭部だけを覗かせていた。一瞬ディグダと見間違う野ざらし生首状態だ。何も知らない者が見れば通報案件でしかない。

 

 そんな状況をゆるりとスルーするコスモスは、首を横に振りながら応答した。

 

「疲れてらっしゃるのは先生の方かと。人質の脱出と暴れていたポケモンの鎮圧をされたんですから」

「俺は別に……手持ちの皆が頑張ってくれた」

「その手持ちを育てたのは他でもない先生です」

「……そっか」

 

 事件を振り返るレッドが『どっこいしょ』と砂から腕を出すや、地面に手を突けて一気に上へと抜け出した。

 

(縦に埋まってたんですね)

 

 抜け出す際、バゴォ!!! とやけに勢いのいい音を立てていたのはその所為かとコスモスは納得する。ピカチュウの姿が一瞬で消えたのも、その深い穴に滑り落ちたからだろう。穴の奥からは恨めしげな鳴き声が聞こえてくる。

 

 救助はフシギバナに任せ、全身についた砂を手で払うレッドは、じっとコスモスへと目を向けた。

 

「それにしても……無事で良かった」

「ご迷惑をお掛けしてすみません」

「ううん。謝ることじゃないから……」

 

 人に言えた義理じゃない。

 ぷいとそっぽを向いたレッドの顔は、そう言わんとするばかりであった。

 

 共に表情の変化はない。

 ただ、互いの感情の機微はしっかりと伝わっている為、わざわざ口に出して確かめるまでもないとそれ以上の問答は行わない。

 

 それを見たヒマワリが一言。

 

「似た者同士。なんだか兄妹みたい」

「「いや、そんな」」

「んふっ」

 

 見事なハモりに思わず吹き出したヒマワリは、二人に温かな眼差しを向ける。

 

「息もピッタリ。ちょっと違うけれど、ホウエンに居る兄弟弟子のことを思い出します」

「……フエンジムリーダーのアスナさんですか?」

「物知りですね」

「調べましたので」

「興味を持ってもらえたってことですか? 嬉しい」

 

 当時を懐古するヒマワリには自然と笑みが零れていた。

 ホウジョウ地方の西に位置する自然豊かな土地、ホウエン地方。かつてヒマワリがポケモントレーナーとして腕を磨く為に留学していた場所だ。

 当然ポケモンリーグは存在しており、関門として公認ジムも8つある。そのうちの1つのジムリーダーを務める女性こそ、ヒマワリの兄弟弟子・アスナである。

 

「フエンタウンは温泉が有名でね。毎日熱い中汗水垂らしてね、最後はいつも露天風呂に入ってさっぱりして……上がった後のモーモーミルクがこれまた美味しいの」

 

 〆の一杯は何物にも勝る至福のひと時であり、色褪せぬ美しい思い出だ。

 

「だから温泉が好きなんですか」

「人もポケモンも心の距離を縮めるなら裸の付き合いが一番。アスナとも最初は衝突していたけど、一緒に入る内に仲良くなりました。だから、身も心もさらけ出すような開放感が気持ちイイ───ではなく、気持ちの理解に繋がるとジブンは思っています」

「だから温泉が好きなんですか」

 

 少しばかり雑念が垣間見えた気がする。

 それでも至って真剣な表情のヒマワリは続けた。

 

「ええ、好きです。けど、それ以上に誰かと心を通い合わせられることはもっと好き。自分を見てくれる相手が居ること……人にはきっと、自分だけじゃ気づけない一面を見出してくれるはず。だからたくさんの人にジブンを見てもらって、自分の知らないジブンを知りたいんです」

「客観視してくれる相手……ですか」

「そうですね。それは人もポケモンも関係ない。色んな人やポケモンにも見てもらってジブンは成長し───ジムリーダーになりましたから」

 

 さて、とサイコソーダを飲み干したヒマワリは徐に立ち上がった。

 

「ジブン、そろそろ行きます」

「ジムにですか?」

「挑戦者が来る予定でして。ジブンは離れますが、ここは好きに使っちゃってください。元々バトルのトレーニングに使っている場所なので」

 

 そう言ってヒマワリはリザードンを繰り出した。オキノタウンの銭湯でも見たウルガモスとはまた別の飛行要員なのか。

 思案を巡らせるコスモスに対し、脱いでいたパーカーを羽織るヒマワリ。

すると彼女は不意に『そうだ』と振り返る。

 

「そう言えばコスモスちゃん。聞きましたよ」

「再戦のことですか?」

「そうそう、それそれ。ジブン、聞いてびっくりしました。それと……嬉しかったです」

 

 直後、ヒマワリの顔には挑戦者の来訪を喜ぶジムリーダーの一面が覗いた。

 小麦色の肌を震わせ、白い歯を剥き出しにして笑っている。それは獰猛な肉食獣を髣髴とさせるような表情だった。

 

 じりじりと肌を焼く熱量は錯覚か?

 ツーっと頬に汗を伝わせるコスモスは、一変したジムリーダーの様子を満遍なく観察した上で口を開く。

 

「そんな顔をされるんですね」

「どんな顔に見えてる?」

「飢えたカエンジシと言ったところでしょうか」

「そう言われたのは初めて」

 

───これだからやめられない。

 

 そう言いたげな口振りのヒマワリは軽やかにリザードンの背中に飛び乗った。

 

「約束の日取りは任せてください。ぜひとも当日は万全の状態でジムに……折角だったら全力を尽くしてバトルをしたいですから」

「言われなくともそのつもりです」

「ふふっ……楽しみにしてます」

 

 ヒラリと掌を振ったヒマワリ。

 直後にビーチの砂が舞い、彼女を乗せたリザードンの姿はあっという間に空高くへと上昇していった。

 

「……行っちゃった」

「……先生、よろしいですか?」

「うん?」

 

 去り行くヒマワリを見届けていたレッドであったが、コスモスの声に呼ばれて視線を戻す。

 

「早速トレーニングへと移りたいんですが構いませんか?」

「いいよ」

「ありがとうございます」

 

 友達感覚での了承である。これが師弟の間柄とは驚いたものだが、それを互いにおかしいとは思っていないところこそ似通った感性をありありと証明しているようだった。

 

 それはさておき、

 

「何する? またリザードンが相手する……?」

「いいえ。まず、前提として今回のジムリーダーの手持ちにはコータスが居ます」

「うん」

「私が見た限り、コータスは“こうそくスピン”を用いてかなりの速さで動けます」

「うん」

「攻撃を受ける寸前まで甲羅に籠っており、速度・防御の両方で隙がありません」

「うん」

「そこでなのですが、先生のカメックスであれば真似できるのではないかと……」

「いいよ」

 

 即答である。

 というのも、コスモスの話を聞いている間、レッドは童心に帰ったかのように瞳をキラキラと輝かせていた。

 『面白そう』と口に漏らすレッドの姿は、初めて見聞きしたものを自分でも真似できないものかと心躍らせる子供そのもの。

 

「試してみよう……カメックス~」

 

 波打ち際でラプラスと戯れていたカメックスを気の抜ける声で呼ぶ。

 気づいたカメックスが振り向き、すぐさまレッドの下へと駆け寄ろうとしたが、今こそコスモスが伝えた移動方法を実践してみるタイミングだ。

 

「ちょっと“こうそくスピン”で回りながらこっちに来て~……」

「ガメェ!」

 

 応答するカメックス。

 するや、青い巨体が側転でもするかのように横向きになった。

 

 おや? カメックスのようすが……。

 

───ドッパゴォオオン!!!

 

 刹那、轟音を響かせたカメックスが回転しつつ爆速で迫ってくる。

 

「ちょ、思いの外速っ───」

「あ」

 

 直後、赤い人影が撥ねられた。

 眼前で人一人が奇天烈兵器と化したカメックスに撥ねられる衝撃的な事故現場。

 それを目の当たりにしたコスモスは、信じられないものを見たように瞳を見開いていた。

 

「……なるほど、カメックスは手足を収納した穴から水を噴出して加速できると……コータスも炎で代替できそうですね。これは新たな発見……」

「う゛ッ」

「先生、大丈夫ですか」

「……下が砂で助かった」

 

 ムクリと起き上がるレッドの体には傷一つついていない。

 

(流石です、先生)

 

 きっと、しっかり受け身を取ったのだろう。

 コスモスはそう理解した。理解すると決めている。

 

「それでは今回カメックスに協力してもらい、ジムリーダー攻略に向けてトレーニングしたいと思います」

「うん……頑張って」

「先生のご期待に添えられるよう頑張ります」

 

 その為にも手持ちを全員繰り出す。

 ルカリオ、ゴルバット、ニンフィア、タイプ:ヌル。この四体がスナオカジムリーダー戦の全戦力だ。

 

「モッグ!」

「コスモッグは応援を頼みます」

「モッグ!」

 

 自分は!? と砂から飛び出してきたコスモッグを撫で回して落ち着かせるコスモスは、ところかまわず眠ろうとするタイプ:ヌルへと視線を向けた。

 

「貴方にも頑張ってもらいますよ、ヌル」

「ヴル……」

「この前のことを忘れましたか? 自分一人で戦っても、トレーナー相手には……」

「フンッ!」

 

 やはりタイプ:ヌルは鼻を鳴らし、そっぽを向いてしまう。

 それどころかようやく穴から這い出てきたピカチュウを発見し、一目散に襲い掛かる始末だ。

 

「ヴァアアア!」

「チュ!? ピッカァ!」

「ヴッ!?」

 

 ズバゴォン! とピカチュウの手刀が叩き込まれ、ものの数秒でタイプ:ヌルは倒れた。ついでに地面にぽっかり空いていた穴に頭部が埋まった。完全敗北である。

 

 “でんこうせっか”で回避してから脳天目掛けて“アイアンテール”を振り下ろし、怯んだところへトドメの“かわらわり”という連結技。怒涛の猛攻は凄まじさを超えて美しくすら見えてくる。

 そして、世界広しと言えど地面よりも低い高さに頭を下げる土下座は中々見られぬ光景だろう。

 

 そんなタイプ:ヌルへと歩み寄り、よっこいしょと引き抜くコスモス。

 マスクの間からオボンのみを与えながら、少女は慈しみに満ちたように優しい声音で囁きかける。

 

「格の違いを思い知りましたか?」

「それ自分の手持ちに言う言葉?」

「まず身の程を教えてあげないと」

「それ自分の手持ちに言う言葉?」

 

 コスモスの ダブルアタック!

 思わず レッドも 二回繰り返した!

 

 しかし、コスモスもただイラついたからとポケモンを傷つける言葉は口にしない。

 

「ヌル、このピカチュウのように貴方より強いポケモンは山ほど居ます。そんな相手に勝つには戦略を練り、戦況を正しく把握できるトレーナーの助力が要ります」

「ヴルゥ……」

「今の貴方にとって、そのトレーナーとは私のことです」

「ヴァルゥ!!」

「気に入りませんか? では、こう考えましょう。私は貴方にとって、敵に勝つ為の道具です」

 

 そこまで語り、タイプ:ヌルの放っていた空気が変わった。

 敵意しかなかった雰囲気に困惑が滲み始めたのを見計らい、コスモスは語を継いだ。

 

「敵に勝つ為なら使えるものは全て利用する。それが私の信条です。美学とも言えます」

「……」

「全てを利用しないのは怠慢です。やれることは全部やる。でなければ勝利は遠のき、敗北も意味のないものとなる。……わかりますか? あの時貴方がウインディに勝てなかったのは()()()()()()()()()()()()()

 

 至って理性と知性に溢れた瞳で。

 しかしながら、どことなく狂気も覗かせる瞳を向けてくるコスモスに、タイプ:ヌルも黙して話に耳を傾けていた。

 

「……お互い割り切りましょう。私は貴方が倒したい相手を倒す為の道具。貴方も私がバトルに勝つ為の道具。指示をする側と聞く側にこそ分かれますが、私たちは対等な立場です。道具同士、互いに利用し合う協力関係になろうじゃありませんか」

 

 タイプ:ヌルが成し遂げたい目的など、コスモスは知らない。

 ただ、自分の指示さえ聞いていれば地下道でのバトルの時、もっと有利に状況を進められたはずだという確信があるからこそ訴える。

 

「一回くらいは私を使ってみてください、ヌル。それでも使えないと思ったのなら私から離れていけばいい。……それでどうですか?」

「……フンッ!」

 

 再びそっぽを向くタイプ:ヌル。

 しかし、オボンのみを食べて体力を回復した彼は、今一度ピカチュウに面と向かう。当の電気鼠はと言えば、急襲を受けた腹いせに『あっかんべー』と顔を縦に引っ張って挑発し、タイプ:ヌルを煽っている。

 次の瞬間には先ほどの再放送だ。ピカチュウに襲い掛かるタイプ:ヌルが、あの手この手でいなされては返り討ちに遭う。

 

「ヌル……」

「ヴァウッ!!」

「貴方も懲りないですね」

 

 何かを急かすような咆哮にオボンのみを取り出すコスモス。

 それにがっつくタイプ:ヌルは、またまたピカチュウへと挑んでは反撃に遭う。

 

「ヴルァ!!」

「私はパシリじゃないんですが」

「ヴゥ……!!」

 

 ここまでくると面倒になって倒れるタイプ:ヌルの口へ直接オボンのみを突っ込んだ。

 

 がっつく手持ちに噛まれる前に手を引き抜くコスモス。

 そこへ砂を踏みしめる音が近づいてきた。

 

「コスモス」

「すみません、先生。すぐに終わりますので」

「……分かるよ」

「はい?」

「……俺も気に入ってる釣り竿は大事に使ってる……」

「?」

「……」

「……」

「……トレーニング、始めよっか」

「はい。よろしくお願いします」

 

 ニュアンスが伝わらず微妙な空気感のまま、打倒・スナオカジムリーダーのトレーニングは始まるのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ポケモンジムには観戦席が設けられている。

 勿論ジムにもよるが、大抵は普段から開放されている場所がほとんど。

 観戦できる基準はジムごとに違うものの、挑戦者が許可を出せばOKという緩いルールである。

 

 そうして観戦にやって来る人間のほとんどは、ジムの情報収集に来るトレーナーか応援に来た人ばかり。

 

 

 しかし、今日に限っては気色の違う集団がロビーに立っていた。

 

「……なんだか賑やか」

「なんの集まりですか?」

「お祭り?」

「ではないと思いますが」

 

 と、本日特例でジムリーダーに即挑戦できる予定のコスモスだったが、なぜか集まっていたマグマ団の面々に首を傾げる。

 服装は流石にあの奇抜な制服ではなく私服だ。

 それでも一度見たら忘れられないインパクトのある容姿は見間違えない。

 

 まずは紫髪の小柄な女性だ。

 

「カガリさん」

「……また……会った」

 

 間を置いた喋り方をする彼女は、マグマ団幹部ことカガリ。

 彼女だけ制服のインナーである赤いセーターを着ての来訪だ。下には何かしら穿いているのだろうが、如何せん短いのかセーターの裾に隠れて見えない。中々に際どい恰好である。

 

 そんな彼女を覆い隠す恰幅のいい男性。

 思わずコスモスも見上げながら名前を呼んだ。

 

「マクノシタさん」

「先日ぶりですね、チャイルド。あの時は世話に───って、違ァう! 誰がマクノシタだ! せめてハリテヤマと呼ばんかい!」

「わかりました、ハリテヤマさん」

「そうそうワタシはハリテヤマ……って、素直ですか!! ホムラですよ、ホムラ!! マグマ団のチーフサブリーダー候補の!!」

 

「……団員からは……ホムホムって呼ばれてる……」

 

「カガリ!! 余計なことは言わない!!」

「なるほど。わかりました、ホムホムさん」

「ほら!! このチャイルドはすーぐそういうのに乗っかってくるだから!!」

 

 ホムホム改め、マグマ団幹部(チーフサブリーダーこうほ)ホムラは年下に舐められている現状にご立腹なのかぎゃんぎゃんと喚いているが、後ろに控えている団員らは皆微笑ましいものを見るかのような眼差しを送っている。どうやら身内には愛されている存在らしい。

 

「ところで、どうしてマグマ団の皆さんはここに?」

「そう! 本題はそこなんです、チャイルド!」

「ちなみに私はこれからジム戦なので用件次第では後に回していただけると助かりますが」

「ズバッと言ってくる人間、ワタシは嫌いじゃないですよ」

 

 かなり早口で急かされたホムラであるが、彼の不敵な笑みは紙一重で崩れない。

 

「チャイルド、実は……本日アナタの為にスペシャルゲストが会いに来られたのです!」

「それではまた後で」

「待ちなさいってば! ちょっとだけだから!」

「……まだこの前のお礼、貰ってないんですが」

 

 恨めしい視線をホムラへと送るコスモス。

 というのも、以前の立てこもり事件にてカガリを助ける代わりに見返りを貰うホムラと約束した。

 

 しかしながら、今日の今日まで事情聴取や何やらでマグマ団とは会えず仕舞いに。

 音沙汰もなかったものだから、約束が自然消滅したと思い、骨折り損のくたびれ儲けとコスモスは肩を落としていたのだったが、

 

「それも込みでの話です!」

「用件を聞きましょう」

「(……随分と現金なチャイルドですね)」

 

 ここまであからさまだといっそ清々しい。接してきた子供の中でも特に小憎らしさと可愛さが共存した───否、小憎らしさがマシマシのタイプは新しいと、ホムラは頬が引き攣るのを禁じ得なかった。

 

「とにかく、会ってみなければ話は進まない! という訳で、この方の登場です!」

 

 どうぞォ! と賑やかなホムラの掛け声が響き渡ると同時に、どこからともなく現れたランプラーがスポットライトを照射し始める。

 靴底が反響した音を奏でたのは、直後の出来事だった。

 ゆっくりと、それでいて威厳を感じさせるような重々しい歩み。

 近づいてくる中年の男性は、その知的な佇まいを一助する眼鏡を押し上げながら、コスモスの下へとやって来る。

 

 対するコスモスは『やはり』と心の中で納得した。

 

───この男が、マグマ団の頭領。

 

「その目に焼き付けなさい、チャイルド! マグマ団リーダーとはこの御方!」

「……仰々しい紹介はよせ、ホムラ」

「おっと、これは失礼!」

 

 現れた男がホムラを窘めて下がらせれば、すぐに目の前の少女を見下ろした。

 

「……君か。コスモスというポケモントレーナーは」

「はい。そういう貴方がマツブサさんで?」

「知っていたのか」

「ちゃんとした企業なら、ちょっと調べれば組織のトップの名前くらいは出てきますので」

「フッ……わざわざおかしな子供だ」

 

 特段有名な組織でもないのに、という自嘲が半分。

 もう半分も、悪名はそこそこに高いかという自嘲。

 

 しかしながら、決して理念や気位を捨てた訳ではない威風堂々な姿勢は崩さない。

 そうした彼こそ、マグマ団のトップを務めるマツブサという人間だった。

 

「君がカガリや団員を助けてくれたことは聞いた」

 

 マツブサは早速本題へと移る。

 

「警察への証言についても、あれは非常に助かった。状況証拠から言って、君が居なければ我々が無実の罪を被るところだった。マグマ団を代表し、改めて感謝の言葉を伝えさせてくれ」

「当然の事をしたまでです」

「……」

「なにか?」

「……いや、なんでもない」

 

 何か言いたげだったマツブサも、じっと見上げてくるコスモスを前に過った思考を振り払うように軽く首を振った。

 

「それで、礼の品の件についてだが……」

「!」

「君はこれからジム戦なのだろう? ジム側を待たせるのもそうだが、君自身の都合もあるだろうからな。ついては、ジム戦の後でというのはどうだ?」

「それで構いません」

「決まりだな」

 

 マツブサの性格もあってか、二人の間での話は淡々と進んでまとまる。

 

「それでは我々はジムの外で待って───」

「見ていかないんですか?」

「む?」

 

 出口へと踵を返すマツブサであったが、不意に呼び止められ足を止める。

 声の主は、それまで沈黙を保っていた若い男。少年とも青年とも見て取れる赤い帽子の男は、真紅の双眸でマツブサをその場に縫い留めていた。

 

「君は……」

「私の先生です」

「先生……というと、ポケモンバトルのか?」

「はい。とても強いです」

「ほう……」

 

 本人が名乗るより前にコスモスの紹介が入り、マツブサは興味深そうに赤い帽子の男───レッドを頭のてっぺんからつま先までじっくりと眺める。

 まるで値踏みをする動き。

 人によっては忌避感を覚えられ視線だが、これっぽっちも気にした様子の見せないレッドに胆力を垣間見たところで口を開いた。

 

「君も挑戦する訳ではないのかね?」

「いや……観る側で……」

「生徒の挑戦を見守ると。なるほど……」

 

 思案するように目を伏せるマツブサ。

 しかしそれも一瞬で終わり、徐にコスモスの方を向く。

 

「気が変わった。君が了承すると言うのなら、我々も観戦してもいいだろうか?」

「構いません」

「ならば、遠慮なく観させて頂こう」

 

 そう言って眼鏡を直すマツブサは部下に『マナーを守るように』と釘を刺す。対する部下も、事前に打ち合わせでもしていたのかと思われかねないほど、一糸乱れぬ統一感で返事をする。

 

「……なるほど」

 

 かくして、前回を超える観衆の目に晒される訳になったコスモスだが、何かを察知したかのような言葉を漏らしてはレッドの方へ振り向いた。

 

()()()()()()ですね、先生)

 

 コスモスの熱烈な視線が、レッドを射抜く。

 

「……?」

 

 しかし、本人が気付くとは限らない。

 

「あ、あのぉ~……」

 

 そこへオドオドとした声が割って入る。

 これは間違いなく、スナオカジムの受付兼リーダー代理だったジムトレーナーのものだ。

 

「そ、そろそろ挑戦なされるでしょうか……? うちのジムリーダーの準備は完了しておりますが……」

「わかりました」

 

 長々と立ち話をしている間にも、ジム側の準備は整っていたようだ。

 すぐさまコスモスは話を切り上げ、颯爽とバトルコートのある方へと向かっていく。

 

 小さな少女の背中を見送ったレッドとマグマ団は、受付の案内で観覧席へぞろぞろと歩いて行くが、その途中。

 

「リーダー・マツブサ」

「どうした、ホムラ?」

「いえ、アナタが急にジム戦を観たいだなんてどういう心変わりかと思いまして」

「珍しいものを見たと。そう言いたげだな」

「まあ、そうなりますな」

「……なに、」

 

 そこで一度区切り、最後尾を行くレッドを見遣るマツブサは独り言つ声量で続ける。

 

「ロケット団……赤い帽子のポケモントレーナー……ある種、語り草だからな」

「む? なんですと?」

「フフフ、私も人並みにはポケモンバトルに興味があるという話だ」

「はぁ……?」

 

 やや納得しかねているホムラだが、彼自身コスモスのジム戦には興味があった。周りを見てみれば、そもそもカガリや他の団員はマツブサの変心に疑問を抱いてはいない。

 自分だけ気にしていてもしょうがない───そう結論付けたホムラは、それ以上の追求はせずにマツブサの背中を追う。

 

 

 

 今日、最も熱いバトルの火蓋が切られる瞬間は、目前まで迫っていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 コスモスにとっては二度目の来訪だ。

 ジムリーダーが不在の時だったとは言え、特段景観が変わる訳でもない。

 

 しかしながら、薄暗い通路の奥からは熱波のようにピリピリと肌を焼きつける緊張感が押し寄せてくる。

 ───居る。隠し切れぬ威圧感に強者の存在を確信しつつ、コスモスはようやく通路を抜けて目撃する。

 

「───待ち焦がれてたよ」

 

 視線の先。

 不自然なまで一点に降り注ぐ陽射しの中央に佇んでいたヒマワリは、被っていたリザードを模したフードを上げ、白い歯を覗かせるような笑みを浮かべた。

 

「準備万端? コスモスちゃん」

「ええ」

「なら良かった。それならルール確認といきましょう」

 

 パチンと指を鳴らすヒマワリ。

 次の瞬間、観覧席とは逆側の壁に備え付けられていたモニターに映像が映し出される。

 

「使用ポケモンは三体。途中、ポケモンの交換は挑戦者のみに認められる。トレーナーの道具の使用は禁止だけれど、あらかじめポケモンに持たせていた道具の使用は可……ってところ」

「一ついいですか?」

「どうぞ」

「今回もバトル開始時に天候は変わりますか?」

「うん。そこはまあ……ジムトレーナーの時と一緒」

「わかりました」

 

 一瞬間を置いたヒマワリを怪訝に思いつつも、ルール確認を済ませたコスモスはボールを手に取った。

 

「それじゃあ早速」

「ちょっと待って。あと一つ、見せたいものがあります」

「……なんですか?」

 

 出鼻を挫かれたコスモスだが、得意げに笑っていたヒマワリは唐突に屋根を指差した。

 

「オープン!」

 

 溌剌とした声が天井に当たって反響した瞬間、コスモスの頭上で異変が起こった。

 色とりどりのステンドガラスが嵌め込まれていた屋根が、突如として動き出したのだ。左右へ分かれて収納されていく屋根。間もなく何物にも阻まれなくなった陽の光が、燦々とバトルコートを照らし上げる。

 

 当然、バトルコートに立っている二人は直射日光を浴びる羽目に遭い、コスモスの額には早速汗が滲み始めた。

 

「……暑い」

「そう?」

 

 あちゃあ、と額に手を当てるヒマワリであるが、どうにも屋根を閉じるつもりはなさそうだ。

 

「ごめんなさい。でも、こうしなきゃダメなの」

「……本当にですか?」

「うん。だって───」

 

 この一見ジムリーダーの趣味全開な機能。

 だが、これにはれっきとした理由が存在した。

 

「閉め切ってたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……」

「今なら飲み物買ってきてもいいけど、大丈夫?」

 

 水分補給用の飲み物を購入するという異例の催促に、コスモスはやや面食らったように目を見開いた。

 が、しかし。

 

「なるほど。それなら心配は無用です」

 

 上着を脱ぎ、白いTシャツ一枚になったコスモスは、徐にバッグの中を漁り始める。

 すると、そこからは次々に飲み物が出てくるではないか。おいしい水、サイコソーダ、ミックスオレ、その他各種清涼飲料水……さながら休日に部活へ持ち込むクーラーボックスに並ぶラインナップである。

 

「へぇ……確かに準備万端みたい」

「ええ」

「もしかして、この後手持ちと祝勝会でもする予定だった?」

 

 軽口を言い放つヒマワリに対し、コスモスはどうとでも取れる微笑を返すばかり。

 

 その真意は、

 

(全部私の分でしたがね)

 

 ただの卑しんぼであった。

 

 その中からスポーツドリンクをチョイスして手に取るコスモス。

 程よい甘味で喉を潤す彼女は、マグマ団に混じって観覧席に座るレッドを一瞥した。

 

 今日も今日とて何を考えているか分からない真顔を浮かべているものの、コスモスは先ほどのロビーでのやり取りを思い返す。

 

(先生がわざわざマグマ団を引き留めて観衆に加えた理由……私には伝わっていますよ)

 

 我ながら勘が冴えている、とコスモスは内心得意げになった。

 なんてったってバトルは洞察力が重要だ。つぶさに指示や動きを観察し、相手の一手二手先を読まなければ勝利を掴めない。

 手練れのポケモントレーナーほど無駄を省く。裏を返せば、彼らの一挙手一投足には意味がある。

 

 レッドというトレーナーは、この自分がサカキに勝るとも劣らないと認めるほどのトレーナーであるのだから、今回の勧誘には当然意味があるのだろう。

 

 そして導き出されたコスモスの答えこそ───。

 

(ゆくゆくリーグの大舞台でバトルするのを見越して、観客に見られる感覚に慣れさせようという魂胆ですね)

 

 筋は通っている。

 正解とは限らないが。

 

 とにかく複数人の視線に晒されれば緊張するのが普通の人間である。

コスモス自身、人前で緊張する性格ではないという自覚こそあれ、実際に緊張しない確証はない。むしろ無自覚であった場合が厄介だ。

 リーグ本戦で緊張して実力を発揮できず醜態を晒すなどもってのほかだ。笑い話にもなりはしない。

 

(私は思いもしなかったトレーニング……何事も経験とは言いますが、いい機会かもしれない)

 

 これぞ先見の明と言うべきか。

 ほとほと先生には頭が上がらない───と感銘を受ければ話は早い。後は期待に応えるだけだ。

 

 手段は単純。

 合理的、かつ迅速に勝利を掴み取る。

 

(さて)

 

 一拍置き、対戦相手に向き合う。

 

「始めていただいて結構です」

「そ」

 

 それじゃ始めよっか、とヒマワリは審判へ合図を送る。

 

 ヒリヒリと。

 着実に、場の熱気は高まっていく。

 

「それでは、ただいまより挑戦者コスモス対ジムリーダー・ヒマワリによるジム戦を開始いたします! つきましては、スナオカジム特別ルールに則り場の天気の決定に入ります!」

 

(来たか)

 

 知る人ぞ知るスナオカジム名物の天候発生装置。

 晴、雨、霰、砂嵐のどれか一つが選ばれるかは、まさに天のみぞ知ると言ったところ。

 

(狙うのはもちろん……)

 

「決定いたしました! 今回のバトルは……『雨』です!」

 

(!)

 

 天の恵みは言い過ぎか。

 それでも運はこちらに傾いているには違いない。天秤の秤になみなみと注がれていた水がひっくり返るように、コスモスらの頭上からは雨が降り注いでくる。

 無論、人工的な雨雲など作れない以上、室内の設備を総動員して天候を再現しているだけではあるが、恩恵に与るには十分な完成度だ。

 

「あちゃあ……雨かぁー」

 

 これを苦々しく呟くのはヒマワリだ。

 この雨中ではほのお技の威力も減衰する。ほのお使いの彼女としては苦しい展開に間違いない。

 

「……ふふっ。でも、嫌いじゃないかな」

「……?」

 

 意味深な呟きは雨音に吸い込まれ、ついにはコスモスの耳には届かないまま、審判の進行の声が響き渡る。

 

「両者、一体目のポケモンの選出はよろしいでしょうか!?」

「問題ありません」

「ジブンもオッケーです」

 

 選び取ったボールを握りしめ、両者は睨み合う。

 それを確かめ、審判は続けて宣言する。

 

「それでは───バトル開始!!」

 

 

 


ああす

ポケモントレーナー

コスモス

V 

 S

スナオカジムリーダー

ヒマワリ

あああ


 

 

 ***

 

 

 

 轟々と降り注ぐ雨も、屋根のついた観覧席にまでは及ばない。

 

「ウヒョヒョ、見物ですな」

「……する……アナライズ……」

 

 優雅に腰掛けるマグマ団の内、最前列に陣取るホムラとカガリは食い入るようにバトルコートを眺めていた。

 

「フム……」

 

 そんな彼らを両隣に置くマツブサもまた同じだった。

 繰り出されるポケモンが何か───等という生産性のない思考の段階ではない。この状況下であるならば、()()()()()()()()()というワンステップ先をマツブサは行く。

 

(挑戦者側としては雨を利用すべく、みずタイプ……もしくはみずタイプの技を覚えているポケモンで速攻を仕掛けるのが無難だろう)

 

 では逆に、ジムリーダー側に立った時を考えよう。

 

(繰り出すポケモンをほのおタイプに限定すると仮定して、優先すべきは二点。一点は天候に左右されないほのおタイプ以外の技を備えていることだ)

 

 技のタイプは何でもいい、とも言い難い。

 

(タイプエキスパートの心理として、自身を打倒する為に用意されたであろうタイプの弱点を突けた方が合理的だ。となれば、必然的にみず、いわ、じめん全ての弱点であるくさタイプの技……特に“ソーラービーム”といった強力な技が候補に挙がってくるだろう)

 

 弱点を補完する技構成というのも、バトルの勝敗を大きく分ける要因の一つであることは間違いない。

 その点、ほのおタイプにとってのくさ技は、弱点を突かれてしまうタイプ全てを返り討ちにできる優秀なシナジーを誇っている。

 

(だが、幅広いほのおポケモンが覚える“ソーラービーム”に弱点がある以上、それを克服する為の手段として、()()()()の方が優先度的には高いだろう……)

 

 一見万能にも見える“ソーラービーム”には、明確なデメリットが存在する。

 それは攻撃を繰り出す直前の溜め動作だ。“ソーラービーム”は“だいもんじ”や“ハイドロポンプ”等、他の強力な技が威力の代わりに命中精度を犠牲にしているように、こちらはそもそも発射できるまでに時間が掛かる。

 

 ただし、一つだけ抜け道はある。

 

 それは、日差しが強い時のみに限り、エネルギーの収束時間が極端に早まるという特性。

 

(すなわち、天候を変える技を持っているポケモンか。はたまた……)

 

 

───天候を変える()()を持っているポケモン。

 

 

「コータス、バーンアップ」

「コォーーー!」

 

 けたたましい蒸気機関車のドラフト音にも似た雄たけびが雨音を貫いて響く。

 次の瞬間、あれほどまでに激しく降り注いでいた雨が降り止み、今度は肌を焼く強い日差しが濡れた地面へと降り注ぐ。

 

「やはりな……“ひでり”!」

 

 ポケモンの中には、臨戦態勢に入るや否や天候を書き換える特性を持った種類がちらほら居り、コータスもその中の一体に数えられる。

 

(なるほど。最初に天候を強制するルールを提示しておきながら、自ら前提を覆すポケモンを選ぶとは。あのジムリーダー……とんだ食わせ物だな)

 

 そう評するマツブサの視線の先では、雨を吸って重くなったパーカーを脱ぎ捨てるヒマワリの姿があった。湿気で気持ち悪いというのもあるだろうが、何よりも急激に室温が上昇する中、長袖などは着ていられないのだろう。

 

(対する挑戦者側は、)

 

「GO、ルカリオ」

「バウッ!」

 

(───……)

 

 タイプははがね・かくとう。

 日照りの下に居るほのおタイプと戦うには、余りにも拙い選出だ。出し負けたと言わざるを得ない。

 

(一撃でも攻撃を喰らえば致命傷は免れんが……)

 

 初動がバトルの流れを決定づけると確信するマツブサは、一瞬視線をバトルコートから外す。

 

(……様子は変わらず、か)

 

 マグマ団を誘った張本人であるレッドは、団体らしく固まって座っているマツブサらからはやや離れた場所に位置取っている。

 見た目の若々しさとは裏腹に、老練し切ったように落ち着き払った姿勢は崩れていない。

 

(余程信頼しているのか。それとも、これを見据えた秘策でもあるのか)

 

 あるとすれば期待通り。

 ないのならば期待外れ。

 

(さて。どう出る?)

 

 再び視線をバトルコートへ戻した瞬間、盤面は動き出す。

 

「ルカリオ、“あまごい”!」

「コータス、“ステルスロック”!」

 

 ルカリオが空に向かって祈る一方で、コータスの堅牢な甲羅に穿たれた噴出口から鋭利な岩が撒き散らされる。

 

「……してやられた……」

「ウヒョ! ひょっとしてチャイルド、先手を打たれましたかな?」

「いや、そうとも言えんぞ」

 

 カガリとホムラにマツブサが反論する。

 

「確かに“あまごい”を見越して安易にほのお技を打たず、罠を設置したジムリーダーの方が上手に見える……が、後続が炎の餌食にならんよう雨に変えただけでも意味はある」

 

 長い目で見れば被ダメージは減らせる。その見解に、カガリとホムラは納得するように頷いた。

 しかし、他に覚えている技のラインナップでどうとでも転がることは念頭に置かねばならない。

 

「“みずのはどう”!」

 

 そうこうしているうちに雨の恩恵を受けるルカリオが掌から水流弾を解き放った。

 鈍足なコータスでは避け切れない速度で攻撃は疾走する。

 

 このまま直撃を貰うか───誰もがそう思った時、ヒマワリの顔に笑みが浮かんだ。

 

「見せてあげて、コータス! “こうそくスピン”!」

「コォーーー!!」

 

 またもやコータスから白い煙が上がる。

 だが、先ほどとは打って変わって違う音だ。断続的に蒸気を噴出する、いわばブラスト音。雨中だからこそ際立つ熱量を解放するコータスは、目にも止まらぬ速さで頭部と四肢を甲羅へと収納し、回転を始める。

 

「ッ……あれは……!」

 

 心当たりがあるカガリが僅かに目を見開いた。

 

───脳裏に過る地下道を駆け抜ける黒曜の円盤。

 

 次の瞬間、手足を収納した穴からも噴出する蒸気が、寸前で“みずのはどう”の勢いを抑える。それどころかコータスは白煙に紛れ、忽然と姿を消した。

 それを見てマツブサは『速いな』と声を漏らす。

 

「攻撃手段ではなく、完全に回避方面へと技術を磨いたか」

「しかし、リーダー。いくらなんでもあれは早すぎませんか……!?」

「ああ、確かにな」

「このホムラが手ずから育てたコータスと言えど、あそこまでは……」

 

 自身が育成した個体と比較するホムラは、バトルコートを縦横無尽に駆け巡るベーゴマと化したコータスに戦慄する。

 対峙するルカリオは持ち前の波動探知を用い、背後に回り込まれたところにも反応して攻撃を仕掛けるも、中々捉えることはできない。

 加えて撒き散らされた“ステルスロック”が“こうそくスピン”によって弾かれ、どんどんルカリオの方へと密集するではないか。

 

 刻一刻と逃げ場は狭くなっていき、辻斬り同然に肉迫された際は、紙一重で避けたところに散逸した鋭利な岩が掠ってダメージを負ってしまう。

 

「うぐぐぐ……、チャイルド! 悠長にしている暇はありませんぞ! このままでは雨が上がってしまうというのに!」

 

 しかも雨が続く時間は有限だ。

 早々に決着を付けなければ、炎の勢いを衰えさせる雨も止んでしまう。

 

「……リーダー……」

「気づいたか、カガリ」

「うん……」

 

 喚くホムラの傍ら、神妙な面持ちで観戦していたカガリがマツブサと同じ答えに辿り着いたのは、やや遅れたタイミングであった。

 

「“ニトロチャージ”……」

「そうだ。“こうそくスピン”以外にも“ニトロチャージ”を併用しているからこそ、あれだけの加速を実現させているのだろう」

「……クレイジー……」

 

 端的にカガリが感想を述べる。

 火力を上げて自身の素早さを上昇させる“ニトロチャージ”を併用しているとするならば、確かにあの加速性に納得がいく。

 だからといって制御し切れるとはまた別の話だ。ただでさえ習得が難しい技の同時発動に加え、回転という平衡感覚を失いかねない移動方法である。

 

(フエンジムリーダーとは正反対の戦い方だな)

 

 海を渡った先でジムを構える同門のほのお使いとは、似ても似つかないトリッキーなバトルスタイル。仮にアスナを例に対策を立ててきたとすれば、水泡に帰す可能性が非常に高い。

 

 今も尚、“みずのはどう”を連射するルカリオであるが、一発たりともコータスには命中してはいなかった。

 反面、コータスは遅々とした速度ではあるが、確実にルカリオにダメージを負わせている。“ステルスロック”もそうだが、水を吸ってぬかるんだ地面を飛び跳ねさせれば“どろかけ”のように目くらましにも成り得る。相手がルカリオでなければ、躱し切れず“こうそくスピン”とニトロチャージ“でトップスピードまで加速した状態のタックルを喰らい、もっと疲弊していただろう。

 

(ここまではジムリーダーが優勢か。そろそろ打って出なければ磨り潰されるのが関の山だが……)

 

 とマツブサが思い至ったところで、コスモス側に動きが見えた。

 

「“はどうだん”!」

「アオオオオッ!」

 

 雄たけびを上げながら両手にエネルギーを収束させるルカリオだったが、ヒマワリの余裕を湛えた表情に変化はない。

 

「命中精度の高い“はどうだん”ね……それで? どうするの」

「よく狙え!」

「ふふっ……このスピードの前じゃ!」

 

 コスモスの命令を遂行するべく、しっかりと照準をコータスに合わせて“はどうだん”を繰り出したルカリオ。

 蒼い光弾は暴走機関車と化したコータスに向けて疾走するが、

 

「やはり……当たらない!」

 

───焼け石に水だ。

 

 最早、“はどうだん”の弾速よりもコータスの移動速度が上回る状態。

 こうなってしまえば進路を先読みでもしない限り、命中させることは不可能だ。

 

「……タイム、オーバー……」

「しまったッ!? もう雨が……!」

 

 カガリにつられ空を仰ぐホムラは、次第に勢力が衰えていく雨雲が消えゆく瞬間を目撃した。

 

 かくして鋼の肉体を守っていた雨の衣は剥がされた。

 残されたのはぬかるんだ地面と鋭利な岩の罠、そして最高速度まで達したコータスである。

 

 待ち焦がれていた瞬間。

 彼女の指示は、早かった。

 

「そのまま……“ニトロチャージ”!!」

「コォーーーーーッ!!!」

 

 ポッポー! と汽笛を鳴らし、コータスは猛進する。

 当然、標的はルカリオだ。

 しかしながら、ルカリオも黙ってやられる玉ではない。

 

「“はどうだん”で狙え!」

 

「チャイルド、受けて立つ気か!?」

 

 回避ではなく迎撃を指示するコスモスに、ホムラたちの顔が強張る。

 あれほどまでの速度だ。いかにコータスへ直撃させたところで、殺せる勢いは微々たるものだろう。

むしろ、回転の勢いで弾かれる光景が目に見える。

 

「血迷ったか!?」

「……ッ……!」

「───……、いや」

 

 蒼い閃光が閃いた瞬間、マツブサの眼光が鋭く輝いた。

 

()()()()()()()

 

 真っすぐ。

 迎撃を物ともせぬ勢いで突っ込んでくるコータスへ、渦を巻いてエネルギーを収束させられていた“はどうだん”も直線の光の尾を描いて突き進む。

 間もなく衝突する両者。しかし、拮抗と呼ぶにも烏滸がましいほどに短い激突の末、甲羅の上半分に命中した“はどうだん”は、真上へ───開放された屋根の外へと飛び出していった。

 

「コ、コォーーーッ!!?」

「コータス!?」

 

 それに悲鳴を上げたのはコータスだ。

 何故? と誰もが疑問を浮かべるよりも早く、高速回転するコータスは制御を失ってあらぬ方向へ滑っていく。

当然ルカリオには辿り着かず、最後には壁へと激突し、ジム全体に及ぶかのような激震を巻き起こした。

 

「んなっ!? 一体全体どういうことです!?」

「フフフ……」

「……リーダー……?」

 

 今だ理解の及んでいないホムラの傍ら、クツクツと喉を鳴らすマツブサへ、不思議そうに首を傾げるカガリが声を掛けた。

 

「なに。腑に落ちただけだ、気にするな」

「……何が……?」

「カガリよ、車の免許は持っているな?」

 

 何を突然、と呆気に取られるカガリであるが、彼女の明晰な頭脳はものの数秒でマツブサが言わんがすることに思い至った。

 

「……()()()()()()()()()()……?」

「そうだ。あの子供は始めからそっちを狙っていた訳だな」

「……アハッ、オモチロ……♪」

 

───よもや、ポケモンバトルに組み込むとは。

 

 感心や驚愕が一周回って呆れへと変わる感覚を覚えつつ、マツブサは未だ疑問符を浮かべている団員らに解説する。

 

「ハイドロプレーニング……またはアクアプレーニングとも言うな。これは本来、自動車等のタイヤと路面の間に水が入り込むことで摩擦力を失い、ありとあらゆる動作の制御ができなくなる現象だ」

「あぁ、言われてみれば聞き覚えが───って、それをチャイルドが狙っていたとは?」

「“あまごい”だ。あれはほのお技を封じる為ではなく、コータスの高速移動を封じる手段として使われていたのだ」

 

 ハイドロプレーニングはタイヤと路面の間に水が入り込む状況───つまり、雨の日によく起こる現象だ。それを再現する為に、そもそも雨を呼ぶ行為自体に不自然はない。

 

「ウーム、流石に偶然では?」

「理由は一つではない。決定的なのは最後に繰り出した“はどうだん”だ」

「え、あれが?」

「あの角度、実に絶妙だった」

 

 一見ただ弾かれたように見える攻撃を『絶妙』と称賛するマツブサに、ホムラのマクノシタよろしく細められた糸目が見開かれる。

 どういう訳かと目で訴えれば、不敵な笑みを湛えるマツブサは語り始めた。

 

「先も話した通り、ハイドロプレーニングは移動する物体と地面の間に水がなければならない……が、そもそも移動する物体が接地していない場合、この現象は起こり得ない訳だ」

「それはそうですな。……うん? では、なにゆえコータスはあんなにも早く回れていたのです? 話を聞く限りじゃもっと早い段階で制御不能に陥ってもおかしくはないはずでは」

「だからこそ()()()()()

 

 『見ろ』とマツブサが指差す先。

 そこはちょうど“はどうだん”とコータスが衝突した地点であった。

 

「あれは……地面が抉れている?」

「そうだ。“こうそくスピン”を移動方法として使用している以上、減速せぬよう接地面積は限りなく小さくした方が合理的だ」

「確かにフィールドに移動した跡はほとんど残っておりませんな」

「あのコータス、内部で生み出した蒸気を噴出し、ほぼ浮遊に等しい状態を生み出していたのだろう」

「なるほど! そこへ“はどうだん”で強引に地面へ叩き落し……ほほう、あのチャイルド随分クレバーな真似をしてくれますね」

 

 合点がいったホムラが楽しそうに口角を吊り上げた。笑った顔が悪人面なのはご愛敬である。

 まんまと観客を掌の上で転がした試合展開。

しかしながら、マツブサはたった今説明以上に計算し尽くされた戦略であることを理解していた。

 

(繰り出された“はどうだん”は、“こうそくスピン”で簡単に弾かれないようコータスの回転方向に対し逆回転していた……しかも、直角に弾かれたということは、余すところなく真下へ軌道を逸らすだけのエネルギーを伝えた訳だ)

 

 恐ろしいまでの正確無比な狙撃。

 何より、多くを語らずままそれを実行し得たコスモスとルカリオの信頼関係に、マツブサは脱帽と言わんばかりの心境であった。

 

(成程……あの師にして、この弟子ありといったところだな)

 

 秘策と呼ぶにはあまりに奇策。

 思いもよらない方面から突破口を切り開く型破りな戦いぶりも、すべてはポケモンとの強い信頼関係を得てこそ。

 

 ああ、本物だ───彼女はあの赤い帽子の少年の系譜を継いでいると言わざるを得ない。

 

「我々の予想を裏切っても尚、期待は裏切らない……やはり、見間違いではなかったか」

 

 まだ名前も聞いていなかったマツブサだが、同じ観客としてバトルを眺める赤い帽子の少年の正体に確信を得る。

 

(カントーリーグチャンピオン・レッド……齢10でロケット団を滅ぼした生ける伝説。君にとって、あの子供こそが()の担い手だと言うのかね?)

 

 向けられるマツブサの威圧的な視線にも一瞥もくれず、終始レッドは無言でバトルコートを眺めている。

 

───バトル以外、眼中にはないということか。

 

 そう言わんばかりの様子に笑みを零すマツブサは、自分も目の前のジム戦に集中することにした。

 いつまでも気もそぞろに観戦していたらもったいない。沸々と熱くなる胸の内が、そう囁きかけていたのだ。

 

「フフフ……私もポケモントレーナーということか。たかがバトル一つを前にして、こうも昂揚した感覚を覚えるとはな」

 

 いくつになっても衰えることのない興奮が、そこにはあった。

 

 

 

 ***

 

 

 

(やっと目を放してくれた)

 

 一方その頃、横から猛烈に注がれていた視線から解放されたレッドがホッと息を吐く。

 

───生きた心地がしなかった。

 

 というのも、特に理由はなく誘ってみた団体様のリーダーっぽい人間に凝視されれば、誰でも粗相でもしてしまったかと勘繰るだろう。

 気を紛らわせようとジム戦に集中しようとしたが、何やら詳細な解説も間に挟まれてくるものだから、ついつい意識がマグマ団の方へと向いてしまったのも原因だ。

 

(やけにカメックス相手に練習してたけど、そういうことだったのか)

 

 ハイドロプレーニング現象───当然、レッドには初耳だったとさ。

 

(今度色々試してみよ……!)

 

 結果、ワクワクが止まらなくなったレッドによりカメックスに魔改造が施されるのだが、そのことを弟子の少女(コスモス)はまだ知らない。壁はまだまだ高くなる。ご愁傷様である。

 

 と、マサラ人の血が滾っている間にも、ルカリオは二度目の“あまごい”を終えていた。“こうそくスピン”と“ニトロチャージ”で加速していたコータスの目の前でやろうものならまんまと阻害されていただろうが、当の炎亀は衝突した壁の傍でたどたどしい足取りをするばかりであり、とても横やりを入れられる状態ではない。

 

 やがて、ぽつりぽつりと降る雨粒。

 

 

 

 雨が、降り続いている。

 

 

 

 ***

 

 

 

 コータスが撒き散らした蒸気によって一層蒸し暑くなったバトルコート。そんな熱を少しばかり冷やす雨の中、ヒマワリは額に張り付いた髪を掻き上げる。

 

「最初から狙ってたの?」

「はい。貴方の手持ちにコータスが居ると知った時から、先発はコータスになる可能性が高いと思って対策を練ってきました」

「やるじゃん♪ まんまとしてやられたって訳かァ……」

 

 ガシガシと頭を掻くヒマワリであるが、そこに後悔する様子は窺えない。

 むしろ、見事にコータスを封じてみせた作戦を讃える喜びに打ち震えているようだった。

 

 バトルの熱で紅潮した頬を緩ませ、ヒマワリは続ける。

 

「こんな方法で突破されたのは貴方が初めてです。自分で考えたの?」

「ええ……とは言うものの、ここまでモノにできたのはお付き合いしていただいた先生の指導の賜物です」

「コスモスちゃんも先生さんも凄いですね。やっぱりジブンの目に狂いはなかった」

 

 ヒマワリが純粋な賞賛を述べ終える頃、ようやくコータスが態勢を立て直す。

 

「もっと……もっともっと熱くさせて! コータス!」

「───させません」

「っ!」

 

 しかし、それはルカリオにも言えることだ。いつでも技を繰り出せるようにと収束させていたエネルギーが、その完了を報せる眩い光を拡散させる。

 片やコータスと言えば、反撃の狼煙を上げんと全身に力を込めるが、途端にへにゃりと脱力した顔を浮かべた。甲羅からは煙こそ立ち上っているが、そこには当初ほどの量も勢いもない。

 

「……これは」

「コータスは甲羅の中に溜め込んだ石炭を燃やすことで力を得るポケモンです。最初こそ“こうそくスピン”と“ニトロチャージ”で湿気を近寄らせてなかったでしょうが、一旦足を止めて雨を吸った以上、さっきまでの加速性は再現できませんよ」

「……あちゃあ……」

 

 ここまで対策されたとなると、一周回って笑いが込み上がってくる。

 ポケモントレーナーを教え導く存在である立場として、百点満点の花丸を付けてあげたくなるような徹底的な戦略を挑戦者が携えてきたのだ。それも無理はない話である。

 

「敵を知り己を知れば百戦危うからず、っては言うけども……」

「情報こそがトレーナーの武器で、作戦の立案が義務です。知っているのに何も対策をしないなんて、私には許し難い怠慢ですので」

「ストイックなんだね。こっちとしても背筋が伸びる気分です」

「ジムリーダーが何を言いますか」

 

 コスモスはあっけらかんと答える。

 ポケモンバトルの世界において、対策に対策を重ね、日夜頭を抱えて悩む研鑽を積んだ強者───それこそがジムリーダーだと考える彼女にとって、彼らを攻略するべくその上手をいく案を考えることは最早日課と言っても過言ではなかった。

 

 しかして、努力は実を結んだ。

 コータスは完全に封殺した。後は身動きのとれぬ鈍い亀と化した相手を倒し切れば、一歩リードを掴める。

 

「ルカリオ、最大パワーで“みずのはどう”!」

 

 この機を逃すはずもなく、コスモスが指示を飛ばす。

 呼応するルカリオの眼光が閃き、前方へと突き出した手掌からは大量の雨の恩恵を受けた水の波紋が解き放たれた。

 いかにほのおポケモンとは言え、並みの炎では押し返すこともままならない威力だ。

 

 それが真っすぐと、壁際に追い詰められていたコータスへと向かう。

 

(これで、)

 

 勝利を確信したコスモスであるが、彼女の瞳が異変を捉える。

 それは違和感とも言えた些細な変化。

 

(煙が───白く)

 

 コータスの甲羅より立ち上る煙が、黒から白へと変わっていたのである。

 傍目からすれば───しかも雨の中で見えにくい状況だ───気にも留めぬような変化であるが、コスモスは妙な胸騒ぎを覚えた。

 

 この時、一瞬ばかり彼女の思考より彼方へ消えていた考えが呼び戻される。

 

 

 

───勝利を確信した瞬間こそ、最も反撃に注意すべきである。

 

 

 

 それは自分にも相手にも通じる訳であり、

 

「ルカリオ!! 退避!!」

「コォーーーッ!!!」

 

 迫りくる“みずのはどう”を前に雄たけびを上げるコータス。

 噴き上げる白煙はみるみるうちに濃度を高め、ついには、

 

 

 

 

 

「コータス───“だいばくはつ”」

 

 

 

 

 

 鮮烈な閃光と衝撃を解き放ち、バトルコートを熱波で覆い尽くした。

 




Tips:ヒマワリ
 スナオカジムのジムリーダーを務める赤髪で日焼けした小麦色の肌が眩い女性。タイプエキスパートはほのお。慇懃な口調で喋り、物腰は丁寧でこそあるが、服装からも分かる通り若干露出癖が見られる。その実、自分を包み隠さず他人に見てもらうことで、新たな自分を発見してもらいたいとう考えがが根底にある。ただし、肌を焼いているのは完全に趣味。出身はスナオカタウンであるが、かつてはホウエン地方に住んでいた時期があり、その時に後々フエンジムリーダーとなるアスナと同じ師匠(アスナの祖父)に師事し、ポケモンバトルの腕を磨いた。温泉が好きであるのも、特訓の日々の合間に温泉に浸かっていたからである。本人曰く『アスナの胸はジブンが育てました』とのこと。
 手持ちはコータス、ポワルン、ウルガモス、リザードン、エースバーン等。

↓ヒマワリ(立ち絵)(作:ようぐそうとほうとふ様)

【挿絵表示】


◓オマケ◓
ゆーぼ様(ID:387072)に本作の主人公、コスモスの支援絵をいただきました!

https://syosetu.org/?mode=img_view&uid=387072&imgid=94441

キュートな顔とダークな背景色と、コスモスにぴったりの雰囲気を再現していただき、感謝感激であります!
本作はオリジナル地方ものとあり、出てくるキャラクターもオリジナルである場合が多々見受けられると思い、私自身から設定画などを発信してはおりますが、こうして描いていただけると創作者冥利に尽きます。
読者の方々の温かい感想、評価、および支援絵等は執筆活動の上で大変励みになります。
今後とも『愛と真実の悪を貫く!!』の更新を頑張ってまいりますが、もしも『支援絵を描いてみた!』という方が居られましたら、気兼ねなくメッセージ等でお知らせ頂ければ嬉しい限りですので、何卒宜しくお願い致します。

ポケモンで加入したい組織は?

  • サカキ様万歳! ロケット団
  • カガリ様hshs... マグマ団
  • ウホ、イイ男... アクア団
  • このアカギにさからららら…! ギンガ団
  • ゲーチス♪ゲーチス♪ プラズマ団
  • フレーフレーフレア! フレア団
  • グズマさんが最高でスカら! スカル団
  • 代表に保護されたい… エーテル財団
  • マリィ愛してるぜー! エール団
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。