愛と真実の悪を貫く!!   作:柴猫侍

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前回のあらすじ

コータス「芸術は爆発だァー!!!」(抉れる地面)(飛散する破片)(削られる壁)(埃を被る観客席)

整備担当のジムトレーナー「ああああああバトルコートおおおおおお!!!」


№032:晴のち雨のち風のち霧のち……。

 

 爆風が湿った空気を蒸発させる。

 

「くっ……」

 

 気を抜けば後ろへひっくり返りかねない勢いを前に、必死になって踏ん張るコスモス。

 ようやく彼女が瞼を開いた頃には、フィールドの光景は一変していた。ぬかるんだ地面に大きく穿たれたクレーター。そこには完全燃焼して目を回すコータスと、膝をつきながらも辛うじて倒れていないルカリオの姿があった。

 

「コータス、戦闘不能!」

「お疲れ様、コータス。芸術的な爆発でした」

 

 爆風で荒れた髪を掻き上げるヒマワリは、そう労いの言葉を投げかけながらコータスをボールに戻す。手持ちが瀕死になった事実をおくびにも出さない姿からは、まるで既定路線であったとでも言わんばかりだ。

 

 特性の“ひでり”や設置技の“ステルスロック”。

 それに加えての“だいばくはつ”と来れば、答えは自ずと導かれる。

 

()()()ですか」

「そ。驚いた?」

「……少なくとも過去の記録では“だいばくはつ”を使っていませんでした」

「でしょ。覚えさせておいて正解だった」

「次はありません」

 

 強かに笑うジムリーダーに対し、コスモスは少しばかり眉を顰めた。

 

(私が過去のバトルを履修した上で対抗策を用意したような口振り……これは)

 

───相手の方が一手先に進んでいる。

 

「少し……見通しを変える必要がありそうです」

「ふふっ」

 

 モニターに点灯していた光が一つ消える。

 これで手持ちの数はコスモス側が3つで、ヒマワリが2つ。

 しかしながら、“だいばくはつ”でルカリオがダメージを負った事実を考慮すれば、実際はそこまで差はないと言えよう。

 肝心なのは、次に出てくる相手のポケモンだ。

 コスモスはボールに手を添えながら、ヒマワリが繰り出す二体目に意識を向ける。

 

(相手によっては───)

 

 

「次はこの子、ポワルン!」

 

 

「ルカリオ、戻れ!」

 

 雫型の小さなポケモンが姿を現した瞬間、照射されたリターンレーザーがルカリオの体を包み込む。

 直後、放り投げられた愛らしいデザインのボール───ラブラブボールからは、リボンのような触角を靡かせる四足歩行が舞い降りる。

 

「GO、ニンフィア」

「ん、カワイイポケモン……!」

 

 そう来るんだ、と、ヒマワリは交代先のポケモンにやや興奮気味に瞳を見開く。

 

「どんな戦法で来るか楽しみ。でも、まずは……“おいかぜ”!」

「ポワァー!」

 

 ふよふよと浮遊するポワルンが声を上げれば、一方向に風が吹き抜け始める。

 突風と見紛うような強風にコスモスとニンフィアは目を細めつつ、意気揚々と動き回るポワルンを見据えた。

 

 相手にとっての追い風が自分達の逆風となるか否か、コスモスはしかとその目で見届けようと思考を巡らせる。

 

 してやられたとはいえ、勝負はまだまだ序盤もいいところだ。

 用意した一手をひっくり返されただけで狼狽するほど、準備がおろそかであるつもりはない。確固たる自信を胸に、コスモスは濡れた帽子のつばを摘み、風から目を守るように深く被り込んだ。

 

「バトルは───ここから」

 

 自分に言い聞かせるように、コスモスは前を向いた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ポワルン、か」

 

 やけに重々しい声色を言い放ったマツブサに団員の視線が集まる。

 次の瞬間、口を開いたのはホムラであった。

 

「あのジムリーダー、これまたトリッキーなポケモンを繰り出しましたな」

「うむ、そうだな」

 

 同意するマツブサであるが、団員の一部はその意図を汲み取れず、怪訝そうに首を傾げた。

 そんな団員達に説明するかの如く、得意げにホムラが人差し指を立てながら解説を始める。

 

「てんきポケモンのポワルンは、文字通り天気によってフォルムチェンジする珍しいポケモン! チェリムのように天気を味方にするポケモンは居るにしても、ポワルンほど多種多様な天気に順応できるポケモンは皆無なワケですね!」

「それが利点でもあり欠点でもあるがな」

 

 神妙な顔でマツブサは補足する。

 

「天候に順応できると言えば聞こえはいいが、複数のフォルムの立ち回りを把握するには相当な経験が必要だ。それにポワルン自体、フォルムチェンジ以外突出した能力のないポケモンだ」

 

 そこまで付け加えると、団員達が感心する声を上げる。

 遅れて『ぐぬぬ』と悔しがるホムラの呻き声が聞こえてくる為、バツを悪そうにしたマツブサは、こほんと一度咳払いした。

 

「……私なりに総評すると、器用貧乏になりやすい上級者向けのポケモンというワケだ。ホムラの言うことも間違っているワケではない。興味深いのは、この選出タイミングだ」

「……どういう意味?」

「考えてみろ、カガリ。ポワルンは天候を味方にしてこそ真価を発揮するポケモンだ。しかし、今のフィールドはどうだ?」

 

 言われるがままフィールドに目をやるカガリとその他大勢。

 雨上がりに加え“だいばくはつ”の熱波に煽られたフィールドは、なんとも蒸し暑い。

 しかしながら、晴天にも雨天にも属さない天候であることの証明に、ポワルンのフォルムは『ポワルンのすがた』のままであった。

 

「初手に“ひでり”のコータスを選出した以上、本来は『たいようのすがた』で運用すると仮定して……今はほのおタイプですらないタイプエキスパートにあるまじき状態だ」

「まあ、それはなくはない話なのでは?」

 

 一トレーナーとしての意見を口にするホムラに、何人かが頷く。

 タイプエキスパートを自称していても、専門とするタイプ以外のポケモンをパーティに組み込むトレーナーは少なからず存在する。それが時折一部から批判を買うこともあるが、結局のところは外野からの評価に関わるだけで、実際のバトルにおいてルール違反になることもない。

 しかし、マツブサは『そうではない』と口にする。

 

「なにも私はエキスパートタイプ以外を選出したことを相応しくないと糾弾したいワケではない。ほのおジムリーダーがポワルンを選出する……その意図が興味深いと言っているのだ」

「つまり……別の役割」

「その通りだ、カガリ」

 

 一足早く答えに辿り着いたカガリに、面白そうに口角を吊り上げるマツブサが、動きを見せ始めるフィールドを見据えながら続ける。

 

「答え合わせといこう」

 

「ポワルン、“でんじは”!」

「ニンフィア、“ミストフィールド”!」

 

 “おいかぜ”を受けて俊敏に動くポワルンが、ニンフィア目がけて微弱な電撃を浴びせかける。

 遅れて動くニンフィアは、全身を襲う痺れに歯を食い縛り───即座に何かを咀嚼したかと思えば、問題なくフィールドにピンク色の霧を充満させた。

 

「こ、これは!」

「“おいかぜ”に“でんじは”……なるほど、あのポワルンはサポートに特化した型か」

 

 驚くホムラに対し、マツブサは納得したように頷いた。

 基本的にバトルにおいてポケモンがメインとして使用できる技の個数は4つ。その半数を控えの味方にも有利に働く補助技で埋めているとなると、必然的にマツブサの答えへとたどり着く。

 

「しかし、今度はジムリーダーの方がしてやられたな。挑戦者は事前にラムのみを持たせ、それでいて“ミストフィールド”ときた。状態異常に対して万全を期していたか」

 

 マツブサはピンク色の霧へと落ちた緑色の欠片を見逃さなかった。

 食したポケモン状態異常を回復するきのみ、ラムのみだ。加えて足下に満ちる“ミストフィールド”もまた地面に居るポケモンを状態異常から守る効果を有している。

 まるでこれから状態異常が来るとわかっていたかのような展開に、マツブサは思わずほくそ笑む。ふとジムリーダーの方へと目をやれば、今度は彼女の方がしてやられたと頭を抱えていた。

 

「あちゃあ……ニンフィアで来たのはそういう意味だったかぁ」

「フェアリータイプのニンフィアでも、スタンダードなポワルンであれば問題なく立ち回れますので」

「本当にそれだけ? 私が天気を変える可能性とかは考えなかった?」

 

 問いかけるヒマワリに、コスモスは頭を振り───不意に一つの技名を口にした。

 

「───“れいとうビーム”」

「!」

「地下通路で見せてもらったポワルンの技です。一目見て相当な練度だとわかりました。それをわざわざ外してくるなんて考えられませんでした」

「……へぇ」

「技の採用理由は……そうですね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言ったところでしょうか。ポワルンをほのおタイプという括りに入れた時、数少ないこおりタイプの技を覚えるポケモンですから」

 

 故に、ゴルバットを選出しなかった。

 

 ここでフェアリータイプではほのおタイプに有効打が突けないとゴルバットを選出していれば、鍛錬された“れいとうビーム”に撃ち抜かれてみすみす瀕死に陥らせていただろう。

 ポワルンが強力な物理技を覚えない点を考慮しても、とくぼうが高いニンフィアを選出する方が、結論から言えば賢明であった。

 

「ほのおに弱点を突けるいわ、じめん、みずには“ソーラービーム”で返り討ちにはできますが、ほのおを半減するタイプを考えた時にネックとなるのがドラゴンタイプ……そこで“れいとうビーム”が火を噴く、と。違いますか?」

「……うん、だいたい正解。すごいね、そこまで考えついたなんて」

「別に大したことじゃありません」

 

 感心して拍手を送るヒマワリに、仏頂面を通り越して真顔のコスモスは淡々と言葉を返す。

 

「どんなポケモンにも強みや活躍のさせ方があります。それは技然り、特性然りです。そこから見えてくる戦法を知り、自分でも組み立ててみる……それこそがバトルに望む前の私なりの準備です」

「……それができるのは極少数なんだけどなぁ」

「だからこそと言いますか、私は、自分が思い至らないような戦略や技術……それらを持つトレーナーを強く尊敬します」

「───そう」

 

 少女が言わんとしているトレーナーが誰か。

 それに思い至った瞬間、ヒマワリの顔にはギラギラと眩い───それでいて好戦的な笑顔が咲いていた。

 

「ますます燃えてきた……! 今まで何人も挑戦者を迎え撃ってきたけれど、コスモスちゃんほど理を詰めてくるような子は居なかったから」

「詰めるだけなら簡単です。もっとも───それを踏まえての実戦以上に勝る経験はないですが」

「同感」

 

 パチンッ、とヒマワリが指を鳴らせば、ポワルンが冷気を凝縮した一条の光線を解き放つ。

 それに迎え撃つのは、ニンフィアの触角から溢れ出す燦々とした輝きだ。真正面からぶつかり合う“れいとうビーム”と“マジカルシャイン”は、数秒凌ぎ合った後、眩い閃光と共にエネルギーを霧散させる。

 

───威力はほぼ互角。

 

「……()()()()()()()()()()()。ニンフィア、“マジカルフレイム”!」

「ほのお技で来るの? それなら……“かみなり”!」

 

 ニンフィアが鮮やかな炎を吹くのと同時に、ポワルンもまた激しい雷鳴を轟かせ、鮮烈な電光を相手目掛けて繰り出した。

 炎と雷が交差したのは一瞬。

 通り過ぎた各々の攻撃は、そのまま技を繰り出した直後で無防備な体へと着弾した。

 

「フィ、フィ~……!」

「ポワワ~……!」

「もう一度“マジカルフレイム”!」

「へぇ……付け焼刃じゃない威力! それなら作戦変更、地面に向かって“れいとうビーム”!」

 

 再び特別熱い炎を吐き出すニンフィアに、ヒマワリは防戦へ転じるようポワルンへ指示を出す。

 その内容は“れいとうビーム”で地面を氷結させ、即席の氷の盾を生み出すというもの。

 “マジカルフレイム”を受ければものの数秒で溶かされてしまうものの、“おいかぜ”の恩恵を受けているポワルンであれば、その間に炎の射線上から退避することは容易い。

 

 その動きに唸り声を上げたのはホムラであった。

 

「ムムム。あのジムリーダー、“マジカルフレイム”の効果を恐れましたか」

「賢明だろうな。ミストフィールド下では“れいとうビーム”や“かみなり”の追加効果も期待できん。そこをムキになって応戦したところで、一方的にとくこうを下げられ続けるだけだ」

 

 マツブサが言及したように、ニンフィアの放つ“マジカルフレイム”は、相手のとくこうを下げる効果を持った技だ。

 ポワルンの“れいとうビーム”も“かみなり”も特殊技である以上、何度も喰らえば威力の減衰は必至。そうなればルール上ポケモンを入れ替えできないジムリーダー側にとっては、非常に痛い展開になることは目に見えている。

 

「ジムリーダーとしてはミストフィールドの効力が切れる合間を狙いたいところだろうが……」

 

 マツブサは忘れていない。

 そして、ジム戦に臨んでいる二人にとっては尚の事。

 

「───風が止む」

 

 刹那、ポワルンの動きが瞬く間に緩やかなものと化す。

 “おいかぜ”が、止んだ。

 その瞬間を狙っていたかのようにコスモスの眼光と共に、眩い輝きがフィールドを満たす。

 

「今! “マジカルシャイン”!」

 

 妖しい霧に乱反射する光は、みるみるうちにその輝きを増幅させ、即席で生み出した氷の盾諸共ポワルンの体を包み込む。

 元々攻撃範囲の広い“マジカルシャイン”だ。それに加えてミストフィールドの効果が上乗せされれば、完全に避け切るのは至難の業。

 

 それゆえ、直撃を貰ったポワルンはと言えば、ふよふよと宙を漂って間もなく力なく地面へと落下した。

 

「ポワルン、戦闘不能!」

 

 審判の宣言に観客である団員が沸く。

 

「やりますね、あのチャイルド!」

「これで……3対1……」

 

 鼻息を荒げるホムラはコスモスの勝利を確信したと言わんばかりに拳を掲げている。

 彼とは対照的に落ち着き払っているカガリも同様の考えだ。コスモス側も消耗しているとはいえ、数の利は無視できる要素ではない。

 

「これは勝ったも同然! このまま3体目もちょちょいのチョンチーで倒してしまいなさい!」

「……そううまく進めばいいのだがな」

「うん? 何をおっしゃるんです、リーダー・マツブサ! いくらなんでもこの戦力差ですよ!?」

 

 小難しい表情を浮かべるマツブサはホムラに反論を始める。

 

「コータスにポワルン……どちらも使ってくる技は後続に続くようなものが多かった。この意味がわかるか?」

「? 使えるのなら使っておくというのがトレーナーとして普通の心情では?」

「戦略的にはそうだろう。だが、私はもっと根本的な部分であると考えている」

 

 後続の為の補助技を使う。それ自体は何もおかしい話ではない。

 着眼すべきは()()それを用いるか、だ。

 

「盤面を整えたところで、それを活かせるポケモンが居なければ意味をなさん」

 

 意味を理解したような吐息が響く。

 

 

「……()()()が……来る」

 

 

 身を乗り出すホムラの横で、カガリが告げた。

 彼女は目撃している。薄暗い地下通路で鋼の巨体を焦げ付かせた炎のストライカーを。

 

 フッと口元を緩めたヒマワリがモンスターボールを掲げる。

 次の瞬間、広がる光が火球へと変貌してバトルコートに向かう。間もなく球体を形成する炎が霧散すれば、中に潜んでいたモンスターが燃え上がる闘志を宿す眼光を閃かせた。

 

「エースバーン、バーンアップ」

「ファニーッ!!!」

 

 炎のような赤い体毛を逆立たせ、長い耳と携えた白兎が吼える。

 

「……ストライカーポケモン、エースバーン」

 

 やはり来た、と言わんばかりにコスモスは目の前のポケモンの名を呼んだ。

 地下通路でハガネールを圧倒したヒマワリの手持ち。その威風からして、自身にとってのルカリオのようなエース格であると踏んでいたが、予想通りの登場であった。

 

(主な生息域はガラル地方。加えて、少数の個体がスナオカタウン近辺に棲んでいる……でしたね)

 

 下調べした際に得た知識を振り返りつつ、コスモスは難儀そうに顔を顰めた。

 というのも、このエースバーン。主な生息域が遠く離れた地方というだけあって、中々に情報を集められなかったのだ。

 必死になってバトルレコードを漁った結果、辛うじて基本的な技や戦法を頭に入れることはできたが、ジムリーダーほどの実力者が鍛えた個体ともなると依然として不安の種は残る。

 

(情報不足がネックではありますが、こちらの残りは3体。無理に1体で勝とうとしない方が賢明ですね)

 

 コスモスの残る手持ちはルカリオとニンフィアに、さらにもう1体。

 前者の体力が削られてこそいるが、戦況的にはこれまでにないレベルで優勢だ。存分にこのアドバンテージを利用してこそ、盤石な勝利を得られるというものだ。

 

 逸る気持ちを抑えるように息を整えれば、場に揃ったポケモンを確認してバトルを再開するように審判が合図を出したところであった。

 

(集中しろ、(コスモス)

 

 自分に言い聞かせるコスモスの視線は、バトルコートに散らばった破片を足で拾い上げてリフティングを始めるエースバーンの一挙手一投足へ注がれていた。

 

───一瞬でも見逃せば、射抜かれる。

 

 そのような確信を持っているコスモスは、リフティングされる破片に火が灯った瞬間、誰よりも早く動き出した。

 

「ニンフィア、伏せろ!」

 

 余りの勢いに身が硬直しそうな声にも、ニンフィアの体は言われた通りその場で伏せてみせる。普段からのトレーニングの賜物である反応だ。

 しかしながら、ニンフィア本人も何が来るかわからない状況に変わりはない。

 だが、直後にその指示が正しかったと納得せざるを得ない烈火がバトルコートを駆け抜けた。

 

「エースバーン」

 

───ドォン!!!

 

「……の、“かえんボール”」

 

 揺れる大気に遅れて、ヒマワリが技の名を口にした。

 

「これは……」

「ごめんね。ジブンのエースバーン、まだまだやんちゃ盛りで」

「……強力ですね」

「言い切る前に動くのは、まあ……ご愛想ってことで」

 

 苦笑するヒマワリに対し、コスモスは自身の背後にそびえる壁を見遣った。

 ポケモンが繰り出す攻撃にも耐えられるよう頑丈に作られた代物。にも関わらず、たった今飛んできた破片が衝突した部分は焦げ付きつつ陥没していた。

 

(ハガネールを倒すだけのことはある)

 

 直撃すれば瀕死は免れない。

 一瞬の判断ミスが敗北に繋がると理解したコスモスは、即座に指示を飛ばす。

 

「近づけさせるな! 距離を取る!」

「様子見? そんな悠長なことをしてる暇はあげない!」

 

 後方へ下がるニンフィアに対し、エースバーンは足元の破片をキープしつつ上がり始める。

 

(また“かえんボール”?)

 

───いいや、違う。

 

 そう頭を振ったコスモスは、ニンフィアの眼前まで迫り来るや、エースバーンが頭上で破片を蹴りつけようと宙へと舞い上がった。

 

(あれは、)

 

 小さな破片がつま先に宿る炎に熱せられる。

 するや、それは有毒なガスを発生させるようにグズグズと溶解を始めた。その瞬間を見逃さなかったコスモスは、ほぼ反射的に叫んでいた。

 

「右に躱せ!」

「エースバーン───“ダストシュート”!」

 

 インパクトの轟音とニンフィアの体が動いたのはほぼ同時。

 直後、バトルコートの一部が舞い上がる砂煙に覆われる。

 

 目視もままならない状況だ。そんな中、コスモスは甲高い指笛を鳴らした。

 それに怪訝そうな目を浮かべているのはヒマワリだった。確信したように彼女は呟く。

 

「……良い反応速度」

「ニンフィア、光で攪乱!」

 

 砂煙から飛び出るや、絢爛な光を浴びせかけようとニンフィアが息吹く。

 

「ふふっ、そんな炎じゃジブン達の目は誤魔化せない! “かえんボール”で貫け!」

 

 対抗するエースバーンは華麗に着地を決めた瞬間、目にも止まらぬ早業で足元の破片を火球に変え、相手目掛けて蹴り飛ばした。

 光VS炎。目が眩む光景の中、勝敗は一瞬で決する。

 視界を遮るように広がる光。それを貫いた火球が、奥に身構えていたニンフィアの胴体に命中した。

 

「フィアッ!!?」

 

 弾き飛ばされる体は、数度ほどコート上をバウンドして沈黙。

 そのままピクリとも動かないことを確認した審判が旗を上げる。

 

「ニンフィア、戦闘不能!」

「ご苦労様」

 

 観客席から悔しがる声が響く中、倒れたニンフィアはボールに戻る。

 そのまま次のボールへと選ぼうとするコスモス。だが、手は不意に止まる。

 

「……」

「ゆっくり選んでいいよ。ジブンは待ってあげますから」

「いえ、その必要はありません」

 

 彷徨う指先を見透かすような言葉に、心理的なプレッシャーを覚えないと言えば嘘になる。

 だが、それで動揺するのは二流。

かつて尊敬するポケモントレーナーに教えられたことだった。

 

「GO、ルカリオ」

 

 繰り出したポケモンはルカリオ。

 傷ついた体を奮い立たせ、不敵な笑みを湛えるエースバーンを睨みつける。

 

 両雄が揃い立つや、バトルコートは蒼と赤の光に照らされた。

 

「ルカリオ、“はどうだん”!」

「エースバーン、“かえんボール”!」

 

 凝縮された波動エネルギーと回転する火球が激突する。

 間もなく二つの球体は爆散。同時に2体も健在であった。

 

「おおっ、相殺した!」

「……いや、それだけではないようだな」

 

 歓喜に沸くホムラの隣で、マツブサが淡い光に包まれるルカリオを確認した。

 

「───“ねがいごと”。ニンフィアが最後に繰り出した技のようだな」

「! なるほど、あれは攻撃じゃなかったと!」

 

 やりおるチャイルド……、とホムラは感心して頷く。

 直接的にコスモスが技名を口にしていない以上、指示をした可能性があるとすれば指笛を鳴らした瞬間だろう。なんにせよ事前によく教え込まなければ不可能な芸当だ。

 

「だが……勝負はこれからだ」

 

 それでも尚、バトルを眺めるマツブサの表情は硬い。

 

(あのエースバーン、かなり鍛えられている。となれば、チャレンジャー側も苦戦は必至……3体目も視野に入れた方が得策だろう。それに、)

 

 マツブサはバトルコートに穿たれた大穴に目をやった。

 それはエースバーンの“ダストシュート”によって生み出されたものだが、得も言われぬ違和感が胸を過る。

 

「フム……」

「どく……」

「……ん?」

 

 声援に紛れて聞こえてくる声の方を向けば、赤い帽子の青年が小さく唇を動かしていた。

 

「エスパー、じめん……」

「……」

 

 なぜかタイプを口にしては、悩むように顎に手を添える。

 まったくもって理解できないマツブサであったが、わざわざ今この場で本人に尋ねる必要はないと視線を戻す。

 

 すると、眩い蒼い光が視界を襲う。

 スッと目を細めれば、両手に光弾を収束させるルカリオの姿が見えた。

 

「ほう……()()か」

 

 光弾の大きさからして、威力は据え置きと見える。

 感心したようにマツブサが溜め息を漏らせば、ルカリオは機敏な動きで左腕を前方へ突き出した。

 

「ルカリオ、“はどうだん”!」

 

 二つ同時でなく、あくまで片方だけを発射するルカリオ。

 これならば一発凌がれても二発目が残っている───それを理解しているからこそ、ヒマワリの指示は単純な回避や防御ではなく、

 

「“しねんのずつき”で跳ね返して!」

 

 直後、上体を大きく仰け反らせるエースバーン。その額には神秘的な光が収束し、強固なエネルギー場を形成するに至る。

 

「ファニー!」

 

 気合いの一喝が響き渡る。

 そうして大きく頭を振ったエースバーンは、あろうことか“はどうだん”を頭突きで跳ね返すではないか。

 

「ルカリオ、撃ち落とせ!」

「バウッ!」

 

 一直線に自分の下へ帰ってきていると身構えるルカリオへ、以心伝心の指示が念と声に重なりながら飛んできた。

 すぐさま残していた“はどうだん”で撃墜し、押し寄せる爆風から身を守る。

 視界は黒煙一色。肉眼で相手を望むことはできないが、

 

「───! バウッ!」

「“みずのはどう”!」

 

 見透かしたように狙いを定めるルカリオが、黒煙の中目掛けて波動を解き放つ。

 攻撃の勢いで黒煙が打ち払われた。晴れた空中には片膝を折ったエースバーンの姿があり、その表情はやや痛がったように歪んでいた。

 

 『当たった!』とホムラが興奮する。

しかし、それも束の間の喜びだった。

 

 “みずのはどう”を喰らっても尚、エースバーンの蹴撃が崩れる気配はない。

 対するルカリオは、攻撃直後で身動きが取れない状態だ。

 

「ルカリオ!」

「エースバーン、“とびひざげり”!」

 

 コスモスの叫びも虚しく、鋭い膝蹴りがルカリオの体を弾き飛ばす。

 やられたか───そう愕然とした観客席であったが、地面を転がるルカリオは間を置かずに立ち上がるではないか。

 

「外れたか!?」

 

 と、叫ばれる横でマツブサが目を細める。

 注目したのは左腕。脱力した腕は、ひどく重そうに垂れ下がっている。

 

 恐らくは“とびひざげり”を受けたダメージによるものだ。

 そう分析したマツブサは、直撃を免れた要因が直前の“みずのはどう”によるものだと、すぐに思い至った。

 

(瀕死だけは免れたか。だが、あのルカリオにとって片腕が使えなくなるのは痛いな)

 

 一度両腕から技を繰り出している場面を目撃したからこそ、尚更惜しく感じられた。

 手数を封じられれば、当然守勢に回らざるを得なくなる。裏を返せば、相手の攻勢がより激しさを増す訳であり───。

 

「“しねんのずつき”!」

 

 ルカリオの状態を把握し、接近戦が吉と判断したヒマワリの指示が飛ぶ。

 それを聞いたエースバーンは、相手にヘッドバッドをかまそうと飛び跳ねる。

 

「むむむっ、なんと軽い身のこなしか……!」

 

 唸るホムラ。

 頭突きと聞けば、上体を勢いよく反らす隙が大きそうな技に聞こえるが、ヒマワリのエースバーンは一味違った。隙の大きさを自覚してか、エースバーンは相手の周囲を不規則に飛び跳ね、ふとした瞬間にすれ違う───その短い間に繰り出しているではないか。

 

 これにはルカリオも対応には四苦八苦だ。

 いかに波動で背後からの攻撃に強かろうと、動かせない左腕が足かせとなり、普段通りの俊敏な身のこなしは叶わない。そして鈍重になった動きで、身軽なエースバーンの攻撃を捌き切ることもまた同じ。

 

「今は躱せているが長くは続くまい」

 

 それこそがマツブサの見解であった。

 

「それ故に───勝負に出るとするなら、そろそろだ」

 

 

「ルカリオ、スタンバイ!」

「バァウ!」

 

 

 ルカリオの残された右手に光弾が生み出された。

 守勢から攻勢に転じようとする動きに、ヒマワリの口角は吊り上がる。

 

「わかります、コスモスちゃん。アナタは勝算もなく動くトレーナーじゃないってことは」

 

 一文字に口を結ぶコスモスからの返答はないが、それで構わないと言葉は続く。

 

()()が作戦か、それとも信頼か。どちらにせよ……ジブンたちは真っ向から受けて立ちましょう!」

 

 エースバーン! と叫ぶヒマワリ。

 刹那、跳ねまわっていたエースバーンの足下に火が点いた。気づけばエースバーンはルカリオの傍まで迫っていた。

 

 それまでと比べ物にならない高速移動に、観戦していた者達から驚愕の声が上がる。

 

「炎を推進力にしたか……!」

 

 刮目するマツブサは、踏み砕かれた地面に残る焦げ跡に注目していた。

 あれはエースバーンの肉球───そこより生み出される高熱が火を噴き、推進力を生み出した何よりの証拠だ。跳躍と同時に発動することで、瞬間的なスピードを高める()()でもある。

 

 しかも、背後からの急襲だ。

 正面に対し、相手に振り向くまでの一拍がある分、その速度は致命的なものであった───はずだった。

 

「グルルッ……!」

「ファッ!?」

 

 思念を頭部に集中させるエースバーンに、ルカリオは()()()()()()()()()()

 低い唸り声を響かせながら相手を見据える眼光は肉食獣のそれだ。

 

これにはエースバーンも驚いたように瞳を見開いた。

 だが、ここまで来て退くという選択肢はなかった。

 むしろ、より大きく体を反り返す。ギリギリと。その様はまるで限界まで引き絞られた弓のようだった。

 

 キンッ、とエネルギーが収斂された甲高い音が響く。

 

「───“はどうだん”!」

「───“しねんのずつき”!」

 

 下から突き上げるようにして繰り出される“はどうだん”が、全力の“しねんのずつき”と激突する。

 先ほどは真正面から跳ね返されたが、今回は威力の減衰もないゼロ距離での攻撃。

 バチバチと収斂したエネルギーが拡散すること数秒、互いの攻撃に耐え切れなくなった光弾が爆発を起こす。

 

 しかし、間もなく二体が煙の中から姿を現した。

 広がる光景とは裏腹に互いに軽傷。決定打には至っていない様子だ。

 

 虚を突かれたエースバーンも、技を相殺してから華麗な宙返りを披露し、着地を決めてみせる。

 

 体勢を立て直すのはルカリオも同様───かに思えた、その瞬間だった。

 

「ルカリオ、今!」

「なっ」

 

───左腕は使えないはず。

 

 驚いたヒマワリだが、すぐに彼女は答えを目撃した。

 

()()()……!?」

 

 

「“あくのはどう”!」

 

 

「っ───エースバーン、“とびひざげり”!」

 

 不意を突いて放たれた黒い波動であったが、俊敏なエースバーンの繰り出した“とびひざげり”の前に霧散した。

 ああ、と残念がる声が観客席から上がる。ここまで先読みしたにも関わらず、決定的なダメージを与えられなかったとなれば、こうなるのも無理はないだろう。

 

 現にコスモスは、得も言われぬ表情を浮かべたまま固まっている。

 

「……」

「ふぅ……まさか、逆に意表を突かれるとは。中々胆が冷えました、コスモスちゃん」

「そうですか」

 

 褒めるような口振りのヒマワリに対しても、最低限の返答を返すだけだ。

 そして、

 

 

「それなら───こうします」

 

 

 最早口に出すまでもなくルカリオが動き出す。

 右手からは“はどうだん”。

 口からは“あくのはどう”。

 時間を置かずに解き放たれた二つの技は、一斉にエースバーンへと襲い掛かる。

 

 それを見たヒマワリはほんの僅かに目を見開きながらも、冷静に指示を飛ばす。

 

「撃ち落とします! “ダストシュート”!」

 

 素早く蹴り出された“ダストシュート”は、ヒマワリの指示通り“はどうだん”と“あくのはどう”の同時攻撃を迎撃する。

 そのまま相殺するかと思いきや、強烈なシュートは波動の壁を突き破ってルカリオの眼前まで押し迫る。

 

「弾いて“はどうだん”!」

 

 それを器用に手の甲で弾いたルカリオが、そのまま掌に波動エネルギーを収束させる。

 チャージに掛かった時間はものの数秒。

 しかし、それを見たホムラが立ち上がった。

 

「ダメです、チャイルド! それでは威力がっ……!」

 

 

「───“しねんのずつき”!」

 

 

「ああっ! やっぱり!」

 

 熱が入った反応を見せるホムラが、“しねんのずつき”で跳ね返された“はどうだん”を見て頭を抱えた。

 ここまで回避や迎撃で上手く直撃を免れたはいいものの、体力低下の影響は顕在化していた。

 

(倒れるのは時間の問題か……だが)

 

 解せんな、とマツブサが眉を顰めた。

 

(なぜこの場面で“はどうだん”を……?)

 

 跳ね返される結果は、先の攻防を見ていれば分かっていたはずだ。

 それを理解しないまま二の轍を踏むなど───あの少女に限ってはないように思えて仕方がない。

 

 そう思わせるだけのオーラが、挑戦者である少女にはあった。

 

(いったい何を企んでいるというのだ?)

 

 

「ルカリオ、“あくのはどう”!」

「エースバーン、“とびひざげり”!」

 

 

 跳ね返された“はどうだん”を避け、ルカリオが“あくのはどう”を口から放つ。

 それを待ち侘びていたかのようにエースバーンは跳ぶ。軽やかだった。そして、それ以上に速かった。

 迫りくる漆黒の波濤を前に物怖じせず、空を切り裂く膝蹴りを前方へと叩き込む。

 すれば、押し寄せていた波濤は一文字に薙ぎ払われ、奥に佇んでいたルカリオへと押し迫り、

 

「ガッ───!!?」

 

 鈍い音がバトルコート中に響き渡った。

 直後、青毛の体躯が宙を舞う。弧を描きながら、最後には重力に抱き寄せられて地に沈む。

 

 シンッ、と室内全体が静まり返った。

 それから間もなくして、勢いよく旗が振り上げられる。

 

「ルカリオ、戦闘不能!」

 

 ニンフィアに続いて二体目の瀕死だ。

 ジムリーダー同様、後がなくなるコスモス。帽子のつばで目元を隠しつつ、ルカリオをボールへと戻した彼女の表情は誰にも窺えない。

 

 一段と高まる緊張感。

 数分前とは違い、挑戦者側の数的有利がなくなった今、どちらが勝ったとしてもおかしくはない状況だ。多少なりともエースバーンの体力が削られているとはいえ、二体連続で倒した“流れ”は無視できるものではない。

 

「さあ、コスモスちゃん。3体目は何を出す?」

「……」

「選ぶなら熱が冷めない内に……ね?」

 

 ヒマワリの催促を受け、コスモスの手がボールへと伸びる。

 勝負の行方を決定づける最後の1体の選出に、観客席は固唾を飲んで見守る。それはマツブサも例外ではなかった。

 

「あの少女は───」

「コスモスは───」

 

 不意に声が重なった。

 その主は少し離れた席に座る赤い帽子の青年。

 

迷いなく、澱みなく。

彼は一つの未来を予言した。

 

「───ヌルを繰り出そうとしている」

 

 

「GO、ヌル!」

「ヴァアアア!!!」

 

 

「なに……!?」

 

 現れたのは見たこともないポケモンだった。

 けたたましい雄たけびを上げて参上した存在に、観客席からはどよめきの声が上がる。

 

「あのポケモン……」

「知っているのですか、カガリ?」

「うん……でも……」

 

 地下通路でのバトルを目の当たりにしていたカガリは思わず口籠った。

 

 あのポケモンが強いことは紛れもない事実だ。

 だがしかし、無視しようにもできない懸念点が一つ浮かび上がってくる。

 

 それは───。

 

「! 地下通路の……やっぱり知らないポケモン。でも、そういう相手だからこそむしろ燃えますね! エースバーン、油断せずにいきましょう」

「ヌル。私の指示に合わせて───」

 

「ヴァア!!!」

 

「……はぁ」

 

 言い切るより前にヌルが飛び出し、コスモスも溜め息を吐く。

 これにはヒマワリも予想外だったのか、ギョッと目を見開いている。

 

「迎え撃ちます! “かえんボール”!」

 

 しかし、そこはやはりジムリーダーだ。

 突然の攻撃にも、即座に声を上げてみせた。

 

 そうして飛び掛かるヌルへと“かえんボール”は飛んでいく。猛烈な勢いで迫りくる火球を前にし、野獣のような眼光を閃かせていたヌルは本能的に射線から飛びのく。が、重い兜のせいか避け切れず火球が身体の側面を掠る。

 

 直撃には至らなかったが、じりじりと焼き付くような痛みにヌルは唸り声を上げる。

 

「ヴルルッ……」

「人の言うことを聞かないからです。さあ、仕切り直し」

「ヴァア!!!」

「ですよ……」

 

 コスモスの指示も虚しく、聞く耳を持たないヌルは再びエースバーンへと向かう。

 

「ヌル! まったく……それなら“ブレイククロー”!」

「エースバーン、相手は動きの出だしが遅いです! “しねんのずつき”で攻めていきます! まずは躱して───」

 

「ファニー!?」

 

「え?」

 

 疾走するヌルがエースバーン目掛けて鋭い爪を振り下ろした───かに思えた次の瞬間、今度は逆側の爪を振り上げ、回避しようとしたエースバーンへ一閃を喰らわせた。

 

 明らかに“ブレイククロー”とは違う挙動に、ホムラは自身の目を疑うようにゴシゴシと擦る。

 

「あの技は⁉」

「アナライズします。あの技は……“つばめがえし”……」

「チャイルドの言っていた技とは別じゃありませんか!」

 

 そう、この場に居る者が気にする問題はそこであった。

 

「……トレーナーを無視している可能性……85%」

「ほぼ100%じゃないかい!」

「……85%と100%……違う」

「ほぼと言ったでしょーが! 揚げ足取らない!」

「了解。85%と100%はどすこいどすこい」

「そうです! どすこいどすこい……ん?」

 

 2人がマクノシタに引っ張られている間、バトルコートでは瑞々しい咀嚼音が響いていた。

 

 すると間もなくしてエースバーンが立ち上がり、追撃を仕掛けようとするヌルから逃れるべく飛び退いた。

 振り向く顔立ちは勇ましく、そこには不意の一撃を貰った苦痛など微塵も窺わせてはいなかった。

 

「オボンのみ、ですか」

「正解! ジムリーダー側も持ち物は禁止されてませんから」

 

 放り投げられたきのみの芯を見て、コスモスが言い当てる。

 口にすれば体力を回復する効果を持つオボンのみ。その回復量はオレンのみを超える。

 

「それよりも……ここに来て言うことを聞かないポケモンを選ぶなんて、それで勝てると?」

 

 一般的な感性から言えば『考えられない』の一言に尽きるが、

 

「思っていなければ、この子は選出しません」

「……なるほど」

 

 ヒマワリの目も伊達ではない。

 初撃のキレを見れば、ヌルが相当の強さを有したポケモンであることは見抜ける。スペックだけを見るのであれば、自身のエースポケモンにも差し迫るとも断言できた。

 

 けど、と言葉は継がれる。

 

 

()()()()()()()同然の相手に負ける程、ジムリーダーは弱くはない」

 

 

 毅然と言い放つヒマワリ。

 溢れる熱気に揺らめく彼女の姿は、分厚く高い炎の壁を幻視させるものだった。

 

「……使いこなしてみせろ」

 

 その光景を前に、コスモスはうわ言のように呟く。

 

 

 

 バトルは佳境を、迎えようとしていた。

 




Tips:ヒマワリの手持ち
・コータス(♀)
 性格:のんき
 特性:ひでり
 技:こうそくスピン、ニトロチャージ、ステルスロック、だいばくはつ等
 晴パの始動要員①。特性でフィールドを晴れにし、ステルスロックを撒く役割を担ってる。しかし、こうそくスピンとニトロチャージの組み合わせでフィールドを猛スピードで縦横無尽に駆け回ることができ、相手を翻弄する。今回はコスモスが対策してくることを先読みし、退場技にだいばくはつを採用。普段はがんせきふうじやじならしなども使っている。
 かつてホウエン地方に留学した際、フエンタウン近くで捕まえた。

・ポワルン(♀)
 性格:ひかえめ
 特性:てんきや
 技:れいとうビーム、かみなり、おいかぜ、でんじは等
 こおりタイプ4倍弱点のドラゴンタイプメタ要因。晴れ以外ではほのおタイプにこそならないが、それゆえの特殊な立ち回りでパーティをサポートする役目を担っている。基本的にはこおりタイプが弱点のドラゴンにれいとうビームを放ち、それ以外の相手にはでんじはを撃って麻痺にしたり、おいかぜで後続のサポートに徹する。かみなりは天候を雨にされた際、みずタイプを返り討ちにする用の技。
 かつてホウエン地方に留学した際、野生だった個体を捕まえた。

・エースバーン(♂)
 性格:いじっぱり
 特性:???
 技:ダストシュート、とびひざげり、しねんのずつき、かえんボール等
 現ヒマワリパーティのエースポケモン。正確無比なシュート攻撃と、軽快な身のこなしで相手を翻弄する。足裏に蓄積した炎エネルギーを爆発させ、不意打ちのように相手へ急接近し、攻撃を仕掛けることも可能。本来打たれ弱いはずのポケモンだが、バトル中はみずタイプの攻撃を喰らっても怯まなかったりと……?
 スナオカタウン近辺で出会った野生のヒバニーが進化した個体。

ポケモンで加入したい組織は?

  • サカキ様万歳! ロケット団
  • カガリ様hshs... マグマ団
  • ウホ、イイ男... アクア団
  • このアカギにさからららら…! ギンガ団
  • ゲーチス♪ゲーチス♪ プラズマ団
  • フレーフレーフレア! フレア団
  • グズマさんが最高でスカら! スカル団
  • 代表に保護されたい… エーテル財団
  • マリィ愛してるぜー! エール団
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