愛と真実の悪を貫く!!   作:柴猫侍

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前回のあらすじ

Q.チャンピオンの持ってるポケモンはどうして他の同種族より強いんですか?

コスモス「ものすごく特訓してるからじゃないですか?」

ベガ「も、元も子もない……」

アルタイル『でも真理』


№057:歴史の整合性を取るのって難しい

 

 

 

 ヤミカラスもお家へ帰る夕暮れ時。

 海の方を見ればホエルオーの潮吹いているが、そんなエモーショナルな光景に背を向け帰路に就く四人が居た。

 

「ただいま帰りました」

「おかえり」

 

 家に着けば家主よりも前に、自身と同じ居候の身である青年が出迎えてくる。

 今日も今日とて赤い装いの男・レッドは、湯飲みに手を添えながら縁側に座っていた。まるでずっとこの家で暮らしてきたかのような落ち着きぶりである。

 

「今日は遅かったね」

「はい。色々ありました」

「色々……?」

 

 コスモスの言い回しに首を傾げるレッドが、彼女の背後へ目を向ける。

 するとそこには、

 

「ひ、ひぃ……もう許ひて……」

「ベガ、しっかりするデース」

 

 デネブに背負われるベガがうわごとを繰り返していた。

 ほんのり上気して汗ばんだ肌と荒い息遣いは、見る人が見ればよからぬ想像を膨らませる姿ではあるが───。

 

「耳と首と脇とお腹と背中と腿と足の裏をくすぐるのだけは……」

『弱点の多さがナッシーじゃん』

 

 色気を期待した者。ナッシーの大爆発に巻き込まれるといい。

 だが、純粋に気になったレッドはコスモスに直接問いかける。

 

「何してきたの?」

「ポケモンバトルです」

「ポケモンバトルかぁ」

 

 それなら納得だ。

 レッドはうんうんと頷いた。一方コスモスの斜め後ろに立つルカリオは、信じられないものを見る目を浮かべながら『いやいやいやいや』と手と首を振っていた。

 

「あ、そうだ」

「先生、どうかしましたか?」

「これ」

 

 突然レッドが思い出したかのように古ぼけた書物を取り出した。

 

「はい、コスモス」

「私に?」

 

 コスモスは受け取った書物の表題に目を落とした。

 そして達筆な文字で書かれていた題名を見るや否や、コスモスの瞳が大きく見開かれた。興奮を隠さぬ様子でページを最後まで捲った後、確信を持った少女は大事そうに書物を掲げた。

 

「これは……『大地の奥義』……!」

「大事にね」

「はい! わざわざ名前まで書いていただいて……」

「え?」

「え?」

「……」

「……」

「ありがとうございます、先生」

「どういたしまして」

 

 一瞬謎の間があったものの、受け取って嬉しい物には違いない。

 丁寧に頭を下げるコスモスだが、これに疑問を抱いたのは旧知の友人である。

 

『何それ? 随分古そうな本だけど欲しかったの?』

「そうですね。この『大地の奥義』はサカキさ───ごほんっ。かのトキワジムリーダーがしたためた知る人ぞ知る名著で……」

『あー……』

 

 淡々とした口調ながらも熱く語るコスモス。

 それもそのはずであり、この『大地の奥義』という書物はまだサカキがトキワジムリーダーを務めていた頃に出版された著書である。歴代でも最強と名高いジムリーダーの大地を制する髄が記されており、ポケモントレーナーならば一見の価値があるとされている。

 しかし、元々の発行部数が少ないことに加え、サカキがロケット団首領と判明して以降、出版社による自主回収が行われてしまった。それにより現在市場には流通しておらず、限られた数だけがやり取りされるコレクターアイテムと化してしまった経緯がある。

 

(アジトに置いてあった一冊は行方知らずになってましたし、なんたる僥倖! もう一度これを手に入れられるとは!)

 

 ただし、コスモスにとっては単なるコレクターアイテムには留まらない。

 ポケモンバトルを極める者として頭に入れておくべき知識が、この一冊には詰め込まれている。

 

(これはまさしくサカキ様の教えです! 手持ちが充実してきた今なら、あれもこれも……あれだって試せます)

 

 当然今までに何度読み明かした書物ではあるが、当時はまだ実践まで至らなかった戦術や技も数多く存在する。

 だが、これでようやく実践に移せる。

 サカキの著書を読みながら、サカキの教えを実行する。これすなわちサカキに指導されているのに等しい。そう思うと自然と笑みも零れるというものだ。

 

「ふふ、ふふふふふ、ふふふふふふふふっ……」

「コスモス、笑い方が怖いデース」

「おっと」

 

 友人の言葉にハッとしたコスモスが自身の頬を叩く。

 

「まあ、日も暮れてきましたし実践は明日にしますか」

「そうだね」

「ダネダネ」

「「うん?」」

 

 謎の相槌が入り振り返るコスモスとレッド。

 二人が振り向いた視線の先には、見慣れぬフシギダネが一体佇んでいた。

 

「このフシギダネは……モンちゃんですね」

「ソォオオオオオナンスッ!!!」

「いや、緩急」

 

 シームレスにソーナンスへと『へんしん』したモンちゃんこと、テリアのメタモンが正解を盛大に祝福してくれる。

 そんなモンちゃんが来ているとすると、四六時中行動を共にしている彼女も近くに居ることとなる。

 

「いやぁ~、腹がペッコペコのモルペコだよォ~。夕ご飯も盛るペコで頼むよォ」

「テリア博士……ずっと研究してたんですか?」

「う~ん? ……おォ、帰って来てたのかいコスモス氏!」

 

 ゾンビのような顔色をして出てきたテリアは『当然じゃないか』と答える。

 

「とりあえずシャドウポケモンについてのレポートはまとめたかな。これでワタシはお役御免さ。適当にレポート送ってお金貰ったら……」

「元鞘に収まる訳ですね」

「あれ? コスモス氏に言ってたっけ?」

「仔細ならあっちから」

「あっち?」

 

 目線をあっちに向ける。

 そこに居たのは未だ死に体のベガ。どこからどう見ても何かあったようにしか見えない。

 

「……音楽性の違いで喧嘩でもした?」

「別に喧嘩はしてません。まあ、少しいざこざはありましたけれど、話はもうまとまりました」

「あ、そう?」

 

 ならばこれ以上の詮索は必要なかろう。テリアはそう自分に言い聞かせることにした。お互い脛に疵を持つ者同士、()()()()()()を含め余計な詮索はなしだ。

 

「それなら……おーい、ジー氏ぃ~~~!! そろそろ夕ご飯の時間にしよぉ~~~!?」

 

「居候の癖に家主に対して厚かましいことこの上ないですね」

『同意』

「ディナーの支度、ミー達も手伝ってあげまショウ!」

「おれも」

「ワ、ワタクシも……一宿一飯の恩を返さないのは流儀に反しますわ……!」

 

 辛辣な評価を下したコスモスを先頭に、テリアを除いた五人が家の中へと入っていく。

 きっとこれから夕食の準備を手伝うのだろう。

 

 次の瞬間、一人取り残されたテリアには、海から吹き付けてくる生温い風が叩きつけられた。これは世間から向けられる視線の温度に似ているような気がした。

 

「……あれ? これってワタシが非常識?」

「ソォオオオオオオナンスッ!!!」

 

 夕焼けの空に肯定の声が木霊した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 お手を合わせて合掌。

 

『いただきます!』

 

 数日前よりも格段に人口密度が高まった居間で夕食が始まった。

 

「ああっ!? コスモスさん、それはワタクシが狙っていたお芋さんですわよ!!」

「別に誰のものでもないでしょうに。あむっ」

「あああっ!? ころころマメの甘露煮まで!? ぐぬぬぬぬッ……!!」

 

「アルにはミーがごはんをよそってあげるデース!」

『い、いや……もうお腹いっぱい……』

「まだ茶碗の半分もよそってまセーン」

 

「お、おおお?! 赤先生赤先生! 今日のご飯はなんだか青いね!? オレンのみと一緒に炊き込みでもしたのかい!? なんたる挑戦……食への冒涜……しかしその精神誉れ高い……!!」

「シルフスコープを着けてるからじゃ?」

「あ」

 

「……」

 

 随分と賑やかになった食卓。

 すると不意にジーの箸が止まったことにコスモスが気づいた。

 

「すみません、騒がしかったですか?」

「む? ……いや」

「ほら、うるさいって言われてますよ───ベガ」

「えっ、ワタクシですの!? そ、それはだってコスモスさんが……!!」

「急に上がり込んできてタダ飯を食らっていて厚かましいとも言いたげです」

「う、ぎぐッ!? そ、それは……」

 

 痛いところを突かれたと言わんばかりにベガが苦々しい表情を浮かべる。

 普通に考えて一人暮らしのところに居候が一人だけでも手間が増えるというのに、居候が連れてきた二人に加え、予期せず上がり込んで来た三人も増えたとなると、人数分の食事を用意するだけでもかなりの労力を要するだろう。

 

「くっ……ご、ごもっともな意見ですわ。それなら、これを……」

「……この1000円は?」

「ワタクシのポケットマネーでよろしければ、どうぞお納めください……」

 

『1000円で済まそうとする方が面の皮厚いと思うんだけど』

 

 至極真っ当なツッコミが横から入った。

 しかし、それに異を唱えるのはベガであった。

 

「何を仰るんですの!? 1000円あったら三食分足りるんじゃなくって!?」

『金銭感覚が貧乏のそれ』

「ワタクシにデネブ、そしてアル……ついでにコスモスさん、テリア博士、先生と、少なくとも六人×三食、計十八食分はあるはずですわ!!」

『一人何円換算?』

 

 約55円だ。

 こんな金額では精々もやし生活が限界である。

 

「……子供のキミが気にすることではない」

 

 これにはジーも哀れみの目を浮かべ、1000円をそっとベガへと突き返す。

 この大人な対応には少女も五体投地で感謝の意を伝える。衣食住の有難みに関しては、彼女がこの中で一番理解していよう。

 

「この御恩は一生忘れませんわ……!」

「でも、ごちそうになってばかりで申し訳ないですね。何かしてほしいことがあったら遠慮せずに言ってください」

 

 貧乏な友人の代わりに気を利かせようとするコスモスに、しばしジーが唸る。

 当初の通り、子供に気を遣わせるのを良しとしていなかった彼であるが、このまま親切心を無下にするのも悪いと考えたのだろう。

 

 思案すること数秒。

 言の葉を発さぬまま、パクパクと口を動かすジー。それが何かの“味”を思い出す仕草であると気付いたのは、彼の頼みを聞いてからだった。

 

「……それなら、採って来てほしい食材がある」

「食材ですか?」

「きらきらミツだ。ビークインやミツハニーの巣で採れるんだが……」

「ビークインですか……」

 

 昨日の思い出が蘇る。

 あの時はテリアの不注意が原因であったが、それを差し引いてもミツを狙ってビークイン達に追いかけ回されるのは懲り懲りのオニゴーリだ。

 

「……本当にきらきらミツじゃなきゃダメですか?」

「あれがあったらもりのヨウカンを作れるのだが……」

「どれぐらい瓶詰めすれば足りるでしょうか?」

 

 デザートマフィアのお出ましである。

 彼女が通った後にはデザート一つ残らない。さながらカビゴンの如き食欲を前に、トレーナーズスクールで付けられたあだ名は『メスゴンべ』である。

 

「流石コスモス氏。ワタシの研究室に来てはお茶請けを搔っ攫っていっただけのことはあるね」

「えっ、あれ博士のお茶請けだったんですの?」

 

「人聞きの悪いことを言わないでください。もうすぐ賞味期限が切れてたのを確認して譲ってもらってただけじゃないですか」

「あれ賞味期限切れてたんですの!?」

 

 予期せず衝撃の事実が発覚し、一時愕然としていたベガが怒りの形相でコスモスへと詰め寄った。

 

「いつもどこから頂いてくるのかと思っていたら!! 通りでお腹を壊す訳ですわ!! ……アルが」

「それを言うならそっちだって人の事は言えないんじゃないですか? 雑草茶を飲まされてお腹を壊したことは忘れてませんよ。……アルが」

 

『キミらさぁ』

 

「でもミーはお腹壊してまセンよ?」

 

 口を開けば騒がしくなる四人により、食卓が静かになる気配は微塵も感じられなかった。

 

「……」

 

 一方、レッドはこの光景に微笑ましそうな眼差しを送っていた。

 そう言えばコスモスとはそれなりの時間を共に過ごしていた訳であったが、彼女の交友関係には言及したことがなかった。

 彼女から話す機会がないというのもそうだが、大抵の話題がポケモンバトルについてだったのも原因だろう。

 トレーナーは皆、ポケモンが友達、あるいはそれに近しい関係といったスタンスである為か、レッドのような極端に周囲と接触が少ない人間であっても寂しさを感じにくい点はある。

 

 しかし、だからといって人間の友達を無下にしていい訳でもない。

 言葉を交わし、時には喧嘩し、そして仲直りする。ポケモンよりも明瞭な言葉のやり取りを介在するからこそ、特に切磋琢磨する間柄としてはこれ以上ない存在となるだろう。

 

 レッドにも少なからずそういった友人は居た。

 何をするにも先を行き、競争心と闘争心を煽ってくる姿は正しくライバル。

 だがしかし、今になって考えてみるとやはり挑発的な物言いが過ぎると思うし、特にフーディンが進化した際に『オレの他に友達が居ないレッド君には進化させられないよな、ププーッ!』と煽ってきた時には殺意の波動に目覚めた。

 

「……やはり緑は敵」

「殺気!?」

 

 『しまった』と漏れ出た殺気を収めた頃には、すでに全然関係のない緑髪の少女が震え上がっていた。

 まだまだ修行が足りないな───反省するレッドは、謝罪の意を込めてケムリイモの煮っころがしを一つ皿の上に贈呈する。ベガは終始困惑の色を浮かべていたが、貰える物は貰っておく主義の彼女は有難く芋を口へと放り込んだ。

 

 だが、その時だった。

 視線を戻す最中、家主の得も言われぬ面持ちを目撃してしまった。

 レッドも人の事を言えた義理ではないが、彼も彼で感情の機微が読み取りにくい人間である。もしかすると騒がしい食卓に辟易しているのではないかと考えたレッドは、無理やりではあるが話題を戻すことにした。

 

「もりのヨウカンが好きで?」

「……いいや」

「じゃあ、手持ちのポケモンが?」

「……なぜ、そう思う?」

「あ」

 

 じろりとした視線がレッドへと突き刺さる。周りの人間は気づいていなかったが、その目には懐疑心が滲み出ていた。まるで詰るように自身を睨めつけてくるジーに対し、レッドは投げかけられた『なぜ』の意味を考えた。

 

 一つ目は、単純にジーの手持ちがもりのヨウカンを好む理由。

 二つ目は、そもそもどうして()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 ここに来て数日、ジーは自身に手持ちが居るなどとは一言も喋っていない。それなのにも関わらず『手持ちが居る』と断定されてしまえば、当人が不審に思うのは至極当然であると言えよう。

 

 とすると、彼の問いかけは後者だろう。

 

「……五体」

「!」

「空を飛んでいるクロバットにドンカラス……家の周りを見張ってるマニューラにヘルガー……それに、海を泳いでいるギャラドス」

「……」

「全員がこの家を見守っているように見えたから」

 

 レッドが言い切るのを待っていたかのように感嘆の息が漏れ出る。

 そのままジーが視線を庭の方へと向ければ、夕闇に双眸が二つほど浮かんでいた。どちらもレッドの方に向き、警戒心を露わにしているようだった。

 

 だが、ジーはそれを目で制する。

 スッと夕闇に浮かぶ双眸が消えた。代わりにガサガサと茂みを掻き分ける音が響いてくる。

 どこかへ去ったのだろう。ただ、この家を見守っていることだけは確かだとレッドには思えた。

 

 消えゆく音を聞き届けたジーはゆっくりと振り返る。

 

()()()()()()……か。キミにはそう見えたのだな?」

「違いました?」

「……正直、わたしにも分からない」

 

 その答えにレッドは疑問符を浮かべた。

 分からないとはまた珍妙な答えだ、と。

 しかし、続く言葉を耳にすれば彼の答えにも納得いった。

 

()()はわたしがこの島に来た時から一緒に居たようだ」

「……というと?」

「わたしにあれらとの記憶はない」

 

 溜め息を吐かんばかりの口振りだった。

 その様子が落胆にこそ見えはしたが、何に対しての落胆かまで推し測るには、今はまだ早計だろう。レッドは沈黙を守ることで続きを促した。

 

「なぜわたしと一緒に居たのか? なぜわたしから離れようとしないのか? その理由を論理的に説明できるとすれば……やはりキミの言う通り、わたしの手持ちだからなのだろうな」

「一緒に暮らそうとは?」

「思わないし、必要もない」

 

 ジーは断言した。

 

「共に居る理由が分からないからな。元々人間とポケモンは違う世界を生きてきたはずだ。必ずしも一緒でなければならない必要性もないだろう」

「……」

「納得できないというのであれば、それはキミの価値観の問題だ」

 

 価値観とは非常にデリケートな問題だ。

 同じ社会で暮らしているからと言って、誰しもが同じ価値観で生きているとは限らない。生まれた時からポケモンと一緒に暮らすことが当たり前であるという価値観もあれば、逆にポケモンと極力触れ合わずに生きていこうとする価値観があっても不思議ではない。特に今ほどポケモンとの距離感が近くない時代まで遡れば、そちらの方がスタンダードと言い切っても間違いではない。

 

「わたしは今の生活を……好ましくないとは思っていない。世俗のしがらみから解き放たれ、一人静かに暮らすこの平穏は何物にも代えがたい価値がある」

「……そう」

「別に理解してもらわなくても構わない。きっと、わたしとキミの価値観は大きく違うだろうからな」

「でも……」

「?」

 

 押し黙っていた青年が口を開こうとするのを見て、ジーが反応した。

 

「おれは、ポケモンと一緒の方が楽しいです」

「……」

「……あ、別にこれ以上は……」

 

 反論されるかと身構えていたが、返ってきたのは反論とも言えぬような個人的な感想。論理的な議論を展開する上で、根拠とするには余りにも弱い主張だ。

 しかし、そもそもレッドは議論するつもりがなかったのだろう。

 ただただ自分の思いの丈を打ち明けただけ。一人が好きというジーに対し、ポケモンと共に居る方が楽しいと告げただけ。その主張に相手の論理を打ち崩すような意図もなければ、自分の価値観を押し付けようとする意図もない。

 

「……そうか」

 

 肩の力を抜き、ジーは空になった茶碗に箸を置いた。

 ふと庭の方へ目を向ければ、居間には入り切らなかったレッドやコスモス達のポケモンが集まり、ガヤガヤと騒ぎながら食事に手をつけていた。

 

 ルカリオが中心となる同窓組。

 進化したクロバットを祝福する面々。

 群れず一人黙々と食事を進める者。

 

 食事一つを見てもグループはいくつも存在していた。

 だが、不思議とそれらは互いに適度な距離感を保ち、時には周囲を巻き込みながらも楽しそうな声を響かせていた。

 そこへ視線を送るジー。けれども、レッドにはその瞳はもっと遠くを見つめているような気がしてならなかった。

 きっと物理的なものではないのだろう。遠い……それこそ二度とは届かぬ距離まで離れてしまったものを見ようとしていたのかもしれない。

 

「ポケモンと一緒の方が楽しい、か……」

 

 やがてジーは目を伏せた。

 陰になった目元を望むことはできないが、吐き出した声は俯いたせいで押し潰されていた。

 

「それもまた、間違ってはいないのだろうな」

 

 辛うじて紡がれた声は、酷く寂し気に聞こえた。

 

 

 

「あっ。それは私が狙っていたお芋……!」

「フフーンですわ! これでワタクシの気持ちがよく分かったでしょう!? これに懲りたなら二度と人の獲物は狙わないように……」

「よくも……上等です。その喧嘩買いましょう」

「あれ? コ、コスモスさん……何をそんな怖い顔をなさって……」

「食べ物の恨みが恐ろしいということ、骨の髄まで叩き込んであげますよ。表に出てください。10回ほどバトルしようじゃあありませんか」

「じゅじゅじゅじゅじゅ、10回!? この時間から!? 良い子はもうお風呂に入って眠る準備を済ませる時間ですわよ!?」

「問題ありません。30分で終わります」

「一試合3分計算!? それって確実にワタクシが一方的に負かされる計算じゃありませんのォ~~~⁉」

「よく分かりましたね。ちょうど次のジムがくさタイプでして……そういうことです」

「どういうことですの!? いやぁーーー、負かされるぅーーー!! ワタクシの尊厳という尊厳がバッキバキにへし折られるゥーーー!!」

「今更じゃないですか」

「ひどい!? うわーん、コスモスさんがいじめるぅーーー!!」

 

 

 

 そんな声も、目の前の姦しい喧噪の中へと消え入くのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 そろそろホーホーが鳴き始める空色。

 

「ぎゃひー!?」

 

 泣いたのは一人の少女だった。

 

「ふぅ。いい汗を掻きました」

「うっ、うぅ……ひどい……ホントに10連戦もするなんて……」

 

 無事10連敗を喫したベガは地に崩れ、袖で溢れる涙を拭っていた。なつき度ストップ安である。

 片やコスモスはと言えば勝利を掴み取ったユキハミの頭を撫でている。ポムポムとあやすように撫でれば、ユキハミも満足そうに目を細めた。

 

 一方、惨敗を喫したベガは人の呪い殺せそうな視線をこれでもかとコスモスに送っていた。

 

「というか、一体なんなんですのッ!?」

「なんなんですのと言われても……主語は明確にしてください」

「昔に増して強くなってるじゃありませんの!? ルカリオならともかく、そんな雪ん子キャタピーに負けるなんて思いもしませんでしたわ!!」

「先生の教えの賜物ですね」

「先生って……あの薄ぼんやりした御方のことですの? あんな方がアナタを指導できるなんて思えませんが……」

「言葉は選んだ方がいいですよ。でなければ、先生直伝の『ふぶき』をお見舞いしなければならなくなります」

 

「ユキュ……」

 

「ひぃー!? む、虫だけは……」

 

 ズイッと差し出されるユキハミのジト目に晒されるベガ。

 まるで銃口を突き付けられたかの如くむしポケモンに震える姿からは、悪の組織の尖兵たる威厳は微塵も感じられなかった。

 

「ふんっ、他愛もない……」

 

 かくして次なるジムへの経験値を溜められたところで、コスモスは堂々とした足取りで帰宅した。

 そして玄関で靴を脱いだ時、後ろから溌剌とした声が聞こえてきた。

 

「ヘイ、コスモース! バトルは終わったデスか?」

「はい。ところでデネブはこれから何を?」

「テイク・ア・バス! お風呂デース!」

 

 外国語混じりの台詞に似合わず、古き時代を思わせる風呂桶と手ぬぐいを抱えるデネブはサムズアップする。

 

「オオ、そうデス! ひさしぶりデスし、一緒にどうデス? 裸のド突き合いデース!」

「それを言うなら裸の付き合いですね」

「そうトモ言う!」

「それが正なんですよ」

 

 だが、断る理由もない。

『まあ構いませんが』と頷くコスモスはさっさと準備を済ませて風呂場へと直行する。その頃、すでに湯船ではデネブがのほほんとした顔で浸かっていた。

 

「じゃあ失礼します」

 

 本来一人用の浴槽に二人が収まった。

 当然お湯は溢れる。しかし、コスモスの身体が小さいこともあり、溢れたお湯は最小限で済んだ。

 それはそれとして浴槽の水位は最大限まで上昇した為、湯船はタプタプであった。少し身動ぎするだけでも波打つお湯が流れそうである。

 

「ふぃ~~~っぷ……」

「イイ湯加減デスね……」

 

 都会では味わえぬ薪風呂を堪能する二人。

 少し開けた窓の外から入り込んでくる森の香りやパチパチと爆ぜる薪の音が、これまた乙なものであった。

 しばし、まったりとした時間が流れる。

 

「良かったんですか?」

「ン?」

「今日のバトルの勝敗です」

 

 口火を切ったのはコスモスであった。

 唐突な話の切り出し方に、当然のようにデネブは小首を傾げる。だが、そんな彼女を後目にするコスモスの瞳にはどうにも懐疑的な光が宿っていた。

 

「私を負かしてでも組織に戻したかったんじゃないですか?」

 

 結果的にはコスモスが勝ち、テリアの扱いについても話はまとまった。

 しかしながら、元々三対一という状況に至った経緯はベガの提案に依るところが大きい。『コスモスをロケット団に引き戻す』───それを聞いて真っ先に動いたのは他でもない、デネブである。

 

 ルリリがマリルへと進化する程度にはコスモスに懐いている彼女としては、連れ戻せなくて残念がっているかと思っていたが、

 

「そうでもないデスよ? ミーは何があってもコスモスの味方デス!」

「……じゃあ、()()()『じしん』を指示したのも?」

「……フフッ。ミーは難しい言葉分かりまセーン」

 

 背中からコスモスに抱き着くデネブが、耳元でそう囁いた。

 茶化かすような語調であったが、やけに耳を撫でる吐息はしっとりとしている。

 

 これではほとんど自白しているようなものだ。

 やれやれと溜め息を吐いたコスモスは、やや不貞腐れた表情を浮かべ、

 

「……私だけでも勝てました」

「そんなこと言われなくたって知ってマース!」

「……貴方も大概いい性格してますね」

「どういたしマシテ☆」

 

 デネブの楽しそうな笑い声は、ピチャピチャと跳ねる水の音と共に弾んでいた。

 

 

 

(……なんか、えらい話聞いちゃったなぁ)

 

 

 

 今の話を偶然通りがかった廊下でアルタイルは聞いていた。

 その腕には風呂桶が抱えられ、中には一通りの着替えが用意されている。

 

(ぼちぼち上がってくるかなって来てみたけど……ベガが来なくて正解だった)

 

 当人が耳にすれば烈火の如く怒り狂いそうな案件だ。

 だが、どちらかと言えば日和見主義のアルタイルにしてみれば、わざわざ見つけた火種に油を注ぐつもりはない。

 

(今のは聞かなかったことにして、もうちょっと時間置いてから来よう───)

 

 

 

「ア~~~ル~~~?」

『ヒッッッ!!?』

 

 

 

 今まさに引き戻ろうと踵を返した瞬間だった。

 真後ろから聞こえてきた少女の声に、肝という肝が縮み上がった。すでにもう胃が痛い。

 キリキリと壊れた機械のように振り返れば、しっとり濡れた青髪から水滴を垂らす全裸の少女がそこには立っていた。

 それこそ人形のように整った顔立ちが湛える笑みが美しい。だからこそ、恐ろしい。

 そのまま動けぬアルタイルを背後から抱くデネブは、フード越しの耳元にそっと囁いた。

 

「聞いてマシタよね?」

『な……なんの話? ボク今来たばっかりだから何のことやら……』

「集音器、新調したんデスよね? 壁越しでもよく聞こえそうデスね」

『……聞いたとは限らないし……』

「これでアルも共犯デスね☆」

 

 有無も言わさないとはこのことだ。

 

 かくして共犯にされたアルタイルもまた風呂場へズリズリと引き摺られていく。

 

『やめろー! 死にたくなーい! 死にたくなぁーい!』

「一名様ご案内デース☆」

『死にたくなあああああい!!』

 

 そして、アルタイルは深淵(風呂)へと引きずり込まれるのであった。

 

 

 

「いや、流石に三人は狭いんですが?」

 

 

 

 ***

 

 

 

───死にたくなあああああい!!

 

「おん? なにやら不穏な悲鳴が聞こえるぞ?」

「キノキノ。キノ、セィ」

「気のせいかァ」

 

 キノココからセレビィへの『へんしん』を遂げたモンちゃんに、テリアは『そうかそうか』と頷いた。

 相も変わらずラボに引き籠る彼女は、今日も今日とて研究に没頭していた。

 湯飲みに淹れたカゴのみ茶をストローで啜りつつ、忙しなくキーボードを指で叩く。プロのピアニストよろしく凄まじい速さで文字を入力していく彼女は、最早瞬きするのも忘れて資料をまとめている最中であった。

 

「次の定期便でここ出てくって言ってたしなァ~。今の内にやれることはやっておかないと……」

「……出ていくのか?」

「おぉっと!?」

 

 突然背後から話しかけられた驚きで湯飲みを倒しかけるも、機材を濡らすまいと何とかストローで支える。オーダイルも称賛を送る交合力、いや、口輪筋だ。

 そこからそっと湯飲みを立て直すテリア。

 ふぅ、と安堵の息吐いたところで、彼女は後ろに立っていた人物の方へ不満の意を露わにする。

 

「ちょっとジー氏ィ~~~! 急に後ろから話しかけないでくれたまえよォ~~~! ワタシの研究資料がダメになったらどうしてくれるんだい!?」

「……すまない」

「ま、こんなこともあろうかと機材自体は防水仕様にしているからね。今までに何度飲み物を零して上司や教授に叱られたか……そこらへんは抜かりないから安心したまえ☆」

「……」

 

 じゃあ謝り損では?

 そんな胸の内をおくびにも出さず、ジーは改めて当初の質問を繰り返すことにした。

 

「ここから出ていくのか?」

「うん? あぁ、そう言えばジー氏にはまだ言ってなかったね。ワタシ、スカウトされたから五日後にここ出てくことになりまして……今までお世話になりました!」

「……そうか」

 

 素直に『それは良かった』と告げるジー。

 自分のように隠居生活を好き好んでしているのならばともかく、研究者の彼女にとっては不都合が勝っていたように見えていた。

 

「荷物も持って行くのか?」

「まあね。でも、持って行くのは最低限でいいかなァ~。どうする? 機材とか使う?」

「わたしが?」

 

 思いもよらぬ提案にジーは面食らう。とは言っても、傍から見ても分からない程度の変化ではあるが。

 

「……わたしが貰ったところで宝の持ち腐れだ」

「そうかなァ? だってジー氏って相当機械詳しいでしょ?」

「どうしてそう思う?」

 

───片田舎に住む中年がどうして機械に詳しいのか?

 

 そう問い返すような論調だった。

 しかし、テリアはケロッとした表情で答える。

 

「だって、物置に置いてあった家電……あれ修理したのジー氏でしょ?」

「……」

「家電と言えど直すにはそれなりの知識が要ると思うよ? それをセンスか、はたまた昔の知識で直したっていうんなら……ちゃんと機材揃えたら色々出来ると思うんだけどなァ~」

 

 少なくとも、辺鄙な離島で文明的な生活を営める程度には。

 テリアは実にもったいないと言わんばかりだ。対するジーは、ラボに所狭しと並んでいる機材にジッと目を遣る。

 

「……そうか」

「ま、要らないって言うんならこっちで片づけるけども」

 

 無理強いはしないスタンスのテリアは再びパソコンのモニターへと向かう。

 

「……シャドウポケモンのレポートは終わったんじゃないのか?」

「そうそう。だからね、今はオーパーツの方の調査メインなのさ! ここを出てくまでの間に、ちょっとでも進めておきたいからさ」

 

 そう言いながら手を進めるテリアが向かうモニターには、板らしき物体を3Dスキャンしたと思しき画像が映し出されていた。

 一見すると何の変哲もない板だが、一瞥したジーは眉を顰める。

 

「木簡か?」

「お、鋭いね! そうとも、これがゲンエイ島で見つけたタイムトラベルに繋がる証拠……になるかもしれない代物の一つさ!」

「何と書いてある?」

「ちょっと待ってくれたまえェ~……」

 

 急かされるテリアは滑らかなタイピングでキーボードを叩けば、何かのソフトウェアが起動されたらしい音が鳴り響く。

 

「紙や木簡みたいな素材に書かれた文字は風化で消えている可能性が高いけれど、こういう時は赤外線センサーの出番さ!」

「読み取れるのか?」

「勿論だとも! ムフフ……過去の人間が書き記した文字を解き明かす。これはまるで他人の恋文を読むかのようなドキドキ感があって堪らないねェ……!」

 

 その感覚に同意できるかはさておき。

 

 テリアがマウスで操作を続けると、最初は不鮮明であった木簡から読み取られた模様が、みるみるうちに文字として浮かび上がってくる。

 

「……なんだ、この文字は?」

「ん~? なんだか二つの文字が重なってるなァ……? 一つはよくある古文だとして……こっちは古代文明の文字かな?」

 

 一つは何の変哲もない墨で書かれた文字であった。

 しかし、記されていた文字はもう一つ。サイコロの目のように規則性がありそうな点が彫られた溝のような文字だった。

 

「カントーやホウエンの古代遺跡で見かける文字っぽいし……もしかすると、そっち系と何か関係あるのかもしれないねェ!」

「読めるのか?」

「まあね」

 

 書き記された文は、こうだった。

 

 

 

 

 

ワレ ロータ ヨリ キタリシ ハドウツカイ

ココニ トキヲ コエタ デアイニ

カンシャノ イヲ ヒョウシ

コノ トキノ ヤシロニ

ユウジョウノ シルシヲ マツルモノトスル

 

 

 

 

「……どういう意味だ?」

「……」

「……? どうした、どこか具合でも───」

「ここここ、これは……大大大大大発見だよォ~~~!!!」

 

 直後、黄色い声がラボ中に響き渡った。

 そのドゴーム顔負けの声量には、堪らずジーの仏頂面もしかめっ面になる。モンちゃんに至ってはマネネに『へんしん』して耳を塞ぐ始末だ。

 

「……何が大発見なんだ?」

「おっと、失礼! いやァ、つい興奮して……」

「興奮したのは見て分かる」

 

 聞きたいのは何に興奮したか、だ。

 暗にジーが催促すると、血走った眼を浮かべるテリアが鼻息を荒くし、モニターにズイッと顔を近づける。ブルーライトで目が悪くなりそうな距離だが、注意するのも今更だろう。

 止めなければ勝手に話し始める。彼女のことを知っている者ならばその性質を理解している為、ジーは何も言わずに聞く態勢へと入った。

 

「そうだよねそうだよね!! 気になるよねェ!? この文書には二つの大発見があるのさ!! 一つはまず『トキヲ コエタ デアイニ』っていう部分……これがゲンエイ島で見た時間の花の奇跡と照合すると、セレビィとの出会いを示唆しているものに他ならない!! すなわち、これは過去にあの社で何者かがセレビィとの邂逅を果たした証拠なのさ!!」

「二つ目はなんだ?」

「ここ!!」

 

 ドンッ! とテリアがモニターに指を突きつける。

 

「この一文!! 『ロータ ヨリ キタリシ ハドウツカイ』の部分さ!!」

「ハドウツカイ……ああ、前に話していたサイキッカーのことか」

「まあ、波導使いに関してはその認識でいいけれど……重要なのはむしろこっち!! 『ロータ』の部分さ!!」

 

 ロータとはカントー地方に存在する地名。地理的にはシロガネやまの北で、なおかつオツキミやまの北西に位置する山岳地帯である。カントー百景にも選ばれた湖に囲まれた城・オルドラン城では、毎年女王の前で今年の波導の勇者を決める御前試合が執り行われている。

 

 とどのつまり、波導使いゆかりの地であるという訳だが。

 

「史実を振り返ってみても、ロータ出身のルカリオをパートナーとする波導使いなんて一人しか居ない!! 大昔、赤軍と緑軍が正面衝突しようとした際、世界のはじまり大樹に赴き戦争を止めたとされる伝説の波導の勇者!!」

 

 その名も『アーロン』。

 伝説の中の偉人の足跡が、今まさに目の前に記されていた訳だ。

 

「ウッヒョ~~~!! これだから研究はやめられないねェ!! アドレナリンドバドバだよォ!! 学会に報告したら大騒ぎ間違いなし!! あ、でもワタシこれからしばらく学会出れないんだった。ックゥ~~~、残念だねェ~~~!! この感動を各界の学者先生方に共有できないなんて!! 独り占めしてしまって悪いねェ!!」

「……」

「……あり? でも確かアーロンってロータから出た記録ないな。生涯リーン女王に仕えたとか見たような……ありり? あぁ~~~歴史の整合性を取ることの難しさァ~~~!! うっ」

 

 一人でテンションが急上昇し、そして急降下を果たすテリア。

すると次の瞬間、彼女は突然目の前がブラックアウトしたように気絶する。ここ最近の疲れと感動で体が限界を迎えたのか、余りにも突然なシャットダウンであった。

 

 一人取り残されたジーは困惑の色を隠さぬまま、モニターへと目を移す。

 モニターには、まだ木簡に刻まれた文字が映し出されていた。額面通りに受け取るのであれば感謝と友情を記したとされる古文書であるが───。

 

「……」

 

 不意に歩み出したジーが、手放されていたマウスを手に取った。

 そのまま慣れた手つきでホイールとクリックを繰り返せば、これまでの彼女がまとめた研究資料のデータが次々に展開される。

 

 時間の花。

 ゾロアーク。

 ゲンエイじま。

 そして───。

 

 流れるような目の動きでデータを閲覧していくジーだが、不意に彼が手を止めるデータが存在した。

 

「……セレビィ……か」

 

 ときわたりポケモン、セレビィ。

 時を超えて豊かな森へ訪れては、草木に活力を与えるとされる幻のポケモンだ。過去に出現が確認された地域は数少なく、その一つがゲンエイ島と判明しただけでも世間的には大発見と言えるが、

 

「……」

 

 その落ち窪んで影が掛かった瞳は……もっと別のものを見つめていた。

 

 

 

 

 




Tips:アルタイル
 ロケットチルドレンの一人。全身黒づくめのコートにフードと、熱中症まっしぐらな恰好をしているが、コートに備わった冷却ファンでむしろ快適状態を保っている文明の利器に頼り切った人間。電源が切れた時は死あるのみ。
 会話に初代ポケモン図鑑を改造した電子音声を使用しているが、これは本人が吃音気味で、なおかつ声量が余りにも小さくフードに声が籠る為。音声機器はかつて同室だったコスモスがコミュニケーションが滞るとテリアに依頼して作ってもらったものである。製作に携わった二人が試しに特殊コマンドに『ナパーム弾』しか喋れなくなるモードを搭載しているが、本人はまだその事実を知らない。
 機械いじりが得意であり、同期の中では常識的な感性を持っているが、その為に個性的な周囲の面々に振り回される苦労人でもある。加えて非常に小食である為、大抵給食は残しており、その度に残った分はベガやコスモスに処理してもらっていた。
 両親がどちらもロケット団関係の科学者であり、半ば流れで自身もロケットチルドレンとして選ばれはしたが、元々周囲の人間と関わらない内向的でコミュニケーション能力に難があった性格であった為、対人関係で苦労していた。だが、良くも悪くもドライで淡々とした性格のコスモスとは上手く交友でき、その関係でベガとデネブとも仲良くなれた。そんな経緯もあってか内心はコスモスに感謝しているが、時折振り回されているのも事実である為、プラマイゼロだと考えている。
 中身は小柄でそばかすがチャームポイントの赤髪の少女。四六時中フードとゴーグルで顔を隠しているのは人と面と向かって話せないのと、体質的に日に弱い為。
 ロケットチルドレン四人の中でも一番小柄だが、一番胸が大きい。

手持ちポケモン
・キュウコン(♀)
・ウインディ(♂)
・バシャーモ(♀)(シャドウポケモン)

【立ち絵】アルタイル(絵:柴猫侍)


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