イノベイター壊滅RTA ガンダムマイスターチャート【参考記録】   作:ナマステ

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 遅くなってすみません。
 新年度に入って色々と立て込んでいました。

 誤字脱字が多いかもしれませんが、また追々修正します。


(故国燃ゆ)〜(再会と離別と)

 地球連邦に加入しない中東全域に、散布装置によってGN粒子を撒かれている。粒子効果でテロ組織の情報網を遮断する為……とあるが、所詮は建前である。

 実態は、テロ組織に限らず中東国家にも被害が及び、経済活動を麻痺させることが目的の設備だ。アロウズのやり方なのか、それとも連邦としての対応なのかはわからない。

 

 ただ、この散布装置によってカタロンの潜伏先としては有用な場所になっている。カタロンが忌み嫌う弾圧の結果として、彼らが身を隠すことを可能としているとは、実に皮肉な話だ。

 

 

「会談へ応じてくれて感謝する。カタロン中東支部、クラウス・グラードです」

 

「ソレスタルビーイングです。自己紹介は……」

 

「事情は承知しています」

 

 

 かつては謎に包まれていたソレスタルビーイングと、こうして顔を合わせる時がくるとも考えていなかった。

 ジーン1──────ライル・ディランディからガンダムのパイロットとしてスカウトされたと報告があった時は、まさに天啓であった。

 

 三大国家軍がひとつになった連邦政府。

 前時代的なモビルスーツたちしかもたないカタロンでは打倒なぞ到底無理な話だ。

 

 しかし、ソレスタルビーイングの協力があれば話は違ってくる。

 新たなガンダムたちはアロウズのモビルスーツを凌駕する性能を見せてくれた。

 

 

「マリナ姫を助けて下さって感謝しますわ。以後は我々が責任を持って保護させて貰います」

 

「……シーリン」

 

 

 加えて、囚われていたアザディスタンの姫君──────マリナ・イスマイールも救い出してくれたことも、カタロン側の心象を良くしていた。かつては仕えていた側近として、そして友人として、シーリンは肩の荷が下りた気持ちであった。

 ……スーツではなく、戦う者としての服装をした彼女を見て、複雑そうな表情を浮かべるマリナとは対照的に。しかし、カタロンが保護している孤児たちとともにマリナは部屋を後にした。

 

 

「もう二人、保護を頼みたい。クロスロード姉弟──────民間人だ。いわれなくアロウズから、カタロン構成員の疑いを掛けられている」

 

「……それは気の毒な事をした。責任を持って保護させて頂こう」

 

「待て。まず先に本人の意志を確認しておけ」

 

 

 刹那とクラウスが巻き込まれた民間人の扱いについて協議していた時、横やりが入る。

 この基地に入ってきてから常に無言を保っていた北斗が、とうとう口を開いた。そのすぐ後に、彼はクロスロード姉弟へと視線を移す。

 

 

「……お前たちはどうしたい?」

 

「どう……って言われても」

 

「あらかじめ言っておく。このままお前たちを日本に降ろしても、いずれは連邦かアロウズに捕まる。このままカタロンに保護されることは比較的安全だ」

 

 

 だが、自分の身を置く場所くらいは自分で決めろ──────口にはしないが、強い眼光がそれを示していた。

 言っていることは正しいかもしれないが、戦争のせの字も体験したことのない民間人に判断を委ねるのは酷な話だ。

 

 

「私は、貴方達に付いていく」

 

「ちょっ、姉さん!?」

 

「このままカタロンに保護されても、元の生活に戻れる保証なんてないし、一度こっちはカタロンのせいで被害を受けているもの……というわけで、あの、よろしくお願いします」

 

 

 ……そんな判断をする者もいるが例外だろう。絹江は一歩前に出てスメラギに頭を下げて頼み込む。彼女の言いたいことはわかるが、ソレスタルビーイングとしては、やむを得ない事情がない限りは容認できるはずもない。

 

 

「……絹江さん。貴女、自分の言っていることが──────」

 

「では、弟も付いてきてもらう。人手が必要な時は手伝ってもらうぞ」

 

「──────はぁ!?」

 

 

 スメラギと巻き込まれた沙慈の声が重なる。

 発言元の北斗に視線が集中するが、顔色一つ変えずに壁に背を預け、腕を組みながら立っているだけだ。

 

 

「俺は反対だ。俺達もアロウズを相手にする以上、二人の安全を保証できない。それに、行動を共にすることで、かえって立場を悪くすることになる」

 

 

 初めに反対意見が挙がったのは意外にも刹那からであった。いくらソレスタルビーイングには最新のガンダムがあっても、アロウズとの戦闘で必ず生き残れることが約束されるわけではない。

 

 ……昔の彼を知る者が聞けば、至極真っ当な意見が彼から挙がるのは驚いてしまうかもしれない。

 

 

「……そうよね。二人にも、今の私達にも、メリットどころかデメリットにしかならない」

 

 

 スメラギも、少し面食らったが冷静に考える。

 普通に考えれば、あくまで絹江の自己満足にしかならず、誰のメリットにもならない話だ。

 

 ここで突っぱねるのは簡単だ。

 しかし、スメラギとしてはその前に確認しておくことがあった。

 

 

「でも、それが貴方の予測では最適なのかしら?」

 

「ああ」

 

 

 これでカタロン側の人間も助かることになる、と付け加えられる。今の段階で根拠を聞いても教えてくれないだろう。

 

 

「………………………………わかったわ。本人の意志を尊重しましょう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 彼が再び自身の命を投げ出すようなことではない予測であれば……と、暫しの葛藤の後、許容する価値はあると判断した。

 

 

「その代わり、私達がここを出るまでにしっかり弟さんと話合った上で決めてください。同意なしには搭乗させることはできません」

 

「はいっ──────じゃあ、沙慈? ちょっと“打ち合わせ”をしましょう?」

 

「ね、姉さん? 顔が怖いんだけど……」

 

 

 絹江の発言は建前で、せっかくの取材する機会を逃してたまるか、という本音を沙慈は感じ取っていた。懲りない姉を持つ弟はただ胃を痛めるばかりである。

 そんなことを暴露する前にズルズルと引きずられる沙慈に、一同は同情するばかりであった。

 

 

「すみません。こちらで勝手に決めてしまって」

 

「いや、構わないさ。きっと、彼女としてはカタロンよりも貴方たちの方が信用できると思っているのだろう。私達も、あの二人の意志を尊重する。さて、そろそろ本題に入りたいのだが、我々カタロンは──────」

 

 

 戦術予報士失格なのは今更だ、と開き直りながらも会談は続く。

 結果でいえば、同盟などには至らなかった。しかし、互いに方向性は違えども、手を取り合えることはあることは確認できた。カタロンとしてはファーストコンタクトは上々と言ったところだろう。

 

 

「勝手なことをする」

 

「お互い様だろう」

 

 

 会談を終え、部屋を出ていく時の刹那と北斗の会話である。北斗の発言の意味については、この後すぐに刹那がマリナをアザディスタンへ送り届けると言い始めることを示していたようだ。

 

 その割りを食う人間のことを考えて欲しい、切実に思うスメラギであった。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 これから毎日国を焼こうぜ? なRTA、始めようじゃねえか! 

 

 前回は海中でアロウズと交戦後にグーパンされたところまででした。なんか前々回も似たような終わり方でしたね。ホモくんはおもちゃじゃないんだぞ!! 

 

 事後報告になりますが、カタロンとの会談は終わりました。カタロン側としては連邦政府の打倒、ソレスタルビーイングとしてはアロウズへの武力介入。目的は合致しているように見えますが実際の方向性は違う。そんな関係ですが、彼らから得られる物資や補給は非常にありがたいです。ライルくんを通して何度もお世話になりますので、友好な関係を作っていきましょう。これからも、よろしくな? 

 

 で、本編で最も変わったところは、クロスロード姉弟がこのままトレミーへと搭乗することになる点です。本来なら沙慈くんが「こんなレジスタンスたちのところに居られるか! 僕は日常に戻るぞ!」と脱走したのを連邦軍を通じてアロウズに伝わり、カタロンが大惨事になるところです。

 あそこはアロウズの残虐性が描写されるシーンですが、ソレスタルビーイング側は救援に向かってアロウズと戦闘し、カタロンの避難が済む間もさらに戦闘……という形で二回戦うことになります。

 

 ですが、ここで絹江姉貴が「せっかくソレスタルビーイングに接触できたのにこのまま引き下がれるか!」と沙慈くんを連れて押し掛けてくれれば、そもそも一連の事件は起きなくなります。

 

 まあ、あの基地はスミルノフ大佐たちが探査していて、見つかるのは時間の問題ですけどね。

 そのため、結局見つかる前に支部を移動することになり、陽動としてアロウズと戦闘しなければなりませんが、RTA的には一回分の戦闘を丸々カットできるので中々のタァイム短縮になります。だから絹江姉貴を生存させたら良い方向に進むと言ったんですね。

 

 まあ、沙慈くんが協力してくれる理由が罪滅ぼしから姉の尻拭いになるんですがね。それもルイス姉貴がアロウズにいることが判明すれば、本編と似たような流れになるので誤差だよ誤差! 

 

 あっ、そうだ(唐突)

 

 ちなみに、アザディスタンは既に焼け野原になってしまいます。残念ながら、たとえ第一部でサーシェスを完全に殲滅させても他のイノベイターが実行してしまうので、これを変えることはできません。怒りの炎を灯しても、アザディスタンは燃えます。

 とても素晴らしいことだと私は考えます。

 私、マリナ・イスマイール。

 もう少しだけお話させて。お願いだから。

 強めの幻覚がチラチラしてますが無視です無視。

 雑談している間に先程説明した陽動のための戦闘が始まりそうですね。今回はブシ仮面とピーリス姉貴、あと小熊です。ルイス姉貴はまだ宇宙から降りて来ていないので不参加です。

 この戦闘に関しては、はっきり言ってナニモイウコトハナイ。本編ではスメラギさんがカタロン虐殺のショックで倒れてしまいますが、今回は最初から指揮するため難易度も大したことありません。こんなんじゃ、強敵がやってくる次回の戦闘までの余興に過ぎませんよ。ペッ。

 

 まあそんなこと言っていたら変なところでガバりそうなのでここまでにしておきましょう。では、出撃します。

 

 お相手はアヘッドとジンクス。ブシ仮面とピーリス姉貴以外は変わり映えしませんね。イベントの関係でブシ仮面は刹那、ピーリス姉貴はアレルヤが相手します。ホモくんたちは取り巻きの相手を務めましょう。

 歯ごたえのない戦闘に皆様も退屈されると思います。

 

 なので、み な さ ま の た め に ぃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホモくんの専用機であるゼロの武装について簡単に説明します。

 前々回くらいに軽く解説しましたが、皆様が知っているウイングゼロとは違い、理論とか機体コンセプトとかはこの世界に合わせたものになっています。前回出てきたGNフェザーがいい例ですね。あれは今回の解説では割愛します。

 

 まず、マシンキャノンです。

 実弾じゃなくてビーム弾丸を連射するやつです。バルカンの上位互換だからと言って、この武装単体で量産機を撃墜させるようなドチャクソ強く描写されることもありますが、まあガトリングやマシンガン未満の威力です。あくまで牽制や至近距離で使う武装ですね。

 

 あとは肩部に収容されているGNビームサーベルですね。

 一見、特に変哲のない標準武装ですが、実はかなりの出力にも耐えられます。まあ太陽炉ひとつじゃちょっと強めのサーベルくらいにしかなりませんけどね。

 

 そして、ゼロの代名詞である“GNツインバスターライフル”です。連射性能はありませんが、砲撃モードと狙撃モードを兼ね備えており、通常のビームライフルよりも威力、射程が段違いの性能になっています。バスターライフルと言っても、性能的にはセブンソード/Gのブラスターに近いです。

 セラヴィーとケルディムのいいとこ取りをした性能ですが、二丁連結させてトランザム込みで比較すると、現時点ではどうしても特化型のセラヴィーの火力やケルディムの射程より半歩劣っています。現時点では、ですけど。

 

 あとは比較的オーソドックスなシールドと、変形時に使用するバルカンもありますが、まあこれらの説明は良いでしょう。

 

 今後も色々と追加装備を作っていきますが、一先ず以上です。

 何か足んねえよなぁ? と察しのいいホモは気づくでしょう。

 そう、例のシステムです。あれも搭載しているにはしているのですが、ハードだけで肝心のソフトがないです。なので使えません。理由は知らないけどね〜!(蛇並感)

 

 大方、イアンのおっさんが予想以上にヤバイ代物だったことが判明したから封印でもしたんでしょう。まあ、ただでさえ手のつけられないヤツが暴れ出したら誰も止められんでしょうし、順当です。

 

 RTA的には戦闘を楽にしてくれるので実装してくれれば大変ウマ味なのですが、今のホモくんには精神攻撃に耐えられる精神力や特殊能力はありません。暴走して取り返しのつかないロスをすることもあるため、実装は見送りました。

 まあ、余程頭がキレてイカれているヤツがいない限りは再現されないでしょう。あげゃげゃげゃ!

 

 

『──────トランザム!』

 

 

 おっと、ダブルオーがブシ仮面に追い詰められてトランザムを使い始めました。圧倒しますが途中でオーバーロードしてしまいます。ブシドーは見逃して去っていきますが、他の部隊が来るためフォローする必要があります。使うなって言われてんのになんで使うんですか。親方に電話させてもらうね。

 

 えっ、お前が言うな、だって? 

 腹減ったなぁ(すっとぼけ)

 

 

『ま、マリィー──────!』

 

 

 戦場でなぁ! 女の名前をうんたらかんたら! 

 何ということでしょう。アリオスとカスタムアヘッドがロストしてしまいました。うーん、こうして見るとアレルヤがよわよわになっているのが顕著に表れていますね。

 まあ、ここはさっさとスモーク炊いて撤退しましょう。刹那をトレミーへ連れて帰ったらすぐにアレルヤの捜索に入ります。

 

 二人の墜落場所は固定……と言いたいんですが、短縮の弊害で本編とは若干ゃ異なり、ランダムになってしまいます。

 

 闇雲に探すのは効率が悪いため、ここはジンクスを探します。アロウズの赤いやつではなく、連邦の白いやつにはピーリス姉貴が心配で自ら出てきたスミルノフ大佐が乗っています。

 

 ここでのスミルノフ大佐は、たとえどこに墜落していても決まったタイミングで二人を発見します。わざわざ運任せでポイントを絞るよりは大佐を見つけてストーキングする方が楽ちんち○ですね。

 

 おっ、早速一機だけの白いジンクスを見つけました。では、探知されない程度に距離を離してストーキングをしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 雷雨が止み、泥濘が地面を覆う夜の森。

 そこには、二人の男が対峙していた。

 

 

「マリーは優しい女の子です。人を殺めるような子じゃない。

 ──────マリーはあなたに渡せない! 連邦やアロウズに戻ったら彼女はまた超兵として扱われる!」

 

 

 銃を突きつけられているのは、アレルヤ・ハプティズム。彼はようやく巡り会えた己の大切な人──────マリー・パーファシーの前に出るように銃口を睨みつける。

 

 

「だが、君はソレスタルビーイングだ。君といても中尉は戦いに巻き込まれる」

 

「そんな事はしません!」

 

「テロリストの言う事を信じる程、私は愚かではない!」

 

 

 銃を突きつけているのは、セルゲイ・スミルノフ大佐。娘同然に思っていた部下から告げられた“ソーマ・ピーリス”の真実に義憤を感じながらも、連邦の軍人として銃の安全装置を解除させる。

 

 なんと皮肉なことだろうか。

 超人機関という超兵の元凶を外側と内側で壊滅させた者たちが、こうしてマリーを巡って直接対峙しているなんて。

 

 マリーの言葉に偽りはないことはわかる。

 このガンダムパイロットは何度も相手した超兵であり、彼もまた悲しき存在であることもわかる。

 

 

「私は君の──────いや、君達の馬鹿げた行いによって多くの同胞や部下を失っている。その恨みを忘れた訳ではない!」

 

 

 しかし、セルゲイは軍人だ。

 アレルヤがソレスタルビーイングという組織の人間である以上、同胞たちのためにも、軍人として討たなければならない。

 

 

「そうだ、信用できるわけがない。君が戦わせずにいたとしても、状況次第で味方に特攻を強いるような指揮官がいる以上は容認なぞ……!」

 

「特攻……まさか、あの時の」

 

 

 数年前の戦いで───アレルヤたちはアルヴァトーレの砲撃を受けている間だったため、実際に目撃したわけではないが───0ガンダムが特攻して自爆したと聞いていた。

 それが、セルゲイにはしこりとして残っていた。

 

 一触即発。

 張り詰めた空気の中、突如として風が舞い上がる。ここにいる者たちは何度も体感した、モビルスーツの着陸時に発生する上昇気流であった。ジンクスに横着するように一機のガンダムが降り立つ。

 

 

「またガンダムか……!」

 

「北斗!」

 

「……状況は理解した」

 

 

 ……噂をすれば、と言うべきだろうか。

 件の特攻したガンダムのパイロットが一番に到着するとは、どうにも作為的な要素を感じてしまうアレルヤであるが、それどころでもない。

 

 北斗はコクピットから飛び降りると、すぐに銃をセルゲイの眉間へと照準を合わせる。

 

 

「その声……生きていたのか」

 

 

 一方、セルゲイはかつて通信で耳にした声であることに一瞬驚くが、依然として銃を握る力は変わらない。

 ……ただひとつ、生きていた彼に聞かなければならないことができてしまった。

 

 

「君はあれだけのことをしたのに、再び戦おうとするのか」

 

「お前には関係ない」

 

「見たところ、二十歳にも満たないだろう! 武力による紛争根絶、など馬鹿げた思想に囚われて、敵だけに留まらず、自分すら……!」

 

 

 愚問だ、と。

 北斗はセルゲイの言葉を途中でを切り捨てる。

 

 

「任務を達成するためならば、自爆スイッチ程度いくらでも押してやる──────命なんて安いものだ。特に俺のはな」

 

「……この男」

 

 

 この北斗の一言に、セルゲイは何を思ったのか。

 それはアレルヤにも、長年ソーマ・ピーリスを通じて共にしていたマリーにもわからなかった。

 

 それを考える時間は与えられない。

 北斗の持つ銃の、安全装置が外れる音がここにいる全員の意識を現実に戻す。

 

 

「そんなことはどうでもいい。大人しく投降しろ。三人に勝てるわけがないだろう」

 

「……私は軍人だ。ここでガンダムパイロット一人と刺し違えることを臆すると思っているのか?」

 

「そんな……やめて下さい、大佐!」

 

「そのつもりはない。お前がアイツを撃つ前に──────お前を殺す

 

 

 五人いるガンダムマイスター。

 その内の一人を、軍人一人の命で道連れにすることができるならば、お釣りが返ってくる。それに、“大佐”などという階級なぞ関係ない話だ。

 

 

「北斗、銃を下ろすんだ」

 

 

 だが、アレルヤがもう一歩前に出る。

 彼の手には、この状況を打破するための武器はない。となれば、あとは身を差し出すのみだ。

 

 

「……撃って下さい」

 

「アレルヤ!?」

 

「その代わり、マリーを……いえ、ソーマ・ピーリスを二度と争いに巻き込まないと誓って下さい」

 

 

 マリーは止めようとするが、アレルヤにはある種の安心感があった。

 この男──────セルゲイ・スミルノフは本気でソーマ・ピーリスを一人の人間として案じていた心を持っていることを。そして、同胞や部下を殺された仇を取るのであれば、自分を裁く権利があることを。彼になら、マリーを任せることができるのでは、と。

 

 ……であれば、ここで裁きを受けよう。

 アレルヤは腕を広げ、受け入れる姿勢を取る。

 

 

「……承知した」

 

「いやあああああああ!!」

 

 

 

 銃声が二つ、夜の森に木霊する。

 後に、人が泥濘へと倒れる音もやってきた。

 

 こびりつくような転倒の音が耳に残る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────たった今、ソーマ・ピーリス中尉は名誉の戦死(・・・・・)を遂げた。上層部に報告すべく、帰投する」

 

「大佐……」

 

 

 それはアレルヤを庇おうと──────かつセルゲイを庇おうとしたマリーが、セルゲイへ向けて突撃し、倒れ込んだ時の音であった。その銃口は夜空と向けられていた。

 

 

「……まさか同じことを考えていたとはな」

 

「予測の範囲内だ。それに、お前へ撃つ理由がない」

 

 

 セルゲイは起き上がって、北斗の方を見る。

 彼の銃は斜め上の、月がある方向へと向けられていた。

 泥だらけになってしまった連邦のスーツのまま、アレルヤたちから背を向ける。

 

 

「そういえば礼を言っていなかったな──────低軌道ステーションの事故、救助作業に参加してくれた事、感謝する」

 

「──────」

 

 

 忘れていた、とばかりにそう言い残すセルゲイに、アレルヤの目が大きく開く。

 あの時の救助で、共に活動していた人革連のティエレンのパイロットがセルゲイであることを初めて知った瞬間であった。

 

 そして、帰り際になったマリーは背筋を伸ばして敬礼する。マリー・パーファシーとしてだけでなく、ソーマ・ピーリスも含めた別れの言葉と、純粋な感謝であった。

 

 

「スミルノフ大佐! ソーマ・ピーリスを対ガンダム戦だけに重用(・・・・・・・・・・・)し、他の作戦に参加させなかった事、感謝しています!」

 

「……本当に、私の知っている中尉ではないのだな」

 

「それから、私の中のソーマ・ピーリスがこう言っています。“あなたの娘になりたかった”と───!」

 

「そうか。その言葉だけで十分だ。

 ……生きてくれ。生き続けてくれ。彼と幸せにな」

 

「っ、今まで有難うございました、大佐!」

 

 

 暫しの抱擁の後、セルゲイは己のジンクスへと乗り込んでいく。

 ……一連の話を聞いて、アレルヤは自分の抱いた安心感が間違いでなかったことを悟った。もし、あの人が居なかったら、ソーマ・ピーリスは非人間のまま超兵として使い潰され、マリーの人格は永劫目覚めなかったかもしれない。

 

 過去のたられば話に意味はない。

 しかし、ソーマ・ピーリスの上官が彼で本当に良かった。それは間違いないことだ。アレルヤは最大の敬意を持って、セルゲイを見送った。

 

 

「……任務完了。迎えを呼びに戻る。好きなことをして待っていろ」

 

「北斗……ありがとう」

 

 

 そして、一番に駆けつけてくれた仲間にも惜しみない礼を。

 敵に対しては苛烈な彼でも、セルゲイへの攻撃を思いとどまってくれたことには感謝が尽きない。

 

 

「ただ、さっきの言葉、二度と皆の前で言わないでね。特に刹那やフェルトには絶対」

 

「そうか」

 

 

 親切心でアレルヤはそんなことを言ったが、北斗は気をつけるつもりがあるのかはわからない。

 数年前の戦いでもアレルヤは薄々思っていたが、彼───北斗は、失った半身(ハレルヤ)と正反対に己の命を軽く見積りすぎている。

 

 死線を彷徨った者として、躊躇いなしに即座に戦場へ出る精神性から見るに、まるで“自分は随分前から死んでいる”と考えている節がある、と表現するのが適切かもしれない。かつて、このまま牢獄の中で朽ち果ててもいい、と思っていたアレルヤだからこそ、理解できる感情であった。

 

 

「……アレルヤ、どうしたの?」

 

「えっ、いや、なんでもないよ。マリー」

 

 

 思考を中断され、マリーへと引き戻される。

 考え事は後に回し、今は共にゼロがセルゲイのジンクスを追うように飛翔するのを見送ることにする。

 

 姿が見えなくなったのを確認し、アレルヤとマリーは最愛の人と共にいられることの喜びを、互いに確かめ合うことにした──────

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 くっそ、じれったいな……俺、ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!

 

 

 いやあ、滞りなくマリーのイベントが終わりました。何気にアレルヤ……と言うかソレスタルビーイングに対するスミルノフ大佐の好感度が低かったので、場合によっては本気で撃たれてしまう可能性もありましたね。やり方はともかく、フォローできて良かったです(フォローできているとは言っていない)

 

 アレルヤを庇ってマリーが撃たれてしまうと、戦う理由を失ったアレルヤは実質的にキャラロストになります。かといって、大佐をホモくんが撃ってしまうと、今度はまたピーリス姉貴が表層に出て来て完全に敵対状態になってしまいます。普通に進めていればそんな状況にはならないんですが…… ヒヤヒヤもんだぜ……!

 

 

『ここから見送りは不要だ』

 

 

 おっ、大佐の見送りもここまでですか。

 ライルくんとかがサーチ&キルしないように、念のため護衛していましたが、ここまでで充分みたいですね。

 

 

『次会う時は、戦場か』

 

 

 違うだろぉ?(未来予知)

 次に会う時はブレイク・ピラー事件とかいうもっと緊迫した状況ですし、あくまでソレスタルビーイングの敵はアロウズと、その背後にいる支配者気取りの胸元開放民族です。これ以上、大佐と戦うことはありませんねぇ。

 

 

『戯言として受け取っておこう。

 ……これは独り言だが、もう少し器用に生きる術を学ぶといい。周りからしたら、とても見ていられんだろう』

 

 

 おう考えてやるよ(考えるとは言っていない)

 

 さて、これで大佐と別れました。

 一先ずアレルヤたちは故障したアリオスの回収も必要なので、トレミーが迎えに行きます。座標を送って差し上げます。

 余った時間は、セラヴィーの反応を追って行きましょう。時間的にはギリギリなので、一応トランザムも使って移動しましょう。

 

 おっ、ティエリアがいました。

 見たところ一人……ということは、()ジェネ・()ジェッタならぬリジェネ・レジェッタは姿を消しましたか。彼も野心家なので、利害と立ち回り次第ではリボンズ打倒に協力してくれます。あわよくば接触できれば、と思いましたが無理でしたね。

 

 実際、イノベイターどもは次の潜入ミッションでも、その次の戦闘でも相対するので、そこまで焦る必要はありません。最悪リジェネと接触できなくても、どうせ原作通りに進みますし、別にいいです。

 

 いやあ、本当に第二部序盤は楽ちん○んですね。第一部みたいに必死こいて廃材を集めたりする必要がないのは精神衛生上助かります。カタロン様々ですよ。

 

 ただ、次の戦闘からはちょい不確定要素が多くなります。ここからは気を引き締めて行きましょう。なにせ、この後アロウズ側の補充される──────今回はここまで。次回もよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 活動再開からというもの、ソレスタルビーイングはアロウズを出し抜き続けている。

 ガンダムの性能はもちろんのこと、アロウズ側の優位性である物量の差を活かさないようにする戦術には、アロウズに限らず連邦屈指の戦術予報士のカティ・マネキンすら舌を巻くほどだ。

 

 しかし、カティは同時に既視感を覚えていた。

 ガンダムパイロットの奪還作戦──────業腹にも自分が出し抜かれた戦闘を改めて見直してみる。

 この大胆かつ繊細な作戦を実現させる戦術家は、彼女の知る中でひとりしかいない(・・・・・・・・)

 

 まさか、と一人の懐かしい顔を想起させたが、その思案も打ち切られることになる。

 

 

「そうそう、補充人員の中には大佐のよぉ〜く知っている男がいるそうですよ?」

 

「何?」

 

 

 リント少佐から補充人員のリストを受け取る。

 新型のモビルスーツのガデッサと、そのパイロット──────リヴァイヴ・リバイバル。

 

 聞いたことのない名だ。しかもライセンス持ちだ。

 かつて、ユニオンのフラッグファイターとしてその名を轟かせたグラハム・エーカーのような人間ならともかく、ライセンス持ちになる人間ならば、聞いたことのある名前が出てくるはず。長年戦場にいるカティとしては、どうも不自然に思ってしまう。まあ、アロウズの謎が多い点は今更であるが。

 

 ……それよりも、カティの関心を引く者がいた。

 考えなしの阿呆だが、どこまでも真っ直ぐで、憎めなくて、自分にはいつも素直な部下。

 だからこそアロウズには近づくな、と口酸っぱく注意した。

 

 

「大佐ぁ! 来ちゃいました〜!!!」

 

 

 ──────にもかかわらず、こうして来てしまうのだから、本当に困ったやつだ。

 カティは腐れ縁となってしまった男を、とりあえず殴ることを決めた。初めて会った時と同じように。

 

 




 最近、ガンダムのRTA小説が増えていますね。
 どんどん走者が増えてきて嬉しいです。

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