魔族と人間が共存する世界。日本は巨大な島国ということもあって、試験的に魔族が自由に生きることが可能となっている
そんな世界になった日本では、近年魔族差別というものがある
理由としては、魔族が極端に少ないからというのがあげられる。そんな中、魔族たちが黙っているわけもなく、古くから日本に住む吸血鬼の一族が日本政府に圧力をかけ始めている
「…で、「図書館」としては緋月一族と戦争はしたくないんだ」
「なんのための異能力だ!」
「そうだ!貴様らの存在を許してるだけでもありがたいと思ったらどうだ!」
「貴様らなどいつ殺してもいいのだぞ!」
荒い声を上げているのは吸血鬼たち「緋月一族」の侵攻におびえている日本政府だ
この中でもっとも冷静な青年は、今年十九歳になる異能力保有者だ
名前を、冬風夜斗。「図書館」と呼ばれる、異能集団を統括する者だ
それと同時に、魔族による犯罪、魔導犯罪の予防・対応を行う業務も執り行う
つまりは、偉そうな日本政府よりも国民に望まれる存在ということになる
「いっただろう。
「そこをなんとかするのが貴様ら「図書館」の仕事だろうが!」
「…面倒だな。思っていたより言語中枢が死んでる高官と話しているらしい。「図書館」は対緋月一族から手を引く」
「そ、それは困る。貴様らの人権と引き換えだと最初に言っただろう!」
「お前ら前回も同じこと言ってるからな?つい一か月前だがそんなことも覚えていられないほど脳が小さいのか?」
夜斗はため息交じりに言い放つ
その言葉に黙ってしまう日本政府の面々
そう、つい先月の十一月ごろ、暴走したAI戦艦二十隻を沈める代わりに人権を保障するといったものの、一切無視しているのが日本政府なのだ
国民は、「一度言ったことを自分の利益問題によって守らない」といって批判し、今もこの会議が行われている国会議事堂の前でデモが起きているのだ
「信用関係が破綻している今、お前たちが俺に示すものがなんであるべきかもわからないか?」
「……金か」
「そんなわけがないだろう?さすが能無しだ。お前たちは、今すぐ俺たちを開放すべきなんだ。それではじめて対等といえる。そうでなければ、俺はお前らにはつかない。むしろ緋月一族につくかもな」
夜斗はそう言って総理大臣に視線を向けた
「図書館」を非難するでも擁護するでもない飾り、と夜斗は認識している
総理が目を開け、口を開いた
「君たち「図書館」を、どう開放しろというのだ」
「監視の取りやめ。および公務員としての「雇用」、そして国会への参加。これが条件だ。全てに優先権おうけてもらう」
「そんなバカな話があるか!!それでは、独裁を認めろということではないか!!」
総理の隣に座る防衛大臣が叫ぶ
夜斗の要求はつまり、日本政府を取り壊すことだ
「飲めないなら俺たちは
「うぐ…!」
「…諸君、我々の責務は金もうけではない。国民を守ることだ。私は、この要求を呑もうと考えている」
「総理!?」
「なぜですか!」
「総理、お前は話が分かるようで何よりだ」
「…思い出すんだ。この者が現れた時に見せたあの力を」
夜斗が戦艦を相手とったときに見せたのは、《
その名の通り、管理する力。すべてを支配。隷属させ、任意の事象を世界に適応させる能力
「図書館」の中でも特に強い力を持つ「administrator class」でも最強にして最恐といわれた能力だ
これにより、反逆を開始したAIをすべて隷属させ、一切の抵抗を禁止したのだ
「ならそれで緋月一族を支配すればいいい!」
「魔族は
夜斗はそういってせもたれに寄り掛かったキィという音が、静かになった国会に響く
これは最後通告だった。これを知ってなお、卑しいたくらみを実行するのか?という警告だ
「で、俺たちを開放してもいいと思うものは?」
夜斗がもう一度聞いたとき、反対の声はあがらなかった。日本政府崩壊の瞬間である