《管理者》ではなくなった夜斗は、街を歩いていた
隣には奏音と、子供がいる
その子供の名前は楓。夜斗と奏音の間に生まれた娘だ
「楓、あまりはしゃぐなよ」
「お父さんは心配症だね。お母さんとイチャイチャしてたらちょーどいいよ」
「…誰に似たんだか。なぁ、奏音」
「そうね。私たちの子どもだから仕方ないわ」
奏音はそう言いながら《執行者》を起動する
グレイプニルは経年劣化で廃棄され、新しくスピリダスという航空要塞が配備された
奏音に代わりアイリスが政治を取る中、夜斗と奏音は隠居生活を送っていた
「遊んでくるね」
「夕飯までには帰りなさい」
「はーい」
楓が走って友達の元に移動すると同時、ワゴン車が楓たちの横に車をつけた
「…奏音!」
「執行モードゼロワン、転送!」
奏音が神機を召喚し、弾を込めるより早くワゴン車から黒ずくめの男達が、楓とその友達たちを車に連れ込み、発進した
「《管理者》…は使えねぇんだった、紫電…!」
「やめなさい夜斗!それ使ったら楓も吹き飛ぶわ!」
「…《管理者》から解放されたらこんな弊害が…」
夜斗は交差点を左折した車を見送ることしかできなかった
自宅にて
夜斗は自室の机の前に置かれた、欠けた歯車を手に取った
《管理者》を失った時からここにある。動かそうと思っても、忘れていた
「…お前がまだ、俺の元にいるなら…」
奏音が扉の前で夜斗を呼ぼうとして動きを止める
そして聞き耳を立て始めた
「……これが、神機の欠片なら…」
夜斗が歯車の欠片を手に取り、持ち上げる
「…神機解放…!」
歯車から溢れた十六進数の羅列が、夜斗に吸い込まれる
そして夜斗の意思をそのまま、連れ出した
『せっかく解放したというのに、酔狂な人ですね、主様』
「夜刀神…ってことはあの欠片は…」
『登録されていた《管理者》の力そのものです。貴方は一度、幸せを手にするためにそれを手放しています。それでも、また使うのですか?』
紫の髪を持つ女性が、真っ白な世界で夜斗に手を差し出す
夜刀神…つまりは、夜斗が過去に使っていた神機。その意思
「…お前はどうして欲しい?」
『どちらでも。主様が私から離れるなら追う術などありません。私は意思ある神機ですゆえ』
「…」
『けど、また主様と世界を変えるのも悪くありませんね』
「…夜刀神」
『主様。悪魔…ではありませんね。神機夜刀神と相乗りする勇気はありますか?』
夜斗は差し出された手を取る
そして夜刀神を抱きしめた
「…ありがとう」
現実に戻った夜斗を背後に、あの巨大時計が現れた
「《管理者》再起動!」
ドアの前の奏音は、少し悲しく思っていた
(私じゃ足りないかしら)
『今更何を言っているんですか、奏音さん?』
「…!夜刀神!?」
『貴女様の役目は、我が主の隣で共にあること、です』
「…そうよね。《執行者》執行モード、ゼロゼロワン!」
夜斗の《管理者》と奏音の《執行者》が織りなす、最高の時間を
「楽しめ」「楽しみなさい」
『次のニュースです。冬風夜斗様が、《管理者》を再起動されました。御令嬢の救助のため、冬風様は───』
番外編として未来編です
あ、楓はニュースの前に助け出されてます。念のため補足