──図書館は、女の子を作って奴隷扱いしている
そんな噂が広まるのに、そう時間はかからなかった
「主様?」
「雪音か。どうした?」
「また私たちのニュースですか?」
「そうだ。奴隷扱いしてる気はないが、はたから見ればそうなんだろう」
夜斗はそう言ってSNSをテレビに映し出した
表示されているのは図書館への不信感を募らせるメッセージの数々だ
雪音はそれを見て憤慨する
「全く私たちの気持ちも知らないで、よくこんなこと言えますよね!」
「事実お前らはアンドロイドガールだからな。作られた、というのは正しい」
アイリスが作った魔術人形に、夜斗が意思を付与して、奏音が能力を植え付け、佐久間がステータスを設定する
そんなコンセプトで始まった、人工恩恵保持者計画
雪音はそのプロトタイプだ。零號騒霊と言われ、現在では夜斗に付き従う良き従者となっている
雪音たちは、
騒霊たちの恩恵は、《
それぞれ雪音、愛音、桜音が保有している
普段外に出ない奏音は、彼女らの母親としてケアを実行しながら、第零禁書庫にて共に生活をしている
「雪音が表に立って説明しても逆効果だよな」
「正直そうですね。言わされてるーとか騒ぎそうです。騒ぐのは私の役目では?」
「こんなの証明するのは無理だな、よし奏音」
「弾圧するわね」
横で聞いていた奏音がキーボードを打鍵する音が響く
《執行者》が起動し、打ち込まれたプログラムを無理やり実行した
【全国へ通達。図書館を批判する内容は表現の自由から大きく逸れるため、見かけた場合は即刻排除する。また、そのような話をするものを見つけ、冬風夜斗に報告したものの願いを叶える】
「…ちなみに叶えるのは?」
「夜斗がやりなさい」
「嘘だろお前」
日本の地に足をつけるものへのテレパシーにより、法律制定も通達も容易に行える
今回のは通達だ。強制的に脳に声を送るため、聞いていませんでしたは通じない
寝ていたところで、起きてからしばらくした後に聞こえ始めるからだ
「軽く独裁だけど、まぁ仕方ないわね。そろそろ反組織がくるかしら」
奏音が眼下の町へと目を向ける
アイリスが作った魔術人形が、夜斗の指示で暴徒を殲滅していく
銃火器を解禁したため、かなり戦力として増強されてはいるが、正直なところ男しかいない
そのため、生身の女型魔術人形だと誰も撃たないのだ。下心があるから
「…また始まったわね」
「暴徒は増えるわな、こんなやり方じゃ。今までの日本よりは生きやすいが、人間は批判をしなければ死ぬ生き物だ」
「哀れですね」
雪音はそう言って目を閉じた
その姿は、街を歩けば目を惹きつけるほどの美貌を持ち、出るところは出ていてくびれもある
服装は白色のワンピースで、髪も白く目は金
人間離れしているため、目を惹きつけてもナンパはされない
そんな雪音の口から、歌が紡ぎ出された
透き通るような歌声が、夜斗と奏音の心を癒していく