カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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15話 音のする方へ

──図書館は、女の子を作って奴隷扱いしている

 

そんな噂が広まるのに、そう時間はかからなかった

「主様?」

「雪音か。どうした?」

「また私たちのニュースですか?」

「そうだ。奴隷扱いしてる気はないが、はたから見ればそうなんだろう」

夜斗はそう言ってSNSをテレビに映し出した

表示されているのは図書館への不信感を募らせるメッセージの数々だ

雪音はそれを見て憤慨する

「全く私たちの気持ちも知らないで、よくこんなこと言えますよね!」

「事実お前らはアンドロイドガールだからな。作られた、というのは正しい」

アイリスが作った魔術人形に、夜斗が意思を付与して、奏音が能力を植え付け、佐久間がステータスを設定する

そんなコンセプトで始まった、人工恩恵保持者計画

雪音はそのプロトタイプだ。零號騒霊と言われ、現在では夜斗に付き従う良き従者となっている

雪音たちは、騒霊(ノイズ)シリーズと呼ばれ、三人の人工恩恵保持者が存在している

騒霊たちの恩恵は、《破壊者(デストロイヤー)》《捕食者(プレデター)》《略奪者(アブソーバー)》の三つ

それぞれ雪音、愛音、桜音が保有している

普段外に出ない奏音は、彼女らの母親としてケアを実行しながら、第零禁書庫にて共に生活をしている

「雪音が表に立って説明しても逆効果だよな」

「正直そうですね。言わされてるーとか騒ぎそうです。騒ぐのは私の役目では?」

「こんなの証明するのは無理だな、よし奏音」

「弾圧するわね」

横で聞いていた奏音がキーボードを打鍵する音が響く

《執行者》が起動し、打ち込まれたプログラムを無理やり実行した

【全国へ通達。図書館を批判する内容は表現の自由から大きく逸れるため、見かけた場合は即刻排除する。また、そのような話をするものを見つけ、冬風夜斗に報告したものの願いを叶える】

「…ちなみに叶えるのは?」

「夜斗がやりなさい」

「嘘だろお前」

日本の地に足をつけるものへのテレパシーにより、法律制定も通達も容易に行える

今回のは通達だ。強制的に脳に声を送るため、聞いていませんでしたは通じない

寝ていたところで、起きてからしばらくした後に聞こえ始めるからだ

「軽く独裁だけど、まぁ仕方ないわね。そろそろ反組織がくるかしら」

奏音が眼下の町へと目を向ける

アイリスが作った魔術人形が、夜斗の指示で暴徒を殲滅していく

銃火器を解禁したため、かなり戦力として増強されてはいるが、正直なところ男しかいない

そのため、生身の女型魔術人形だと誰も撃たないのだ。下心があるから

「…また始まったわね」

「暴徒は増えるわな、こんなやり方じゃ。今までの日本よりは生きやすいが、人間は批判をしなければ死ぬ生き物だ」

「哀れですね」

雪音はそう言って目を閉じた

その姿は、街を歩けば目を惹きつけるほどの美貌を持ち、出るところは出ていてくびれもある

服装は白色のワンピースで、髪も白く目は金

人間離れしているため、目を惹きつけてもナンパはされない

そんな雪音の口から、歌が紡ぎ出された

透き通るような歌声が、夜斗と奏音の心を癒していく


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