恩恵保有者である夜斗には、直近の部下が三人いる
一人は《
一人は《
そして夜斗以外会ったことがないという、《
夜斗を含むこの四人が実質トップだ
「アイリス、お前どこ行ってたんだ?」
「んー…特にどこってことはないけど、《創作者》で作った銃の試し撃ちだね。かるーく列車砲作ったんだけどさ」
「そんなんどこで打つんだ?」
「試験したのはいつもの場所だよ。千葉県」
千葉県は人が住まない
なぜなら、魔族も人間も忌み嫌う何かが住みついているからだ。人はそれを魔獣と呼んだ
夜斗の《管理者》によって、魔獣は千葉県から出ることはできない
「で、結果は?」
「ダメダメだね。なんて言ったらいいのかな…前に撃つのはいいんだけど、反動計算しなかったから横に撃つと流されてレールが歪むし、確実に脱線する。まぁ、高所作業車みたいにアーム伸ばして固定すればマシになるんだけど、それだと列車砲の意味がないからね」
アイリスは自分の能力の限界を知らない
どこまで具現化できて、どのレベル以上だと疲れるのかもわからない。そんなアイリスは、常に夜斗のそばに居る
「じゃあ最悪レール四本使うとかはどうだ?車体は高くなるが、その分積算は増やせる」
「レールの耐久性に難あり、だね。調べたわけじゃないけど、今の列車砲でもギリギリだよ。バラストがミシミシいってる」
アイリスはそう言いながら対戦車砲を取り出した
砲とは言ったが、基本的には狙撃銃と見た目は変わらない
違うのは、中に使われてる機構だ。その対戦車砲は、スーパーキャパシタというコンデンサを使用したレールガンになっている
貫通力が高く、雷管を搭載しないために破壊力を強めることができる
「それ名前なんだっけ?」
「パラードゼロだよ。まぁ、作成者の私でも呼びにくいけど」
「名前変えろ」
「それがいいかなー。じゃあブレストキャノン?」
「より言いにくいだろそれ」
夜斗は立ち上がり、体を伸ばした
「今日は何かするの?」
「昨日日本政府を壊したから、その記者会見。ついでに過激派魔族の迎撃だな。国民に少しだけ力を見せておかないと、勝てるなんて勘違いをする奴が出てくる」
夜斗はそういってクローゼットからコートを取り出した
アイリスが夜斗の背に向けてハンドキャノンと携帯電話を投げ、そちらを見ることもなく夜斗が受け取る
「もう少し俺の体の横に投げてくれ」
「狙ってるんだけどねー。普段照準補正使って撃ってるせいかな」
「…まぁいい。いつも通り、留守は任せる。国会議事堂の跡地に家建てるけど、それまではこのマンションが根城だからな」
東京都内にある高層マンションの最上階。ここを貸し切って、「図書館」のメンバーを生かしていた政府はもういない
それに、国会議事堂はいらなくなる。ならば新たな家を跡地に建てるのもある意味では間違っていないのだろう
「加減しなよ、夜斗」
「向こうが殺意に呑まれてなければ加減もするさ」
そう言って夜斗は玄関の戸を開いた