カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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24話 最初に言っておく7

「…筋力強化、ですか」

レインが無理やり立ち上がり、霊斗を投げて結界の外に出した

「…ああ、まぁこういうこともありますよね。誤算ではありますが」

紗奈は右手を高らかに上げて、凛と声を響かせる

「《拒絶者》バーストモード!」

神機が空気に紛れる霊力を取り込み、赤く発光する

紗奈の目が赤くなったものの、暴走の気配はない

(なるほど。暴走自体を拒絶してるのか)

夜斗は地面に座り、神機に寄りかかった

「…ちょっと、ちょっかい出すか」

蚊帳の外となっている霊斗に向けて、神機から溢れ出た霊力を魔力に変換・魔術として放つ

「射程威力最大、単発マスタースパーク」

極太の彩色ビームが霊斗の背後から迫る

それに気づいて弾き飛ばしたのはレインだ

「…後ろからなんて卑怯」

「逆に後ろを取られてるだけだろう?紗奈とお前らではなく、俺と紗奈がお前らと戦っているんだからな」

そう言いつつも夜斗は立ち上がりすらしない

アイリスから借りているハンドガンを気怠げに構えるだけだ

「さて…。冬桜の巫女たる夜華が願い奉る。蒼炎に染まり邪の道を断て!」

紗奈の言葉が終わる()()()()空が黒い雲に覆われた

雷が紗奈の右腕に集まり、紗奈のもつ銃にチャージされていく

「霊斗さん」

「なんだ…?」

「先程のお兄様は、私の《拒絶者》を管理者権限にて使用し、マスタースパークを起動しました」

「そ、そうか…」

「では、オリジナルが本気で放つとどうなるでしょうか?」

「……まさか!」

「焼き尽くしなさい。ファイナルスパーク」

紗奈の銃から、極太のビームが飛び出した

濃密故か、空間がビリビリと揺れるのがレインにもわかる

そして夜斗の目的が、やっとレインに伝わった

「まさか霊斗と引き離すために…!」

「大正解…と言いたいところだが、半分違う。一つは確かに霊斗とお前の距離を遠くし、カバーできないようにすること。もう一つは」

霊斗を焦がした紗奈の魔術が夜斗に向かって飛来する

紗奈は焦るでもなく、神機の召喚を解除した

反射(カウンター)

夜斗が反射した極光が、至近距離まで詰めていたレインに浴びせられる

真っ黒に焦げた霊斗に対し、レインは火傷程度

紗奈の不手際ではなく、夜斗が《管理者》によって軽減したに過ぎない

「これが人間の力だ。覚えておけ、レイン・アカツキ」

夜斗はそういって、その場に倒れた

「お兄様!」

「夜斗!?」

奏音と紗奈が駆け寄り、体を支える

「…回路遮断(オーバーラン)だ。慌てることはない」

夜斗は上がらない腕を霊力で紡いだ後で吊り、無理やり動かした

「オーバーラン…?」

「《管理者》は封印状態で駆動している。だから、使いすぎると焼き切れるんだ」

「…え?」

「それだけ追い込まれたということだ、誇れ」

夜斗はそういって意識を手放した


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