カスミトアケボノ 「図書館」編   作:本条真司

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25話 最初に言っておく8

「言っとくけどまだ認めてないからね」

「わかったから帰らせろぉぉぉ…!」

レインが夜斗を拘束している

帰宅用の列車が警笛を鳴らした

「懐かしい音だな。もうなくなっちまったけど」

「ねぇ何和んでんの?今俺捕まっとるんだけど?ねぇ霊斗?」

「いいじゃねぇかこんなに可愛い女の子なんだから」

「原則的に年上は恋愛対象外なんだよ!」

《管理者》を起動してレインの時間を止め、拘束魔法を解く

そのまま汽車に乗り込み、窓を開けた

「霊斗」

「ん?」

「レイン・アカツキ・ブラドが牙を向いた件は貸しな」

そういって夜斗は指を鳴らした

すると汽車が一際大きな音で警笛を鳴らし、ゆっくり進み始めた

その段階で夜斗は《管理者》を解除する

「あっ…勝ち逃げするなぁぁぁぁ!」

「じゃあなレイン・アカツキ。次会うのは法廷だ」

「軍法に触れたみたいになってる!?」

夜斗は体を乗り出し、運転手に向けてゴーサインを出した

汽車は加速し、徐々に速度を上げていく

駅のホームを抜け、霊斗たちが駅から出ると駅舎がチリとなって風に流れた

「クソ…やられたな」

「何が?」

「レインの攻撃で貸しってことは、何か代償を要求されるんだろう」

霊斗はそういって汽車を見送った

 

 

東京都・旧東京都庁跡地

「集まったな」

そこにいるのは、日本政府の高官だったものたちだ

何故集まっているのか。そして、何故魔族を迫害していたにもかかわらず、今魔族と共にいるのか

「まず、これまでの非礼を詫びよう。申し訳なかった」

元総理が頭を下げる

それに合わせて、防衛大臣などなど十数名が頭を下げた

魔族…それも過激派といえども、それには狼狽した

「詫びとして、脳のリミッターを外す機械を差し上げたいと思う。持ってこい」

元総理が合図すると、端に控えていた黒服がマイクロチップを持ってきた

「脳に外科手術で入れることで、脳のリミッターを外せる。さすがの緋月家も、リミッターを外した魔族には勝てまい」

「…そ、そうだ…俺たち高貴なる吸血鬼が、100年も生きてない若者に負けるわけにはいかない!」

魔族たちはその申し出を受け、日本政府だったものたちは外科手術を行った

そのリミッター解除の代償を知らずに、手を出してしまったのだ

そしてその情報は、夜斗と霊斗の元にも届いた

それは瞬時にそれぞれの組織で拡散され、対策本部が設立されることになった

また、琉那を筆頭とする精霊たちもこの対策本部に加入することとなり、過激派魔族は余計に追い込まれることとなった

「…外科的に入れた、だろ?こんなんで外れるのか?」

霊斗は受け取った資料の束から一部取り、天音に回した

「まぁ可能だと思うよ。結局神経に流す電流が──」

「ともかく、やることは変わらん。魔族、精霊、恩恵保持者の連携となるぞ」

夜斗はそう言って議長席に座った

会食から二ヶ月が経過していたが、レインが夜斗に向ける殺意は相変わらずで、それに対して奏音が霊斗に銃を向け、それをアイリスが諫めるというのが定常化している

「そういえば、神族はどうなのよ」

奏音が口を開く

神族というのは、神の転生した姿と言われているものだ。人間の見た目をしながらも神の力を持ち、恩恵保持者とも対等に渡り合う者たち

「あいつらはまだきてない。来ると思うがな」

夜斗はそう言って資料を机の上に投げた


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